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廃業する工務店が増加傾向!廃業を決めた要因や手続きのポイントを解説

廃業する工務店が増加傾向!廃業を決めた要因や手続きのポイントを解説

コロナ禍以降、工務店を含む建設業界で後継者不足や倒産など、年間1,000件以上の事業者が廃業しています。

これは、全ての建築会社や工務店の約3%に当たるとも言われており、今後も増加傾向が続きそうです。

地元の公共工事を請け負ってきたような準大手の工務店でも廃業を選択することも少なくありません。

廃業を選択するに至った理由や廃業手順、関係各所へのフォローなどについて解説します。

工務店が廃業を選択する理由

廃業を決めるまでには多くの理由が積み重なっている場合がほとんどです。

経営の中廃業を決めるに至った主な要因について紹介します。

① 着工数の減少

この10年間で着工数は以前の7.5%減少していると言われています。

良質な中古住宅が増えてきており新築需要が減っていることも一つの要因です。

国内の住宅ストック数は6,200万戸あると言われており、総世帯数5,400万世帯をはるかに上回っています。

住宅の性能が上がり、良質な中古住宅が増加していることもあり、1998年から2018年の20年間で住宅ストック数は1.5倍に増加したと言われています。

政府の方針もスクラップビルドから、空き家や中古住宅の活用へとシフトしており、住宅のリノベーションに対する補助事業が各自治体で増加しています。

② ウッドショックの影響

ウッドショックは、当初コロナ禍による移動制限や労働力の減少、巣ごもりによるアメリカの住宅需要の増加などが原因で発生しました。

輸入材の多くがアメリカに集まり、資材を運ぶためのコンテナの多くが中国~アメリカ間に集中し、運びたい物資が停滞してしまう状況が続きました。

コロナ禍が落ち着きを見せた現在でも材料調達が難しい状況は完全に改善したとは言えません。

また、気候の変動によって世界中で山火事が起きていることなど、輸入材の供給に対する不安は続いています。

③ 与信力の低下と資金繰りの悪化

上記のウッドショックや半導体の不足によって、予定通りに工事を進められず資金繰りが悪化してしまった事業者も数多くいます。

与信力が低い場合、資金があっても資材の発注を拒否されるケースもあります。

そうすると、工事がストップして工期が長引く→顧客に引渡しができないため、費用の請求ができない→顧客から入金がないので、既に発注している部材費を取引先へ支払いできない→ますます与信力が低下してしまう。といった悪循環が起こります。

資金的な問題によって、黒字倒産した事業者や廃業した事業者も多かくありました。

④ 利益の減少

物価の高騰によって、原価上昇分を売価に反映できなかった場合や、売価に反映したことで競争力が落ちてしまい廃業を決めたケースも多くありました。

⑤ 労働力の不足

建設業界の人材不足は、深刻な問題です。

職人の高齢化が進み、団塊世代の職人の大量離職時期も迫ってきています。

現場に配置が義務付けられている資格保持者の退職により、現場を動かせなくなってしまうケースも想定されます。

若い世代の人員を確保できても、育成にコストが掛けられず、離職してしまうことも多いです。

今のベテラン職人たちは「背中を見て学ぶ」スタイルで知識もスキルも蓄えてきた世代ですが、多くの情報に囲まれて育ってきた今の世代の若者には通用せず、丁寧な座学による研修や長期間のOJTが必要となるため、育成に時間が掛かってしまいます。

⑥ 後継者がいない

全国にはおよそ46万の建設業者がいますが、その約7割で現在の代表が引退後に「後継者がいない」とされています。

建設業は小規模で経営している場合も多く、自分の親族に無理やり継がせることなく事業を畳もうと考えている経営者も多くいるため、高い数値になっていると考えられます。

また、後継ぎの経営者候補が、現状の経営陣や従業員とうまくいかずに、これまでの経営陣の多くが離職してしまうなどのトラブルも起こりがちです。

建設業の許可を受けるには専任技術者と経営業務管理責任者の有資格者の在籍が必要となります。多くの場合、経営者本人が資格を保持しています。

これらの資格には、受験資格として、実務経験や専門課程の学歴が必要なため、今すぐに新しい人材へに取得させるのは難しいケースもあります。

廃業によって、これまで蓄積してきた技術が失われてしまうのは業界全体から見てももったいないと考えられます。

親族だけでなく社内外から次の経営者を登用することや、第3社へ事業を譲渡するM&Aなども検討してみるのもいいかもしれません。

廃業を決断するタイミング

廃業するにもそれなりの費用が必要です。

会社の体力がゼロやマイナスに転じる前に、下記のような理由で廃業を決断する経営者もいます。

① 現状の課題解決が難しく先細りが避けられない場合

会社の成長が止まったタイミングで、社内外の状況を判断して、自社の欠点や課題の解決が不可能な場合や、競合に勝てる見込みがない場合などがこのケースです。

② 新事業への転換を図る場合

現状の課題解決が難しく、新事業へ転換を決断した場合、そのステップの一つとして現在の事業を廃業する場合もあります。

廃業の手順とスケジュール

廃業を避けられない場合、社員や取引先企業、顧客に迷惑を掛けないような事前準備が重要です。

廃業する際のプロセスは「解散」と「清算」の2つに分けられます。

① 解散

解散とは法務局で解散登記して、法人格を消滅させることです。

会社法によって、解散事由は以下の7つが定められています。

  • 定款で定めた存続期間が満了したこと
  • 定款で定めた解散事由が発生した場合
  • 株主総会で決議された場合
  • 合併によって他の会社に急襲され、会社自体が消滅する場合
  • 破産手続の開始が決定した場合
  • 裁判所による解散命令が出た場合
  • 休眠会社のみなし解散の制度を利用する場合

② 清算

会社の法人格を消滅させるだけでは、資産や負債がそのままになってしまうため、これらを整理する手続きを「清算」といいます。

清算は、大きく「通常清算」と「特別清算」に分かれています。

(1) 通常清算

通常清算は、解散した会社に残っている資産が債務を上回っており、完済できる場合の清算方法です。

一般的に、会社から指名された清算人が、在庫や売掛金の監禁や回収を行い、債務がある場合はその資金で支払いを行います。

(2) 特別清算

特別清算とは、解散した会社の債務が資産を上回った債務超過に陥っており、残っている資産では債務を完済できない場合に利用する清算方法です。

◆廃業のスケジュール

廃業する場合のスケジュールは下記の通りです。

① 廃業日を決定する
② 株式会社の場合は株主総会で承認を得る
③ 2週間以内に解散登記と清算人登記を行う
④ 清算人が財産目録や賃貸対照表を作成し、承認を得る
⑤ 廃業届出をする
⑥ 解散広告を行う
⑦ 清算人が生産を行う

廃業を決定したら、社員への周知と顧客や取引先への説明が重要です。

その際、社員への補填や取引先へ迷惑を掛けないためのフォローが必要です。

できるだけ早い時期に報告、説明を行ってトラブルを防止しましょう。

顧客から受け取り済みの代金がある場合は、返金対応します。

可能であれば、顧客対応や工事の引き継ぎ先をみつけておけると安心です。

廃業した工務店のアフターサービスを継承するサービスもあるので、これまでのオーナーを守るために利用することも検討しましょう。

まとめ

工務店を廃業する際の手順やタイミング、廃業理由などについて解説しました。

これまでに建築したオーナーや建築中の顧客、商談中の顧客にとって、工務店の廃業は大きな不安を感じさせます。

何かあった時の対応方法や今後リフォームなどを希望した際の相談先など、早い時点で説明を徹底して、理解を求めることが重要であり、その後も安心して暮らしていけると感じられるフォローが必要です。

廃業を考えている際や廃業を決めた際の参考としていただければ幸いです。

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二級建築士/WEBディレクター 斉藤伸義

斉藤伸義 二級建築士/WEBディレクター

住宅業界で10年間従事し、地域NO,1ハウスビルダーにて注文住宅年間売上4億円を達成。 トップセールスマンとして累計200組以上の家づくりに携わる。その後WEBディレクターに転身。工務店・ハウスメーカーの自社オウンドメディア運用にて担当クライアントの集客アップ率100%を達成。その後独立し、集客に課題のある工務店のオウンドメディア改善サポートや経営者様の右腕として活動。

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