不動産会社が注文住宅に参入するには?住宅展示場を建てた事例

新築着工数は今後10年で半減程度に落ち込むと予想されています。そうした中で、本業が不動産の会社が名古屋市内に住宅展示場を建て、注文住宅の事業に乗り出しました。
新築を手掛けたことのない不動産会社でも、ターゲットを絞り込めば、新築に参入するメリットは明らかにあります。
私が関わっているこの会社は、ペルソナを細かく設定し、建売ではなく自社ブランドの注文住宅で勝負に出ました。
客層を絞り込んで取り組めば、新築が半減する時代でも数字は間違いなく取れると私は考えています。
本記事では、不動産会社が新築の注文住宅に参入するときに決めるペルソナ、事業の形、接客マニュアルについて、名古屋の事例をもとに解説します。
名古屋で住宅展示場を建てた不動産会社の新築参入
完成直前の住宅展示場で最終確認をした
私は2020年12月19日に、名古屋市内でこの不動産会社が建てている住宅展示場の現場に足を運びました。この不動産会社は試しに事業を始めたのではなく、大きな投資をして住宅展示場を作り、大々的に新築事業をスタートさせます。
私は春先からこのプロジェクトに関わっており、完成直前のこの日に、最終的な詰めや気になる点を指摘しました。私は普段、工務店やハウスメーカーの方に向けて記事を書いていますが、本記事は不動産専業の会社の方にも読んでいただきたいと考えています。
新築着工数が減る中で参入を決めた理由
新築着工数が減っていけば、大手ハウスメーカーはお互いに食い合って体力を消耗し、中には撤退に追い込まれる大手が出てもおかしくないと言われています。
そのような状況で、新築を一度もやったことのない不動産会社が新築に乗り出すには、確かに勇気がいります。
それでもこの不動産会社は、自信を持って参入しています。
新築を手がけたことのない不動産会社が抱えやすい、営業の採用と教育や契約後のトラブルといった悩みは、不動産会社の注文住宅事業への参入で解説しています。
このプロジェクトはまだ始まっていないので、成功するかどうかは未知数です。しかし、プロジェクトに関わっている私から見ると、この不動産会社は失敗する要因を一つずつ排除しながら話を進めているので、成功する確率が日々100%に近づいていると肌で感じています。
東日本大震災級の災害やリーマンショック級の経済の大変動が起きれば、事情は変わってきます。
第三国からのミサイルが日本国内に着弾するような戦争状態になれば、計画は大きく狂うでしょう。
それでも常識的な範囲で考えれば、この不動産会社はペルソナを細かく設定しているので、私もかなり安心して客観的に見ていられます。
不動産会社の新築参入は注文住宅のペルソナ設定から
ペルソナとターゲットの違い
ペルソナ(persona)とは、商品やサービスの典型的な消費者像のことです。住宅会社がペルソナを作るときは、その人物が実在しているかのように、性別や年齢はもちろん、出身地、住所、職業、年収、趣味、価値観、家族構成、休日の過ごし方まで事細かに人物像を決めます。
似た言葉にターゲットがありますが、ターゲットはペルソナに比べて設定の基準がゆるい言葉です。たとえば「東京在住、40代、女性、パートタイマー」くらいの設定をすることが、ターゲットの選定に当たります。
ペルソナから住宅展示場の家具の色や接客スタイルを決める
住宅会社は、新築住宅を契約してくれそうなお客さんの人物像を、ペルソナとして細かく設定します。そのうえで、どのような住宅展示場にするのか、室内の家具の色をどうするのか、接客をラフな感じでいくのか、ホテルマンのようにかしこまったスタイルにするのかを決めていきます。
ペルソナだけで受注が取れるわけではありませんが、ペルソナを細かく設定していくことが、新築参入を成功させる近道になります。
注文住宅か建売か、不動産会社が新築事業の形を選ぶ
不動産会社を経営していれば、私もこの選択では迷うと思います。不動産会社がまず思い浮かべるのは、それなりにまとまった土地を仕入れて3分割、4分割にし、建売として販売するやり方でしょう。
しかし、名古屋の不動産会社はこのやり方を選ばず、純粋に注文住宅で新築事業に参入しました。どちらがよいかは一概に言えませんが、私が不動産会社の経営者であれば、注文住宅で勝負をします。
建売住宅は、良い場所さえ確保できればそれなりに売れます。
その反面、土地の仕入れが順調なうちはうまくいくものの、仕入れのルートが途絶えてしまうと、建売を販売する会社は数字を伸ばせません。
建売を選ぶと間取りもごく一般的なものになり、内装に贅を尽くすことも、極端に特殊な仕様にすることもできません。
価格もそこそこに抑えざるを得ないので、家づくりという観点からは面白みがありません。
建売を選んだ場合に、条件の厳しい物件を売るための調査と提案は建売住宅の販売方法で解説しています。
フランチャイズ加盟と自社ブランドで変わる新築参入の進め方
アイフルホームに見るフランチャイズ加盟の強み
1990年代に急伸したアイフルホームは、一気にシェアを拡大し、日本全国に網を張り巡らせました。その後もさまざまな住宅フランチャイズが雨後の竹の子のように乱立していますが、加盟するフランチャイズの選択さえ間違えなければ、成功する確率は高いと私は考えています。
架空の話として、コテコテの和風住宅にこだわったフランチャイズがあるとします。
加盟した会社がペルソナを決め、出展する住宅展示場の場所も周辺を入念にリサーチしたうえで選んだとしましょう。
その地域には競合する会社もあまりないはずですし、昔ながらの地場工務店が複数あったとしても、フランチャイズはさまざまな情報やノウハウを持っているので、加盟した会社が地場工務店に勝つ可能性は極めて高くなります。
出展地の周辺を調べる方法は住宅営業の探客方法で解説しています。
フランチャイズを食わず嫌いしている不動産会社でも、フランチャイズ本部の話を聞いて損はありません。現状の住宅業界がどうなっているのか、戦略をどう立てるのかを聞くだけでも、不動産会社にとって大きな収穫があります。
名古屋の不動産会社が選んだ自社ブランド
私は住宅業界の出身なので、このような発想になることはご容赦いただきたいのですが、できれば自社ブランドを創り出して勝負に出たいという夢は捨てきれません。ペルソナを決め込み、他にはない自社独自の住宅を作って世の中に供給するやり方です。
名古屋の不動産会社もまさにこのやり方で、既存のフランチャイズに加盟せず、ポリシーや独自色を前面に押し出した住宅を作り、住宅展示場の出展にこぎつけました。
不動産会社にとっては、どこから手を付けたらいいのか分からないかもしれません。
フランチャイズに加盟すれば、加盟した会社は本部の色に自分たちを合わせることになりますが、自社ブランドを作れば、そのブランドに関心を持つお客さんを引き寄せられます。
自社ブランドで新築を始める会社が、少ない実績でも完成保証制度や財務、デザインでお客さんの信頼を得る方法は、工務店の経営課題と信用を得る方法で解説しています。
住宅展示場の接客マニュアルを作って訓練する
マニュアルと聞くと、「マニュアルどおりの接客になるわけがない」と考える方もいます。しかし、私がここで言う住宅展示場のマニュアルは、接客の決まり文句を並べたものではありません。
住宅展示場マニュアルに入れる4つの項目
- 住宅展示場で使っている設備のメーカー名や品番を整理し、答えられるようにしておく
- 「天井の高さは2m60cmあります」といった簡単な説明トークを、可能な限り作る
- 「弊社の住宅づくりの理念は〇〇」と自信を持ってアピールできる内容を作る
- 「キッチンでの困りごとは何ですか?」のように、場所ごとにお客さんへ問いかける定番トークを可能な限り作る
マニュアルに入れる内容はこのほかにもありますが、住宅会社はさまざまな角度から考えたマニュアルを作成し、住宅展示場のオープンまでに営業社員を訓練してください。住宅営業の経験者であればまだ何とかこなせますが、不動産専業でやってきた会社にとって、マニュアルは欠かせません。
ペルソナに合わせた内装や、オープン後まで続ける接客マニュアルの準備は、単独住宅展示場を成功させる準備で解説しています。
不動産部門の営業社員を半年かけて訓練した
名古屋の不動産会社には新築住宅の販売経験者がいなかったので、他の部門の営業社員が新築部門に異動してきました。異動してきた営業社員には住宅営業の知識がなく、訓練を始めた当初は右往左往しましたが、半年かけていろいろな訓練を重ねた結果、一通りの知識を身につけました。
ただし、実際の接客は訓練とは全く別物です。そのため、住宅展示場のグランドオープン当初は、私が張り付いて後ろから接客を見ることになっています。
まとめ
不動産会社が新築の注文住宅に参入するには、フランチャイズに加盟するか、明確なペルソナを決めたうえで自社ブランドを作るかのどちらかを選びます。名古屋の不動産会社は、建売ではなく注文住宅を選び、自社ブランドで住宅展示場の出展にこぎつけました。
フランチャイズに加盟した場合は、本部のさまざまなマニュアルに準拠して準備を進めてください。自社単独で動く場合は、設備の品番、説明トーク、住宅づくりの理念、お客さんへの問いかけをまとめたマニュアルを作り、オープンまでに営業社員を訓練してください。
ぜひ本記事の名古屋の不動産会社の事例を参考に、自社が新築事業で狙うお客さんのペルソナを書き出すところから始めてください。



