間取りが決まらない客への対応|住宅営業の体験談と見極め方3つ

プランを3回出し直し、見積もりも3回作ったのに、お客さんは「もう少し考えさせてください」と言ったまま連絡をくれません。住宅営業をしていれば、誰でも一度はこの経験をします。
間取りが決まらない客は、慎重に悩んでいる人、要望が毎回変わる人、最初から契約する気がない人の3タイプに分かれ、どのタイプかで打つ手が変わります。私の積水ハウス時代の経験でも、コンサル先で毎月のように起きる「なぜ決めてくれなかったのか」という案件でも、見極めが遅れるほどプランの出し直しが7回、8回と増えていきました。
本記事では、実際にあった3つの体験談をもとに、間取りが決まらない客の見極め方と、住宅営業としての対応方法を解説します。
間取りが決まらない客は3タイプに分かれる
一生に一度の買い物で、30年という長いローンを組むわけですから、なかなか決めきれない気持ちはよく分かります。
慎重になるのも、悩むのも当然です。
それでも住宅営業の立場からすると、「もうそろそろ決めてもいいんじゃないの……」と腹の中ではつい思ってしまうものです。
決まらないお客さんを一くくりにすると、対応を間違えます。私がこれまで見てきた案件は、次の3タイプに分かれました。
| タイプ | よくある言動 | 営業の対応 |
|---|---|---|
| 慎重に悩んでいる | 何年もメーカーを探している、「高い買い物だから」と繰り返す | 押さずに比較材料を出し、期限を一緒に決める |
| 要望が毎回変わる | プランを出すたびに新しい要望が出る、前回の要望を取り消す | 初回ヒアリングで優先順位を確定させ、変更の回数に上限を設ける |
| 契約する気がない | プランにけちをつけ続ける、上から目線で営業を試す | 早めに見切り、折衝を打ち切る |
以下、それぞれのタイプについて、実際にあった話を紹介します。
8年間決められなかった客の体験談(積水ハウス時代)
最初は私自身の経験です。入社3年目、住宅営業の経験も十分に積んだ頃でしたので、展示場の初回接客で「これはあかんな……」とピンときたお客さんでした。
ご夫婦そろって品の良い方でしたが、奥さんが開口一番こう言ったのです。
「もう8年間もあれやこれやとメーカーを探しているんですよ~あははは」
これはダメだと思いました(笑)。8年間メーカーを決められなかった人が、ここで簡単に決めるとは到底考えられません。
押さない接客が逆に気に入られた
そう確信した私は、熱のこもらない薄い接客を続けました。アポを取る気もなく、要望されれば図面でも何でも出しますというスタンスで通したのです。
ところが、それがお客さんには心地よい接客だったようです。
「〇〇ハウスさんは結構しつこく来たのに、いろんな営業さんがいらっしゃるのね」と私に好印象を持ってくれました。
それでもアポを取りにいかない私に業を煮やしたのか、「図面とか見積もりを出してもらうことはできるのかしら?」と逆に追い詰められてしまいました。
図面と見積もりを3回出しても決まらなかった
要望があれば仕方がありません。結果的にはプラン修正も含め、図面と見積もりを3回出しました。
図面を出すときに、お客さんが興味を持っていることと困っていることに絞った図面を1枚加える方法は、住宅営業のプレゼンのコツで解説しています。
私「これで3回目の図面になりますが、もう修正点は特にないと思います。いかがでしょうか、これで積水ハウスにお決め願えないでしょうか」
奥様「そうね、でも高い買い物ですからなかなか簡単には決められませんよね。もう少し検討させてもらっていいでしょうか。私から後日お電話いたします」
この後はご想像どおりで、お客さんからの連絡は一切ありませんでした。
普段なら上司から「電話して様子を伺え」と言われるところですが、事前に事情を話していたので、当時の上司は何も言いませんでした。
私も普段なら連絡して様子を探りますが、このときは一切動きませんでした。
慎重型のお客さんは、押すほど逃げます。
かといって待つだけでは何年でも決まりません。
比較材料を出し尽くしたら、「いつまでに決めたいか」をお客さんと一緒に決めておくべきだったと、今なら思います。
要望が毎回変わった車椅子のSさん(札幌のコンサル先)
次はコンサル先で実際にあった話です。札幌の展示場にご夫婦で来場したお客さんで、ご主人は交通事故で車椅子の生活になった方でした。
応対したのは入社2年目の女性営業です。
私もそのとき事務所に顔を出していたので、つかず離れずで接客の様子を柱の陰から聞いていました。
営業の接客もうまく、折衝は90分ほど続いて実に和やかなムードでした。
すんなりプラン提案まで話が進み、今月の契約見込みに上げてもいいと私も正直感じたほどです。
終わった後、彼女に「いいお客さんだったじゃん、今日はラッキーだね」と声をかけました。
ところが結果的に、プランを7回から8回出しても決まらず、そのままフェードアウトしてしまいました。

家相が気に入らないと最初のプランを差し戻された
Sさんが決まらなかったのは、要望をすべて聞き取ってプランを出しても、そのたびに新しい要望が飛び出したからです。
1回目のプランの後には「家相が気に入らない」と突然の変更依頼がありました。
営業は会社に持ち帰って設計と相談し、家相の問題点を9割がた回避したプランを出しましたが、この段階でプランには少し無理がある形になっていました。
「絶対に外せない」二間続きの和室を取り消した
家相にほぼ満足したSさんは、今度は純粋な心変わりを見せます。
「二間続きの和室がいいと言ったけど、やっぱり一間で十分だよね」
営業に確認すると、当初のヒアリングでは8帖の和室が二間、しかも続き間であることは絶対に外せないと言われていたそうです。
「本当にお客さんがそうはっきり言ったの?」と聞き込みましたが、彼女は「私が聞いたというより、お客さんから念押しされるように何回も言われたんです」と自信を持って答えました。
折衝の場面を見たわけではないので断定はできませんが、同じような調子で次から次へと修正が入ったことから、営業の言っていることは正しいと私は判断しました。
最後は玄関の向きを真逆にしてほしいと言い出した
究極の変更は、西玄関を真逆の東玄関に変えてほしいという要望でした。そして最後はSさんから「しばらくしたら連絡をします」との申し出があり、そのまま音沙汰がなくなりました。
要望が毎回変わるタイプは、初回のヒアリングで優先順位を決め切れていないことが原因です。何を最優先にするのかをお客さん自身の言葉で確定させないまま、プランづくりに進んでしまったことが、7〜8回の出し直しにつながりました。
初回ヒアリングで要望に優先順位をつけてもらう進め方は、土地提案の場面を例に住宅営業の土地提案の進め方で解説しています。
プランにけちをつけ続ける「ハウスメーカーの嫌な客」
最後は、あえて愉快犯と断定させていただきます。
これもコンサル先の話ですが、かなり悪質でした。
最初から建築請負契約をする気など、さらさらなかったと私は思っています。
若手営業が担当したお客さんで、プランを出すたびにけちをつけてきました。
3回目の折衝は展示場で行ったので、私も少し離れたところで聞いていました。
このお客さんは謎の上から目線で、次のような言葉を次から次へと営業に浴びせかけるのです。
「ここっておかしくない?」「こんな間取り普通取らないでしょ」「アフターサービスだけど、実際にクレーム出したら対応してくれないんじゃないの」「掲示板でおたくの悪口書いてあったけど大丈夫、あんなことで」
文章では空気感が伝わりませんが、少し甲高い声で、営業をばかにしたようにまくし立てる話し方でした。私であれば「この人はお客さんではない」と判断して、そこで折衝を打ち切るレベルです。
展示場に来るお客さんの100%近くは、ちゃんとしたお客さんだと思って接する必要があります。
決めきれないお客さんがいるのも仕方がありません。
しかし、ごくまれに、最初から契約する気がなく、退屈しのぎで住宅会社に間取りを出させたり見積もりを取ったりする悪質な人がいるのも事実です。
一般客を装って複数のハウスメーカーに図面と見積もりを出させた実例と、図面を出す前の確認手順は、図面を盗む客の手口で解説しています。
間取りが決まらない客への対応方法
3つの体験談から、住宅営業が取れる手は次のとおりです。
初回ヒアリングで要望の優先順位を3つに絞ってもらう
Sさんのケースは、和室や玄関の向きといった要望が、どれも同じ重さで並んでいたことが原因でした。
初回か2回目の打ち合わせで「絶対に外せないものを3つ選ぶとしたら何ですか」と聞き、お客さん自身に書き出してもらうと、後から要望が入れ替わりにくくなります。
聞き方は住宅営業のヒアリングのコツで解説しています。
プランの出し直しの回数と期限を先に決める
出し直しの回数に上限がないと、慎重型も要望変更型も際限なく続きます。「プランの修正は3回までで、〇月までに方向を決めましょう」と最初に伝えておくと、お客さんも決める前提で打ち合わせに臨むようになります。
フリープランの出し直しを重ねる代わりに、希望に近い企画プランを番号で示す方法は、企画プランの勧め方で解説しています。
契約する気がない客を見切る基準を社内で共有する
若手営業ほど、どんなお客さんにも全力で応えようとします。プランを否定するだけで要望を出さない、競合の悪口や掲示板の話ばかりする、といった状態が2回続いたら上司に相談する、といった基準を社内で決めておくと、営業が一人で抱え込まずに済みます。
よくある質問
間取りが決まらない客にプランは何回まで出すべきですか?
決まった回数はありませんが、修正は3回までと最初に伝えておくと、お客さんも決める前提で打ち合わせに臨みます。本記事の事例では、上限を決めずに7〜8回出し直した案件が最終的に決まりませんでした。
なかなか決めてくれない客への連絡はどうすればいいですか?
慎重型のお客さんには、催促ではなく比較材料や新しい情報を届ける連絡にします。「いつまでに決めたいか」を一緒に決めておくと、連絡するきっかけも作りやすくなります。
契約する気のない客はどう見分けますか?
プランを否定するだけで自分の要望を出さない、他社や掲示板の悪口ばかり持ち出す、といった言動が続く場合は注意が必要です。営業一人で判断せず、上司と一緒に見極めると判断を誤りにくくなります。
間取りが決まらないのは営業の責任ですか?
すべてが営業の責任ではありません。
ただ、要望の優先順位を初回で確定させていない場合は、営業側の進め方にも原因があります。
ヒアリングの段階で何を最優先にするかを決めておくことが、出し直しを減らすいちばんの近道です。
まとめ
間取りが決まらない客は、慎重に悩んでいる人、要望が毎回変わる人、最初から契約する気がない人の3タイプに分かれます。8年間メーカーを決められなかった夫婦にも、要望を出し続けたSさんにも、プランにけちをつけ続けた客にも、それぞれ違う打ち手がありました。
初回ヒアリングで優先順位を3つに絞ること、プランの出し直しの回数と期限を先に決めること、見切る基準を社内で共有しておくことは、どれも次の商談から始められます。
ぜひ本記事の3つの体験談を参考に、いま決まらずにいる案件がどのタイプに当たるかを見直してください。



