新築着工棟数が2021年には79万戸でしたが、2040年には40万戸になると言われています。
中小零細工務店にとって、受注を獲得していくことがますます困難な時代になっていく中で、堅実に伸ばしている工務店も存在します。
それは、一朝一夕ではつくれない自社のブランディング化に成功した工務店になります。
ブランディングとは、自社のブランドに商品や自社に対する愛着をもつ人を増やすことです。
わかりやすく言い換えるならば「自社らしさを認知させる」施策となります。
人間におけるその人らしさには、個人のオリジナリティや終始一貫した本来の姿、そこに至ったその人が歩んできた背景が含まれています。
自社らしさを確立するためにも、ブランディングには一貫性と継続しつづけることが最も重要です。
そこで今回、ブランディングを行うことでそれを感じた人へどういった効果が期待できるかについて解説します。
ブランディングは誰に向けて行うのか
ブランディングは顧客に向けられる「アウターブランディング」と社内に向けられる「インナーブランディング」に分けられます。
それぞれを連動させると相乗効果を発揮します。
アウターブランディングの対象者には住宅を検討する顧客だけでなく、求職活動中の人材も含まれます。
ブランディングがもたらす効果
アウターブランディングとインナーブランディング、それぞれのブランディングがもたらすことを期待できる効果について解説します。
アウターブランディング・・・安心感や親しみ、憧れといったプラスの感情を持たせる
アウターブランディングでは、自社から発信している顧客に伝えたいイメージ=顧客が持っている自社や自社商品へのイメージのように、伝えたいブランディングがそのまま顧客へ届き、一致させることができれば成功といえます。
ブランディングによって、ファン化に成功した顧客には下記のようなメリットがあります。
・「憧れの家を手に入れたい」と家づくりに対するモチベーションがあがる
・家族で同じ家のイメージを持って、話し合うことができる
・家づくりに対する情報収集の手間を省くことができる
・社名や商品、ブランドの理念を知っていることで安心感を得られる
・何社も打合せする手間を省いて落ち着いて商談が進められる
・自社の商品を手に入れられることに対して幸せを感じられる
・「この家が欲しい」こと自体が、住まいづくりスタートのきっかけとなる
・商品の強みや特徴に価値を感じることができるので価格で決めるよりも満足度が高い
・想像していた通りの生活スタイルを手に入れることが可能
インナーブランディング・・・社内の士気を高めることができる
事業を成長させるために社内に向けたインナーブランディングは不可欠です。
インナーブランディングでは根本的な企業理念を共有することや、今後の展望について同じビジョンを見ることを目指します。
企業の理念をどのように商品やサービスに落とし込んでいくか、どのようにしたら社員全員が同じ意識を共有することができるかを筋道立てて考えることが必要です。
実施施策として、会社のなりたちや創業秘話についての研修を実施したり、経営陣や社員のインタビューを社内報で掲載してそれぞれのビジョンを再確認することは有効な手段と考えられます。
社員へのインナーブランディング浸透による効果は下記のことが考えられます。
・部署に関わらず、目指すべき方向や目標に対して同じ意識を持っていると、業務上の判断基準や優先順位がおのずと統一され部署間の摩擦を減らすことができる
・全員が同じ方向を見て取り組めるので、士気が上がる。
・社員それぞれが自分のやっている仕事の「意味」を理解できるので、モチベーションと作業効率が上がる
・自社のビジョンを理解して、その中で担う役割や目指すべき姿がわかるので、自分の目標が見つけやすく、働く上での満足感が向上する
・自分にしかできない役割を見つけられることで、自己肯定感が上がり離職率も下がる
・自社の目標に共感を持つことができ、ブランディングがブレずに自社商品やサービス内容に反映されていれば、商品やサービスに愛着が持てる。
・自社商品に対する理解や愛着が深まっていれば、顧客に対して心からアピールすることが可能となる。社員自身が愛着を持っている商品のアピールは、顧客の心にまっすぐに届けることができる。その結果インナーブランディングはアウターブランディングへつなげることが可能
新規採用や人材確保に与える効果
優秀な人材の確保は、企業の成長に欠かせないものです。
しかし近年、少子化の影響もあり、人材不足が続いています。
そのため求職者向けに自社の魅力を伝える施策である「採用ブランディング」を行う会社も増えてきていますが、顧客へのブランディングが浸透している場合、新たな取り組みを必要としません。
一貫したブランディングを持つ会社は求職活動を行っている人材にとって下記のような効果を与えることができます。
・認知度が高い会社は社名を聞いたことがない会社に比べて安心感がある
・どういった人材を必要としているのかわかる
・どういった価値観を持っている会社なのかわかる
・そこで働いている自分を想像することができる
・自分の将来のビジョンと会社の方向性がマッチしているか判断することができる
・同業他社との違いが理解できると本来の意味での「志望動機」を自覚できる
・会社のブランディング自体が志望動機となり、「この会社で働きたい」と熱意が持てる
・先輩社員のインタビューを見た時に、憧れを持つことができる
就職希望者や採用担当者へブランディングが浸透していると、自社にとっても大きなメリットがあります。
・採用担当者が自信をもって自社の強みや求める人材をアピールできる
・採用広告にコストを掛けなくても、自社のWEBサイトの求人ページからのアプローチが見込める
・「とりあえず応募」を減らし、意欲を持った人材に絞って選考を行えるため、不要な面接に関するコストを減らせる
・「ここで働きたい」意欲が高まっているため、採用後の内定辞退を防ぐことができる
・入社してからのギャップが少なく、定着率を高められる
・インナーブランディングにより、士気の高い社員、共通の認識をもっている社員に迎えられるので新たな人材もモチベーションを落とすことなく働くことができる
自社らしさを広めて、地域の認知度や信頼を獲得するための取り組み
ブランディングには様々な施策がありますが、工務店にとっては、地元住民への認知を広げる施策が最優先です。
地元で家を建てようと考えた時に思い起こすことのできる会社、家を検討していると聞いた時に、ぱっと会話に出てくる会社を目指しましょう。
地元住民にとって身近に感じられたり、地元に溶け込んでいくためには、警戒心を解く必要があります。
そのためには“街の中でよく見かける会社の人“や”訪れたことのある会社“となることが近道です。
警戒心が減ってくると、社員を見かけたり、会社を訪れた時に、家づくりについて気になっていることについて、気軽に「ちょっと聞いてみようかな?」と思われるようになることも可能です。
そういった関係性を継続することで信頼を重ねて、家づくりスタート時に相談したい一番手となるための方策は大手のハウスメーカーにとっては不可能です。
まずは「小さなことコツコツと」が重要です。
具体例として考えられるのは下記のような内容です。
・店舗回りの清掃に取り組む
・地元のイベントやお祭りに出店したり参加したりを住民たちと共に楽しむ
・気軽に、会社に訪れることのできる仕掛けをつくる
・平日、使っていない打合せスペースを子育て世代へのスペースとして開放する
・木造住宅であれば、木をつかった遊び場をつくり一般に開放する
・家づくり関連の体験会を実施する
上記の中で、すぐに取り組めそうなものがいくつかあるかと思います。
まずは初めて見ることが大事になりますので、検討してみてはいかがでしょうか。
ニッチなニーズ対応や地元特有のニーズを読み取り、地域NO1を目指す
住まいづくりに対するニーズは顧客により様々です。
大手では力を入れることが難しいニッチなニーズが存在します。
自社の展開する地域ならではのニーズや、少数の顧客の持つニッチなニーズに特化したコンセプトプランを開発することも効果的です。
地域ならではの特性をうまくつかむことができれば、広告宣伝に頼らなくても、口コミや紹介で認知を広げていくことができます。
具体例として考えられるのは下記のような内容です。
・狭小地といえば、、、
・土地の高低差を上手に生かす家づくりといえば、、、
・屋上庭園といえば、、、
・中庭のある家といえば、、、
・本格的なホームシアターについて相談できる建設会社といえば、、、
・ミニマリストのための家といえば、、、
・ホビールームを作るなら、、、
あえて、大手ハウスメーカーが狙わない市場やニッチな市場を狙うことで、自社の強みや尖りをつくることができます。
「ここだけはどこにも負けない 」というニッチな強みをつくることが重要です。
まとめ
ブランディングによって、社員や顧客、求職者に与えられる効果についてと、工務店がブランディングによって「自社らしさ」を地元住民へ広めるための取り組みについて解説しました。
ブランディングに与える影響は、顧客のファン化、競合排除、利益確保、長期的な経営の安定、社員のモチベ―ション維持、人材確保、離職率低下とプラス要素となって自社へ還元されます。
すぐに効果が出ることは期待できませんが、長期的な視点を持ってはじめましょう。
また、地元へ溶け込んで生活に入り込む取り組みは、大手ハウスメーカーに真似することが難しく、大きな武器とすることができます。
ブランディング施策を検討する際の参考としていただければ幸いです。