工務店のブランディングは強み探しから|コンサル現場の3事例

地域密着の不動産会社を母体に持ちながら、ホームページには「不動産部があるのでさまざまな土地をご紹介できます」と一行だけ書き、接客でも「もともと不動産会社ですので情報がたくさんありますよ」で説明を終えてしまう工務店があります。
工務店のブランディングは、外から見れば簡単に分かる自社の強みと弱みに、社長や社員が気づくところから始まります。不動産の実績を伝えきれない工務店も、本物の木にこだわるあまり若い世代が求めるデザインを軽視する大工さんも、自社のことに気づいていない点は同じです。
本記事では、私がコンサル現場で見た3つの事例をもとに、工務店のブランディングで強みを伝える方法と弱みを直す方法を解説します。
工務店のブランディングで最初に確かめる「強み」と「弱み」
「あなたは自社の強みに気づいていません」というフレーズはよく聞かれます。よく聞かれるのにはそれなりの理由があり、これだけあちこちで指摘されながらも、なかなか治らない病とも言えます。
私がコンサルで関わる工務店は比較的小規模な会社が多いのですが、外野の私が見れば簡単に気づくことに、社長や社員が気づいていないケースが多々あります。気づいていない中身は強みと弱みの2つに分かれ、私が見てきた事例は次の3つでした。
| タイプ | 事例 | 起きていたこと |
|---|---|---|
| 強みに気づいていない | 不動産会社が母体のA工務店 | 30年の地域密着の不動産実績を、ホームページでも営業トークでも控えめにしか伝えない |
| 弱みに気づいていない | 一人親方のB工務店 | 本物の木をアピールする一方で、お客さんが求めるデザインを軽視している |
| 弱みに気づいていない | 集落で代々続く田舎の大工さん | 外観も屋根の形も色も窓の位置も似通った家を建て続けている |
工務店の経営者や社員の方は、自社がどれかに当てはまらないか、照らし合わせながら読んでみてください。
強みを打ち出すブランディングが集客の安定にどうつながるかは、工務店の集客とブランディングで解説しています。
強みを伝えきれていない工務店のブランディング事例(不動産会社が母体のA工務店)
不動産会社が母体の工務店は、私の体感ではかなり多い気がしてなりません。
ある県で30年にわたって地域密着の不動産会社を展開している会社が、満を持して新規事業として注文住宅事業に乗り出しました。
この会社が立ち上げたA工務店は展示場を作り、さまざまな場面で新規のお客さんを接客して、建築請負契約を目指すことになりました。
A工務店は最初の1年間で100組を軽く超えるお客さんと折衝しました。そのうち70%程度の方は土地を所有しておらず、建築業者を決める前に土地を探さなくてはいけない状況でした。
30年の地域密着を伝える土地探しの会話
一般的なハウスメーカーや住宅会社であれば、このようなニーズをとらえて「ご希望に合った土地を探して、好条件の物件があればご連絡させていただきます」と折衝を進めます。
しかしA工務店は、母体の不動産会社が30年も地域密着で営業してきた会社です。
私であれば、お客さんと次のように会話を進めます。
私「土地は既にお持ちですか?もしくはこれから探されるのでしょうか?」
客「土地がないので一年前ほどからいろいろ回って必死になって探している状況です」
私「ご希望の地区とかありますか?」
客「名古屋市昭和区の川原小学校の学区内で探しているのですが」
私「あそこはなかなか土地が出ないのですよね。一般的な情報として流れる前に抑えられてしまうような人気地区になりますから」
客「そうらしいですね。私のような素人が普通に回っていても、状況は絶望的ですから」
私「弊社はこの地区で30年間不動産事業を営んでいるのですが、新しく出る土地の情報が他社よりも圧倒的に早く入手できるのに加えて、地主さんから相続などを含めた問題で土地の売買を直接依頼されることもよくあるのですよ」
このような流れになれば、お客さんは「この会社から情報をもらえば、良い土地を手に入れられるに違いない」と考えるのではないでしょうか。
不動産部の紹介が一行で終わるホームページ
私は、この強みがホームページでほとんど伝わっていない点を懸念しています。
A工務店のように30年の不動産実績があるのなら、住宅会社はそれをホームページで強烈にアピールすべきです。
ところが実際のホームページは、ごく控えめな内容にとどまっていることが少なくありません。
極端な例では、「不動産部があるのでさまざまな土地をご紹介できます」の一行で終わっている会社すらあります。
土地の情報を何も持たない住宅会社でも、このくらいのことは書きます。
それどころか、「弊社独自のルートを通じて他社にはない土地を皆様にご提供いたします!」と大ぼらを吹く住宅会社もあるでしょう。
実力も情報も歴史もありながら控えめなアピールしかしないのは、考えられないような機会損失だと私は考えます。
不動産会社が母体の工務店に勤めている方は、自社のホームページをもう一度見直してください。
お客さんの記憶に残らない控えめな営業トーク
接客の現場でも、ホームページと同じことが起きています。
不動産会社という強力な武器を持ちながら、営業社員の説明が「弊社はもともと不動産会社ですので、不動産の情報がたくさんありますよ……」で終わっているのです。
営業社員の言っていることは間違っていませんが、これではお客さんの記憶にまったく残りません。
営業社員は、もっと強く激しくアピールすべきです。控えめなホームページと控えめな営業トークは、どちらも私が営業現場でよく見る光景です。
デザインを軽視する大工さんの事例(一人親方のB工務店)

もう一つは、一人親方の大工さんが営むB工務店の事例です。昔ながらの大工さんによくあるケースで、B工務店の大工さんは住宅のデザインを極端に軽視していました。
「これは本物の桜の木を使っているんだ」
大工さんの言うこと自体は間違っていませんが、お客さんのニーズとかけ離れていることに、大工さん本人が気づいていません。木を知り尽くした大工さんは木への思いが強く、どうしてもこのような言葉を口にしますが、この話に共感するお客さんがどれだけいるのかを考えてみてください。
いくら立派な木を使い、五寸の床柱を備えた家を提案しても、お客さんが望んでいるのがおしゃれなデザインなら、大工さんの提案はまったくの空振りに終わります。お客さんは素晴らしい木材を使うことに反対はしませんが、「私のポイントはそこではありません」となります。
若い世代に受け入れられない玄関の建具
私は、この大工さんが建てた新築住宅の室内写真を横目で見ながら、この原稿を書いています。
玄関からリビングに入る建具一つとっても、若い方が受け入れるものとは程遠いデザインです。
写真を掲載できないのが歯がゆいのですが、この建具を見れば、ほとんどの方が「さすがにこのデザインは無いよな……」と口にするでしょう。
それでも大工さんにとっては、これが大工の矜持(きょうじ)です。
30代の夫婦10組のうち何組が共鳴するか
誤解しないでいただきたいのですが、私は木の良さをアピールすることがダメだとは一言も言っていません。
お客さんがそれを望み、共鳴するのであれば、工務店はこの方向で行くべきです。
B工務店の事例は、大工さんの思い込みや固定観念の怖さを示しています。
30代の若い夫婦が10組いたとします。
半分にあたる5組の夫婦が大工さんの考えに共鳴するのであれば、大工さんはこの路線を突っ走るべきです。
しかし現実には、半数もいるとは到底思えません。
大工さんが自分の好きなようにやりたいのなら、貫けばいいと私は思います。ただ、工務店を存続させていくつもりなら、大工としての矜持に加えて、不足しているデザイン性を早急に高める努力が欠かせません。
施主がデザインへの不信感から父親の旧友の大工をやめ、地場ビルダーを選んだ経緯は、工務店が選ばれない理由で解説しています。
同じ外観の家が並ぶ集落の大工さんと、ブランドを変え始めた息子さん
このコラムを読んでいる工務店の方は、デザイン性について一定の基準をクリアしている方がほとんどだと私は考えています。こうしたウェブ記事に目を通す方は新しいものを常に追い求めていて、そのあたりの感覚が研ぎ澄まされている方が多いからです。
私は仕事柄、そうした工務店の方々とやり取りする一方で、コテコテの大工さんともそれなりの接点を持っています。
B工務店の事例も、コテコテの大工さんの話だと思ってください。
野暮ったいデザインは、工務店にとって命取りになります。
外観も屋根も窓の位置も同じ家を建てる田舎の大工さん
B工務店とは別の、ある田舎の大工さんの話です。
地方に行くと、同じ集落に外観がほぼ同じ一般住宅が並んで建っているのを見かけることがあります。
外観も屋根伏せの形状も色も同じで、窓の位置までほぼ似通っています。
私も地方での住宅営業の経験があるので、田舎に建っている家を見ながら、いつも不思議だなと思っていました。これらの家は、その地区で代々大工を営んでいる方が建てたものです。
昔であれば、建てる側も納得していたので問題はありませんでした。
しかし若い世代になると、「あれは勘弁してくれよ」となります。
親の力が強かったり、親がお金を出したりすると、子どもの世代は親に文句を言えずに泣く泣く建ててしまうケースもありますが、大工さんにはこうした問題にいち早く気づいてほしいと私は思います。
外観は親を継ぎ、中身を近代的にした息子さん
私はこの大工さんを以前から知っていますが、後を継いだ息子さんはかなりの危機意識を持っています。息子さんは、外観こそ親のテイストを踏襲したものの、中身には近代的なセンスを取り入れ、親の世代との隔絶を宣言しました。
代替わりしたばかりなので、この先の成り行きは未知数です。それでも息子さんは、デザイン性の重要性を強く感じています。
代替わりを機に打ち出した自社らしさを社内外に広げる方法は、自社らしさを浸透させるブランディングで解説しています。
工務店ブランディングで強みと弱みを洗い出す手順
強みを営業トークとホームページの同じ言葉で伝える
強みは、私が示した会話例のように、年数や地域、他社にできないことを具体的に入れた言葉にし、営業社員の接客トークとホームページの両方で伝えます。ホームページ以外での発信の方法は、ハウスメーカー・工務店のSNS集客で解説しています。
弱みは狙うお客さんの反応で確かめる
デザインの弱みは、作り手の側からは見えにくいものです。地域にどんなお客さんがいるかを調べる方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。
まとめ
不動産会社が母体の工務店は不動産の実績を伝えきれず、B工務店と田舎の大工さんはお客さんが求めるデザインとのずれに気づいていませんでした。強みに気づいていない工務店と、弱みに気づいていない工務店のどちらも、外から見れば簡単に分かることを社内の人が見落としていました。
このコラムを読んでいる方の会社には当てはまらないケースだと思いながら書きましたが、コンサルティングの現場ではちょくちょく目にする事例です。
ぜひ本記事の3つの事例を参考に、自社のホームページと営業トークで強みが伝わっているか、施工事例のデザインが狙うお客さんに合っているかを見直してください。



