工務店の経営課題|新築実績3棟から信用を得た不動産会社の事例

工務店の経営課題|新築実績3棟から信用を得た不動産会社の事例

展示場でお客さんから「過去にはどんな家を建てたのですか?」と聞かれても、営業社員がタブレットで見せられる新築の事例は3棟しかありません。

不動産会社から新築事業に乗り出したT社の現場では、この質問がきっかけでお客さんが引いてしまうケースが多々ありました。

新築の実績不足と大手信仰による信用不安は、小規模工務店の経営課題です。

T社は新築に乗り出した経緯を正直に話し、設計担当の役員を商談に立ち会わせています。

そのうえで、大手にはないデザインを打ち出して信頼を補っています。

本記事では、私がコンサル現場で見たT社の取り組みと住友不動産の商談をもとに、実績の少ない工務店が信用を得る方法を解説します。

新築の事例が3棟しかない工務店の経営課題(不動産会社T社)

T社は不動産がメインの会社なので、正確には工務店ではありません。

それでも新築事業に乗り出してから、T社は様々な場面で四苦八苦しています。

なかでもT社を悩ませているのが、新築の建築事例がゼロではないものの事実上ないことです。

ペルソナの設定やフランチャイズ加盟か自社ブランドかの選び方など、不動産会社が新築に乗り出すときの進め方は、不動産会社の注文住宅への参入で解説しています。

「どんな家を建ててきましたか?」という質問に答えられない

T社の営業社員がいちばん恐れていたのは、「どんな家を建ててきましたか?」という質問です。

お客さんは、住宅会社がこれまで建ててきた家の外観や内観、インテリア、エクステリアを見たいと考えます。

そのため通常の住宅会社なら、営業社員がタブレットを出して自社の建築事例を次から次へと見せます。

ところがT社には、見せられる事例が3棟しかありませんでした。3棟は地主からの要望で知り合いの家を建てたりした物件で、お客さんに見せるにはあまりにも少なく、不安を覚えさせるには十分な数です。

3棟はどれもそれなりにおしゃれな外観で、作りもしっかりしています。

私はT社を知っているので、作りの良さはもちろん、社長の考えに筋が通っていて、社長が新築に真摯に向き合っていることもよく分かっています。

しかし、初見のお客さんにとってはそんなことは関係なく、分かる由もありません。

新築に乗り出した経緯を正直に話し、設計役員が商談に立ち会う

T社がとった営業戦略は、新築事業に乗り出した経緯を正直に話すことでした。

嘘を言うわけにはいきませんし、妙に取り繕ってもボロが出ます。

T社の営業社員は経緯を話すと同時に、自社の建築レベルが高いことをお客さんに説明しました。

T社は不動産業がメインなので、社内大工はいません。

実際の工事は昔から知っている腕の良い大工に任せる形にならざるを得ませんが、T社は設計陣に極めて優秀な人材を揃えています。

誰もが知る東京の有名高層マンションを設計した人物がT社の役員にいて、その役員が商談に立ち会い、設計も自分が責任をもって行うとお客さんに話しています。

大手信仰による信用不安も工務店の経営課題になる

大手信仰をどう崩すかは、すべての小規模工務店の課題だと私は考えています。小規模工務店が積水ハウスやミサワホームといった全国大手と競合することはなくても、地域のパワービルダークラスの住宅会社と競合するケースはたまにあります。

たとえば、競合相手が従業員100人程度の住宅会社だとします。その住宅会社は地域でかなりの競争力を誇っていますが、従業員10人の工務店が競合すると、お客さんの頭にはどうしても信用不安がよぎります。

住友不動産のウェブ初回面談で見た企業アピール

大手企業は、知名度で簡単にこの問題をクリアできます。しかし、知名度と信頼性があっても、必要以上に企業の安定性をアピールする住宅会社もあり、その代表格が住友不動産です。

私は、ある方が住友不動産の営業とウェブ上で初回面談をすると聞きつけ、商談の様子をこっそり横で見たことがあります。

住友不動産は名前に圧倒的な信頼性があり、中身をあれこれ聞かなくても誰もが「住友なら大丈夫だろう」と思う会社です。

その住友不動産の営業が会社の説明をするのを見て、私が驚いたのはその徹底ぶりでした。

住友不動産の営業は、この先10年後に新築が半減する見込みだというデータを示し、たとえ大手であっても経営不安や撤退はあり得ると主張しました。私は横で聞いていて非常に納得しましたし、大手だからといって手放しで喜んではいけないことがよく伝わってきました。

新築着工数の減少が小規模工務店の経営にもたらす影響と今から打つ手は、着工減という工務店経営の課題で解説しています。

総合マンションデベロッパーであることの信頼性

住友不動産の説明で印象的だったのは、総合マンションデベロッパーであることの信頼性です。

営業は、住友不動産が新築の建物を建てるだけでなくマンションも手がけ、不動産もたくさん持っていると話しました。

さらに、そこに入る店子からの賃貸料も莫大な金額になると説明してくれました。

住友不動産は、住友ブランドを背負いながら、これだけ徹底的に企業の信頼性をお客さんに説明するのです。小規模工務店が会社の安全性を適当に説明しているようでは話にならない、と私は感じました。

地元30年の工務店が住宅完成保証制度と財務で安全性を示す方法

「30年地元でやってきました」だけでは信用されない

T社は地元に30年にわたって根を張り、着実に事業を続けてきた不動産会社です。

地域の人はT社をそれなりに知っていますし、賃貸マンションを借りた人は契約時にT社の名前を聞いているので、頭に入っているでしょう。

しかし、賃貸で借りるなら全く問題がなくても、家を建てるとなると話は違ってきます。

「30年地元でやってきました!」

胸を張って主張しても、お客さんの反応は「それで?」で終わることもあります。

お客さんに次のように思われても不思議ではありません。

「そんなこと言っても一年後に倒産するかもしれないじゃない」

小規模工務店は、地元での年数だけに頼らず、あらゆる指標を使って大手に抵抗すべきだと私は考えています。地域での認知を新しいお客さんにつなげる方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。

住宅完成保証制度は資料を作り込んで説明する

会社の安全性を数字で示すといっても、現実的には住宅完成保証制度をお客さんにアピールするのが一番有効だと私は思います。ただし、工務店は資料を作り込み、時間をかけて説明してください。

「完成保証制度に入っていますから安心ですよ」

さすがにこれだけで済ませる工務店はいないと思いますが、お客さんにとっては、保証制度そのものの信頼性はどうなのかという話になります。

取引銀行・資本金・キャッシュフローを話す(茨城県の工務店)

工務店は、完成保証制度の説明を第一にしつつ、それ以外の安心材料として取引銀行、資本金やキャッシュフローの話をするのも手です。

T社ではありませんが、茨城県のある工務店は、金融機関に勤めるお客さんとキャッシュフローなど突っ込んだ話をしたところ、一発で信頼してもらえたそうです。

私はこの話を、その工務店から直接聞きました。

完成保証制度とは別に、引き渡し後の保証の対象と期間を書面でお客さんに示す方法は、工事保証書テンプレートで解説しています。

大手には真似のできないデザインで勝負する

T社は、新築をこれまでやったことがなく、地元に30年根付いているとはいえ地域の小規模な会社です。

そこでT社は、大手住宅会社のデザインを徹底的に研究しました。

T社にはたまたまインテリアの凄腕のプロがいたことも幸いし、そのプロが設計担当の役員とさまざまな点から話し合いました。

その結果、T社は大手ではできないようなデザイン空間とインテリアを作ることに成功しました。

まとめ

T社の経営課題は、新築の事例が3棟しかないことと、大手信仰による信用不安です。T社は新築の実績がないことを正直に話した上で、T社がなぜ信頼できるのかを次の5項目でお客さんに丁寧にアピールしています。

  • デザインがなぜよいのか
  • インテリアがなぜよいのか
  • しっかりとした会社の財務基盤
  • 筋の通った社長の考え方
  • 唯一無二の設計力

T社はまだ滑り出したばかりで、このまま順風満帆に進むかもしれませんし、途中でいろいろとつまずくかもしれません。進展があれば、私がこのコラムで報告します。

ぜひ本記事のT社と住友不動産の事例を参考に、自社の安全性と強みをお客さんにどう説明するかを見直してください。

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