単独住宅展示場を成功させる3つの準備|着座率を上げた子供部屋

住宅展示場の子供部屋で、子どもはおもちゃに夢中になり、親はその横で営業社員と20分、30分と立ち話を続けます。ある住宅会社の住宅展示場では、その子供部屋に机と椅子を置いたことで、リビングや商談室を合わせた着座率が50%近くまで上がりました。
名古屋市内で12月21日にオープンする単独住宅展示場でも、ペルソナに合わせた内装、オープン後まで手を入れる接客マニュアル、座りやすい部屋づくりの3つを準備しています。
本記事では、不動産会社が新築部門に参入して建てる単独住宅展示場の事例をもとに、ペルソナ設定、接客マニュアルの作り方、着座率の上げ方を解説します。
不動産会社が新築部門に参入する単独住宅展示場(名古屋)
名古屋市内の単独住宅展示場を建てるのは、ハウスメーカーでも工務店でもなく、昔から地元に根を下ろしてきた不動産会社です。この不動産会社は新築部門に新しく乗り出し、名古屋市内の単独住宅展示場をその第一号店にします。
このプロジェクトでは、設計、デザイン、マーケティングといった専門分野ごとにそれぞれの先生が招かれています。
私は営業部門の担当として声をかけていただき、春から関わってきました。
このプロジェクトの準備は、同じような境遇の会社や、新築部門への進出をひそかに検討している不動産会社の参考になる内容です。
不動産会社が新築の注文住宅に参入するときの進め方は、不動産会社の注文住宅への参入で解説しています。
単独住宅展示場のペルソナ設定は内装のテイストまで合わせる
住宅展示場に限らず、お店を開くときには、来場するお客さんの客層を想定しておく必要があります。
ラーメン屋で考えるペルソナ設定
たとえば、あなたがラーメン屋を開業するとします。
深夜のラーメン屋でよく見る、トラックやタクシーの運転手さんがカウンター席に座っている店ではなく、若い女性が一人で、または友達を連れてやってくる店を思い描いたとしましょう。
そこに女性の年齢層、服装、職業なども加えて細かく決めていく作業を、「ペルソナの設定」と呼びます。
ペルソナが決まれば、いかにもラーメン屋という内装でよいのかという話になりますし、汁が跳ねても服が汚れないように前掛けは欠かせない、といった具合に戦略が固まっていきます。ただし、ペルソナを設定しても、ラーメン自体がまずければ話になりません。
下北沢の女性向けラーメン屋は3か月で店をたたんだ
東京の下北沢は若者に人気の街で、私もかつて3年ほど住んでいました。私が住んでいた当時、若い女性をターゲットにしたラーメン屋が開業し、店のオーナーは有名な女性料理家でした。
私はオープン3日目に妻を連れていそいそと出かけましたが、ラーメンは塩気がなく、麺がなかなか喉の奥に入っていきませんでした。
「この店はあかんやろうな……」
私と妻の意見は一致し、案の定、そのラーメン屋は3か月後に店をたたむことになりました。
店は若い女性を意識した内装に加え、体に良い、優しい味、ヘルシー、ダイエットなどを前面に押し出しており、明らかにペルソナを設定していました。
ところが、肝心のラーメンはただ味が薄いだけで、結果的に経営に失敗したわけです。
住宅も同じで、住宅会社がペルソナをいくら詳しく決めても、商品が悪ければ話になりません。
想定したお客さんに合うテイストで建物を仕上げた
名古屋の単独住宅展示場では、ペルソナの設定を徹底的に細かく決めたうえで、出来上がる建物そのものを、想定したペルソナにぴったりのテイストにしています。オープン時には私も泊まりがけで立ち会うので、ペルソナ設定どおりのお客さんが来場したときの反応を今から楽しみにしています。
建物の内装をペルソナのテイストに合わせるときの家具や色の決め方は、住宅展示場の装飾の考え方で解説しています。
想定していなかった客層が来場したときの接客は、住宅展示場の集客方法で解説しています。
住宅展示場の接客マニュアルは1年弱かけて2段階で作る
名古屋の単独住宅展示場で私が担当しているのが、住宅展示場の接客マニュアルの作成です。住宅展示場を開くなら、接客マニュアルの作成は最低限やるべきことだと私は考えています。
オープン前の暫定版にオープン後の観察を加えて完成させる
私は6月に接客マニュアルに着手し、オープンまでに第一弾として暫定版を作りました。オープン後は、目の前で交わされるお客さんと営業社員のやり取りをできるだけ多く観察し、その内容を第二弾として加えて、来年の4月に完成させる予定です。
1年弱かけてその住宅展示場に合ったマニュアルを作っておけば、ベテランの営業社員でも見返すたびに発見がありますし、若い営業社員が新しく入ったときには、マニュアルを読んで一人である程度勉強できます。私は、これから住宅展示場を建てる会社はもちろん、すでに住宅展示場を持っている住宅会社にも、接客マニュアルをあらためて作ることを強くお勧めします。
各部屋で使うヒアリングトークを盛り込む
マニュアルと聞くと誤解されそうですが、私が作る接客マニュアルは単なる案内の手引書ではありません。
基本的な接客の内容や、だいたいの順路を想定した内容はもちろん盛り込んだうえで、各部屋でのお客さんへのヒアリングトークを大事な項目として書き込んでいます。
ヒアリングトークは何気ない会話ですが、営業社員がお客さんの情報をそれとなく聞き出せる必殺トークです。
子供部屋で着座率を上げた住宅展示場の事例
住宅展示場でよく見るのは、2階の一部屋をいかにもという商談スペースにしている形です。お客さんから見れば、そこで営業社員に着座を促され、「では、じっくり話をしましょうか」と尋問されるような空気を感じます。
私は2階の商談スペースを全否定しているわけではありません。
立ち話でお客さんとの話が盛り上がれば、営業社員はごく自然に着座へ誘導でき、話が進んでいくからです。
しかし、商談スペースだけでは着座率(来場したお客さんのうち、座って話をした人の割合)は上がりません。
私の23年のコンサル経験から、着座率の上げ方を一つ紹介します。
子供部屋で親が20分、30分と立ち話をしていた
ある住宅会社が持つ住宅展示場では、2階の片隅に子供部屋をつくっていました。子供部屋はとても夢がある作りで、幼稚園や小学校低学年の子どもなら思わず手に取って遊びたくなるおもちゃが置いてありました。
子ども連れの家族が子供部屋に入ると、子どもはさっそくおもちゃに目をつけ、しゃがみ込んで遊び始めます。親はそれを横目で見ながら営業社員と立ち話をするのですが、長いと20分、30分と話し込む姿が目立ちました。
子どもの名前を呼んだり子供部屋の希望を聞いたりする接し方は、子供連れ客の接客方法で解説しています。
机と椅子を置いた翌週に子連れ客の着座率が二割を超えた
この様子を見た私は、住宅会社に指示を出しました。
「机と椅子を置こう」
親が立ち話でそれだけ長く時間を取るなら、机と椅子を置けば座る確率は高くなり、営業社員はそのままカタログを開いたりタブレットを見せたりして、家の話に持ち込めると私は考えたのです。
住宅会社は翌日には机と椅子を搬入し、その翌週の土日を迎えました。
私が現場で見ていると、小さな子どもを連れたお客さんが子供部屋に来て、子どもがおもちゃを広げるまではいつもどおりでした。
今までと違ったのは、そのタイミングで営業社員がお客さんに「どうぞお座りください」と着座を促したことです。
あくまでもこの住宅会社での数字ですが、小さな子ども連れのお客さんの着座率は二割を超え、5人に1人が座った計算になります。
二割という数字は子供部屋だけでの着座率なので、1階のリビングや、本来の商談の場である2階の商談室での着座を合わせると、着座率は50%近くまで上がりました。
私から見ても極めて高い値で、着座率が上がれば商談が深まる件数が増え、契約数も上がります。
オープン前に「成功する確率が極めて高い」と言える理由
私は、名古屋の単独住宅展示場が高い確率でビジネスとして成功すると確信しています。
「お前が関わっているのだからそう言うのは当然だろう」
こう言われてしまっては身も蓋もありませんが(笑)、私は準備が練りに練られていることを知っているからこそ、自信を持って断言しています。子供部屋の机と椅子のような成功事例を、細かいことから大きなことまで含めて私からアドバイスし、名古屋の単独住宅展示場に反映させているからです。
もちろん、ふたを開けなければ結果がどうなるかは分かりません。
オープンから数か月たてば結果がはっきり出るので、私はそのときにこのコラムでご報告するつもりです。
オープン後に住宅展示場で集客イベントを開くときの注意点は、展示場の再来場を生むイベント企画で解説しています。
私は工務店へのコンサルティングを仕事にしていますが、今回のような新規の住宅展示場のオープンに関わるのは、最も楽しい仕事の一つです。
「お客さんは来場するだろうか」
「展示場の仕掛けは当たるだろうか」
「ペルソナ設定は間違っていなかっただろうか」
考えれば考えるほど頭が休まりませんが、そこはこれまでのキャリアの蓄積がものを言います。私はこの不動産会社の社員ではなく部外者ですが、気持ちは経営陣と同じで、「失敗させるわけにはいかない」と心に固く念じて任務に当たっています。
まとめ
名古屋市内で12月21日にオープンする単独住宅展示場は、地元の不動産会社が新築部門に参入する第一号店です。ペルソナに合わせた内装のテイスト、オープン後の観察まで反映して来年の4月に完成させる接客マニュアル、子供部屋の事例のような座りやすい部屋づくりを、準備の柱にしています。
ぜひ本記事の子供部屋の事例と接客マニュアルの作り方を参考に、自社の住宅展示場でお客さんが座れる場所と接客の流れを見直してください。



