中小工務店の受注活動で社長自ら営業をしているところは多いのではないでしょうか?
また、社長と伴奏しながら営業活動をしている社員は、マニュアル化した営業体系ではなく、手取り足取り教えてもらいながら属人的な営業スタイルで受注活動をしていることと思います。
アナログ的な営業活動と正反対に位置するものとしてMAというものがあります。
MAとは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)の頭文字からきており、2000年頃にアメリカで大きく発展し、2014年ころから日本国内でも急成長、拡大が進んでいるツールです。
その名前の通り、商品を売るための仕組み(マーケティング)を自動化する(オートメーション)ツールです。
まだ我が社には必要のないと思っていらっしゃる中小工務店の経営にとって、必要性を感じてもらいたいと思っています。
そこで今回、MAの概要や広まった背景、どんな作業が自動化可能なのか、導入によってどんな効果が期待できるかについて解説します。
MA(マーケティングオートメーション)とは?
MAは、情報収集の手段がインターネット中心となったことで急速に市場拡大が進みました。
2021年に実施された市場調査においても2020年から2026年までの6年間で1.5倍の市場規模になると予測されています。
参照:株式会社矢野経済研究所 DMP/MA市場に関する調査を実施(2021年)
MAは、非対面での顧客開拓や顧客フォローといった営業活動のアシスト機能において、優れた機能を持ったツールです。
顧客は、実際に住宅展示場やイベントへ動き出す前に、インターネット上で調べた情報によって、工務店の絞り込みをはじめています。
顧客がインターネットで情報収集を始めた時点からアプローチをはじめないと出遅れてしまう現状の中、MAを利用するとそれぞれの顧客の興味関心がどこにあるのか、どのくらいの熱量をもっているのかなどを客観的に「見える」ようにすることが可能です。
実際に、家づくりを検討している人が住宅展示場や完成見学会などの来場をする前に、インターネットやSNSを使って工務店やハウスメーカーの情報を収集し、2〜3社に絞り込んでいくのが今の定番スタイルとなっています。
WEBサイトやSNSアカウントに情報を積極的に載せていないことが、機会損失につながっていることに繋がるのです。
MAを利用するメリット
MAを導入することによる、工務店のメリットについて説明します。
① 営業効率があがる
社長が営業を兼ねている場合や、属人的な営業の場合、顧客へどんなアプローチをとるか、どのような仕掛け作りをして、受注行動へ一歩進めるように導くかの作戦を考えること、商談中の顧客へのプレゼン作成、といったファン度や購買熱量の高い顧客と直接やりとりを行って受注へ結びつけることに、毎回オリジナルの戦略で多くの時間を費やしています。
しかし、実際には、新規の顧客の情報の入力、長期管理客のフォロー、顧客それぞれの状況や購買意欲の確認といった作業量が膨大で、本当は優良顧客である人に対して適切な対応が取れず、感覚的な営業に陥ることで手間のかかる顧客にばかり時間と労力を取られてしまうこともしばしばあります。
MAを導入することで、メールマガジンを送付した場合に、開封しているか?メルマガに掲載したリンクを確認しているか?WEBサイト内でどのページをどのくらいの時間見ているか?など、どういった内容のコンテンツに関心があるかを「見える」化することができるので、定量的に判断することができるようになります。
② アプローチの糸口がわかる
自社のWEBサイトの閲覧ページやページ遷移がわかると、顧客の興味関心がどこに向いているのかを把握することができるので、顧客の必要とする情報を届けることができます。
まだまだ先の予定の顧客へも最適な仕掛けを考えることで、時期の前倒しも可能となります。
感覚で営業資料やメールを送るのではなく、顧客が求めている情報を事前に把握することで、確度の高いアプローチをすることが可能になるのです。
③ 長期管理客の購入意欲の変化をキャッチできる
定期的に電話掛けや訪問をして、最近の様子の聞き取りをすることが住宅営業の基本とされていましたが、そういったローラー式の作業が必要なくなります。
建築時期が早まったり、状況に変化があり、自社に対するファン度が保たれている場合、必ず、WEBサイトやSNSの閲覧、メルマガの確認といった動きが活発になります。
動きを見逃さずに、タイミングよく直接的なフォローを行うことができれば、他社に先を越されて気づいた時には他決しているといった最悪の事態を防ぐことができます。
④ WEBサイトのコンテンツの見直しができる
WEBサイトの内のコンテンツの閲覧数、滞在時間が「見える」ので、多くの顧客が必要としている内容を吟味することができます。
また、受注や資料請求につながることの多いページ遷移順も把握できるので、ページ内のリンクを整理したり、資料請求や予約ボタンの配置を検討するといったWEBサイト全体の見直しができます。
⑤ 顧客にとっての有用な営業と認識される
従来の一般的な営業スタイルは、営業の経験や知識による一方的な想定を基にアプローチ方法を考えていたので、顧客の本当に望んでいる情報とは、ずれていることも多くありました。顧客にとって必要としていない情報ばかりが続けざまに届くと、「押しつけ」と感じられてしまいます。
その結果、営業は疎ましい存在となってしまいがちです。
ただの状況確認や一方的な情報提供を行うわけではなく、必要とされている情報をタイムリーに届けるための連絡は顧客から感謝されるようになります。
その結果、顧客との関係性は深まり、変化があった時に連絡してまず相談したい「役に立つ」存在となることができます。
⑥ 営業担当のモチベーション持続
先ほど紹介した「役に立つ」存在となることも含めて、今まで見ることのできなかった顧客の購買プロセスに合わせて最適なアプローチが可能なので、的外れな営業活動を減らすことができます。
新入社員や中途社員のような経験が浅い営業でも、顧客へ適切なアプローチがとれるので、商談へつなげられる可能性も高くなります。
顧客と話す経験を積めるほか、成約確度があがるので即戦力として独り立ちまでの期間が早まります。
MAの活用方法
MAは定量的な作業に大きな力を発揮します。
実際に導入した場合、どういった作業を行うことができるのでしょうか。具体例をあげて紹介します。
① 顧客の獲得
SNSで認知拡大を図って、WEBサイトへ誘導しようとする場合、プッシュ通知の活用で再訪問を誘致させることが可能です。
また、新規顧客だけではなく、長期管理客や計画中断客の状況や新雇用の変化をキャッチするので、手持ちの顧客リストから見込み客へ上げることも自動的に行えます。
② 顧客管理
資料請求の登録データを自動でデータベースに登録して管理することが可能です。
データには、必要であればタグ付けすることもできるので、興味関心のある分野や参加しやすい地域の見学会など、それぞれの顧客に合わせたフォローも対応可能です。
見込み客の管理を行い良好な関係性を築いた後、営業に引き継ぐことができるのもメリットです。
③ 顧客育成
予約ページや資料請求ページを閲覧したまま、登録が行われなかった場合、イベントが近づいた時に再訪問を促す広告の表示を行ったり、行動履歴に合わせたセミナーの告知を行うこともできます。
また、フォローのための継続配信メール、集客日から一定期間をあけて送るステップメール、WEBサイトの特定のページを閲覧した顧客へ自動送信されるメール、毎月の定期便として送付するパーソナル通信など、必要な条件を登録しておくだけで、指定したタイミングで自動的にメール配信を行うことができます。
④ 顧客絞り込み
顧客の行動履歴を利用して、確度の高い顧客や受注時期の近づいた顧客の絞り込みが可能です。
成約確度を推測するスコアリング機能を持ったツールもあります。
活発な動きを見せはじめた顧客など、優先して対応するべき顧客が一目瞭然となるため、担当者の対応漏れを防ぐことができます。
年度末キャンペーンや受注期間、引き渡し機関に期限を区切ったキャンペーンのページや価格一覧の掲載ページを何度も訪れている顧客は受注への意識が高いことや、特定の相談会やセミナーの予約ページを見ている顧客は建築時期が近付いているなども客観的に分析するので、担当の相性や話しやすさなどに捉われることなくターゲットを絞ることが可能です。
その他、商談中の顧客の自社に対する真剣度を把握できるので、受注確度を客観的な数値として捉えることができます。
受注数の推測のブレが減少するので、経営における着地の数字も早期に押さえることができます。
⑤ マーケティングの自動化
あらかじめ決めたルールに沿って、上記の作業を自動で行うことができます。
メールマガジンは、全員へ一括でメール送信するのであればMAを利用しなくても、大きな手間をかけずに発信可能です。
しかし受信する顧客の立場で考えてみると、必要のない情報ばかりが頻繁に届き続けると「迷惑メール」となってしまいます。
当初より、興味のある内容、必要としている情報が、タイミングよく届くからこそ、メールが来るのが楽しみになり、開きたくなるメールと感じられるのです。
⑥ 反響に対する素早い対応
ポータルサイトの登録や資料請求への自動返信メールを設定しておけば、24時間いつでもすぐに反応可能です。
ポータルサイトの一括資料請求をすると多くの業者から一斉にメールが届きます。登録直後にどこよりも早く特色のあるメール返信ができれば、きちんと中身を確認される可能性や興味を持たれる可能性が格段にあがります。
タイミングが遅れると他社からのメールに埋もれてしまい、せっかく得られた資料請求を受注へつなげるチャンスをなくしてしまいます。
⑦ 商談準備へ利用
顧客の興味関心がどこにあるかを的確に把握できるため、的を絞った提案が可能です。
従来、どんな要望が出てきてもいいようにと広範囲を網羅する準備が不要になります。
まとめ
中小工務店におけるMAの導入のメリットと活用方法の一例について解説しました。
MAは少数精鋭だからこそ、取り入れるべきツールといえます。
少ない人数で最大限の利益をあげるためには、効率の良さを重視した業務体制が必要不可欠です。
必要とする顧客に必要とする情報を届けられると、顧客も担当営業もモチベーションが上がります。
さらに営業効率のアップは収益改善と直結しています。
営業活動のうち自動化できる部分はMAに任せると、営業効率も受注率も上げることが可能といえます。
MA導入を検討する際の参考としていただければ幸いです。