マネジメントとは「経営」や「管理」という意味ですが、会社においては「目標設定」や「目標達成に向けて人員を活用すること」の意味で使われており、健全な経営を続けるためには欠かせないスキルです。
特に中小工務店の場合、中間管理職が存在しないことが多く、社長の直属に配置されたトップダウン式が主流となっています。工務店経営者がやるべきことは「経営の舵取り」であり、社員のマネジメントではありません。
しかし、現状は中間管理職となる新人教育をする人材やトップセールスが社長自ら行っていることが多いため、適切なマネジメントの仕組みができていないところが多くあります。
今後の新築着工数縮小時代を生き残るためには、少数精鋭の人材で、確実に売上を上げていく社内構築が必須となります。
そのためには「マネジメントスキル」が重要です。
マネジメントとは、設定した目標に対して、試算やリスク管理を行いつつ成果をあげるためのスキルです。
そこで今回、マネジメントの概要や必要とされるスキル、実際の業務の中でどのように活用していけるかについて紹介します。
マネジメントとは?
なんとなく理解している人も多いマネジメントについて、改めて確認してみましょう。
マネジメントはドラッカーの1973年の著書「マネジメント」によって提唱されたことがはじまりと言われています。ドラッカーはマネジメントの父と呼ばれ、その経営哲学は今でも広く利用されています。
ドラッカーは著書の中で、下記のように定義しています。
「マネジメントとは自らの組織に特有の使命を果たすこと。仕事を通じて働く人を生かすこと。自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献すること。」
マネジメントは経営者だけではなく、組織全員が行うべきものです。
その理由は、マネジメントは人の強みを引き出して、組織として成果を出すための手段だからです。立場によらず、弱みを補い合うことで組織の力が最大限発揮されることや、社員全員が経営トップと同じ視点で業務に取り組むことができれば、組織としての効率は向上できるといえます。
マネジメント業務とは
マネジメントを実際の業務に落とし込んだケースについて紹介します。
① 知識の管理
- 社内のノウハウや知識を誰にでもわかりやすい形として社内全体で共有すること
- プロジェクトの進捗を管理して、品質を保証すること
② 人材の管理
- 会社のビジョンや目標の意味について理解を深めること
- 個人がもつ能力や技術を明確に把握して、伸ばすべき能力を見極めること
- 適切な人材配置を検討して、強みを発揮できる環境を作ること
- 経験、職歴、現在のスキルに応じて、社員一人一人に合わせた目標を設定して、目標の意味や努力する方向性に納得を得ること
- 目標達成に向けて管理や関係部署との調整、連携を行うこと
- 目標と達成基準を明確に提示して、理由のわかる人事異動を行うこと
③社員の育成
- それぞれの業務内容を把握して、相談やアドバイスを行うこと
- 業務における問題点を意識させて、改善策の提案を促すこと
- 一人一人が将来を見据えて、自主的に成長できるようなサポートを行うこと
- 日頃からコミュニケーションをとって気づいたことを話しやすい空気をつくること
- 社員を育てて、自分の業務を委譲すること
④目標に対するフィードバック
- 定期的な面談で仕事内容と業務進捗の確認を行うこと
- どういった能力を伸ばして欲しいか、何を求めているかを明確に伝え、その経過や結果に対するフィードバックを行って、改善点をわかりやすく伝えること
⑤社員のモチベーション維持
- 会社の目標を、社員一人一人の目標へ落とし込んで目的意識を持たせること
- コミュニケーションを続けて、やる気の原動力のありかを見極めて引き出すこと
- 一人一人の観察、育成、相談を進んで行うこと
- 誰に対しても、待遇、接し方、給与体系がフェアであること
- それぞれの能力や強みに応じた業務割り振りを考え、業務に対する正当な評価を行うこと
⑥メンタルヘルスのマネジメント
- 社員のストレスを減らして、能力をフルに生かすサポートに徹すること
- 社員の肉体的疲労と精神的疲労、両方に気を配ること
肉体的疲労
肉体的疲労がたまると業務効率が悪くなり、労働時間が延びてしまうのでさらに疲れがたまってしまうという悪循環を生み出してしまいます。
休日にきちんと休むこと、長時間労働を防止することは、作業効率アップにつながります。
精神的疲労
休日出勤や残業時間が少なくなると、新しい知識を入れる時間、資格取得の勉強をする時間、家族と過ごす時間、自分の趣味を楽しむ時間をとることができます。プライベートの充実が得られると、集中力が増し生産性があがると言われています。
お金の管理
会社の資産運用にだけではなく、業務の効率化を考えること
例えば人員を補充するとコストが掛かりますが、時間を取られていた業務を任せられる人材を雇うことができれば、その時間を顧客とコミュニケーションをとる時間、新たな仕事を得るための時間、現場を廻って現状を確認する時間などに充てられます。
また、新サービスや新事業を取り入れる時、プロに相談すると、顧客のニーズを分析してサービス展開を始められるので、ゼロから始めるよりも格段にスピーディーで、成功率も上がるので、かかるコスト以上の効果があります。
その他の管理
- 起こりえるリスクを想定して損失回避をすること
- 時代やテクノロジーの進化に合わせて組織を変革させること
- 新しい方法に対してチャレンジする柔軟な姿勢をもつこと
マネジメントに必要なスキル
適切なマネジメントを行うために必要とされるスキルについて紹介します。
① 論理的な思考
データを客観的に分析する力、根拠やデータに基づいた問題解決を図る思考です。
「目標達成に必要なもの」の分析判断によって的確な方針を打ち出すことができます。
人材、資金、物資、情報、これまでの知識や持っている技術をどのように活用するかを、リスクを想定しながら決断していきます。
② マネジメント能力
目標に対して実施内容を考える力です。
実績の正しい把握の上、目標と現状を照合して、軌道修正が必要か考えていきます。
「目標達成に向けて、組織を適切に機能させるための管理」「生産性向上に向けて、適切な方法を適切に実施するための管理」「仕事の基準を高めて業務精度を高めるための管理」といった全体を俯瞰しながら管理するスキルが必要です。
③ リーダーシップ
チームをまとめて目標を達成する力です。
目標達成には、その意味や方針を社員が理解して取り組むことが重要とされます。
チームの方向性がはっきりしており、トラブルにあった際も的確でスピーディーな指示が出ると安心して仕事に取り組めます。
自分自身の仕事への熱意や真剣な取り組みを見せて、いっしょに仕事したいと思われる関係性が築けるよう心がけましょう。
④ コーチングスキル・コミュニケーション能力
社員の能力を把握して発揮させるには、普段からのコミュニケーションと働きやすい環境づくりが最優先です。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションとは、相手について理解を深めることです。社内外に両方においてコミュニケーションは重要です。
社内でのコミュニケーション
他人と一緒に働くには意思の疎通が不可欠で、お互い納得の上受け入れるための調整力も必要です。社内の目標意識の統一、人材育成、人材確保すべてにおいて必須のスキルです。
社外向けコミュニケーション
顧客からの信頼獲得、紹介獲得やリフォーム獲得が見込めます。
地域密着工務店だからこそ、顧客と直接コミュニケーションとれるのが強みです。
人間関係の構築
仕事に対する考えや悩み、疑問、不安を話し合います。聞きだす時は聞くことに徹します。理解しながらお互いの情報を伝え合うようにして、なんでも話しやすい関係性を築きましょう。
⑤ 透明感のある職場づくりを目指す
社員にとっての不平等や差別を感じさせない職場を目指しましょう。
発言しやすい環境作り
異なる意見がある場合や誰からも意見が出ない時でも、発言しやすい環境やコミュニケーションの取れている関係性があれば会議の進行もスムーズです。
様々な意見に耳を傾ける姿勢、様々な案を検討して選び抜く柔軟さが大切です。その結果、みんなが納得する回答や決定をまとめることや、「決定を保留して仕切り直す」決断をすることが大切です。
誰に対してもフェアな姿勢
立場の違いがあっても、人としては平等です。相手に対する礼儀を忘れずに、相手に「伝わる」話し方を心掛けましょう。差別を感じると、優秀な人材ほど離職してしまうリ スクが高まります。
情報の共有
社内の情報は一斉に流し、いつでもだれでも閲覧できるようにしましょう。人によって、知っている情報、知らない情報があると不透明感を感じてしまいます。
⑥適材適所を見極める
社員のストロングポイントを見極めて最大限活かすことが必要とされます。
得意分野で存分に力を出してもらうと、社員にとっては達成感、充実感をえられ、会社にとっては大きな成果を得ることができます。
社員の適性や長所能力や特徴を探すためには、コミュニケーションが必須です。
ただし、未経験社員については見極めが難しいので一通りの業務をやってみるシステムも効果的です。
⑦ プロジェクトマネジメント力
人材配置やコスト、納期を総合的に判断するスキルで、スムーズな目標達成に必須です。
何をいつまでにどのように実行して、どんな結果を出す必要があるか、プロジェクトの進行方向を論理的に考えていきます。
⑧ 意思決定のスキル
何かを判断する場面は多くあります。判断時にブレない軸を持つと組織を引っ張る力が生まれます。
自分の価値観や理念に左右されると戦略や方針がぶれてしまうので、目標に沿ったビジョンを持つようにしましょう。
決断に悩むときは、社員から現場の課題点を提示してもらうと、解決の糸口となることも多くあります。
まとめ
今回、中小工務店にこそ必要なマネジメントの業務内容と必要なスキルについて解説しました。
人材、資材、資金、情報は会社にとって重要です。しかし使い方によっては価値を生み出すことができないので、適切に活かしていく必要があります。
特に人材に関しては、その強みをどうやって仕事に生かすかはマネージャーの采配と人材育成次第といえます。
組織のマネジメントには高い視点から全体を俯瞰して組織を引っ張る力が必要なので、マネジメントスキルを高めることからはじめてみることをおすすめします。