工務店の安定経営のための、資金繰り管理の見直しの重要性とは

売上はあがっていても会社の資金繰りに不安を感じている工務店は多いことでしょう。
また、昨今のウッドショックや建築資材の高騰により、原材仕入れ費の値上がり部分をお客様からもらえないケースも多々あります。
会社としてお金の流れを把握して調整する資金繰りは、安定した経営基盤を保つためにも重要な業務です。
工務店の資金繰りは、業務形態上入金のサイクルが特殊で難しいとされています。
資金繰りとは、入ってくるお金と出ていくお金を管理して、資金が不足しないように調整することです。
お金とは、現金だけではなく、預金、有価証面を含みます。
少数で経営している工務店の経営状況を正確に把握している人は、社内にいないことが多く、どんぶり経営になっている企業も少なからずあります。
今回は、資金繰り管理の方法や資金繰りを安定させるためのポイントについて紹介します。
工務店の資金繰りの難しさと資金繰りが重要な理由

売買取引は商品と代金を交換して成立しますが、住宅の場合受注から引き渡しまでの期間が長くかかります。
工事代金の支払いは、元請けとして顧客から入金される場合は、契約時金、着工時金、上棟地金、引き渡し時金の4回に分けて入金され、下請けとして元請け業者から入金される場合は、着手金、中間金、最終金の3回に分けて入金されるのが一般的です。
どちらにしても、全額回収となるのは完成後となります。
元請けの場合、契約時金として受注時に請負代金の10%程度が入金されるところが多いですが、人件費や経費、着工前に資材の発注を行うなど着工前に入金額以上に多くの支出が発生しています。
できれば契約時に1/4程度の25%くらいを目安として入金される仕組みをつくることで、突発的なトラブルにも対応できる経営基盤が構築できます。
着工後も材料費や外注費が発生するにも関わらず、資金が全額回収されるのは引渡し時です。
着工後にかかる材料費の負担を増やす資材価格の上昇への対策は、建築資材の高騰への対策で解説しています。
資金回収までのサイクルが長く、現金が手元にない状態が長く続いてしまいます。
工期の長い大規模な受注は帳簿上は多くの利益を生み出しますが、資金回収までの期間が長くかかるので資金繰りは悪化します。
同じように受注数が増えれば増えるだけ負債額も増えてしまうので、黒字倒産の可能性も上がってしまいます。
黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているのに資金ショートを起こして経営が破綻することです。
黒字倒産を防ぐためには、現状の把握とポイントを抑えた早めの対処が必要です。
黒字倒産を防止するには?

資金ショートの発生を察知して、黒字倒産を防ぐには下記のポイントを確認することが重要です。
① 受注時の支払い条件で問題が起きないかの確認
現場ごとに入金時期、粗利、直近2ヶ月以内で必要な支払額を正確に把握します。
当月と次月のみに注視すると気付かぬうちに資金ショートを起こす可能性があるため、最低でも2、3か月先の資金繰りをシミュレーションしてどの程度の資金が必要か予測を立てます。
② 現場ごとに粗利を管理して、予算粗利と粗利実績の差額の確認
予算と実績にどのくらいの差異があるかを把握しましょう。
資材の追加発注や天候による工期の延長などの要因があるため、住宅現場において予算のままの実績となることはありえません。
追加発注分は都度発注書の作成を徹底し、現場の担当者に丸投げせずに、事前に支払い額を把握できるようにします。
また、資材発注前に在庫を確認し、在庫を無駄なく使える仕組みを作りましょう。
現場監督ごとの受発注帳簿を使うのではなく、会社としてフォーマットを作成し、施工管理の社内業務担当を置くことで、無駄な発注やミスなどを最小限に抑えることが可能となります。
工事ごとの原価・粗利と実行予算との差額を会社共通の書式で管理する方法は、工事台帳のExcelテンプレートで解説しています。
資金繰りを安定させる方法

黒字倒産を抑えるポイントについて理解した、次に取り組むべきことは、資金繰りを安定させるためのポイントについてです。
① 入出金サイクルの見直し
資金繰りを改善するには、入金タイミングを早めるのが一番です。
例えば、顧客の支払いスケジュールを
契約時金10%、着工時金30%、上棟時金40%、引渡し時金20% から
契約時金10%、着工時金50%、上棟時金30%、引渡し時金10% へ変更するだけでもリスク回避効果があります。
ただし、大手のハウスメーカーでは、住宅ローンを利用する場合、契約時金10%、引渡し時金90%として、つなぎ融資を極力利用せずにすませる場合も多くあります。
競合した場合、つなぎ融資の金利負担がネックとなって他決してしまう可能性も考えられるので、資金の大半を住宅ローンで賄う顧客の場合には柔軟な対応が必要です。
② ショートの懸念がある時の対応を立てておく
資金に余裕があるうちに、業者へ支払い変更を依頼して支払日を延期してもらう、保有している不動産を売却する、入金遅れを確認して売掛金の現金化を急ぐ、資金を調達するといったことが考えられます。
資金調達方法としては、銀行融資や売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらう方法があります。
銀行融資の場合、書類準備や審査を含めると入金までに最低1〜2か月程度かかります。
それに比べて、ファクタリングを利用する場合は審査項目が少なく、審査もスピーディーなため、早ければ即日、遅くても数日で債権の現金化が可能です。
支払期日を待たずに素早く現金化できるので、資金繰りの改善に大変効果があります。
条件は、ファクタリング会社によって様々ですが、少額の30万円程度から3億円まで幅広い取り扱いがあります。
ただし、売掛金の相手方が過去に取引履歴がある法人であることなど条件があるほか、買取金額の10~20%の手数料が掛かってきます。
時間的余裕がある場合は、利率の低い銀行融資、大至急現金が必要な場合は、ファクタリングの利用とその時の状況によって使い分けしましょう。
③ 資金の管理方法を見直す
資金繰り表を作成すると、ショートの兆候をいち早く把握することができます。
資金繰り表については下記で解説します。
④ 大型物件の受注を抑える
工期の長い大型物件が多いと、資金繰りは悪化します。
また着手金や契約金に依存すると、自転車操業の状態に陥ってしまいます。
受注件数を減らして、工期の短い少額工事が増えると資金繰りは改善するので、最終的な手段とはなりますが、頭の片隅に置いておいてください。
工期の短い工事としてリフォーム工事を受注する方策と契約時の注意点は、リフォーム工事の安定受注の方策で解説しています。
資金繰り表作成のポイント
資金繰り表は1日ごとの日繰り表、月ごとの月次資金繰り表に分けて作成します。
① 日繰り表
1日ごとに資金残高から支払う予定の金額、入ってくる予定の金額を記入します。
月内のいつ頃、いくら足りないかを把握することができます。
② 月次資金繰り表
来月、再来月分の収支予定を記入して作成します。
記載する内容は、繰越残高、売掛金の回収状況、買掛金の支払い状況、借入金の残高、営業利益と経費の収支、設備投資の予定などです。
予測と実績がわかるような書式として、予算の振れ幅をチェックします。早い段階で、予めリスクを把握しておけば対策がとることができます。
先の状況を見極めるためには、6ヶ月~12か月分の月次資金繰り表を作成して予見しておけば、ショートの兆候を発見した際の選択肢が増加します。
また営業収支がマイナスの場合は、原因分析をして受注目標数の見直しなど改善策を検討できます。
③ 見込み客の収支を取り入れた月次資金繰り表
前項の資金繰り表には、契約済客の収支は落とし込んでいますが、それとは別に見込み客の収支を算入した資金繰り表を作成します。
資金繰りを安定させるためには、いつまでにどのくらいの受注が足りないかが見えてくるので、損益管理にも利用可能です。
早期に把握していれば、受注数が足りなくなる時期に備えて、その時期に合わせたキャンペーンなどの受注強化イベントを設定することもできます。
まとめ
工務店における資金繰りがなぜ難しいのかと資金繰りのポイント、ショートの兆候が見えた時の対策について解説しました。
まずは、現状を把握することからはじめることをお勧めします。
資金繰りにおいて大切なのは下記の3点です。
- 長期的な目線で資金繰り表を作成管理すること
- 入出金スケジュールを把握すること
- 予算と実績の差異を確認すること
資金繰りが悪化すると会社の信用度も落ちてしまいます。
早いうちに気づくことができれば対応、対策をとっておくことが可能です。
安定した経営基盤を保つために、資金繰りの見直しを行う際の参考としていただければ幸いです。



