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建築資材の高騰が続くなか、工務店経営者ができる対策とは?

建築資材の高騰が続くなか、工務店経営者ができる対策とは?

コロナが収束に向かう中、2021年から続く断続的な建築資材高騰が工務店経営者にとって頭を悩ませているのではないでしょうか?

ウッドショックから始まり、鉄資源の高騰も発生し、アイアンショックと呼ばれるようになりました。

また、未だ不安定な情勢が続くロシア・ウクライナ問題。

そこからコンテナ料金の上昇による輸送費高騰。

日本独自の低金利政策による円安など、さまざまな要因が重なったことにより、2023年以降も依然として続いています。

そこで新たに、燃料費高騰から派生した電気代の高騰。

設備や建材をつくる工場の生産ラインで大量に使用する電気料金も値上がり、販売価格に転嫁せざる追えない状況も、工務店にとって打撃となっています。

工務店の利益確保のために、建材の価格上昇によって建物金額も上げざるを得なく、今までよりも契約が取りづらくなってしまったケースや資材や設備の納入見込みが立てられず受注を抑えているといった工務店も多いようです。

また、コスト面においても、契約済みの顧客へ原材料高騰分を請求できずに利益を削るケースや原材料価格の上昇、輸送費の高騰による部品調達コストの上昇など、経費節約といったコストダウンだけでは吸収できないほどの打撃を与えています。

そこで、今回は建築資材にかかわる現状と問題点について改めて振り返り、工務店利益確保を少しでも上昇させるための方法について考えてみたいと思います。

近年の資材不足、資材高騰の原因

コンテナ

近年、日本の木材自給率は約40%まで減少しているなか、輸入材の価格が約2倍にまではねあがりました。

木材価格は、政府の対応によってこれ以上の上昇は食い止められる見込みですが、元の価格帯へ戻る見通しはたっていません。

ロシア・ウクライナ問題やコロナ禍の影響によって引き起こされたウッドショックはどういった要因で引き起こされたのか?振り返ることにより少しでも打開できる点がないかどうか探ってみたいと思います。

  1. コロナ禍による不要不急の外出制限や出社制限の影響により、物資の調達や配送が滞った。労働人材について今まで国外の労働力に頼っていた分野において、出入国に制限がかかったため国外の人材を確保できず人手不足に陥った。
  2. コロナ禍の先行き不安から、コンテナの製造工場が稼働率を落としたため、物資を運ぶコンテナの数が足りなくなり、物資を運搬できなくなってしまった。また、船へ荷積みする作業員が減少したため、物流が滞ってしまった。
  3. コロナ禍の巣ごもり需要と住宅ローン金利の値下げによって、アメリカ国内の新築需要が大幅に増えた。
  4. コロナ以前より輸入材が普及している状況があり、国内の林業が衰退してしまった。人材不足によって、手入れの行き届いていない放置林が増加しており伐採や製材がしづらかったり使用用途が限られてしまうものが多くあること。

そこで政府では、ウッドショックにより輸入材に頼ることが難しくなった状況を打破する対策として、国産材の普及を活性化させる対策を打ち出しました。

具体的にはスギやヒノキの中から成長の早くて優れた個体を選抜した「エリートツリー」の普及です。

エリートツリーについて、もう少し詳しく解説すると、林野庁をはじめとする官民の団体が取り組んでいる事業で、人口造森林において飛び抜けて成長が良く形質が優れている個体「精英樹」のうち、優良なもの同士を人工交配により掛け合わせ、その中からさらに優れた個体を選出したものになります。

成長が早く、製材がしやすいので1haで70万ほどコストカットできるといわれています。ウッドショック対策とともに、二酸化炭素吸収率の増加にも貢献も期待されています。

工務店が取り組めること①:プレカットの採用で工期短縮を図る

木材

ウッドショックの終息のめどが立たない中、工務店が自社でできる対策について紹介します。

プレカットとは、木材をあらかじめ工場で加工してから持ち込む手法です。

1990年代から普及しはじめ、今では約9割の現場で利用されています。

今まで積極的にプレカットを導入してこなかった工務店も、現在プレカットを導入している工務店もこの機会に資材の搬入経路やプレカット業者の見直しをすることで、今まで当たり前にかかっていた木材費も数パーセントコストダウンをすることで、全体の利益を上げることにもつながります。

ここであらためて、プレカットを導入するメリットとデメリットについてみてみましょう。

プレカットのメリット

①現場で行う細かな作業を大幅に減らすことができる

工期が長いと人件費が多くかかります。

プレカットにより工期の短縮が可能なほか、新しい大工が独り立ちするまでの期間を短縮することもできます。

プレカット業者により、資材搬入までの時間についても変わってきます。この機会に見直してみるのも良いでしょう。

②原材料を効率よく利用できる

材料から無駄なく部材をとることができ、加工してから持ち込むので現場で出るゴミも大幅に減らします。

現場での作業効率が上がるほか、廃棄の手間や廃棄物処理のコストを減らすことも可能です。

昨今の脱炭素化の動きやSDGsによる、社会貢献として廃棄コストの削減ができることもメリットです。

③現場ごとのバラツキがなく、品質が安定する

担当する大工の技量によって、仕上がりに差が出ることも防げます。

近年、中高層の建物でも木造需要が増えてきています。大規模な建物になればなるほど、安定した品質を保つことが重要となります。

④工期の短縮によって、コストダウン可能

工期を短縮すると現場の回転率があがるので、施工管理者や現場の職人は素早く仕上げて、次の現場を担当することができます。

職人は日当で動いていることが多いので手を空ける期間が減って新しい現場を担当できると収入がアップするため、お互いにメリットが大きいです。

極端に言えば、今まで3ヶ月かかっていた工期が半分の1.5ヶ月になることで、人件費や現場管理費、電気代などのコストが半分になるので、現場の数が多いほどコストダウンのインパクトが大きくなります。

プレカットのデメリット

①収縮乾燥によって変形することがある

木材の性質上、水分による収縮乾燥を完全に防ぐことはできません。

加工してから日数があくと接合部分に微妙なずれが生じることもあります。

価格は割高になりますが、機械乾燥ではなく自然乾燥のものを使うことで防ぐことが可能です。

②一度決めた間取りや構造の変更が難しい

着工前にプレカットを依頼してしまうので、プレカット導入前には対応できた着工直前の顧客からの急な変更依頼に応えることができなくなります。

事前に変更できない旨を丁寧に説明する必要があります。

工務店が取り組めること②:資材の在庫管理方法を見直す

木材

工務店が取り組めることの2つめとして、現状の資材管理方法と在庫の状況を把握することです。

余剰在庫を多く抱えることにより安心感を得ることができますが、過剰な出費になっている可能性もあります。

現在はIT化により、資材管理の方法も自動化ツールやクラウド連携でどこでも簡単な操作で出来るものも出回るようになりました。

この機会に導入を検討してみるのも良いでしょう。

資材の管理のメリット

①機会損失を防ぐ

資材を適切に管理すると、在庫があることに気づかずに追加で発注してしまうこと、あったはずなのに見つからないから新しく発注してしまうこと、処分したかどうか誰もわからないこと、といった事態を防ぐことができます。

特に、現場監督同士の連携や、資材管理が適切にされていないことにより、在庫のダブつきや廃棄コストの増大にも繋がりかねません。

資材の利用機会を逃さないことは余剰在庫を持つ必要がなくなるため、コストダウンとなります。

②余剰在庫の保管費、維持費用が省ける

スペースがあいているからと保有する資材を無計画に増やしてしまうと、いずれ作業スペースや通路を圧迫してしまいます。

また、緊急時の避難経路の確保や、火災の延焼による危険も伴います。

普段の使い勝手としても、置いてあるモノが増えるとそれだけ収納する時間、探す時間、必要なものを取り出すために他のものを動かす時間といった従業員の作業時間が余分にかかってしまいます。

各人の小さな時間ロスが積み上がることにより、大きな人件費ロスになってしまうのです。

いつか使えるはず、、、と考えられることもありますが、保管場所の倉庫代や光熱費など置いておくだけと思われる資材にも表面上ではわかりづらいコストがかかっています。

③必要な時に必要な資材を使える状態で保管できる

時間が経つと、品質が劣化してしまうものも多くあります。保管する環境が行き届いていない場合、ほこりをかぶってしまったり、カビやサビが発生したり、といったことも考えられます。

また、使いかけの資材の保管には次に使いやすいようにサイズや種類を揃えて保管する、塗料などについては開封日を記載するといった工夫も必要です。

誰がみても、すぐにわかるシンプルな状態を保っておけば、必要な時に利用することができます。

余剰在庫を防ぐためのポイント

余剰在庫は、資材が足りなくなって工期が伸びてしまうといった事態を防ぐために余裕を持った発注を行うことが原因の一つです。

①図面が確定してから発注を行う

詳細が決まる前に早めに発注してしまうと、仕様変更があった場合に必要のなくなる資材が発生してしまいます。

プレカットについても同様ですが、施主との合意が取れた後で発注できるようなスケジュールを立てることが大切です。

②どんな在庫があるか社員全員で共有する

何がどれくらい在庫されているかを把握していない場合、気づかずに新しく発注してしまうこととなります。

誰が見てもすぐにわかる周知方法を検討しましょう。

③潔く廃棄することも時には必要

いつか使える資材を廃棄することに躊躇されることもあるかと思いますが、長期にわたって倉庫にあり続けるものや使用見込みのたっていないものについては廃棄することも方法の一つです。

使わないものにスペースを占領されて、必要あるものが探しづらくなる、あることを忘れてしまうといった事態を防ぐためにも、不要なものは処分しましょう。

まとめ

建築資材が高騰する中、外的環境を変えることを工務店自ら対策することはできません。

また、「政府がなんとかしてくれる」「いつか収束するだろう」など気長に待つことで、倒産してしまう危険性もあります。

工務店自ら社内でできることや取引先の見直し、仕組みの再構築などのヒントについて、今回資材の余剰在庫を防ぐ方法や現場や倉庫における人材コストを削減する方法について紹介しました。

まだまだ、先行きが不透明の中、各社生き残りをかけた対策を打っています。確実な打ち手としての一つとして参考になれば幸いです。

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