リフォームは、住宅の長寿命化に伴って、市場が急拡大しています。
その理由として、室内で使用する住宅設備を交換し、外壁や屋根のメンテナンスを繰り返しながら長く大切に住宅を使い続けることが一般的になっていることや現在、国内の総住宅数が総世帯数を上回っており、行政においてもリフォーム支援に力を入れていることになります。
さらに、中古住宅市場の拡大に合わせて、売買時に顧客のニーズに合わせた改修工事を施すことが一般的になっていることなどが挙げられます。
新築住宅受注の先細りが予想される中、リフォーム業へ参入する業者も増えているため、効果的なマーケティングを行うことは経営の安定に欠かせない要素となります。
ここでは、マーケティング手法を考える上で参考にしていただきたい内容について解説します。
顧客がリフォームを必要とするタイミング
マーケティングについて考える際、どういった段階の顧客をメインターゲットとするかを検討し、段階ごとに分けて異なる戦略を考案する必要があります。
最初に、顧客が住宅リフォームを行うタイミングについて考ることが必要です。
リフォームが必要となるタイミングは、大きく4つに分けられます。
① 自然災害や事故などで被害を受けた部分の修繕を行うケース
② 経年劣化の早期対応を怠り、雨漏りや外壁の欠損など大きな被害が出てから補修工事を行うケース
③ 経年劣化部分に対して計画的なメンテナンスを行うケース
④ 家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、住宅にアップデートを加えるケース
顧客がどの段階にあるのかによって、効果的なアプローチ方法は変わってきます。
大至急の対応が必要となる①②に対しては「狩猟的マーケティング」、ある程度、計画を立ててじっくり検討する③④に対しては「農耕的マーケティング」が有効です。
「狩猟的マーケティング」と「農耕的マーケティング」とは
次に顧客のタイミングに合わせた効果的なマーケティング方法について解説します。
顧客が大至急の対応を求めている①②に対しては「狩猟的マーケティング」、ある程度、計画を立ててじっくり検討する③④に対しては「農耕的マーケティング」が有効です。
狩猟型マーケティングとは
狩猟型マーケティングは、条件によっては「即決」したい「今すぐ客」を新規で取得するためのマーケティング手法です。
「棟数限定」や「期間限定」のキャンペーンの発信やわかりやすいキャッチコピーなどのフックを仕掛け、顧客自ら行動を起こさせることを目的とします。
顧客は、競合他社へも同時に問い合わせしている可能性が高いので、ニーズや状況に対応した柔軟な対応、迅速なレスポンス、積極的な提案が求められます。
狩猟型マーケティングの成果が見られる場合、見込み客増加、受注数の増加などの即効性が高いです。
それだけに頼ってしまうと自転車操業に陥ってしまう可能性も高く、長期的に安定した経営を育むことはできません。
獲得した顧客は保留や計画延期となった場合も含めて、OB客、見込み客として農耕的マーケティングを行って顧客との関係構築を図っていきましょう。
農耕型マーケティングとは
農耕型マーケティングは、見込み客に対して、情報提供や定期的な点検などで接点を持ち続け、顧客のリフォームに対するニーズが高まった時点で受注するため顧客を育成するマーケティング手法です。
自社でリフォームを行うメリットや自社の強みについて、時間を掛けて少しずつ納得させるプロセスを踏んでいきます。
そのため、受注までに時間を要しますが、いったん問合せがあれば、その後のクロージング率は高くなります。
具体的な手法としては、SNS配信、メルマガ配信、セミナーの開催などが考えられます。
定期的なアプローチが必須ですが、ツールの利用で自動化できる部分は自動化して、見込み客の状況や動きを把握して、顧客のタイミングを見逃さないようにしましょう。
またOB客のフォローも重要とされています。住宅のメンテナンスやリフォームは、同じ家でも異なる部位での需要が出てくるのでリピーターを獲得しやすい環境です。
近くに行った際に訪問して、気になる点がないかを確認する。
定期的な点検を行う。
塗装や排水管洗浄、防蟻処理などのメンテナンス時期をお知らせするなど、顧客の役に立つアフターフォローを徹底して、関係性を切らさないようにしましょう。
優良な関係を構築できている見込み客やOB客の増加は、将来的な受注数の見込みが想定できるため、経営を安定させることに繋がります。
長期的な視点で捉えることが大切です。
農耕的マーケティングが重要な理由
顧客を少しずつ自社のファンとさせていく農耕的マーケティングに力を入れて取り組むべき理由について説明します。
まず、マーケティングに役立てることのできる「パレートの法則」について解説します。
パレートの法則とは、「上位2割の要素が全体の8割を生み出している」という法則です。
この法則はイギリスの経済学者ヴィルフレド・パレートによって提唱され、経済分野はもちろん社会現象や自然現象にまで幅広く当てはめられると言われています。
これをリフォームに当てはめてみると「2割の顧客が8割の利益を生み出している」「全紹介客のうち8割の紹介を出しているのは2割のOB客である」と置き換えることができます。
8割の利益を生み出す2割の顧客
この場合の2割は、OB客に当てはまります。
災害による被害の緊急修繕を除いた場合、高額受注となる大規模なリフォームは、時間を掛けて計画されます。
時間も資金も掛かるため、信頼できる業者に頼みたいと考える顧客が大半です。
工事内容やアフターサービスに満足を得られているOB客や親しい間柄のOB客から紹介を受けた場合などは、安心できる業者と認識され依頼先の第一候補となることができます。
こういった場合、競合が入ることなく、高額のリピート受注が可能となりますので、OB客と関係性を構築することは大切です。
8割の紹介を獲得しているのは2割のOB客
同じようにOB客へ紹介を依頼しても、紹介獲得は同じOB客から繰り返されることが多く、紹介の出ないOB客はお願いを繰り返しても紹介は出てこない。といわれています。
これには、リフォーム工事の満足度だけではなく、顧客の年齢や性格、職場環境なども関係しています。
繰り返し紹介していただけるOB客に対して、より紹介数を増やしたくなる制度を設定するのも効果的です。
紹介獲得人数が増えるたびに紹介特典が拡充されていったり、紹介数に応じてリフォーム時に値引きに使えるポイントを付与したりといった方法が考えられます。
また、直接紹介獲得とはならない場合でも、OB客から話を聞いたり、家に遊びに行ったりしたことがきっかけで、コンタクトを取ってくるケースも多くあります。
直接、顧客情報を伝えてくれる紹介だけではなく、間接的に貢献いただいたOB客にも、特例として紹介獲得と同様の特典を利用できるようにすると、その後の紹介獲得や口コミの拡散に繋げることができるので、柔軟な対応をとれるようにしておきましょう。
生の声を見込み客や潜在層へ届けてくれるOB客のフォローについては十分な検討が必要です。
80/20の法則のうち、80となる顧客層のベースアップ方法
上記の通り受注や売上の中核となるのは顧客の中の2割が占めていますが、その他の顧客層の中で強固なファンを増やす働きかけが必要です。
そのためには、競合他社と差別化することのできる自社ならではの「スイートスポット」を検討、構築しましょう。
競合他社には手が出しづらい領域や顧客ニーズに対して、よりピンポイントなターゲットに向けて、集中してアピールすることが効果的です。
明確な「スイートスポット」は、自社のブランディングにおいても重要なポイントとなります。
自社のスイートスポットを見つけるためには、以下のような要素を検討しましょう。
① ニッチなマーケットを分析
顧客数は限られていても、強いニーズのある分野、普遍的に一定数のニーズがある分野はどんなことかを分析します。
② 自社の強みを把握
自社が持つ特徴や強みを細かく分析して、①のマーケットに対して合致させられる技術力やデザイン、スタッフの経験値などを考慮します。
③ 競合他社の分析
ターゲットのニーズを理解し、現状、競合他社では叶えられないニーズや課題を見つけます。
特定の住宅スタイルや特殊なリフォームなど、自社でなら実現可能なサービスや商品を検討します。
④ ターゲットに向けた広告宣伝の検討
メインターゲットとなる年齢層や属性によって、顧客がメインとする情報収集方法は異なるので、ターゲットにピンポイントに届く広告宣伝の方法を検討します。
⑤ 顧客とのコミュニケーション内容を取り入れる
ターゲットの集客に成功したら、その顧客とのコミュニケーションの中から、メインターゲットが持っている更に深いニーズを把握して次の戦略へ活用します。
ターゲット層のこだわりを直接生かせるので、自社のスイートポイントにおいて、ターゲットに刺さるアプローチ方法を設定することができます。
まとめ
リフォーム会社におけるマーケティング方法を再考する際に、考慮すべきポイントについて解説しました。
マーケティングの基本となる、目標設定、市場研究、競合他社の状況把握、効果測定と進捗分析を行う際に合わせて活用していただければと思います。
マーケティングはプロモーションの計画~実行~成果が出るまで時間も手間も必要です。
効率よく効果の高いマーケティング戦略を行って、競争力を強化するための参考としていただければ幸いです。