本社が長崎にある建材会社の女性若手営業社員の話をしましょう。
入社2年目のリフォーム営業。
スーパー営業ではなく、ごく普通の数字を上げる営業社員ですが、会社にとっては大きな戦力である社員となります。
この種のコラムで営業社員を取り上げる際には、一般的に群を抜いた数字を上げる営業を紹介するのですが、今回取り上げたいのは数字はそこそこですが社長から見ると「彼女には会社に是非長く在籍してほしい」と思わせる存在。
どんな経営者でもスーパー営業社員はのどから手を出しても欲しい存在ですが、ミスなく淡々と仕事をこなす営業社員もスーパー営業同様に重要な人材となるのです。
彼女に直接会って取材をしたのですが、成績が普通ながらもう社長が手放したくないと断言する人材である理由を探っていきましょう。
「きっちり仕事をしないと気が済まないんです」リフォーム会社(長崎県)の若手女性営業社員
ユニークな入社経緯
彼女の名前は恩田依左子さん。
名古屋の高校を出て東京の法政大学へ進みました。
通常であればそのまま東京で就職するか地元名古屋に戻って職を見つけるのが普通ですが、どういうわけか縁もゆかりもない長崎にIターン就職。
勤務先となる富建(とみけん)の会社説明会で社長の説明を聞き「この会社に行きたい!」と決めたそうです。
なかなか思い切った決断ですが、何か感じるものがあって迷うことなく入社を決意したとのこと。
勤務先である長崎本社の富建
ホームページをご覧になれば分かりますが、皆さんが普段からお取引のある建材会社になります。
本書は長崎県の大村市にあり、海を挟んだ対岸には長崎空港という立地の会社。
社長は兵庫県出身で、あの灘高校を卒業した後に防衛大学に入り海上自衛隊に進んだという異色の経歴の方です。
その後縁あって地元の老舗建材会社である富建を率いる立場になりました。
「社長とお話をして即断即決で入社を決めました」
こう話す恩田さんですが、熱意を持って会社の戦略を話す社長の言葉に何かを感じたのでしょう。
社長「恩田さんは期待どおりの働きをしています」
社長である原田さんともお話をしましたが、採用時に確信した期待どおりの働きをしてくれるとのこと。
しかし、会社に大きな利益をもたらすような飛び抜けた受注をしているわけではありません。
そんな恩田さんの何を評価しているのでしょうか。
社長「確かに恩田はスーパー営業の類ではないと最初から思っていました。ただ、与えられたことを手抜きせずに完璧にやることができる人材だと感じたんです」
私「実際に彼女はその読み通りの働きをしているんですか?」
社長「おっしゃるとおりです。もちろん足りないところありますし想定してなかった問題点も多少ありますよ」
私「どんなところが問題なんですか?」
社長「それは本人から聞いてみてください(笑)」
営業成績は可もなく不可もなくだろうということは社長も当初から予想していたようですが、与えられたことをしっかりこなしていく性格だと見抜いたようです。
その面に関しては社長の見立てどおりだったようで、いい人材を採ったとおっしゃっていました。
面接時にはしっかりとした素振りを見せていても、いざ営業として現場に出ると実にいい加減な人間がたまにいることは皆さんもお分かりだと思います。
この部分が担保されているだけで、スーパー営業社員として会社に 大きな利益を上げることはなくても、お客さんに迷惑をかけることはないので、会社に不利益をもたらすこともないわけです。
「この会社でずっと頑張ってほしい」
社長の真意はここにありました。
彼女といろいろ話をしてみた
「問題点は本人に聞いてみてください」
社長からこう言われたわけですが、恩田さんといろいろ話をして自己分析をしてもらいました。
私 「契約に貪欲で次から次へと受注を上げようというタイプではないようですね?」
恩田「社長から見るときっと不満だと思うんですが、仕事を完璧にやりたいという気持ちが人一倍強く、そうするとそんなにたくさんの契約は望めないんですよね」
私 「ところで恩田さんの問題点を本人から聞いて欲しいと社長に言われたんですが(笑)」
恩田「そんなこと社長言っていましたか(笑)自分自身の欠点はよくわかっています。お客様からリフォーム見積などを依頼されて社内処理をしたのちにご提案という形になりますが、提案する時に必要な書類や書式などが完璧に揃っていないと気が済まないんです」
私 「なるほど・・・私も営業出身だからよくわかりますが、多少資料が足りなくてもスピードを重視してやっていましたね」
恩田「はい、それはよくわかるのですが、性格的になかなか許さないものがありまして」
私 「社長や上司からすると、その気持ちはわかるがお客様が待っているからとりあえず提出しなさいということになるんでしょうね」
お客さんから怒られたこともある
一時間以上に渡って彼女から話を聞きましたが、このようなきっちりとした性格が災いとなることもたまにあるようです。
お客さんからすると完璧でなくても構わないので、とりあえず目安となる金額を知りたいということもあるでしょう。
このようなお客さんと当たった時に、見積もりなどの提出が遅くて苦言を呈されたことがあるようです。
これは営業自身の性格も大きく影響するので難しい問題ですが、キャリアを重ねるにつれて、そのあたりのさじ加減もわかってくるでしょう。
お客さんの要望を的確に見抜いて「この方は完璧に資料を揃えてから 提案するべきだ」というケースもあれば「とりあえず大まかな数字を出して明日持って行こう」と判断するケースもあるはずです。
あなたが社長ならどう判断するか
一般論ですがリフォーム会社の社長であれば「細かいことをぐちゃぐちゃ言わずにとにかく契約の数字を上げろ」というケースが大勢を占めると思います。
しかし、仕事をきっちりやろうとする性格の営業社員の重要性も認識すべきでしょう。
営業数字が全く話にならないのであれば会社としては困るのですが、 少なくとも損益分岐点付近で頑張っていれば、会社に妙な損害を与えることもないし、評判を落とすような危険性もほぼないと言えるでしょう。
いかに信頼を高めるかがリフォーム会社の悩みどころ
住宅産業はクレーム産業と昔から言われています。
さらにリフォームは、匠のような技術を持った会社もあれば完全なる詐欺会社も世の中に存在しているのが実情です。
今から20年ほど前に、強引なリフォーム訪問販売営業や、点検商法等が社会問題化したことがありました。
「リフォーム会社には気をつけろ」
一時期こんなことが社会一般に浸透した感さえありました。
この時、飛び込み訪問に関する単行本を私はたまたま出版したのですが、それを見てTBSやフジテレビなどのニュース番組や、たけしのTVタックルなどの番組から出演依頼があったほどです。
今でもこのような詐欺業者は存在しますが、その当時と比べるとリフォーム業界の信頼性は格段に上がってきたと思います。
このような状況の中、お客さんに対して誠実に対応する営業社員の存在は会社にとって極めて重要だと思いませんか。
スーパー営業社員ではなくとも、与えられた仕事を誠実にこなす営業社員は価値ある人材だと考えます。
まとめ
今回は長崎で営業活動する若手女性リフォーム営業社員の紹介でした。
男性営業と女性営業を比較すると、真面目でまめな動きをするのは 一般的には女性営業の比率が高いと言えるでしょう。
データを取ったわけではないので私の肌感覚としか言いようがありませんが、同意される方も多いのではないでしょうか。
最後ですが今回取材した富建さんは国交省認定のリフォーム団体である社団法人住活協リフォームに加盟する信頼ある企業です。