社会を大きく変えたコロナですが、我々住宅業界にも当然のことながら変化がありました。
その代表的なものがテレワークなる言葉の誕生でしょう。
この言葉自体は以前からありましたが、コロナによって社会一般に根づいた新語の代表格です。
大手住宅メーカーはテレワークに着目して、新しく建築する住宅展示場には必ずと言っていいほどテレワーク部屋を設定しています。
営業の接客内容もこれに合わせて変わり「ご自宅で仕事をされることはあるのですか」という営業トークが新たに加わったのです。
このように大きな変化があったのですが、これから展示場を建てようと計画している住宅会社の皆さんにとっては、作るべきかつくらざるべきか大きく迷う部屋と言えます。
ただ、営業現場ではこのテレワークには必ず触れるようにしてください。
コロナ後の現場見学会・・・②テレワーク需要の実際は?
「テレワークはされますか?」にイエスと答える割合
みなさんが一番関心あるのはこれでしょう。
この質問にノーと言われれば話は終了です。
いろいろな会社でデータをとっているのですが、この質問に対するイエスの回答割合はおよそ5%~10%程度とみてよいでしょう。
つまり、さほど多くはないというのが現実です。
しかし油断は禁物で、テレワークはしないものの家に仕事を持ち帰ったり、趣味も含めてパソコンを叩いたりする部屋の需要はこれ以上にあるのが実態です。
コロナ前であれば「書斎は必要ですか」と聞いていたものが「テレワークはされますか」置き換わったのです。
具体的にはこう聞くべき
展示場もしくは現場見学会場で営業社員が聞くべきお客さんの質問はこんな感じでしょう。
営業「お仕事でテレワークはされますか」
主人「いいえ、うちは共働きですが私も妻もテレワークはないですね」
営業「そうですか。テレワークはないということですが、書斎もしくはそれに準ずるようなスペースの希望はありますか」
ポイントは二つです。
① テレワークをするかどうかを確認する
② テレワークをしない場合でも書斎もしくは書斎のような部屋を希望しているかどうか
テレワークをしないから書斎がいらないというわけではありません。
営業現場を見ていると、テレワークの有無を確認するまでは皆さんやるのですが、必要ないと言われた途端にその話を打ち切ってしまうのです。
また、もう一つの問題点として「書斎は必要ですか」と聞くことが挙げられます。
書斎というと仰々しすぎてハードルが高くなります。
そうではなく、書斎のようなスペースという表現でその壁を低くして聞いてみてください。
街中にある住宅展示場を見学してもらえばわかりますが、完全に区切られた書斎ではなく、リビングの一部や寝室の一部を書斎コーナーとしてプランニングしているケースの方が圧倒的に多いでしょう。
完全個室の書斎を求めているのか、ゆるく区切られた書斎のような空間を求めているかを確認して欲しいということです。
テレワーク対応策をあらかじめ考えておくべき
テレワークをするお客さんの割合は10%以下だと記述しました。
しかし、10人に1人だからといって、対応策を練らないようではダメです。
テレワークをしっかり考えている人にとって、新築時にその部屋を作るのは非常に重要なこととなり、住宅会社にはそのあたりの提案力を期待することになります。
お客さんの心を掴んだテレワーク提案ポイント
① デッドスペースを使う
広さに制限があると判断したら、この話を真っ先に出してください。
懐具合に余裕のあるお客さんであれば「テレワーク部屋を作りましょう」で済む話ですが、予算や坪数の制限がありそうだと直感すれば「デッドスペースを使ってテレワークスペースを確保する手もあります」と振ってみたいところです。
② 1階にテレワークスペースを作る手もある
寝室は2階に設けるのが普通でしょう。
テレワークスペースも同じく2階に設定することが圧倒的に多いでしょう。
しかし、1階に設定するケースもあっていいはずです。
こんなやり取りが実際にありました。
貿易関連の自営業をするお客さんがいたのですが、貿易という仕事柄、深夜に外国とやり取りをせざるを得ないこともあるということで、家族に迷惑をかけないためにも1階にテレワーク部屋を作ったのです。
私はこの方に取材をしたのですが「最初に展示場で営業さんと会ったとき、仕事のことを考慮したうえで1階へのテレワークルーム設置をすぐに提案してくれた」と営業社員を評価していました。
こんなこともあるのです。
③ 書斎というと堅苦しい
先ほど話した内容ですが、書斎という言葉のイメージは堅苦しい気が私はします。
テレワークコーナー、書斎のようなスペース、夜寝つかれない時に一人で時間をつぶすような居場所、など何でもいいのですが、書斎という言葉を回避してお客さんに話すと、話が伝わりやすくなるでしょう。
テレワークスペースで失敗した事例を知っておく
現場見学会での接客において、テレワークスペースに話が及んだ時には、そのデメリットや失敗事例も複数知っておいた方がよいでしょう。
住宅営業で成功するには、お客さんの希望だから勧めるのではなく、その失敗事例も多数知っておきましょう。
それが信頼につながるからです。
① 結果的に使わなくなってしまった
テレワークの仕事があるので部屋を作ったものの、実際に住み始めるとそこで作業することはあまりなく、家族がいるリビングの隅っこでノートパソコンを叩きながら作業をやるケースが圧倒的に多かったという話です。
これは、なんとなく想像がつきますよね。
個室にこもって一人で黙々とやるのも一つの手ですが、やはり家族の気配を感じながら“ながら的”に仕事をやる方がしっくりくる人が実際には多いということでしょう。
② オープンスペースに作ったが落ち着かない
これは反対のケースになると思います。
完全個室にするワークスペースでは、家族との交流や気配が感じられないので、ライトな感じのテレワークコーナーを作って後悔したパターンです。
「家族の気配を感じたいな」
「完全個室では息が詰まるかもしれない」
こう思ってオープン型で作ったものの、個室ではないため結果的には落ち着かないという失敗事例です。
二つだけ後悔したパターンをご紹介しましたが、このようにテレワーク部屋を作ったものの失敗した事例を複数知っておくと、お客さんとの接客時に深い話ができます。
なんでもそうですが、いいことだけを言ってもだめです。
マイナス面も複数挙げて説明することが、お客さんの信頼を得ることにつながります。
展示場を所有しない工務店の方へ
大手ハウスメーカーを中心に住宅展示場にはテレワークスペースを設けているケースが大半を占めます。
こうした展示場で接客をすると、営業社員はいやおうなしに「テレワークはされますか」と聞かざるを得ません。
ところが、住宅展示場を保有しない工務店の場合は、意識していないと、お客さんに対してこの質問をするのを忘れてしまうのです。
お客さんがテレワークと無縁であれば全く問題ありませんが、テレワークが必須であったり、ある程度関心を示すようなケースでは、営業社員からこの話を切り出すのか否かでは印象がずいぶん変わってきます。
ですから、展示場を持たない工務店の営業さんは、接客時には忘れないようにテレワークの話をお客さんにふってください。
まとめ
現場見学会第二弾はテレワークについて触れました。
現場見学会でお借りしたお客さんのお宅にテレワークコーナーがあれば問題ないのですが、最後にお話をしたように、ない場合でもテレワークの話は振ってください。
そしてテレワークの成功事例失敗事例は当然のこと、ただ単純にテレワークルームを作るのではなく、配置場所やデッドスペースを利用するなど、多種多彩な引き出しをもっていることをお客さんに知らせることが重要なのです。