現場見学会の接客で見た成功事例と失敗事例|無口な客への備え

現場見学会の受付でアンケートを書いてもらい、1時間近く建物を案内しても、次回のアポイントを取れないままお客さんが帰ってしまうことがあります。
5月のゴールデンウィークに、私は関西の住宅会社の現場見学会に立ち会いました。
お客さんの職種に合わせて説明の細かさを変えた営業はセカンドプランまで進み、無口な夫婦に一方的に話し続けた営業は次回アポを取れませんでした。
接客の結果は、こうした些細な違いで大きく左右されます。
本記事では、現場見学会の接客で見た成功事例と失敗事例と、少人数の工務店でも取り組める接客ロールプレイングの進め方を解説します。
現場見学会の接客で次回アポを取った成功事例(関西の住宅会社)
関西地方の住宅会社の現場見学会で、30代の男性営業が初回面談でお客さんの心をつかみ、次回のアポイントを取った事例です。私はこの接客を間近で見ていました。
折り込みチラシを見て来場したフリーのご夫婦
来場したのはご夫婦だけで、SUUMOなどからの紹介ではない完全なフリーのお客さんでした。
この住宅会社はSNSを駆使する一方で、昔ながらの新聞折り込みチラシも活用しており、いわゆるハイブリッド戦略をとっています。
ご夫婦は自宅に入った折り込みチラシを見て来場したので、住宅会社の側には事前情報が何もありませんでした。
チラシとSNSを併用して見学会に人を集める方法は、SNS併用のチラシ集客の作り方で解説しています。
住宅会社は玄関の前にテントを張って受付を作っており、そこで記入してもらったアンケートが、その時点で営業が持っている情報のすべてでした。
アンケートには勤務先やその他の細かい情報を書く欄がありましたが、ご主人は1つも飛ばさずにすべて記入してくれました。
私もテントの中にいたので、ご主人が記入する様子を間近で見ていました。
ご主人の勤務先は誰もが知る大きな会社でしたが、社内でどのような部門に携わっているかまでは、その時点では営業にも分かりません。
勤務先から仕事の中身まで聞いた最初の質問
接客を始めてすぐに、営業はご主人にこう聞きました。
営業「ご主人の勤務先は〇〇社さんなのですね。ところでその中ではどのようなお仕事をされているのですか?」
主人「私はエンジニアなんですよ。毎日ミクロン単位と戦っています(笑)」
やり取りはかなり要約していますが、この質問で営業は、ご主人がエンジニアで毎日細かい仕事をしていることをつかみました。
断熱材の説明を数値とタブレットで細かくした
私は営業の接客をつかず離れずで見ていて、あることに気づきました。営業の接客がやたらと細かく、普段の接客ではおそらく使っていないデータまで引っ張ってきて説明しているのです。
私は2年前からこの営業を知っているので、接客の癖や内容はだいたい分かっていましたが、これまで見たことがないほど神経を使って接客していました。たとえば壁体内の断熱材の話でも、普段なら中の仕様を口頭でざっくり説明して終わるところを、このときは細かい数値を挙げながら、手元のタブレットを使って念入りに話し込んでいたのです。
住宅営業が現場見学会の接客で職種を確かめる理由
「このお客さんは細かく話さないとダメだと思いました」
接客後に30代の男性営業と話すと、営業は「このお客さんは細かく話さないとダメだと思いました」と狙いを明かしてくれました。
私自身はかなり大雑把な性格で、細かいことはあまり気にならない気質です。
そのため、私が家を買う側になって住宅営業から説明を受けるとしたら、数字をやたらと並べられるのは正直かなわないと思うタイプです。
しかし、私がそういう性格でも、お客さんも同じとは限りません。
積水ハウス時代に精密部品メーカーのエンジニア客にしたこと
私は積水ハウスの現役当時、お客さんの職業だけでなく職種にも注意していました。
私の営業エリアには、精密部品を製作している一部上場の大きな会社の本社があり、その会社にお勤めの方が一定の割合で住宅展示場に来店されていました。
私はそうしたお客さんが社内でどのような職種に就いているかに気を使っていたのです。
お客さんがエンジニアだと分かったら、私は本来の大雑把な性格を封印し、積水ハウスの仕様を細かく説明しました。カタログにも様々なデータが載っていましたが、私はそのデータを取ったときの温度や周囲の状況といった細かい情報までお客さんに伝えていました。
関西の現場見学会で接客した営業も、同じ発想をしていました。
営業はご主人が毎日細かい仕事に携わっていることを感じ取り、数値を持って理論的に説明することがお客さんの信頼を得る方法だと判断したのです。
接客後、私もかつて同じ発想で接客していたことを話し、営業と二人で大いに盛り上がりました。
5月30日時点でセカンドプランまで進行中
私がこの原稿を書いている5月30日の時点で、このご夫婦の案件はすでにセカンドプランまで進んでおり、営業からは「極めて良い感触で、契約間近だと思う」との報告を受けています。
初回面談でのこうした気遣いだけが成功の原因だとは言いませんが、私が接客を横で見た限りでは、この戦略が当たったと判断しています。
同じ住宅会社の現場見学会で見た失敗事例(無口な夫婦)
成功事例と同じ住宅会社で、別の男性社員が接客した事例です。正確に言えば失敗とまではいかず、しっくりこなかった接客と言ったほうが近いかもしれません。
LIFULLからの紹介客でも会話が続かなかった
このお客さんはLIFULLからの紹介でした。SUUMOでもLIFULLでも、紹介サービスの担当者が説明して推薦し、お客さんがそれに納得して来場しているので、住宅会社はフリーの来場と比べて圧倒的に有利な形で初回面談を進められます。
お客さんはこちらも30代のご夫婦でしたが、お二人とも物静かで無口なタイプでした。正直に言えば、担当の営業が失敗したというより、営業が難しいお客さんに当たったというのが正解かもしれません。
「うん」「そうですか」しか返ってこない1時間
営業が説明を始め、途中でお客さんの反応を確かめて意見を求めても、ご主人も奥さんも小さな声で「うん」「そうですか」「なるほど」ぐらいしか言葉を発しませんでした。横で見ていた私も「これはやりにくいな……」と心の中で思っていました。
お客さんがあまり話さないと、営業はどうしても一方的に話し込むスタイルに陥りがちです。
この営業にも、もう少しうまいやり方があったとは思いますが、結局は営業がほぼ一方的に話しまくるという、最も悲惨なパターンになりました。
営業は1時間ほど接客を続けましたが、ご夫婦は次回アポイントを取らないまま帰りました。
雑談の返しに詰まるなど、見学会の接客で起きるほかの失敗の場面と原因は、住宅展示場・見学会の接客失敗事例で解説しています。
1か月後に私がこのお客さんのその後を確認すると、営業からは「それっきりです……」とつれない返事が返ってきました。
私はその場に同席していたので、当時の様子や空気が分かっていますが、文章ではなかなか伝わらないと思います。
それでも、お客さんがあまりに無口なことに営業が焦ってしまったことは言い切れます。
住宅営業は、お客さんが無口で話さなかったときにどう対応するかを、接客の前から準備しておく必要があります。
次回アポを取れずに帰ったお客さんとの接点を、接客後にどうつなぐかは、口下手な住宅営業のお礼状とショートメールの使い方で解説しています。
工務店こそ接客のロールプレイングに時間を割く
私は研修で、現場見学会や住宅展示場の接客を想定したロールプレイングを数多く行っています。規模の大きな住宅会社はロールプレイングを滞りなく実施していますが、少数精鋭で営業している工務店は、なかなかロールプレイングができません。
工務店が忙しくて全員が集まる時間を取れない事情はよく理解できますが、そこは強引に時間を割いて実施してください。営業が頭の中で分かっていることと、お客さんを前に実際に話すことには、大きな違いがあります。
実際に出会ったお客さんを題材にする
ロールプレイングの題材は、営業が実際に出会ったお客さんにしてください。無口な客、話好きな客など何でもかまいませんので、様々なお客さんのパターンを組み込んで実施してほしいと思います。
たとえば成功事例のエンジニアのご主人を題材にするなら、営業役はアンケートの勤務先から仕事の中身を聞き出し、断熱材の仕様を数値で説明するところまでを練習します。
無口なお客さん役で一方的に話さない練習をする
失敗事例の無口なご夫婦を題材にするなら、お客さん役が「うん」「そうですか」「なるほど」しか返さない設定にして、営業役が一方的に話し込まずに接客を続ける練習をしてください。初回接客での話の運び方は、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
まとめ
5月のゴールデンウィークに同じ住宅会社で見た2つの接客では、エンジニアのご主人に数値で細かく説明した営業がセカンドプランまで進み、無口な夫婦に焦って一方的に話した営業は次回アポを取れませんでした。私が3回にわたって紹介してきた現場見学会の接客事例のシリーズは、いったんここで終わります。
今は人手が足りない世相なので目立ちませんが、就職氷河期には、面接での不用意な一言や所作が致命傷となって落とされるケースが多発したと聞いています。住宅営業も同じで、接客を横で見ていると、ちょっとしたことで結果が決まっていくことがよく分かります。
ぜひ本記事の成功事例と失敗事例を参考に、実際に出会ったお客さんを題材にしたロールプレイングを、次の現場見学会の前に行ってください。



