地場工務店の強みの伝え方|大手で決めかけた施主が契約した初回面談

大手ハウスメーカー3社から図面と見積もりを取り、1社に絞って契約直前まで進んだお客さんがいます。そのお客さんに、地場工務店が割って入る余地はほとんどないように見えます。
それでも、私の甥っ子は、ほぼ詰め切っていた大手ハウスメーカーS社を断り、地元の小規模なM工務店と契約しました。
M工務店の営業部長は、S社との違いを表と写真で比べたプレゼンを見せ、収納や日当たりまで困りごとを聞き取りました。
この2つが決め手になりました。
本記事では、親戚の実例をもとに、地場工務店のメリットが施主に伝わった経緯と、工務店が先入観をひっくり返すために必要なことを解説します。
大手ハウスメーカーではなく地場工務店を選んだ甥っ子の家づくり
私は名古屋出身なので、親戚の多くは東海地方に住んでいます。
甥っ子は4年前に、東海3県のある場所に土地を購入しました。
私は甥っ子がすぐに家を建てると思っていました。
ところが、いろいろな事情で計画がずれ込み、甥っ子が家づくりを本格的に始めたのは今年に入ってからです。
私はこのような仕事をしているので、甥っ子からちょくちょく相談を受けていました。
甥っ子が当初考えていたのは大手ハウスメーカーです。
しかし、最後まで残ったのは、契約を決めたM工務店と大手ハウスメーカーS社でした。
地元密着の零細工務店と全国区の超大手が最後まで残るケースは、珍しいと私は思います。
つい先日、甥っ子と久々に会ったので、私はアリが象を蹴散らすことができた理由を聞き込んできました。親戚なので、私もかなり突っ込んで話を聞けました。
飛び込みで大手ハウスメーカー3社を比べた
大手ハウスメーカーS社は、どこの住宅展示場にも建っていますし、SUUMOなどでも紹介されています。
そのため、お客さんがS社との接点を作るのは簡単です。
甥っ子夫婦は、資金的にも大手ハウスメーカーで問題なく建てられる状況でした。
夫婦とも深く考えることなく、大手ハウスメーカーで建てるものだと思っていたようです。
甥っ子夫婦の行動は、いわゆる飛び込みのみでした。
夫婦はSUUMOの存在を知っていましたが、そちらには相談しませんでした。
昔ながらのフリーの飛び込みで、大手ハウスメーカーを片っ端から回ったのです。
甥っ子夫婦はその中から3社を候補に残して具体的な折衝を始め、3社すべてから図面と見積もりをもらったそうです。
甥っ子はその図面を今でも大切に取ってあり、私も図面と見積もりをすべて見せてもらいました。
ハウスメーカーごとの特徴がよく出ていて、なかなか面白い内容でした。
甥っ子は最終的に2社を断り、S社を残しました。
「積み木みたいな家は好かん」と言う父親が口を挟んだ
そのまま進めばS社で決まりでしたが、契約の直前で甥っ子の父親が口を挟みました。
父親も私の親戚にあたります。
私はこの話を聞いたとき、「あの人なら口を挟むだろうな(笑)」とすぐに思いました。
私は子どもの頃から父親を知っていますが、とにかくいろいろなことに首を突っ込む人です。
今回の家づくりにも、意見をしたくてうずうずしていたのでしょう。
父親は大のハウスメーカー嫌いです。私が積水ハウスに就職した直後に父親と会ったときの会話を、今でも鮮明に覚えています。
「積水ハウスだか何だか知らないけど、ああいう箱を積み上げる積み木みたいな家は、俺は好かんな」
父親は家を地元の工務店で建てるものと考えていて、ハウスメーカーは論外でした。
甥っ子は早めに相談すると反対されると分かっていたので、ギリギリまで父親に言わなかったそうです。
私もこれは賢明な判断だと思いました。
ただ、家を建てる土地は父親の所有なので、甥っ子は父親の意見を無理に突っぱねるわけにもいきませんでした。甥っ子の計画は、ハウスメーカーとの話をほぼ煮詰めた段階で父親に打ち明け、そのまま押し切るというものでした。
地場工務店のメリットが伝わったM工務店の初回面談
ハウスメーカーに大反対の甥っ子の父親に相談すれば、「俺の知っている工務店があるから、そことも話をしてみろ」となるのは容易に想像できます。
甥っ子も、父親が懇意にしている工務店の存在は知っていました。
そのため、事前にM工務店のホームページを見て、情報だけは得ていたそうです。
ここまでは甥っ子の予想どおりでした。
甥っ子がM工務店と会ったのは父親の顔を立てるためで、契約する気は全くありませんでした。
父親と30年来の付き合いがある営業部長
ところが、甥っ子の印象は、M工務店の営業部長との初回面談で大きく変わりました。
甥「〇〇の息子ですがよろしくお願いします」
部長「お話は聞いています。お父さんとは30年来の付き合いなんですよ(笑)」
面談は和やかな雑談から始まりました。その後、営業部長は次の3つを軸に折衝を進めたそうです。
- 地場工務店とハウスメーカーの違い
- 甥っ子夫婦が今困っていることの聞き取り
- ライフサイクルの話
営業部長は、甥っ子がハウスメーカーとの折衝をほぼ詰め切っていることを、父親から聞いていたのでしょう。
S社との違いを表と写真で比べたプレゼン
そのため、営業部長は最初に、地場工務店であるM工務店と大手ハウスメーカーとの違いの説明に力点を置きました。営業部長がパソコンで見せた画面に、甥っ子も奥さんもかなり驚いたようです。
「パソコンの画面を見せてくれたんだけど、そこにはデザイン性や保証や設計思想など全ての項目に関して、ハウスメーカーS社とM工務店との違いがわかるようにしっかり整理されたプレゼンがあったんだよね」
プレゼンは、S社との比較が表や写真で分かりやすく作られていました。
営業部長は、準備に相当な時間をかけたと私は想像します。
営業部長は、S社に負ける部分では負けをはっきり認めていました。
一方で、S社より優れている部分は、理由を示しながら解説していたそうです。
甥っ子夫婦はこのプレゼンに強い説得力を感じ、地場工務店への漠然とした不信感や勘違いが消えたと話していました。
大手と比べたときの自社の強みを一文で言える売りに絞り、聞く気のあるお客さんに伝える方法は、工務店の強みの打ち出し方で解説しています。
収納・日当たり・通風まで聞いた困りごとのヒアリング
甥っ子夫婦には、プレゼンと並んで困りごとのヒアリングも強く印象に残りました。
営業部長は、甥っ子夫婦が困っていることを細かく聞き込んだそうです。
聞いた中身は、収納、日当たり、通風、室内の温度や湿度などです。
甥っ子夫婦によると、ハウスメーカーではここまで細かいヒアリングはありませんでした。
甥っ子夫婦は営業部長の細かさと引き出しの多さに感心し、この感心が最後まで商談を続ける原動力になりました。
その後の折衝でもいろいろあったようです。
最終的に甥っ子は、ほぼ詰め切っていたS社との話を破談にしました。
そして、ゴールデンウィーク明け直後に、M工務店と契約しました。
M工務店と契約した後に甥っ子夫婦が感じた不満と満足は、地場工務店と契約した施主の不満と満足で解説しています。
奥さんが抱いていた「工務店はデザインで劣る」という先入観
私は甥っ子の奥さんにも、いろいろと意見を聞きました。奥さんにとって最も大きな障害は、「地場工務店のデザイン性はハウスメーカーにかなわない」という先入観だったようです。
M工務店のホームページには、おしゃれな内観や外観の写真も載っています。
私は、見ればすぐに誤解は解けそうだと思いました。
しかし奥さんの中では、ハウスメーカーはおしゃれだというイメージが完全に定着していました。
奥さんは、そのイメージが正しいものを見る目を遮っていたと話していました。
私の妻も、同じような考え方を持っています。
妻は私の仕事を手伝っていないので、こうした話をすることはまずありません。
それでも以前、妻がちらっとこう口にしたことがあります。
「今時 地域の工務店で建てる人なんているの?」
妻の考えは、おそらく今でも変わっていないと私は思います。
ただ、妻は地場工務店の実態を何も知らずに話しています。
お客さんの心の奥に入り込んだ先入観をひっくり返すには、工務店がしっかり戦略を立てないと難しいと私は考えています。
施主がデザインや要望の聞き方、アフターサービスに不信感を持つ理由は、工務店が選ばれない理由と施主の本音で解説しています。
長崎県大村市の工務店で見たハウスメーカー以上のデザイン
私は業界の人間なので、地場工務店がピンキリであることを知っています。
同時に、デザイン性や設計力でハウスメーカーを上回る工務店も、個人的にたくさん知っています。
先日訪れた長崎県大村市の工務店の建売住宅も、まさにそうした住宅でした。
この建売住宅は、外観こそごく一般的でした。
しかし、室内のデザイン性や間取りは非常に秀逸でした。
私は地元建材会社の社員と一緒に訪れました。
同行した女性社員は「めちゃくちゃおしゃれ!この家欲しい!」と、本心からはしゃいでいたほどです。
私も全く同意見でした。
建売住宅を見た後に本社で社長とお会いし、「デザイン性とか工夫のレベルが非常に高いですね」と直接お伝えしました。
甥っ子の例のように、相手が大手ハウスメーカーでも、少数精鋭の地場工務店がひっくり返すことはできます。工務店がしっかり研究してデザイン性や提案の工夫を押さえれば、大資本の企業にも十分に勝てると私は考えています。
反対に、提案資料やアフターサービスの説明で大手に競り負けた例は、小規模工務店が高額案件を失注した理由で解説しています。
よくある質問
地場工務店と契約した後にトラブルは起きませんか?
起きることはあります。甥っ子の場合も、契約後すでにM工務店との間で、若干の行き違いやトラブルが起きていると聞いています。
まとめ
甥っ子は大手ハウスメーカーS社で決めかけていました。
しかし、M工務店の営業部長によるS社との比較プレゼンと困りごとの細かいヒアリングで、地場工務店のメリットを知りました。
その結果、甥っ子はM工務店と契約しました。
甥っ子夫婦にとって最大の障害は、奥さんの「デザインはハウスメーカーにかなわない」という先入観でした。
ぜひ本記事の親戚の実例を参考に、自社が最後に競り合う大手ハウスメーカーとの比較資料と、困りごとを聞き取るヒアリングの準備を始めてください。



