住宅営業の初回接客のコツ|悪立地の分譲地を売り切った事例

分譲地の現場で営業マンの接客を見ていると、立地の説明が、お客さんでも想像の付く話で終わっていることがよくあります。
分譲住宅の初回接客で決めきるには、3つのことをやります。
販売物件の設計意図を覚えること、お客さんの生活状況を接客の最初の数分で聞き出すこと、立地のプラス材料を自分の足で集めることです。
私がコンサルで関わった名古屋の分譲地は4つの悪条件を抱えていましたが、営業部隊が周辺調査で集めた材料を積み重ねて、すべて売り切りました。
本記事では、私が営業マンとコンサルの現場で経験した事例をもとに、住宅営業の初回接客のコツを、分譲住宅と注文住宅の違いから解説します。
住宅営業の初回接客は分譲住宅と注文住宅でコツが違う
分譲住宅と注文住宅では、住宅営業の販売テクニックが決定的に違います。
私は積水ハウスで営業マンとして働いた後、都内の零細工務店に籍を置き、その後コンサルティング業に転じました。
分譲住宅と注文住宅の両方を経験したので、その違いを嫌というほど味わっています。
今現在私が足を運んでいる住宅会社も、分譲住宅がメインです。
注文住宅の初回接客では、営業マンが「どのようなご希望ですか?」と要望を聞き、「ご要望を取り入れたプランを無料でお出しできるのですが」と次回のアポイントを取りにいきます。
営業マンが売るのは住宅展示場の建物ではなく、建物はあくまで参考です。
そのため、営業マンはお客さんの要望をひとまずすべて聞き入れることができます。
敷地調査を使った次回アポの取り方は住宅営業のアポ取りと他社との差別化で解説しています。
一方、分譲住宅の営業マンは、案内している建物そのものを売ります。
なので、営業マンが要望を無尽蔵に聞いていたら売れません。
初回が勝負という理論は注文住宅でも同じですが、分譲住宅では初回接客の比重がさらに大きくなります。
分譲住宅の初回接客では設計意図を覚えた営業マンが反論を返せる
分譲住宅の営業マンが最初にやるべきなのは、販売物件の特徴や設計意図を徹底して覚えることです。
たとえば玄関に真っ白なタイルを使っているなら、営業マンは「ここは真っ白なタイルを使っていますが、実は理由がありまして……」と話せるようにしておきます。
私がこれまでのコンサル先で会ったトップ営業マンは、こうした設計意図が頭に入っているケースが圧倒的に多かったです。
設計意図を頭に叩き込んでいる営業マンは、お客さんのダメ出しにも次のように対応できます。
お客様「玄関のタイルはもっと落ち着いた色がいいわ」
営業「ここに白を使っているのは理由がありまして……」
お客さんにとって玄関タイルの白さが【マイナス10点】だとしたら、営業マンはそれを上回るメリットを示します。そのメリットが【プラス20点】であれば合計は【プラス10点】になり、営業マンはお客さんの最初の反論をひっくり返せます。
ところが、設計意図を覚えていない営業マンは、いきなりのダメ出しに対して「あ~、そうですね~、この号棟は白になってしまいます」と消え入るように答えるしかありません。
反論に備えた資料を接客の流れに組み込むやり方は、住宅営業の初回接客の台本で解説しています。
初回接客の最初の3分で生活状況を聞き出す
交代勤務のご主人に寝室のカーテンボックスを勧めた体験談
分譲住宅の初回接客で私が次に意識していたのは、お客さんの生活状況を少しでも早く聞き出すことでした。私が実際に経験した事例で説明します。
私「〇〇さんにお勤めなんですね。〇〇勤務の方は多くいらっしゃいますが、工場の方は夜勤と日勤の交代勤務で大変だ、とおっしゃっていましたよ」
ご主人「僕も同じだよ。どうしてもリズムが狂うからね」
私がこの会話をしたのは1階のリビングで、接客を始めてものの3分だったと記憶しています。会話の直後に私の頭に浮かんだのは、「2階の主寝室に入ったらカーテンボックスの話をするかな」ということでした。
私が案内したその分譲地は、すべての寝室にカーテンボックスが付いていて、ほぼ完全な暗室をつくれる構造になっていました。
日勤と夜勤を繰り返すご主人にとって、ぐっすり眠れることは大きな意味を持ちます。
そのため、私は1階で接客をしながら、すでにこのトークの準備をしていました。
私は主寝室に着くと、寝室を暗室にできる点をご主人に説明し、奥さんにもじっくりアピールしました。奥さんへの接客の考え方はハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
説得ポイントは1か所だけでは弱いですが、同じ考え方でたくさん用意できると、営業マンが契約できるチャンスはぐんと増します。
分譲地接客の立地説明は周辺環境の調査で差がつく
分譲地の売り込みで立地が重要なことは、疑いようがありません。
ところが、私が現場で営業マンの接客を見ていると、この立地説明が非常に弱いのが目に付きます。
営業マンが話しているのは、たとえば次のような内容です。
- 「小学校まで歩いて7分」
- 「大型スーパーまで車で5分」
- 「閑静な立地で静か」
どれもお客さんが想像の付く話ばかりで、営業マンには違う側面からの徹底したアピールが必要です。
4つの悪条件を抱えた名古屋の分譲地を誰も見ていなかった
次は、私が営業マン時代ではなく、コンサルとして関わった案件です。名古屋市の某所にあったその分譲地はなかなかの悪立地で、4つの問題を抱えていました。
- 道路を挟んだ向かい側が葬祭場
- 道路を二つ挟んだ場所に市内最大の産廃処理施設を建設中
- 西隣はバックホー置き場
- 東側は古い空き家の事務所で、そこで経営者が自殺
営業マンが誰一人として敷地を見ていないというので、私が号令をかけて下見に行き、そこで初めてこの立地が分かりました。
仕入れ担当は分かっていましたが、毎月の仕入れノルマに追われて問題のある物件も入れてきます。
仕入れ担当には仕入れのノルマがあるので、営業のことまで頭が回らなかったのです。
仕入れの段階で土地の周辺環境を見極められずに失敗した例は、工務店の建売の失敗事例と土地選びで解説しています。
営業マネージャーはその場で仕入れ担当に電話をして、「なんですか!この土地は!」と食ってかかっていました。
それでも営業部隊である以上、営業マンたちはこの分譲地を売らなくてはなりません。
幼稚園や学習塾への飛び込みでプラス材料を集めた
結果として、営業部隊はこの分譲地をすべて売り切りました。
営業部隊がやったのは周辺環境の徹底調査で、基本はこれだけです。
4つの悪条件は合計すれば【マイナス300点】ですが、私たちはほかのプラス要因をたくさん探して積み重ねていきました。
営業マンたちは車に分乗して周囲をぐるぐる回り、幼稚園を見つけるとすかさず飛び込みました。
「〇〇ホームと言いますが、近隣で分譲をする予定があります。皆さんにアピールしたいので、この幼稚園の良いところを教えてください」
たまたまですが、その幼稚園は教育方針がすばらしく、テレビでも取り上げられたことがあると分かったので、私たちは徹底的なアピール材料にしました。
個人経営の学習塾も、知名度のある「普通の子向けの学習塾」でした。
進学塾ならいくらでもありますが、普通の子や少し下の子を引き上げるような塾はまれです。
営業部隊はこのほかにも、病院、市営プール、昔ながらの商店街など、おびただしい地域情報を集めてまとめました。価格が安めだったこともありますが、この調査内容が売れ行きに大きな影響を与えたのは間違いありません。
天井高の比較は利害関係のない第三者の意見で切り返す
たとえば、あなたの会社が分譲する住宅の1階天井高が240cmだとします。240cmは高くも低くもない高さですが、競合する分譲業者の標準天井高が260cmなら、あなたの会社は不利になります。
競合の業者は、お客さんにこう言ってくるでしょう。
「弊社は260cmもあるのですよ。このくらいはないとね」
営業マンがいくら240cmで十分だと説明しても、お客さんは高い方がいいのではないかと考えてしまいます。
そこで営業マンに使ってほしいのが、利害関係のない第三者の意見です。
ネットで調べると、天井高は240cmで十分だとする意見がちゃんと出てくるので、営業マンはそれを利用してください。
仮に「東京大学工学部の〇〇教授が240cmを適当な高さと言っている」という資料があれば、私なら迷わず使います。
営業マンや住宅会社が主張しても、お客さんは納得しません。
ところが第三者の資料があると、営業マンの説明の説得力は大きく増します。
天井高に限らず、お客さんが比べそうな仕様のすべてに第三者の裏付けを用意して、営業マンは理論武装をしてください。
競合分譲地の営業トークを客役で調べ、仕様の違いごとに反論を準備する方法は、分譲地の競合物件への対策で解説しています。
まとめ
住宅営業の初回接客は、注文住宅なら要望を聞いて次回アポを取りにいき、分譲住宅なら案内している建物そのものを初回で売りきる場です。分譲住宅の営業マンは、設計意図を覚えて反論をひっくり返し、生活状況を早く聞き出して説得ポイントを増やし、周辺環境の調査と第三者の意見で弱点を補います。
マイナス300点の悪条件を抱えた名古屋の分譲地も、営業マンが自分の足で集めた地域情報を積み重ねて、すべて売り切れました。
ぜひ本記事の事例を参考に、担当している物件の設計意図と周辺環境のプラス材料を、次の初回接客までに書き出してください。



