住宅会社の外国人採用の実態|設計士・現場監督・総務の3事例

外国人を採用した住宅会社の社長に私が直接聞いたところ、ミャンマー出身の女性設計士は採用から1年半で「採用して大正解だった」と評価され、ベトナム出身の男性現場監督は「可もなく不可もなく」という評価でした。
3社目のベトナム出身の女性総務は、社長がホーチミンまで出向いて15人を面接し、日本の文化になじめるかを最優先にして採用しています。
本記事では、設計・現場監督・総務の3事例と、人材派遣会社を経営する同級生に聞いた話をもとに、住宅会社の外国人採用の実態を解説します。
工務店・住宅会社の外国人採用が当たり前になった背景
大手ハウスメーカーはもちろん、小規模な工務店でも、さまざまな分野で外国人が働くのが当たり前になってきました。建設業界はとにかく人がいないのが現状で、小規模な工務店では新卒はおろか中途社員を採るのにも苦労しています。
営業担当者が足りない場合の対策は、住宅営業の人手不足の解消法で解説しています。
大きな住宅会社であれば新卒はそれなりに集まるので採用はできますが、今度は辞めずに働いてもらうのが大変だと、どの社長も口をそろえます。
私の時代ではありえない話ですが、働き方改革やコンプライアンスの問題が高いハードルとなり、上司は若い社員に気を使いながら接せざるを得なくなっているからです。
ある会社の社長は、新卒社員が現場でひどい目にあっていると言って、母親を連れて会社に乗り込んできたと嘆いていました。
しかし、これも今の社会情勢ですから致し方ありません。
こうした中で外国人の採用に踏み切った住宅会社について、私が直接社長から聞いた3社の事例を職種ごとに表にしました。
| 職種 | 出身国・性別 | 会社の規模 | 社長の話 |
|---|---|---|---|
| 設計士 | ミャンマー・女性 | 極めて大きい | 「採用して大正解だった」 |
| 現場監督 | ベトナム・男性 | 比較的大きい | 「可もなく不可もなくかな」 |
| 総務 | ベトナム・女性 | 3社の中でいちばん小さい | ホーチミンで15人を面接して採用 |
ミャンマー出身の外国人設計士が「大当たり」だった住宅会社
1社目は、ミャンマー出身の女性設計士を採用した住宅会社で、会社の規模は極めて大きいと思ってください。採用してすでに1年半が経過していますが、社長の評価は極めて高く、「採用して大正解だった」と話していました。
社長「外国人といえばミャンマー人の女性設計者を雇ったんですよ。その彼女は大当たりでしたね」
私「能力が高いということですか?」
社長「確かに総合的にみると能力が高いということになりますが、意欲というか発想力というかモチベーションが日本人と全く違うんですよ」
試験採用から社員に昇格させた技術力
この住宅会社は、最初は様子見として試験採用の形で設計士を雇い、働きぶりを見てから社員に昇格させました。社長は意欲・発想力・モチベーションの三拍子がそろっているとほめていますが、最初に驚いたのは技術力の高さだったそうです。
設計と聞くと、日本と外国では家のつくりそのものが違うので、外国人に設計は向かないのではないかという懸念が頭をよぎるでしょう。
しかし、ミャンマー出身の設計士は母国で日本のことを勉強してきたので、家のことはもちろん、日本の文化までかなり深く理解していました。
社長は、その懸念は完全に杞憂(きゆう)に終わったと話していました。
会議での発言と新しいことへの意欲
社長が技術力以上に驚いたのは、設計士のモチベーションの高さでした。設計部会の会議での発言はもちろん、独創性や新しいことに取り組もうという意欲が、高いレベルで定着しているそうです。
設計担当にする前にお客さんの了承を取った
この住宅会社は、横についていた上司の判断で、ミャンマー出身の設計士にお客さんを担当させました。ただし最初は会社側も気を使い、お客さんに次のようにお伺いを立てています。
「今回の設計担当者はミャンマー出身の女性にしようと考えていますが、お客様がどうしても嫌だということであれば、日本人に代えますがいかがしましょうか」
お客さんのご夫婦は一瞬考えたものの、しっかりと前向きに一生懸命やってくれるならいいですよと、最終的には快諾してくれました。
設計士本人も気合いが入っていたのでしょうが、とにかく一生懸命に取り組むので、ご夫婦はすぐに設計士を気に入りました。
設計打ち合わせの合間にはご夫婦が母国ミャンマーのことをいろいろと尋ね、設計士は楽しそうに答えていたそうで、今ではお客さんから応援される形になっているとのことです。
お客さんが担当者のどこを見て住宅会社を選んでいるかは、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
ベトナム出身の外国人現場監督は「可もなく不可もなく」
2社目は、ベトナム出身の男性を現場監督として採用した住宅会社で、こちらも比較的大きな会社とだけ言っておきます。
私はこの現場監督と面識がないので、社長から聞いたままをお伝えしますが、社長の評価は「可もなく不可もなくかな」というものでした。
ただ、現場監督がなかなか見つからない状況で可もなく不可もなく働いてくれるのであれば、採用は正解だと私は考えます。
この現場監督は母国ベトナムで日本語をかなり勉強してきたので、日常会話はもちろん、建築現場でのやり取りにもほぼ不自由していないそうです。
性格がかなり温和でおとなしいため、現場の職人さんからはたまに「もっと元気出せや!」と活を入れられるらしいのですが、職人さんたちは外国から日本に来て頑張っている若い男の子と受け止めています。
そのため現場は険悪な雰囲気にはならず、職人さんたちが現場監督を応援する関係になっているとのことです。
職人さんとの関係に加えて、施主への連絡の取り方や契約後のトラブル事例は、現場監督の施主対応で解説しています。
社長がホーチミンで15人を面接した外国人総務の採用
3社目は、ベトナム出身の女性を総務として採用した住宅会社で、3社の中では会社の規模がいちばん小さい会社です。
この会社もご多分に漏れず、技術職はもちろん事務方の日本人を採用するのにも四苦八苦していました。
社長は随分考えたうえで、外国人女性の採用に踏み切ったそうです。
この社長は自らベトナムのホーチミンに出向き、15人を面接しました。
採用基準は学業の成績と、日本の文化に合うかどうかの2点です。
面接に来た人の多くは一定の日本語能力をクリアしていたので、社長にとって日本語は問題になりませんでした。
社長が日本の文化に合うかどうかを重く見たのは、過去に外国人を採用して失敗した経験があったからです。
簡単に言うとホームシックで、採用した外国人が日本の食事や文化にどうにも合わずに、精神的に完全にまいってしまったケースが2件あったといいます。
その反省から、社長は能力も大事だが、日本の文化になじめるかどうかを最優先したと話していました。とはいえ実際に生活してみないと何とも言えないので、社長は「そのあたりは勘だよね(笑)」と笑っていました。
人材派遣会社を経営する同級生に聞いた外国人採用の実態
人手不足で工務店をたたんだ同級生
私の高校の同級生に、人材派遣会社を経営している友人がいます。友人の会社は、東南アジアの人材を日本に送り込む仕事をメインにしています。
友人はもともと大手ハウスメーカーの営業職の出身で、退職後にまったくの他業種へ転職した後、仲間とともに北海道で工務店を起業しました。
友人がその工務店をたたむことになった理由は、営業不振ではなく、人手不足で施工ができなくなったことです。
受注は取れるのに工事ができないという、住宅業界にいる者にとって身もだえするような状況に陥ったのです。
友人はそこから紆余曲折を経て人材派遣会社を起こし、コロナの逆境にもめげずにいまも頑張っています。
円安の影響とフィリピン人材への評価
私はコロナ前に、友人の会社がベトナム人を現地で採用する面接の様子を映像で見せてもらったことがあります。今回、外国人の派遣の状況を友人に聞いたところ、次のような話が出ました。
私「最近の外国人派遣状況ってどうなの」
友人「円安の影響もあるので日本では働きたくないという東南アジアの若い子が増えてるのは事実だね」
私「なるほど。あと、人材として真面目な若い子って多いのかな」
友人「それは思う。ベトナムの場合、擦れている若い子が増えてきたのは事実だけど、ホーチミンとかハノイから離れた地方の子になると、純朴な人材が結構いるんだよね」
私「他の国は?」
友人「俺のおすすめはフィリピンかな。フィリピンって言うと若干顔をしかめる経営者の人も多いんだけど、俺の肌感覚ではそんなことないね」
円安の影響が出ていることは私も知っていましたが、意外だったのはフィリピンへの評価の高さです。
たまたま友人のルートだと良い人材が来るだけかもしれませんが、多くの人材を扱っている中で出た感想なので、それなりの精度はあると私は思います。
個人差はもちろんありますが、国によって真面目に働く傾向に違いがあるというのも、どうやら事実のようです。
まとめ
私が社長に直接聞いた3社では、ミャンマー出身の女性設計士が「大当たり」と評価され、ベトナム出身の男性現場監督は「可もなく不可もなく」という評価でした。
ベトナム出身の女性総務は、社長が現地で15人を面接したうえで、日本の文化になじめるかを最優先にして採用されています。
人材派遣会社を経営する同級生からは、円安で日本を避ける若者が増える一方、ベトナムの地方やフィリピンには真面目な人材がいるという話も聞きました。
住宅会社の採用は日本人を採るのが第一原則ですが、人がいない今の建設業界では、優秀な外国人に頼るのも一案だと私は考えます。
ぜひ本記事の3社の事例を参考に、自社で外国人を採用するかどうか、どの職種から任せるかを検討してください。



