ハウスメーカーの営業トーク事例|奥さん一人の来場で契約した一言

私が取材したご夫婦の奥さんは、ある日曜日に近隣の住宅展示場で7社を見て回り、そのうち5社の対応に不快な思いをしました。ご主人はその話を聞いて2社を候補から外し、ご夫婦は「奥さんの要望が9割を占めるケースなどはざら」と返して聞き役に徹したS社と契約しています。
本記事では、契約客取材で聞いた実例をもとに、奥さん一人の来場客を逃すハウスメーカーの営業トークと、契約につながった営業トークを解説します。
契約客取材300件で確かめたハウスメーカーの営業トーク
私は23年間にわたり工務店やビルダーの営業指導を続けており、契約したお客さんだけでなく、契約を逃したお客さんにも多くの取材をしてきました。
取材のほぼすべてはビデオ取材で、私がビデオカメラを片手にお客さんの家へ行き、話を聞いたものです。
私自身が行った取材は120件程度で、外部委託や社員に頼んで撮影した映像まで含めると、私は300件ほどの取材映像に目を通してきました。
取材映像は、取材した工務店やハウスメーカーの社内研修に使うためのものなので、私が社外で映像を使うことはできません。そのため、記憶に残る取材を、差しさわりのない範囲で文章にして紹介します。
取材したのはホテル勤務のご主人と奥さんのご夫婦
紹介するのは20年前の取材です。私は先ほど改めてビデオを確認しましたが、20年前も現在も、住宅営業の本質はまったく同じだとつくづく感じました。
ご夫婦の家族構成は、30歳前後のご主人と30歳前後の奥さん、0歳の長男です。
ご主人はホテル勤務で、土日の出勤や夜勤が多く、家にいる時間が一定しません。
ご夫婦はお子さんが生まれたのを機に住宅購入を一念発起で決め、まず住宅展示場を見に行くことにしました。
ご主人の仕事がひと段落して時間ができるまで待たず、奥さんが一人で先に見て回ることになったのです。
住宅展示場で奥さんを怒らせた営業トーク(〇〇ホームと△△ホーム)
奥さんはある日曜日に、近隣の住宅展示場へ出かけて全部で7社を見て回りました。そのうち5社での扱いに、奥さんはいろいろな疑問と不快な思いを感じて帰ってきたそうです。
「ご自由にどうぞ」で放っておかれた〇〇ホーム
私「〇〇ホームはそんなに感じが悪かったのですか?」
奥様「日曜日で人が多かったのですが、私は女一人で行ったので何だか相手にしてもらえないんですよね!私から声をかけたのに『あっ、ご自由にどうぞ』って扱いなんですよ~ふざけんなってね(笑)」
この話だけでもひどい対応です。
日曜日ということもあって住宅展示場は混んでおり、ほかの来場客は家族連れで、中にはおじいちゃんおばあちゃんを含めた3世代の客もいたそうです。
住宅営業マン出身の私には、家族連れを先に接客したくなる営業マンの心理は痛いほど分かりますが、それでも一人の来場客を放っておくのは問題行動です。
営業マン個人の問題もありますが、住宅会社としての問題も大いにあると私は思います。
「次回はご主人とご一緒に」で話を終わらせた
〇〇ホームでは、一人で見学していた奥さんに、手が空いた営業マンがようやく声をかけました。
奥さんもこの時点では「やっと声をかけてもらったわね、さぁ、話を聞いてもらおうか!」と意気込んで話し込んだそうです。
奥さんは営業マンに促されて商談用の机に座り、ご夫婦の事情や資金の問題、間取りの希望などをとうとうと伝えました。ところが、営業マンから最後に返ってきた言葉は次のものでした。
「次回は是非ご主人とご一緒においでください。そこで深く話をしませんか?」
奥さんは心の中で「旦那が来られないから私が来てるんでしょ!」とお怒りモードだったそうです。
私も、この営業トークはさすがにひどいと言わざるを得ません。
取材にはご主人も同席しており、不満を吐き出し続ける奥さんを途中で遮って話をしてくれました。
ご主人「ひどいですよね。仕事から帰って妻に展示場めぐりの感想を聞いたんですよ。そうしたら○○ホームでこんな対応をされたというから、私も頭に来ましてね」
ご主人が怒るのは当然です。
ご主人は「そんなふざけた会社はやめておけ!」と、この時点で○○ホームを候補から外したそうです。
ご主人の勤め先と休みばかり聞いた△△ホーム
奥さんの話は、〇〇ホームの隣にあった△△ホームへと続きました。
奥様「○○ホームでぶち切れたんですけどね、隣にあった△△ホームに行ったらまたわけのわからない対応をされるんですよ」
△△ホームのモデルハウスでは営業マンの手が空いていたので、営業マンはすぐに対応してくれたそうです。
営業マンは奥さんの話を丁寧に聞いてくれたものの、少し話が進むと「ご主人のお仕事は?」「ご主人のお休みはいつですか?」と、ご主人の情報を仕入れることにやたらと力を入れ始めました。
〇〇ホームと同じく、△△ホームの営業マンも目の前の奥さんを差し置いて、その場にいないご主人のことばかりを聞いてきたのです。
この話を聞いたご主人は、〇〇ホームのときと同じように大激怒しました。ご主人の判断で、△△ホームもこの時点で検討から外されました。
ご主人不在の家での振る舞いでお客さんを怒らせた例と、怒られないために変える行動は、住宅営業の失敗談で解説しています。
ご主人ばかりに話を向ける接客は住宅会社の指導から生まれる
上層部の「旦那の勤め先はどこだ?」という問い詰め
営業マンがご主人の話ばかりするのは、住宅会社の指導方針も影響しています。
会社の上層部が「ご主人の情報を聞き出せ」「旦那の勤め先はどこだ?」と部下を問い詰めるので、営業マンは商談でもご主人の情報ばかり追いかける方向に行ってしまいがちです。
積水ハウスが新人に教えていた「ご主人7、奥様3」
私は積水ハウス出身ですが、積水ハウスはかなり昔から奥様をないがしろにしない視点をしっかり押さえていました。「ご主人7、奥様3」という言葉があり、私が在籍時の古い資料を引っ張り出して確かめたところ、これは商談中に目線を配る割合を表していました。
私は慣れてからは意識しなくなりましたが、新人の頃はこの比率を意識しながら商談をした記憶があります。少なくとも積水ハウスは、奥様をないがしろにしないように気を付けていたことが資料から分かります。
私の住宅展示場での接客経験でも、女性一人の来場や女性同士の来場は契約率が低いと感じます。
営業マンが「買い物ついでの時間つぶしかな」と思ってしまうことを、私は否定しません。
しかし、それだけで接客の手を抜くのはあまりにも軽率で、お客さんにも失礼です。
来場客の事情に踏み込んで話を聞く接客は、障碍者同居の来場客への接客事例で解説しています。
契約したS社の店長の営業トーク「奥さんの要望が9割」
このご夫婦は、△△ホームの隣にモデルハウスを構えていた、地元のパワービルダーであるS社と結果的に契約しました。私はS社についての感想も奥さんに取材しました。
私「○○社と△△社と連続2社で不愉快な思いをしたわけですが、結果的にはその隣に建っていたS社と契約したわけです。S社の営業マンはどんな感じだったのですか?」
奥様「私がですね、今日は旦那が仕事で来られなかったので・・・と話すと、その営業マンは“実際には奥さんの要望が9割を占めるケースなどはざらですから(笑)”と、旦那のことはほんの少し触れただけで、あとはひたすら私の要望を聞いてくれました。その初回面談の印象がすごくよかったので、結果的には最初の出会いが全てを決めたと思います」
店長は「奥さんが話を聞いてほしがっている」と見抜いた
私は契約を担当したS社の営業マンを知っていたので、後でことの顛末を詳しく聞きました。担当したのは住宅営業歴12年目の店長で、店長は奥さんが話を聞いてほしがっていることをすぐに見抜き、聞き役に徹したそうです。
店長も、その時点で契約できるかどうかまでは判断できていませんでした。店長は心の中では「この奥さんは何だか話したそうなので、とりあえず付き合うか」という気持ちが大きかったと話していましたが、その態度が奥さんに好印象を持ってもらうきっかけとなり、契約につながりました。
女性は、自分の話を聞いた相手に共感してもらいたい傾向が強いとよく言われます。
S社の店長の接客はその好事例で、徹底的に聞いて共感するという極めて簡単なことが契約を決めました。
それでも実際の現場では、まだ相当数の営業マンがこの点に気づいていないと私は感じます。
奥さん一人の来場客への営業トークの進め方
ご主人が来られない事情は一言で受け止める
奥さんが「今日は主人が仕事で来られなくて」と切り出したら、営業マンはご主人の不在を商談の障害として扱わず、S社の店長のように一言で受け止めます。
営業マンはご主人のことにはほんの少し触れる程度にして、奥さんの要望の話に戻ります。
初回接客で最初に何を話すかは、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
次回の約束は奥さんの要望を形にする目的で取る
奥さんが資金や間取りの希望まで話し始めたら、営業マンは〇〇ホームのように話を次回に回さず、その場で深く聞きます。
営業マンが次回の約束を取るときも「ご主人と来てください」ではなく、奥さんから聞いた要望を形にする目的で取ります。
約束の取り付け方は住宅営業のアポ取りと差別化で解説しています。
住宅展示場で話を8割で止め、続きを現場見学会などに残す方法は、住宅営業の次回アポの取り方で解説しています。
まとめ
取材したご夫婦は、奥さん一人で住宅展示場を回った日の営業トークで住宅会社をふるいにかけました。「ご自由にどうぞ」「次回はご主人とご一緒に」と言った〇〇ホームも、ご主人の情報ばかり聞いた△△ホームも、ご主人の一声で候補から外れ、奥さんの話を聞き続けたS社が契約を手にしています。
ご主人ばかりに話を向ける営業トークは、営業マン個人の癖だけでなく、住宅会社の指導からも生まれます。積水ハウスの「ご主人7、奥様3」のように、奥さんへの目線を会社として教えることが、奥さん一人の来場客を逃さない第一歩です。
ぜひ本記事の〇〇ホーム・△△ホーム・S社の営業トークを参考に、奥さん一人で来場したお客さんへの接客を見直してください。



