住宅業界におけるAI化に関する話の続編です。
前回は現場編の話をしましたが、今回は営業におけるAI化の可能性について触れていきましょう。
※前回の記事:住宅メーカーが取り組むべきAI戦略(現場編)
現状のAIはまだまだな部分がありますが、ここ数年でかなりの領域に達することは専門家が述べているように間違いないことだと私も思います。
「営業現場のAI化などまだまだだろう」
こう思っていると、あっという間に時代に先を越され、皆さん方が経営する工務店は淘汰されると私は予想していますが皆さんはどうお考えでしょうか。
まだまだ精度が低いAIですが、この種の技術は瞬く間に進化するのが特徴です。
出遅れることのないよう、その動きを皆さんも注意深く追うようにしてください。
住宅におけるAI化で考えられること
① 応酬話法の構築
これがまず真っ先に頭に浮かんだことです。
私たちがお客さんと商談するとき、契約を目指していろいろな話を進めるのですが、何の障害も無く話がまっすぐ進むことはまずありません。
もうそろそろクロージングしてもいいだろうと考えて、契約締結の話を持ち出したところ、お客さんが首を横にふりました。
「もうちょっと考えさせてくれませんか」
明快な理由があればいいのですが、私たち営業にとって最も厄介なのがこのあやふやな拒絶です。
これまでであれば、営業個人の経験や勘でこの裏にはどんな阻害要因があるのかを類推しながら話を前に進めていました。
しかし、これをAI化すれば、問題が完結する可能性があります。
ただし、もうちょっと考えさせてくれませんか、というこの一文だけ抜いてきてもAIに判断はできないでしょう。
それまで交わされてきた言葉や、やりとりを全ては無理にしても、キーポイントとなるところを数十か所入力すれば、それまでの流れから、AIがこの拒絶理由に隠された真の理由を推測する可能性があるのです。
表向きは「もうちょっと考えさせてくれませんか」でも、実は急に親が出てきて契約をストップさせた可能性もあります。
それまでの流れから、AIがこの可能性が一番高いと判断して営業担当者に知らせる可能性は充分にあるでしょう。
その上で、この拒絶反応に対する応酬話法をAIが作成し営業はその通りに話せばよいのです。
②お客さんの感情の変化を読み取る
お客さんにわからないように会話を録音する作業が発生しますが、人間の感情は同じ言葉を発しても、スピードやその微妙な高低差に本心が現れることは有名な話です。
AIがこの辺り微妙に判断して、次の一手を教えることも技術が進めば可能ではないでしょうか。
③お客さんへの返答として最適なものを選ぶ
これもその場でお客さんの会話を録音する作業が必要ですが、技術的にはこのようなことが可能になるはずです。
お客さんとテーブルを挟んで商談をしていると仮定しましょう。
商談は契約を迫る段階に達しているので、営業担当としては気持ちがソワソワして、どのタイミングで契約決断を迫ろうかと模索中です。
話を切り出してすぐにOKしてくれれば問題ないのですが、実際にはなかなかそううまくはいきません。
これを、AIが補助することになる時代が、すぐにやってくるかもしれませんね。
googleBARDで検証してみた
つい先日発表されたgooglBARDで実際に想定される会話を入力して、どのような答えが返ってくるか検証してみましょう。
質問「新築の契約をお客さんに迫ったところ、父親がダメだと反対していると言われてしまいました。
次はどのような 応酬話法を展開したら建築請負契約が取れるでしょうか」
【回答1】(原文ママ)
お客様の父親が新築の契約に反対されているとのこと、残念に思います。
しかし、契約を獲得する可能性はまだ残っています。
まず、お客様と父親の両方と話し合う機会を設けることが重要です。
お客様の父親の懸念を理解し、それらに対処する計画を立ててください。
たとえば、父親がお金が心配なら、お客様がどのように資金調達をするのかを説明し、お客様が支払いを滞納した場合にどうなるかを説明してください。
父親が住宅の場所を心配している場合は、お客様のニーズに合った場所を見つける方法を説明してください。
お客様と父親の懸念に対処したら、お客様になぜ新築契約に署名する必要があるのかについて説明する必要があります。
お客様の家族にとってどのようなメリットがあり、なぜ今が新築に最適な時期なのかを説明してください。
お客様が新築の契約に署名する理由を十分に理解できれば、署名する可能性が高くなります。
最後に、お客様と父親に忍耐強く理解することが重要です。契約を獲得するには時間と労力がかかりますが、努力する価値はあります。
いかがでしょうか。
目が覚めるような答えはさすがにまだ無理ですが、若手社員の教育なら充分に使える内容だと思いませんか。
極めてまともなことを話していると感じ、私もあらためて驚かされます。
では他の回答例を見てみましょう。
次はなかなか興味深い回答をgoogleBARDが提示しました。
【回答2】(原文ママ)
お客さんに父親が反対していると言われてしまった場合、まずはなぜ父親が反対しているのかを聞くことが大切です。
理由がわかれば、それに対する解決策を提案することができます。
例えば、父親が費用面で心配している場合は、分割払いなどの支払い方法を提案することができます。
また、父親が安全面で心配している場合は、自社の高い安全基準について説明することができます。
理由がわかったら、お客さんに契約のメリットを説明しましょう。
自社の強みや、お客さんに提供できる価値について話しましょう。
また、お客さんが契約を結ぶことで得られる具体的なメリットについても話しましょう。
最後に、お客さんに契約を結んでほしいとお願いしましょう。
契約を結ぶことで、お客さんの夢のマイホームを実現できることを強調しましょう。
また、自社との契約は安心できることを強調しましょう。
以下は、応酬話法の例です。
- お客さん:父親がダメだと反対している。
- あなた:なぜですか?
- お客さん:お金が心配だから。
- あなた:分割払いなどの支払い方法をご用意しています。また、自社では高い安全基準を採用していますので、安心してご契約いただけます。
- お客さん:確かに、それなら安心できるけど、それでも契約を結ぶかどうかはわからない。
- あなた:契約を結んでいただくと、夢のマイホームを実現できます。また、自社との契約は安心できることを保証します。
- お客さん:よく考えさせてください。
- あなた:わかりました。ご検討いただき、ありがとうございます。
契約を結んでもらうためには、お客さんのニーズを理解し、それに応えることが大切です。
また、契約を結ぶメリットをしっかり説明する必要があります。
これが別の回答事例です。
細部では意味が通じなかったり、つじつまの合わない会話が紛れ込んでいたりしますが、全体的にみれば営業の参考になるようなポイントをそれなりに付いています。
住宅営業におけるお客さんへの対応策の事例はまだまだ蓄積がないですからこの程度ですが、五年先には飛躍的な進化を遂げる可能性は充分にあるでしょう。
皆さんもうgoogleBARDでもチャットGPTでも構わないので、お客さんとのやり取りを想定した内容を質問してみてください。
結構面白い返事が返ってきます。
まとめ
今回は営業バージョンのAIについて話をまとめました。
世界的にもAIの進歩に警鐘を鳴らす向きも多いのですが、ビジネスの世界にどんどんと入り込んでくるのは、間違いないでしょう。
つい先日も、ある調査機関から私に問い合わせがありました。
「住宅業界においてAIが果たす役割はどんなものが考えられるか?」
営業面や現場面を含めて色々なお話をさせて頂きましたが、 これをビジネスと捉える人たちがすでに動き始めていることは間違いない事実です。