変人住宅営業マン列伝|年間25〜30棟売る昭和の化石と金ピカ

営業力はすごいのに部下や総務・経理を振り回している住宅営業マンがいて、その会社の社長もうすうす知っています。優秀な営業マンを育てる仕事をしていると、私はこうした変わった営業マンにたくさん会います。
変人営業マンは、売れない営業マンとは限りません。年間25〜30棟を受注しながら部下に意味不明な宿題を課すAさんもいれば、住宅展示場で接客をしないのにダントツのトップだった金ピカのCさんもいます。
本記事では、私が出会った変人営業マン3人と番外編の社長の実例を解説します。
年間25〜30棟を売る変人営業マンAさん(分譲もある住宅会社)
Aさんは、ある住宅会社で営業をしている、どう見ても昭和の化石のような人です。
古いやり方が一概に悪いとは私も言いませんが、Aさんはやることなすことが古く、部下はもちろん総務や経理にも迷惑をかけているそうです。
Aさんの口癖は「俺は昭和のおじさんだ!文句あっか?」らしく、ここから先はAさんの直属の部下に当たる若手営業マンから、私が洗いざらい聞いた話です。
契約後の色決めまで立ち会いながら毎月2棟を受注
Aさんの営業成績は、すごいの一言です。
この住宅会社は自社分譲も常に抱えているので、注文住宅だけの会社より数字が伸びやすい傾向があります。
それを差し引いても、年間25〜30棟の受注は群を抜いています。
Aさんの受注は毎月平均2棟のペースですが、この住宅会社では契約後の色決めなどもすべて営業が立ち会うため、受注が増えるほど営業はフォローに時間を取られます。そうした営業体制でこの数字を出しているので、Aさんの営業力はピカ一と言ってよいでしょう。
家でも仕事をさせる意味不明な宿題
住宅業界にも働き方改革で変化が訪れているのは事実で、毎日が午前様だった私の営業マン時代と比べると雲泥の差です。
ところがAさんは、部下の営業マンに意味不明な宿題を課すそうです。
Aさんは事務所にだらだら居残らせるわけにはいかないので、家に帰ってからも部下に無理やり仕事をさせるのが目的らしく、宿題の内容もまったく意味が分からないものばかりとのことでした。
「長く働かせないと気が済まないとしか思えない」
部下の若手営業マンはこう憤っていましたが、不思議なのは、社長もこのことをうすうす知っている点です。
私が社長であれば、即刻止めさせる事案です。
おそらく社長の頭には「Aは売っているからな。へそでも曲げられて転職されたら大きな損失になる。まぁ、見なかったことにしておこう」という思いがあるのではないかと、私は思っています。
平成初期の私の上司は午後に出社していた
『24時間戦えますか?』の平成初期は、時任三郎さんが出演する栄養ドリンクのCMソングがヒット曲になった時代です。
そんな私の新人時代にも、とんでもない上司がいました。
その上司は、午後に寝ぼけた顔で出社するのです。
信じられないかもしれませんが、上司のこの出社が通用していました。直属の店長も支店長も知っていましたが、上司の営業力がすごかったので、なんとなく黙認という形になっていました。
私たち部下が帰宅するのは毎日午前様でしたが、上司本人は体力が有り余っているので、夜中まで延々とだらだらしていました。とくに夜の11時、12時は、上司の目が覚めているピークだったと思います(笑)。
部下が毎日午前様だった時代のような、土下座で契約を取る昭和の根性営業の現場については、住宅営業がブラックと言われる理由で解説しています。
住宅営業の折衝が破談続きになる変人営業マンBさん
Bさんは、今も現役で住宅営業をしている営業マンです。
Bさんには社内で若手の女子社員をとろんとした目で追う習性があり、誰も注意はしないものの、女子社員を中心に陰では「気持ち悪~い」と言われています。
この手の人には、私も高校の同級生、大学の先輩、就職してからの職場で、合計3人出会いました。
ただ、Bさんは住宅営業マンなので、折衝相手であるお客さんの奥さんとも接点ができます。
私は現場を見たわけではありませんが、お客さん夫婦が事務所や展示場に来て打ち合わせをするとき、奥さんが美人だったりすると周囲がひやひやするそうです。
さすがにBさんが襲いかかることはありえませんが、Bさんには瞬間的にいやらしい目線が出るとのことでした。
奥さんも旦那さんも、Bさんの目線におそらく気づくのでしょう。
Bさんは、折衝の途中で話が破談になることが非常に多いそうです。
私はBさんを直接知らず、見たこともありませんが、機会があればその現場をぜひ見たいと心に誓っています。
ネグリジェ姿の奥さんから逃げ帰ったイケメン営業マンH君
H君は変人でも女好きでもなく、Bさんとは真逆の高身長の超イケメンです。
余談になりますが、H君はあるとき、折衝中のお客さんの奥さんから、昼に自宅へ来てほしいと連絡を受けました。
「話が進展しそうだ!」と喜んだH君が自宅のチャイムを押すと、奥から出てきたのはネグリジェをまとった奥さんでした。
目が点になって動転するH君に、奥さんはこう声をかけたそうです。
「上がってちょうだい……」
「これはやばい!」と直感したH君は、ほうほうの体で逃げ帰りました。住宅営業には、こんな話もあります(笑)。
住宅展示場で接客しない金ピカの変人営業マンCさん
黒塗りのベンツに金のロレックス、とどめはパンチパーマ
50代、60代の方なら覚えていると思いますが、今から35年ほど前の代々木ゼミナールに、全身金ピカで名をはせた英語担当の佐藤先生という名物講師がいました。佐藤先生は晩年、生活保護を受けながら小さな木造アパートの一室で亡くなったとの報道があり、私は栄枯盛衰を感じずにはいられませんでした。
そんな金ピカの営業マンが、住宅業界にもいました。
今はもう引退していますが、Cさんの営業車は黒塗りのベンツで、エンブレムはもちろん金です。
Cさんの靴は白いエナメルで、時計は金のロレックス、このいでたちでとどめはパンチパーマでした。
ところが、このCさんがよく売りました。変人というニュアンスとは少し違う気もしますが、普通の住宅営業マンとは明らかに違うので、私はCさんにも登場してもらいました。
「俺は展示場接客なんてしないよ」の着座トーク
Cさんは私に、あっけにとられる言葉を口にしました。
「俺は展示場接客なんてしないよ」
Cさんから聞いた話では、住宅展示場で来場客を迎えるときは、このようにやり取りしていたそうです。
Cさん「いらっしゃいませ。さぁ、どうぞご自由にご覧下さい」
お客様「はい、ありがとうございます」
Cさん「私は玄関におりますのでご夫婦だけでのんびりと見学してください。営業マンに付かれると嫌でしょう?(笑)」
お客様「あっ・・・そうですか・・・」
Cさん「ただお願いがあるのですが、見学した後に感想だけお聞きしたいのでこちらのテーブルにお越しいただけますか?」
ものすごいロジックで、こう言われたお客さんは、帰り際にテーブルへ着座せざるを得ません。
Cさんは接客という労力を一切使わずに、来場客を着座させてしまうわけです。
お客さんが座った後はなんだかんだと話が長引き、Cさんの話術もあいまって、具体的な商談へと発展していくそうです。
この話はCさん本人から聞きましたが、Cさんはまちがいなくダントツのトップ営業マンでした。誰にもまねできないという意味では、Cさんも変人営業マンと言ってよいかもしれません。
和服で三つ指をついて出迎える女性社長(番外編)
番外編として、私は接客をすべて和服で行う女性の社長にも会ったことがあります。
お客さんが住宅展示場だと思って中に入ると、和服姿の社長が出迎えるわけですから、お客さんにとってのインパクトは大きいでしょう。
しかもこの社長は、玄関ホールで正座をして三つ指をつき、「ようこそお越しいただきました」と頭を下げます。
番外編と書きましたが、この社長は十分に主力選手で、私の記憶にも強く残っています。
まとめ
変人営業マンは売れない営業マンとは限らず、年間25〜30棟を受注するAさんや、展示場接客をせずにダントツのトップだったCさんのように、よく売る人もいます。一方で、部下に意味不明な宿題を課すAさんや、折衝の破談が多いBさんのように、周りを困らせる人もいます。
ぜひ本記事の変人営業マンの実例を参考に、自社の営業マンの売り方と、周りの社員やお客さんへの影響を見直してください。



