住宅営業はブラック?土下座で契約を取る昭和の根性営業の現場

先日、週刊文春がオープンハウスを取り上げ、就活生まで巻き込んだパワハラ疑惑を大きく報じました。
住宅営業の現場には、ノルマに追い詰められて失踪した先輩や、お客さんの家の玄関で土下座して契約を取った若手営業のような、昭和の根性営業がいまも残っています。しかも、強引なやり方でも受注が取れてしまうことが、強引な営業の住宅会社がなくならない一因です。
本記事では、私が見てきた実話をもとに、住宅営業がブラックと言われる理由と、昭和のコテコテ営業がいまも受注を取っている現場を解説します。
住宅営業がブラックと言われる理由は昭和の根性営業にある
オープンハウスへの文春報道と退職者から聞いた実情
「昭和の根性営業なんてものは過去の話だ」と一般論ではよく言われますし、大枠では私も間違っていないと思います。
オープンハウスは辞める社員が多い住宅会社なので、社内の雰囲気が自然と外に伝わりますし、私も退職者と何人も話しているので、ある程度の実情を知っています。
オープンハウスの営業はまさに昭和の営業といってよいものですが、さすがにやりすぎた感があります。
報道の詳しい中身は、週刊文春で確認してください。
一方で、現実の営業現場に目を向けると、昭和のコテコテ営業はそれなりに通じる部分があります。オープンハウスが実績を伸ばした理由も、そこにあるのでしょう。
訪問件数を増やせば受注が増える「数の法則」
強引な営業がなくならないのは、人の迷惑を顧みずに突撃して粘っても、数をこなせば数の法則が働いて受注が取れてしまうからです。訪販会社は、基本的にこの計算で目標数字を決めています。
私と面識のある外壁塗装の訪販会社の社長の例で考えます。
仮に、営業社員に毎月1万件を訪問させて、外壁の受注総額が1,000万円だったとします。
その場合、受注を1,500万円に増やしたければ、訪問を1万5千件に増やせば、ほぼ目標の数字に届きます。
100件や200件では数字の根拠が曖昧ですが、統計的には分母が増えれば分子もそれに比例して増えます。訪販会社に残る課題は、今の人数で訪問回数をそこまで増やせるかどうかだけです。
ノルマに追い詰められて失踪した先輩(住宅営業のブラックな一面)
昭和ではなく平成の話ですが、私の先輩が数字に追い詰められた挙げ句、失踪する一件がありました。先輩はよく面倒を見てくれた方で私は大好きでしたが、上からのしかかってくる数字が、先輩には大きなプレッシャーになっていたのでしょう。
あるとき先輩は、契約をもらう予定だったお客さんのお宅に出かけたまま、深夜12時を回っても戻ってきませんでした。直属の上司も先輩を待っていましたが、「嫌な予感がするな・・・」の一言で、残っていた営業全員が車に乗り、先輩の寮に向かいました。
寮の外から窓を見ると薄い明かりが付いていたので、私の上司は私にこう言いました。
「あいつ中に居るんじゃないか?おい、森、この合鍵で中に入って様子見てこい」
私は焦りました(笑)。
部屋の中で嫌なものを見るのではないかという恐怖を感じながら、私は恐る恐る中に入りました。
奥まで進むと、先輩が寝ているはずのベッドが盛り上がっているのが目に入り、先輩はそこで寝ていました。
「森か?悪いな、迷惑かけて・・・」
先輩は店長から大目玉を食らうと思っていたようですが、なぜかこのときはお咎めもなく、翌日の朝礼でも誰もこの件に触れないまま時が流れました。上司もさすがに、これ以上詰めたらまずいと思ったのでしょう(笑)。
数字が出ない営業への人格否定や休日出勤の強要といった体質が残る理由は、住宅営業がやばいと言われる理由で解説しています。
昭和のコテコテ営業がいまも受注を取っている現場
大雨の中2時間待った新卒のA君(東北の住宅設備会社)
つい最近、東北であった話です。工務店の営業ではなく住宅設備会社の営業の話ですが、まさに昭和のコテコテ営業で、新規開拓先の社長に会うところまでこぎつけた若手がいます。
主役は新卒のA君です。
A君は大学時代に体操部で鍛えていたので、二の腕は筋肉隆々で、スーツがはちきれんばかりです。
営業職で入社したとはいえ、新卒のA君に大した知識があるわけではなく、百戦錬磨の工務店に営業に行っても、普通は相手にされません。
住宅設備会社の営業は、工務店のような個人向けの営業ではなく、いわゆるB to Bの営業です。
住宅設備会社は既存の取引先に加えて新しい工務店を開拓していくので、営業社員は新規開拓に励みます。
しかし、訪問先の工務店にはそれまでの取引先があるので、価格が圧倒的に安くない限り、なかなか新規の取引にはつながりません。
新卒の営業が食い込むのは至難の業だと考えるのが普通です。
ところが、A君は違いました。
「ノーアポイントで訪問したのですが、大雨だったんですよ。事務の女性社員が対応してくれたのですが、社長は2時間ぐらいしないと帰ってこないって言うのです」
普通の営業なら、訪問理由を社長に伝えてほしいと告げて退散するところですが、A君は退散しませんでした。
「では、ここで待たせてもらいます、と伝えて会社の前で傘を差し2時間立って待っていました。そこで社長が帰って来て一旦は会社の中に入ったのですが、しばらくすると私の姿を見つけて社長室に招き入れてくれたんですよ」
まさにコテコテ営業です。
社長にしてみれば、うるさい営業が来たぐらいにしか思わなかったのでしょうが、大雨の中で会社の前に2時間も立っている姿を見れば、ひとまず「入れ」と言わざるを得ないでしょう。
この工務店とのその後の取引は未定ですが、ここまで食い込んだA君は大したものです。
コンクリートの上で土下座して契約を取ったC君
地域ではかなり名の知れた有力工務店にも、若手営業のC君がいます。
C君は、絵に描いたような土下座でお客さんから受注を取ってくるタイプです。
C君は契約の経緯を私にこう話しました。
「おととい契約したお客さんですけども、うちが値段が高かったこともあり、なかなか首を縦に振ってくれなかったんですよね。最後は粘りに粘りましたよ。玄関で土下座して契約するまで帰らないと私は言ったんです。玄関といっても靴が置いてあるところですよ。コンクリートの上で土下座しました!そうしたら最後お客さんが根負けして契約してくれたんです!やりました!」
私が驚いたのは、C君がこの手法に何の疑問も持たず、誇らしげに語るメンタリティーです。同時に、こんなやり方でも契約してくれるお客さんがいることにも、私はあらためて驚きました。
型破りなやり方で受注を重ねる営業の実例は、年間25〜30棟売る変人住宅営業マンで解説しています。
土下座営業を私が勧めない理由
住宅営業ですから、ある程度粘るのは仕方がありませんし、気合や根性も必要だと私は思います。それでも、土下座で契約を迫るやり方はどう考えてもおかしいので、私個人なら決してやりませんし、コンサル先でも間違っても勧めません。
根性に頼らない受注の取り方として、口下手な営業でも続けられる礼状の使い方は住宅営業のお礼状とショートメールの活用法で、紹介のもらい方は紹介営業のコツで解説しています。
新卒の住宅営業は「1年生なんです!」がいまも通用する
新卒であること自体が営業ツールになる
「1年生なんです!頑張っています!」という売り込み方は、今でも通用します。
私は毎年のように新卒社員を指導しているので現場の生の情報が入ってきますが、新卒社員は新卒であること自体が営業ツールとして働くことがよくあります。
自分の息子や娘と同じくらいの年の営業が一生懸命汗を流していれば、お客さんが「頑張ってるから花を持たせてやるか」と思っても不思議ではありません。一方で、一生に一度あるかどうかの住宅取得で数千万円の借金をするのに、情にほだされて決めるのは納得できないという人も多くいるでしょう。
それでも工務店の経営者に言いたいのですが、新卒社員や2年生程度の若い営業がいるなら、とにかく一生懸命汗を流させ、お客さんに食いつかせてください。こうしたコテコテの昭和的営業が功を奏することは結構あります。
新卒社員に汗を流させる一方で上司が教えるべき資金計画については、新人営業マンの育成と資金計画の課題で解説しています。
本人が嫌がる根性営業はやらせない
私自身は、この手のコテコテ営業があまり好きではありません。私が今22歳に戻って新卒として住宅会社に入社したとしても、嫌悪感を抱いてやらないでしょう。
ただし、私はこの手法を否定しているわけではなく、私個人として嫌いだと言っているだけです。もし私が工務店の経営者になって新卒社員を1人採用し、その新卒社員が昭和的なコテコテ営業をやりたがっていて何の抵抗もないのであれば、私はお客さんの迷惑にならない範囲でやらせるでしょう。
反対に、本人の意思を無視して根性営業をやらせてはいけません。
まとめ
住宅営業がブラックと言われる背景には、ノルマの重圧と、強引な昭和の根性営業でも受注が取れてしまう現実があります。大雨の中で2時間待って社長室に招き入れられたA君も、玄関で土下座して契約を取ったC君も、根性営業で結果につなげていました。
私自身はコテコテ営業を好みませんが、本人が望み、お客さんの迷惑にならない範囲であれば否定はしません。
ぜひ本記事の実話を参考に、入社や転職を考えている住宅会社の働き方を見極めてください。



