営業研修のロープレ事例|職人出身者を50日で鍛えた工務店

現場職人から住宅営業に転身したAさんは、工務店の社長がお客さん役を務めるロープレをほぼ50日間続けました。
Aさんは初めての接客で最初の5組10組こそうまくいきませんでしたが、その後は先輩社員並みにアポイントを取れるまでに成長しました。
社長のロープレは、住宅展示場の玄関先での挨拶やアンケート記入といった実際に起こる場面を書き出し、社長が合格を出すまで次の場面に進まない方式でした。
本記事では、Aさんが受けた身なりの指導、マナー研修、ロープレ、電話の順に、住宅営業の研修でロープレを実際の接客に役立てる方法を解説します。
住宅営業の研修にロープレを組み込んだ工務店の事例
現場職人から住宅営業に転身したAさん
Aさんは現場で職人として働いていたころ、現場に出入りする営業マンと話すうちに「住宅営業はかなり稼げそうだな」と考えるようになりました。そこでAさんは、その営業マンが勤める工務店の社長に面談を申し込み、入社にこぎつけました。
この工務店の社長は、大学の建築学科を卒業して大手ゼネコンに就職した後、自ら工務店を起こした経歴の持ち主です。社長は基本的に真面目な性格で、細かいことにもよく気が付く方であり、私から見ても少し細かすぎるのではと感じる部分が多々あります。
正社員への昇格を条件にした社長のプログラム
面談でAさんが歩合給のことしか聞かなかったため、社長はAさんに不安を持ちました。それでも社長は、自分が組んだプログラムをすべて消化したら正社員に昇格させるという条件をAさんに飲ませ、採用に至りました。
Aさん自身に営業のセンスがあったのは言うまでもありません。それに加えて、社長のプログラムが極めてよくできていたことと、そのプログラムを最後までやり遂げるとAさんに約束させた社長の力量が、Aさんを成功に導いたと私は考えています。
社長が組んだようなプログラムで新人営業に1年目から何を身に付けさせるかは、住宅営業の新人研修でやるべき5つで解説しています。
ロープレ研修の前に工務店の社長が課した身なりとマナー研修
職人時代の写真に漂っていたヤンキー臭
現在の職人さんにはスマートな雰囲気の方も増えており、そのまま営業をやれば成功しそうなほど理路整然と意見を述べ、知識も豊富な方が目立ちます。今から2年前に私が千葉県で取材した大工さんがまさにその典型で、私はあまりによくできた大工さんだという噂を聞きつけ、営業研修の素材にしようと取材をお願いしたほどでした。
ただ、Aさんが現場で職人をしていた時代の写真を見たときの私の正直な感想は、「ヤンキー臭が漂うな」でした。Aさん本人もそれを認めています。
「確かに昔はやんちゃもしていた時代があったので、この時は少しイメージが悪いかもしれませんね、ははは(笑)」
社長も職人時代のAさんの見た目は気になっていたようで、親方に当たる人に、服装や外見をもう少しピリッとさせるよう指導してほしいと伝えていました。そのため社長は、面談を求めてきたAさんに当初は否定的でしたが、前のめりと言えるほどのAさんの勢いに考えを改め、条件付きで採用することにしました。
仮採用の翌日にスーツで出社した
社長が採用時の様子を話してくれたのですが、Aさんは仮採用の翌日に床屋で頭をさっぱりさせ、ビシッと決まったスーツで事務所にやってきたそうです。
社長はもちろん、他の社員も「全く別人じゃんね、どうしたのA君」と囃し立てるほどの変わりようでした。
プログラムの第一項目だった身なりの課題を、Aさんは1日でクリアしたわけです。
1泊2日のマナー研修で大きく変わった理由
社長は次に、外部で行われているマナー研修にAさんを1泊2日の予定で参加させました。
Aさんは文句ひとつ言わずに出席し、翌々日には出社しています。
研修でAさんは、お辞儀の仕方や名刺の出し方に始まり、車に乗るときの上座がどこかまで、さまざまなマナーを学んできました。
新人営業にマナー研修を受けさせる意味は、新卒研修でのマナー研修の効果と注意点で解説しています。
私がAさんに直接話を聞くと、Aさんはこの手の研修を初めて受けたそうで、次のように話していました。
「めちゃくちゃ新鮮でしたし、衝撃的な内容が多かったです。とにかく面白かったでした」
中途半端に研修慣れしているホワイトカラーの人と比べると、Aさんは研修から受ける新鮮さと衝撃の度合いが違ったので、大きく成長しました。
研修は何でも同じで、10人が参加するとそのうち1人か2人には研修がはまり、大きく変わります。
Aさんはまさにその1人に当たったと言っていいでしょう。
「お金を払ってマナー研修なんかに行かせても意味ないよ」と話す工務店の社長もいますが、私はそれは誤解だと考えています。
研修には当たり外れがあるので、社長には事前に情報を集めてから選んでほしいのですが、若い人にとってマナー研修は初耳のことが多く新鮮です。
新卒社員の場合の研修の組み方は、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
住宅展示場の玄関先を想定した50日間のロープレ
お客さんの断り方まで設定したロープレシート
私はこの工務店の社長に、実際に使ったロールプレイングのシートをすべて見せてもらいました。シートには、住宅展示場の玄関先での挨拶の仕方や、来場アンケートに違和感なく記入してもらうやり方などのトークが並んでおり、社長はそれらを一つ一つ潰していくロープレを行いました。
たとえば玄関先でアンケートを取る場面のシートには、お客さんがアンケートを書くのを嫌がる、電話番号は書かないなど、さまざまな設定が用意されていました。
社長が合格を出すまで次の場面に進まない
ロープレではAさんが営業役、社長がお客さん役となり、Aさんはいろいろな場面を毎日みっちりこなしたそうです。すべてではありませんが、社長は他の社員にロープレの様子をビデオで撮らせ、後で検証までしていました。
Aさんが何回も繰り返し、社長がOKを出したらその単元は卒業となって次の場面に移ります。
この進め方だったため、Aさんはロープレをすべて終えるまでにほぼ50日間を費やしました。
朝から晩までロープレをしていたわけではありませんが、Aさんは最低でも1日1時間、場合によっては3時間程度のロープレをこなしています。
この訓練は、かなりの根気がないととても続かないと私は思います。雑談の場面を題材にしたロープレは、住宅営業ロープレの進め方で解説しています。
過去名簿への電話と初めての接客
ほぼ50日間のロープレを終えたAさんに、社長が次に課したのは電話でした。会社のコンピューターに入っている過去名簿のお客さんに、その後の状況を聞いていく徹底したローラー作戦です。
相手の顔が見えない電話では、お客さんと面と向かって話すときとは違う工夫が必要になります。
社長は、対面の接客と電話の接客の両方をAさんに身に付けてほしいと考え、電話も徹底的にやらせたそうです。
過去名簿を使った新人教育は、住宅営業の新卒研修での放棄リスト訪問で解説しています。
入社から70日程度が経過したところで、社長は初めてAさんを住宅展示場や現場見学会の接客に立たせました。
Aさんは最初の5組10組こそなかなかうまくいきませんでしたが、その後はベテラン営業マンに匹敵する饒舌ぶりを発揮し、先輩社員並みにアポイントを取れるまでに成長しました。
Aさんは現場に出てほどなく売り始め、その後も成績を落とすことなく今に至っています。
接客の現場でロープレの場面が再現された
私はAさんに、初めての接客について聞いてみました。
私「入社して2ヶ月ぐらい経ってから初めて接客に出たと社長から聞いたけども、すごく場慣れしていてうまかったらしいよね」
Aさん「うまいかどうか分かりませんけども、ロープレで徹底して行ったシーンと同じような場面が実際の接客で出てくるんですよ。だからあまり迷うこともありませんでしたし、お客さんから何かを聞かれても結構答えることができましたね」
Aさんの例は、ロールプレイングが実際の接客に役立った典型的な成功事例です。住宅営業が実際に起こりそうな場面を想定してロープレですべて押さえておけば、お客さんとの会話が途切れることなく、よどみなく話を続けられます。
展示場の接客で起こりそうな場面を想定してロープレを繰り返す進め方は、住宅営業のロープレ実例で解説しています。
もちろん、ロープレとまったく同じ場面がすべて実際の接客で再現されることはありません。
そこはAさんの頭の回転の良さと、普段からの話好きな性格が功を奏したのでしょう。
営業社員は基本的なトークを習得していれば、あとはそこにプラスマイナスを加えることで、なんとかお客さんと会話できるものです。
営業社員が自分の知らないことを質問されたときは、「それは分かりませんので調べてきます」と言えばいいだけです。
Aさん本人の素質が高かったことも大きな要因だと私は分析しています。それでも、社長が現場を意識して細かく作り込んだロープレがAさんの基礎になっているのは間違いなく、Aさん自身もそう強く主張していました。
まとめ
現場職人から住宅営業に転身したAさんは、身なりの指導とマナー研修を経て、社長がお客さん役を務めるロープレをほぼ50日間こなし、過去名簿への電話を経て入社70日程度で接客に立ちました。ロープレで練習した場面が実際の接客でも出てきたため、Aさんは迷わずに会話を続け、先輩社員並みにアポイントを取れるようになりました。
住宅展示場の玄関先やアンケートといった接客で実際に起こる場面を書き出し、お客さんの反応を変えた設定を用意して、社長が合格を出すまで次の場面に進ませないことが、Aさんの工務店のロープレの中身でした。
ぜひ本記事のAさんの事例を参考に、自社の住宅展示場で起こる場面を書き出したロープレシートを作ってみてください。



