工務店の情報収集は足りている?着工50万戸予測を知らない社長

建材会社の営業社員が「10年後に着工数が50万戸を下回るという調査が出ていますからね」と話しても、「そんな調査は聞いたことないな」と答える工務店の社長がいます。
私が営業指導をしている建材会社の営業社員の報告では、担当する小規模零細工務店の中に、こうした反応を示す社長が何社もいました。
工務店の社長と情報との距離は、専門誌のメルマガ購読と取引業者への聞き取りで縮められます。
紹介だけで年間3棟を受注しているので、新規集客には動かないという工務店の社長もいました。着工数が減ると予測されている以上、私はその予測が当たった前提で新規集客を考えるべきだと考えています。
本記事では、建材会社の営業社員から聞いた2つの実話をもとに、工務店の情報収集の方法と、新規集客への向き合い方を解説します。
建材会社の営業指導で見えた工務店の情報収集の差
私の本業は、工務店に在籍する住宅営業社員の営業指導や、住宅会社全体の仕組み作り、住宅展示場の設営などのアドバイスです。一方で、私は住宅会社以外のコンサルティングも20年間にわたって行っています。
建材会社は全国各地にあり、工務店をはじめ、地域のパワービルダーや大手ハウスメーカーに建材を卸しています。
建材会社では工務店ごとに担当の営業社員がつき、私は今年、複数の建材会社でこの営業社員たちの営業指導をしています。
営業社員たちから上がってくる報告を聞くと、取引先の工務店が抱える問題点が浮かびあがってきます。
合板の商談で野村総合研究所の調査を知らなかった社長
建材会社の営業社員B君が、取引先の零細工務店の社長と交わした会話を紹介します。
B君「今後は安定して合板が入りますので、今回のお宅も弊社から資材入れさせてくださいよ」
社長「他の会社の値段も見てからにするよ、ちょっと待って」
B君「そうですかわかりました。ところで社長はSNSなど新しい媒体で発信をする取り組みなどしていますか?」
社長「Instagramはちょろっとやってるけどね。でも、最後に更新してから半年経っちゃったかな(笑)」
B君「野村総合研究所の調査では10年後に着工数が50万戸を下回ると出てますからね。何でも飛びつけばいいというものではないですけども色々とチャレンジしないと」
社長「10年後にそんなに減るんだ。そんな調査は聞いたことないな・・・」
この会話は、B君との面談で彼から私に報告された、実際のやり取りです。私が着目したのは、野村総合研究所の調査の存在を、この社長がまったく知らなかったことです。
同じ反応を示す社長が何社もいた
100社の工務店が知っている中で、たまたまこの社長だけが知らなかったのであれば、私も分からなくもありません。しかし、B君が担当する小規模零細工務店には、同じような反応を示す社長がほかにも何社もいました。
着工数が激減することは、ほぼすべての研究機関や住宅関係者が認めています。
工務店の社長がこの調査を知ったうえで「私は異論がある」と言うのであれば、問題はありません。
ところが、B君の取引先の社長たちは、異論を持つ以前に調査そのものを知りませんでした。
規模の大きな住宅会社は、この手の情報を必ずつかんでいます。
一方で、小規模で営んでいる工務店は、情報を手に入れる度合いに大きな差があるのは否めません。
インターネットがない時代ならいざ知らず、今は社長が自分から情報を取りに行ける時代です。
情報に右往左往して振り回されてはいけませんが、着工数が激減するという予測がこれだけ出ている中で、工務店の社長がその調査を聞いたことがないのは大きな問題です。
工務店の情報収集は専門誌のメルマガから始める
私が工務店の社長にいちばんすすめる情報収集の方法は、住宅関連の専門誌のメルマガに登録することです。
住宅関連の専門誌はさまざまありますが、私はどれも購読していません。
その代わりに、私は複数社のメルマガに登録しています。
ある新聞社からは、毎日のようにメルマガが私のスマホに届きます。私がメルマガを開くとその日の見出しが4、5本ぱっと目に入り、見出しを眺めるだけでも業界の動きがかなり分かります。
見出しに目を通して「これって面白そうだな」「こんな動きが世の中にはあるんだ」と感じたものは、私がネットで調べます。
そうすると、ほぼ100%その情報の中身までつかめます。
さらに突っ込んで知りたいときは新聞を購読すればよいのですが、私はメルマガだけで十分に情報を入手できています。
メルマガに登録しすぎると、四六時中届くメールにいら立つことがあります。
しかし、住宅業界のメルマガに限ってはそうならず、メリットのほうがはるかに大きいと私は考えています。
工務店の社長には、メルマガの購読を強くおすすめします。
取引業者の営業担当者を情報収集の窓口にする
私が工務店の経営者だったと仮定します。家族経営に近い形態で、取引業者の営業社員とも社長の私が直接やり取りする規模の工務店としましょう。
住宅設備機器、建材、銀行など、さまざまな業界の担当者が営業を兼ねて私に接触してくるはずです。
取引業者は私の工務店より規模が圧倒的に大きいケースが多く、業種もそれぞれ違うため、情報の入り方も違います。
取引業者の担当者は、工務店の社長にとって非常に有益な情報源であり、これだけのチャンスを社長が活用しないのは実にもったいない話です。
機転の利く営業担当者であれば、工務店の社長にさまざまな情報を振ってきます。
ところが、その辺りの嗅覚に乏しい担当者だと、売りたい商材の話だけして終わってしまいます。
そこで、私が社長なら、商談のついでに自分から探りを入れます。
私「君の言うことは分かったからパナソニックの新商品を今度の現場に入れてくれるかな?」
営業「分かりました、ありがとうございます」
私「ところで他の住宅会社はどうかな。現場見学会とか積極的にやっているの。新規客がすごくたくさん集まったとかいう事例とか知らない?」
取引業者の担当者も他社の動きをべらべらと話すわけにはいきませんが、まったく口を閉ざすこともないはずなので、社長はなんとなく動向をつかめます。ごく原始的なやり方ですが、工務店の社長から積極的に情報を取りに行く場合と、そうした素振りをまったく見せない場合とでは、手に入る情報の量に雲泥の差が出ます。
「SNSは手が回らない」年間3棟の工務店社長との会話
別の建材会社の話ですが、これも私にとっては耳を疑う内容でした。建材会社の営業社員をH君とし、H君と取引先の工務店社長との会話を再現します。
H君「SNSを全くやっていないようですけども、周辺の工務店さんは皆さん始めてますよね。規模の小さな会社こそ新規のお客さんを得るための有力な武器になるはずです。社長も少し考えてみたらいかがですか」
社長「うちはいいよ。年間3棟ぐらいしかやらないし、今のところ知り合いの紹介で十分に新規が取れているから、そんなに汗をかいて新規を取る必要もないし。そもそもSNSとか毎日更新するの大変じゃない。うちじゃ手が回らないよ」
この会話は、H君から受けた報告をそのまま再現したものです。
確かに、この社長の工務店は新規客に困っていません。
工務店は田舎にあり、社歴も極めて古いので、地域での信頼性はしっかり担保されています。
特に営業活動をしなくてもお客さんが集まってくるため、社長にまったく不安がないと言えば嘘でしょうが、社長は自分なりの経験と勘で、余分な動きをする必要はないと判断しているわけです。しかし、私から言わせていただければ、そんな悠長なことを言っていて大丈夫ですか、となります。
年間30〜40棟を手がける会社は、将来の新築着工数の激減予想に敏感に反応します。その逆に、年間2〜3棟の会社は妙に安心している節があります。
小規模工務店の社長が「集客には困っていない」と正常性バイアスに陥る理由と今から打つ手は、着工減という工務店経営の課題で解説しています。
着工数50万戸割れの予測情報を新規集客の前提にする
新築着工数の激減は、あくまでも予想です。コロナによって着工数がかなり減るのではないかという予想も出ていましたが、結果としてはそこまで落ち込まず、予想が外れることも現実には起こっています。
しかし、物事は悪い方に基準を合わせたほうがよいと私は考えています。10年後の着工数が50万戸を切るといわれている以上、工務店はその数値になったと仮定して動く必要があります。
たとえコロナ禍でも年間2〜3棟の受注を変わりなく取れていたとしても、工務店の社長がその成功体験にあぐらをかくのは危険です。社長は予想が的中して今までのように新規客が集まらなくなると仮定し、SNSなどによる新しい新規獲得策を練るべきです。
ハウスメーカーや工務店がSNSで新規客を集める方法は、工務店のSNS集客で解説しています。
まとめ
建材会社の営業社員から上がってきた報告では、野村総合研究所の着工数予測を知らない社長がB君の担当する小規模零細工務店に何社もいたほか、紹介だけで年間3棟が取れているので新規集客に動かない社長もいました。取引業者から手に入る情報の量は、工務店の社長が自分から情報を取りに行くかどうかで大きく変わります。
専門誌のメルマガに複数登録して毎日見出しに目を通すことも、取引業者の担当者に他社の動きを自分から聞くことも、工務店の社長が今日から始められる情報収集です。
ぜひ本記事の2つの実話を参考に、自社の情報収集と新規集客のやり方を見直してください。



