「人生で最も大きな買い物」と言われるマイホーム購入。
顧客にとって「家を建てること」は、一度きりの大きなイベントといっても過言ではありません。
大半の顧客にとって、住宅を検討することや購入を決めることは不慣れな作業である中で、大きな期待や夢、不安を持って検討しています。
そのため、思い込みによる行き違いが起きやすいほか、説明やコミュニケーションの不足が大きなトラブルを引き起こす可能性もあります。
新築住宅建築において、工務店と顧客の間で起こりがちなトラブルの内容や未然に防ぐ具体案について紹介します。
住宅にまつわるトラブルとは
住宅にまつわるトラブルは、大きく分けて資金的な問題、スケジュールの問題、イメージが共有できていなかったことによる問題、情報共有が不足していたことによる問題に分けられます。
注文住宅の新築工事は、図面を見て実物を想像しながら打合せをすすめるので、イメージの違いや生活スタイルが想像できていないことによるトラブルや行き違いが発生しがちで、完成したあとにはじめて相違が発覚することも少なくありません。
また、ひとつの現場に関わる人数が多いことやそれぞれの担当者が何軒もの顧客を同時に担当していることによる伝達ミスも発生しやすい環境です。
実際に新築住宅の受注や施工に関するトラブルで起こりがちな事例を紹介します。
◆契約後のトラブル事例
①伝達ミス
伝達ミスは、社内での伝達ミスと顧客との間での伝達ミスに分けられます。
社内の伝達ミスは、顧客と営業担当が話した内容が社内の他部署へ引継ぎされていないこと、社内書類の記載漏れなどが想定されます。
顧客との伝達ミスは、電話で受けた内容がうやむやになってしまったり、打合せ時の変更内容が図面に反映されていなかったりが考えられます。
特に顧客との間で起こる「言った」「言わない」は、発覚が遅くなるほど大きな問題に発展しがちです。
②契約後のフォロー不足
住宅建築は、作業内容が多岐にわたることや選択決定する内容が多いことから、打合せ段階に応じて、顧客対応のメインとなる担当者が変わっていく場合もあります。
多くの場合、受注契約までは営業担当がメインで、その後の詳細打合わせが設計担当に引き継ぐような流れになりますが、顧客からすると「契約したら連絡が来なくなった。放置されている」と感じてしまう場合もあります。
◆施工中のトラブル事例
①工事遅延
天候不順や契約後、着工後の追加変更工事が多い場合、そもそもの工期設定に無理があった場合など予定通りに工事が進まず、引き渡しがずれてしまうケースがあります。
②近隣トラブル
工事車両や作業員の駐車場所や作業時間、工事による騒音や振動によって近隣からクレーム発生する場合もあります。
③追加工事金額について
契約後の追加工事について、変更の見積書など正式な書類を交わさなかった場合、顧客との間で必要費用について、お金のかからないサービス工事と認識される場合があります。
その場合、無料だと思っていたら後から請求されたとトラブルになりかねません。
④図面通りに仕上がっていない
現地打合せなど後からの変更部分は、引継ぎミスや図面記載ミスによる間違いが起きる可能性が高くあります。
◆引渡後のトラブル事例
①イメージと違う
思っているのと仕上がりが違う、間取りや設備の使い勝手が悪いなど、顧客のイメージや認識が違うとトラブルの元となります。
②設備トラブル
設置ミスや設定ミス、関連する接続工事のミスなどで、トラブルが起こる可能性があります。
設備によっては日常生活に支障が出てしまいます。
③アフターフォロー
引渡し後のフォローが足りないと「売りっぱなし」な印象を与えてしまいます。
顧客満足度を下げてしまう原因となります。
工務店が行うべき対策
上記のようなトラブルを防止するための方法について紹介します。
① 適切な工期設定をする
工期遅延トラブルを防止するには、天候不良が長引いたり、住宅設備などの納期の遅延が出てしまったりなどのイレギュラーを想定しておきましょう。
顧客は、引き渡し日から逆算して、賃貸住宅の解約や引越しの手配、転校転園準部などの日程を決めるため、工期の遅れは大きなトラブルにつながります。
引き渡し日に影響がでないように余裕を持った工期設定をしましょう。
また、遅延の可能性がある場合は、少しでも早く予定の変更を伝えるようにしましょう。
② 打合せ記録を作って、双方の確認をとること
打合せ内容の認識の違いや「言った言わない」の防止に打合せ記録を作って、都度確認することが最も効果的です。
そのまま、社内の情報共有にも利用できるため、作成必須を社内ルールとすることもおすすめです。
③ 部門間で情報を共有する
顧客からの要望や打合せ内容をリアルタイムで情報を共有できるシステムを利用するなど、社内での伝達ミスを防ぐためのシステムを構築しましょう。
④ イメージしやすい提案を行なう
設計図面だけからイメージを膨らませることは、はじめて家づくりに取り組む顧客には難しいです。
イメージパースや3Dを作成する、実際の建物の中で説明するなど確実にイメージを共有するための工夫をしましょう。
⑤ 思い込みをなくす
顧客といっしょに建築現場を確認して、お互いの思い込みによる相違がないかを確認しましょう。
イメージの違いや思い込みはできるだけ早くにつぶしておく必要があります。
図面を見ながら、ひとつひとついっしょに確認するよう心掛けましょう。
引渡し前の施主検査では、入念に確認してもらい、その場で解決できれば引き渡し後のトラブルを減らすことができます。
⑥ 入念な打ち合わせ
スタンダードな仕様が決められている部分についても省略せずに説明し、顧客の「聞いていない」「知らなかった」を回避しましょう。
カタログだけでなく、できる限り大きなサンプルや実物を見ながら内容を決定していくと「イメージと実物が違う」といったトラブルを防ぐことができます。
また、顧客が希望しているイメージ写真を事前に持参してもらうとイメージのずれを防ぐことができます。
⑦ 円滑なコミュニケーション
円滑なコミュニケーションが取れている場合、ほとんどのトラブルは防止出来たり、小さなうちに解決したりすることができます。
顧客とのコミュニケーションだけでなく、社内の風通しの良さも大切です。
⑧ 近隣挨拶の徹底
近隣の住民への挨拶と説明は丁寧に行いましょう。
挨拶時に寄せられた疑問や要望は、必ず出入りする全ての業者で共有し、徹底して守らせることが重要です。
⑨ 追加変更工事のサイン押印
追加工事を口頭で受けることはトラブルの元です。
要望や気付いた点は担当者に伝えるように話していても、現場に入っている職人がその場で施主にお願いされることもあります。
その場合、直接受けられない旨を説明させることと、内容を確実に伝達することを徹底しましょう。
まとめ
住宅新築時に、工務店と顧客の間で起こりがちなトラブルと未然に防ぐポイントについて解説しました。
施工ミスや品質不良、仕上がりが汚いなどの明らかな人的過失は、社内でしっかりとチェックすることで防ぐことができます。
しかし、それ以外の細かい行き違いや思い違いを防止して、大きなトラブルを発生させないためには、顧客との信頼関係の構築が何よりも大切です。
住宅は、引き渡し後のメンテナンスやリフォームも含めて長期間にわたって関係性が継続します。
優良な関係性を保ち続けているオーナーは、紹介獲得など見込み客の集客に加え、口コミを広めてくれたり、オーナー宅訪問の協力の依頼を快諾いただいたりと顧客のランクアップにも力を貸してもらえる存在です。
気になる点がある場合、早期に相談いただける良好な関係を築いていきましょう。
トラブルを事前に回避する際の参考となれば幸いです。