工務店の規模別に見る年間受注棟数と利益率|6人と30人の事例

工務店の年間受注棟数には、社員の給料や粗利益が複雑に絡みます。そのため、棟数だけを比べても、経営の良し悪しは分かりません。
私が知る都内のS工務店は、社員6人で年間の新築受注が5棟です。
関西のT社は社員30人程度で40棟を受注していますが、経営が良好なのはS工務店のほうです。
工務店の規模にかかわらず、受注目標は棟数より先に利益率で立てるべきです。
本記事では、規模の違う3社の事例をもとに、工務店の規模に合った年間受注棟数と利益率の考え方を解説します。
工務店の規模で変わる年間受注棟数の考え方
年間受注棟数を何棟にすべきかは、工務店の規模感を抜きにして語れません。
工務店ごとに必要な経費が違います。
格安住宅を扱う工務店であれば、受注棟数を増やさないと勘定が合わなくなります。
力のある工務店は、地元の総合住宅展示場に出展することも珍しくありません。その場合、工務店は出展料という経費も見込む必要があります。
社員6人の小規模工務店S社の年間受注棟数(都内の家族経営)
都内のS工務店は、お父さんの代から経営を続ける工務店で、私はS工務店の社長と面識があります。
S工務店では、長男が社長、次男が専務、長女が経理を務めています。
典型的な家族経営の工務店です。
S工務店は、現場監督や設計、事務の社員を含めて総勢6人の体制です。年間の受注は新築5棟、リフォーム23件です。
新築5棟で4,750万円の利益を出す内訳
S工務店の新築の平均単価は3,800万円で、利益率はだいたい25%です。そのため、新築5棟の利益は全体で4,750万円になります。
リフォーム23件のうち、1,000万円以上の大型リフォームが3件あります。
小さなものでは15万円の工事もありますが、多くは100万円前後です。
リフォームの利益率は30%程度です。
リフォームが新築を補うサブメインになっている
私は、S工務店の経営状態は良好だと推察しています。
一方で、新築受注をリフォーム受注が補っているとも分析できます。
顕著な傾向とまではいえないものの、リフォームはすでにS工務店のサブメインになっているといってよい数字です。
OB施主からリフォームを受注する進め方は、新築が減る中で工務店がリフォームを受注する方法で解説しています。
目標6棟に届かなくても評価できる利益率
S工務店の年間の新築受注目標は6棟です。5棟の実績で、目標はおおむねクリアしているといえます。
さらに私が高く評価しているのは、S工務店の利益率がしっかりしている点です。
25%という利益率は、恐ろしく高いとまではいえません。
それでも、利益率を極限まで絞って受注する工務店が増えている状況と比べると、S工務店の数字のすごさが分かります。
規模がやや大きい関西の地場工務店T社が40棟でも楽ではない理由
関西のT社は、それなりの規模を持つ地場工務店で、地域の総合住宅展示場にも出展しています。ハウスメーカーとは規模感が比較になりませんが、T社はその地域で一定の知名度と信頼がある住宅会社です。
T社の年間の受注は、新築40棟、リフォーム3件です。新築を年間40棟こなしていることは、T社がそれなりの規模であることを示しています。
40棟受注しても利益率は20%を切っている
T社の弱点は利益率で、40棟を受注していながら、平均的な利益率は20%を切っています。
T社の従業員は30人程度です。
利益率が低いため、この受注棟数では自転車操業とまではいかないものの、決して楽ではない経営だと私は見ています。
私の知る限りでは、利益率が一桁の物件も実際にはあったようです。
格安住宅の設定利益率が現場で削られる
T社の利益率が低いのは、T社がローコスト住宅というより格安住宅をメインに扱っているからです。ただし、格安住宅でも50%の利益を取れば、請負金額が1,000万円であっても500万円が利益になります。
T社も、設定した利益率は高く置いています。
ところが、現場の発注ミスや追加工事の見積もりの甘さがあります。
さらに、営業と設計の連携の無さやレベルの問題も重なり、当初予定した利益率が毎回のように削られてしまいます。
利益率30%と20%で比べる年間受注の損得
2,000万円の建築請負契約で単純計算すると、利益率30%で2件受注した工務店の利益は1,200万円です。
同じ2件を利益率20%で受注すると、利益は800万円になります。
手間はまったく同じなのに、2件の工事で400万円の差が出ます。
同じ比率で6件受注すると、利益率30%なら年間3,600万円、20%なら2,400万円になり、差額は1,200万円にまで膨らみます。
利益率30%で4件受注した場合の利益は2,400万円です。
この利益は、利益率20%で6件受注した場合と同じです。
実際には、6件の仕事をこなす手間と比べて、4件であれば煩わしさや忙しさが大きく減ります。
そのため、工務店には見かけの利益以上のメリットがあります。
利益率を無視して棟数を狙いにいくのは、愚の骨頂だと私は考えています。
年間1,000棟超のWハウスで「棟数より利益率」を宣言した営業部長
S工務店やT社とは真逆の規模の話になりますが、グループ全体で年間1,000棟を軽く超える住宅会社があります。
仮にWハウスとしておきます。
若くしてWハウスの営業部長に抜擢された、D部長の話です。
社長の経営方針に逆らってでも利益率を選んだ
D部長は営業部長に昇進すると、社長に対して宣言しました。
「棟数至上主義は目指しません。利益を重要視します」
Wハウスの社長は、D部長の宣言に驚きました。
社長も、利益が大事なことは百も承知でした。
ただ、社長は着工棟数や契約数が専門新聞などに「地域一番」「Wハウスが〇〇県でトップ」と報道されることを目指していたのです。
私も社長の気持ちはよく分かりますが、抜擢されたD部長の能力と決断力は素晴らしかったと思います。
D部長の宣言は、D部長を抜擢してくれた社長の夢をつぶし、ある意味で経営方針に逆らうことになります。
通常は、なかなか言い出せるものではありません。
それでもD部長は、住宅会社の経営では棟数より利益率が大事だと確信していました。そのため、D部長は社長に意見を述べると同時に、すぐに利益重視の方針を社内に徹底させました。
商品も社会情勢も変わらないまま利益率が急回復した
D部長が誕生した翌年、Wハウスの利益率は実際に急回復しました。Wハウスの商品が変わったわけでも、社会情勢が大きく動いたわけでもありません。
私はこの経緯を間近で見ていたので、住宅会社の利益を上げられるかどうかは考え方ひとつだと断言できます。Wハウスは規模の大きいグループですが、利益率を上げたきっかけは、どんな小規模な工務店でもそのまま真似ができます。
D部長が利益率を上げた具体的な方法は、別の機会に紹介します。小規模な工務店の社長に、私は「棟数よりも利益率」という一言を伝えたいと考えています。
まとめ
工務店の規模によって、年間受注棟数の目安は変わります。
それでも、社員6人で新築5棟のS工務店は経営が良好で、社員30人程度で40棟のT社は楽ではない経営でした。
2,000万円の建築請負契約で比べると、利益率30%の4件と20%の6件は同じ利益になり、件数が少ないほど工務店の手間も減ります。
年間1,000棟を超えるWハウスでも、D部長が「棟数より利益率」に切り替えた翌年に、利益率が急回復しました。
ぜひ本記事の3社の事例を参考に、自社に必要な利益額と利益率から年間受注棟数の目標を立て直してください。



