二世帯住宅の受注は若奥さんへの配慮で決まる|住宅営業の体験談

二世帯住宅の案件は折衝数こそ少ないものの大型案件になるので、住宅営業個人にとっても住宅会社にとっても、何としても取りたい案件です。私も歩合が増える二世帯住宅の案件には気合が入り、夜がどんなに遅くなっても必死に資料を作りました。
私が二世帯住宅で受注できたのは、同居する若奥さんの逃げ場になる二畳ほどの部屋を提案したからです。住友林業と日本ハウスホールディングスが競った80坪の案件でも、住友林業の営業マンは奥さんへの配慮で選ばれていました。
本記事では、若奥さんが二世帯住宅で後悔したことのアンケートと2つの受注事例をもとに、若奥さんに配慮した住宅営業の提案方法を解説します。
二世帯住宅の住宅営業は若奥さんの心の内を推察する
新築受注で成功するポイントは、家を建てるお客さんの心の内を徹底的に推察することにあります。二世帯住宅では、血のつながっていない者同士が一つ屋根の下で暮らすことになります。
そこで私は、二世帯住宅を建てて失敗した点に加えて、建てる前にお客さんが何を不安に感じているのかを調べたデータを徹底的に読み込みました。アンケートを行った会社の名前は覚えていませんが、二世帯住宅に的を絞ったアンケートが載った雑誌を本屋で見かけ、私はその場で購入したのです。
二世帯住宅の若奥さんが後悔したこと(住宅営業が参考にした雑誌アンケート)
雑誌のアンケートには、二世帯住宅で若奥さんが失敗したと思ったことが並んでいました。たとえば次のような声です。
- 無理をしてでもキッチンを二つ作っておけばよかった
- 家の中で一人きりになれる場所を作るべきだった
- 猫じゃなくて犬を飼えばよかった
ほかにもいろいろな後悔が載っていましたが、私が住宅営業として最も参考にしたのは「家の中で一人きりになれる場所を作るべきだった」という声でした。
家の中で一人きりになれる場所が無い
専業主婦の若奥さんは、夫の両親と朝から晩まで一つ屋根の下にいることになります。若奥さんは一人でほっとする時間がほしいのに、ふと気付いたときには家の中に逃げ場がまったく無かったというのが、この後悔の中身です。
二世帯住宅でも、リビングは親世帯と共同にするのが普通です。
寝室は当然別々ですが、奥さん専用の部屋を作るケースは一般的にまずありません。
そうなると、昼間に家にいる若奥さんは、リビングにいないと不自然に見えてしまいます。
たとえばお義母さんがリビングでテレビを見ているとき、家にいるはずの若奥さんが1時間もリビングに現れなければ、若奥さんはその間ずっと寝室にいたことになります。
お義母さんからすれば「なんで寝室なんかにこもっているのだろう。私と顔を合わせるのが嫌なのかね」と受け取りかねません。
「猫じゃなくて犬を飼えばよかった」が示す息抜き
猫を飼っている家では、散歩に出る必要がありません。
犬を飼っていれば若奥さんは否応なしに散歩に出ることになり、散歩そのものがいい息抜きになります。
この声を寄せた若奥さんは猫を飼ってしまったために、外に出る口実を持てずに大きく後悔したということです。
私はこのアンケート結果を、営業折衝で大いに活用しました。
第三者のアンケートを商談で見せるといったデータの使い方は、住宅営業のデータ活用術で解説しています。
若奥さんの逃げ場になる二畳の部屋の作り方
私が若奥さんの逃げ場として提案したのは、寝室の横あたりに作る二畳程度の部屋です。広さは二畳あれば十分で、部屋の名目は次のどれでもかまいません。
- 若奥さん自身の趣味の部屋
- 家事室
- テレワーク部屋
コロナ後という事情を考えると、テレワーク部屋という名目でもよいでしょう。
若奥さんが専業主婦でも、パソコンでいろいろやらなければいけないことがある、という口実をつけておけばよいのです。
そうしておけば、若奥さんはお義母さんと顔を合わせたくないときに「ちょっとパソコンでいろいろやらなくちゃいけないので……」と言って、部屋で息抜きができます。
同居の本音を話してくれた30歳の若夫婦の体験談
私が実際に担当した二世帯住宅の話をします。
二世帯住宅を検討中のお客さんで、住宅展示場に来たのは30歳の若夫婦でした。
私はしばらく話し込んだ後、奥さんにこう話しかけました。
「二世帯住宅を建てると、ご主人のお義母さんと同居する形になりますが、その辺りを皆さん不安に感じる奥さんが世間では多いようですね……そこは本音としてどうですか?」
私がこう問いかけると、奥さんは饒舌(じょうぜつ)に話し出しました。初回接客での会話の運び方は住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
「そうですよね。義母は結構気が強くてガンガンくるタイプなんですよ(笑)私が仕事をしていれば問題ないんですけども、当面は子供の面倒もあるので、家にこもらざるを得ないんです。お義母さんがいると子供の面倒を見てもらったりできるのでそこは非常に助かるんですけども、やはり一人になりたい時間も当然あるじゃないですか」
この話を聞いた瞬間、私は心の中でガッツポーズをしました。雑誌に書いてあった解決策を頭に入れていたので、私は奥さんが一人になれる二畳ほどの部屋を作るべきだと、自信を持ってその場で提案したのです。
このお客さんとは結果的に契約になりました。引き渡し後しばらくして奥さんにお会いしたとき、奥さんが話してくれた言葉は今でも強く印象に残っています。
「あの部屋を作ってもらって本当に良かったです!森さんには本当に感謝していますよ~」
住友林業と日本ハウスホールディングスが競った80坪の二世帯住宅(東海地方の取材)
私が現役の住宅営業を引退した後、東海地方に住むあるお客さんを取材したことがあります。私は当時、消費者向けの単行本を何冊か続けて執筆しており、このお客さんは私の本を購入して住宅相談を依頼してきたのです。
お客さんは地元の名士ともいえる家系で、国道一号線沿いの目立つ場所に大きな土地を持ち、そこに80坪程度の和風大邸宅を建てる計画でした。
お客さんは検討の末、木造系の大手ハウスメーカーである住友林業と日本ハウスホールディングスの二社を残し、両社から出たプランと見積もりを私に見てほしいと依頼してきました。
超大型案件だったこともあり、二社は真っ向勝負の激しい競合になっていました。
私が見たところ、両社のプランと見積もりに大きな差はなく、問題もありませんでした。
お客さんは最終的に住友林業に決めて、無事に契約しています。
お客さんは住友林業を気に入っており、特に営業マンの対応を高く評価していました。
住友林業の営業が敷地調査で5万円を預かる理由は、住友林業の敷地調査5万円の狙いで解説しています。
奥様の着物を聴き込んで和室コーナーを提案した営業マン
ご主人は住友林業の営業マンについて、こう話していました。
「妻の生活スタイルを徹底的に聴き込んでくれました」
ご夫婦は仕事柄、和服を着る機会が多い方々でした。
特に奥様は自宅で着物の着付けをするうえに、和服を多数持っているので、収納スペースも相当必要でした。
奥様の自室には板の間のほかに畳を三枚敷いた和室コーナーを設けたプランになっていて、この和室コーナーは住友林業の営業マンが初回面談のときに提案したものだそうです。
打ち合わせを詰めていけば、いずれ奥様の部屋に畳を敷く話にはなったのかもしれません。
それでも私は、初対面の時点でこの提案をした営業マンの鋭さと目の付け所に感心しました。
奥さんの話を聞いた住宅営業が選ばれた事例は、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
亭主関白のご主人が一目置いた提案
ご主人はかなりの亭主関白で、「俺がこの家を守っているのだ」とはっきり口にするタイプの方でした。そのご主人が、さらにこう話していたのが印象的でした。
「私の家内のことをものすごく親身になって聞いてくれたし、こちらが気づかないような提案も複数してくれたのですよね。私も一家の大黒柱として家内と子供が快適に住めるような家を建てる責任があるので、彼のこの提案には一目置いたんですよ」
足腰が弱ったお義母さんの世話まで考えた提案
和室コーナーの話は、二世帯住宅とは関係なく奥様の仕事に着目した提案です。ただ、この案件にも実はご主人のお母さんの同居がありました。
お母さんは足腰が弱っており、実際に世話をするのは奥様になります。
住友林業の営業マンは、奥様の負担が減るような提案もしていたそうです。
30歳の若夫婦の奥さんは義母と少し距離を置きたいという潜在ニーズを持ち、取材した奥様は義母の世話という負担を抱えていました。
2つの案件はどちらも二世帯住宅特有の問題が絡んでおり、住宅営業が奥さんをこちらに引き寄せたことが受注に結び付いたのです。
まとめ
二世帯住宅は、住む人数が増えて坪数が大きくなっただけの家と捉えていては受注になりません。あっけらかんとした性格の女性なら平気かもしれませんが、同居に抵抗がある女性は多く、大丈夫だと思って同居を始めたら予想もしない問題が起きることも多々あります。
私が担当した30歳の若夫婦では二畳の逃げ場になる部屋が、住友林業の案件では奥様の暮らしと義母の世話まで考えた提案が、受注につながりました。二世帯住宅はこうした繊細な問題を抱えているので、住宅営業は些細なことにも目を配った提案をする必要があります。
ぜひ本記事の2つの受注事例を参考に、次の二世帯住宅の商談では若奥さんの本音を聞き出し、逃げ場になる部屋を提案してください。


