まず説明が必要でしょう。
大手ハウスメーカーや一定の規模がある住宅会社は、お客さんが所有する土地を契約前に敷地調査をするのが一般的です。
この敷地調査には有料の場合、無料の場合もありますし、 調査内容のレベル差もかなりあるのが現状です。
そんな状況ですが、住友林業は商談の初期段階でお客さんが土地を持っているとこのように持ちかけます。
「敷地調査をしましょう。ただし5万円をお預かりします」
これにはもちろんいろんな戦略的意味があるわけですが、 お客さんによっては面食らう人もいますし、あるいはこれに対して不信感を持って住友林業との商談を打ち切る人もたまにいるようです。
皆さんはどうお考えになるでしょうか。
住友林業の敷地調査費5万円をどう考えるか?
ハウスメーカーは敷地調査をなぜ重視するのか
この問題について皆さんは考えたことはあるでしょうか。
今回は住友林業の話をするのですが、ハウスメーカーはそのすべてで敷地調査を重要視する現実があります。
理由は明快で次の二点がそのポイントです。
① お客さんの本気度を測る
例えばあなたが100坪の土地を所有しているとしましょう。
住宅展示場に行ってハウスメーカーの営業担当者と話した後にその営業から
「土地を測らせてもらえませんか。まずは土地を拝見しないと話が進まないので」
このように言われた仮定します。
そのメーカーと話を進める気がないか、まだその段階ではないなと思えば断るでしょうが、前のめりになっていればおそらくはこの提案を受け入れるでしょう。
逆の立場である営業としては「この人はそこそこに脈があるな」となるわけです。
② 次回のアポとその次のアポを取れたことになる
敷地調査当日は、極力お施主さんに立ち会ってもらうように仕向けます。
これは、次回のアポイントが取れたことと同義です。
そして、調査しっぱなしというわけにはいきませんので、調査結果報告書を持って再びお施主さんと会う機会を作らなくてはなりません。
このように敷地調査のアポイントが取れると、自動的に次回のアポと次々回のアポが事実上取れるのです。
工務店もここは真似するべきです
敷地調査を進める理由が二つあると書きましたが、これは工務店の皆さんもぜひ見習ってほしいことだと思います。
私は積水ハウス出身ですが、その当時も敷地調査に関する力の入れ方は今と同じでした。
会社としても契約数が読みやすいという意味合いもあったでしょう。
支店全体で敷地調査を100件取れば、契約は30件程度あるだろうなどと見込みが立つからです。
静岡県内のある工務店の社長とこんな会話をかわしたことがあります。
私「敷地調査のアポイントを積極的に取るのと同時に、やるからにはしっかりと調査をして、ちゃんとした報告書を作成してください」
社長「土地を見るのが重要なのはわかっていますよ。だからもちろんお客さんにはそんな話をして土地を見るようにしています」
私「時と場合に応じてではなく積極的に取りに行って欲しいんですよ。あと敷地調査報告書のレベルはどんなもんですか?」
社長「報告書というような仰々しいものはないですよ。一枚の紙に書いて出すこともあれば、地積測量図を代用するようなこともありますね」
これでは話になりません。
みなさんにお願いしたいのは、敷地調査報告書の名前に負けないようなレポート作成です。
敷地調査のアポイントを取るのも営業的に重要なのですが、しっかりした報告書を出すことも、さらに重要なことだと認識してください。
住友林業の5万円戦略
本題に入りましょう。
住友林業もほかのハウスメーカーと同じように商談が進んでくると、お客さんに対して敷地調査をしないかと持ちかけます。
ただ特徴的なのは、そのときに5万円の預かり金が発生するということでしょう。
住友林業が5万円を預かる理由は明白です。
① お客さんの本気度を測る
② お金を預ける行為で気持ちが前に進む
敷地調査のアポ自体がお客さんの本気度測ると前述しましたが、そこにお金が発生するとさらにこの深度が増します。
後で返ってくるお金なのですが、5万円という現金を人に預けるという行為を経験させることに意味があります。
当然のことながらお客さんの気持ちとしては、住友林業に傾くと同時に精神的な繋がりもできるでしょう。
お金を5万円預けるとはそういうことなのです。
住友林業の敷地調査レベルは?
他社と比べてもレベルが高い
ブログなどで敷地調査報告書をアップしている人が結構いるのでそれを参照してほしいのですが、他社も含めていろいろ見ている私の見立てではかなりレベルが高いと言えます。
「住友林業の敷地調査が細かくてすごい」
「何社か並行して見てもらったけども住友林業が一枚も二枚もレベルが高い」
ブログなどではこのようなコメントが目立つのですが、住友林業の敷地調査レベルが高いのはほぼ間違いないでしょう。
住友林業の敷地調査内容
ここまで話を進めると住友人間の敷地内容は?となるでしょう。
箇条書きで簡単にまとめたいと思います。
① 敷地内は徹底的に図る
これは特に説明は要しないです。
縦横の長さに加えて傾斜や法面なども細かく調査して行くのと同時に、汚水桝などの関連設備も位置関係を正確に測ります。
② 周辺道路や電信柱
これは基本事項ともいえるのですが、一般の工務店ではなかなかやらない項目です。
前面道路の幅員を図るのは当然ですが、交通量や一方通行の有無などを確認した上で調査報告書に掲載します。
この内容によって駐車場をどこに配置すれば事故が起こりにくいか、あるいは出し入れがしやすいかということに関係 するからです。
また、電信柱の位置なども重要事項の一つでしょう。
目障りな場所にあっては困りますし、工事中にクレーンのアームなどが電線に引っかかる可能性もありますので高さなども入念に計測します。
③ 周辺状況のチェック
この項目が結構充実していると言えるでしょう。
近隣にどんな家が建っているかをチェックするのはもちろんですが、その高さや屋根の傾斜、さらには窓の位置も正確に把握します。
設計をするときに、こちらの窓と隣の窓がかち合ってはばつが悪くなりますし、隣から覗き込まれるような位置に窓を配置するのもうまくありません。
簡単にポイントだけをかいつまんで説明しましたが、これらの内容をしっかりすることが、お客さんの心をつかんで契約に近づく出発点です。
筆者も同じことをやっていたのでよくわかる
積水ハウスに在籍した筆者も、同じように敷地調査を営業戦略として多用しました。
体験したからこそ分かるのですが、これは受注獲得というかお客さんとの距離を詰めるのに極めて有効な営業手段の一つなのです。
筆者が営業やっていたのは30年ほど前になってしまいますが、30年後の今でも多くのハウスメーカーがこれを重要戦略として採用していることが、敷地調査の重要性を証明することになっているでしょう。
今の私はコンサルタントですので、住宅会社にて営業指導をしているわけですが、その中で実際の商談を垣間見る機会も大変多くあります。
商談の中で敷地調査のアポイントをお客さんに取りに行くシーンにも出くわすわけですが、商談が濃いとそのアポ率が上がりますし、アポが取れると契約率もまた高まるのです。
今と昔を比較してもなんら変わることはありません。
まとめ
とにかく敷地調査を重要だとお考えください。
家を建てるために必要な作業であることは間違いありませんが、契約をとるための営業的な意味合いが大きいことも腹に落としていただけないでしょうか。
実際に敷地調査をとることで契約を上げてきた人間が言っていることです。
次回のお客さんからは、折衝の初期段階で敷地調査のアポイントを取りに行く努力をしてみましょう。
最初は慣れないかもしれませんが、ハウスメーカーが注力して取り組んでいることです。
メリットがあるから彼らは動いていると考えてください。