想定問答とは?住宅営業が商談前に作る想定問答集と失敗談

住宅営業が図面や見積もりを説明している最中に、お客さんから予想していなかった質問を受けて、言葉に詰まってしまう場面があります。
想定問答とは、商談の前にお客さんが口にしそうな質問や反論を予想し、それぞれへの回答を準備しておくことです。私は新卒1年目の6月、地盤補強の金額に納得しないお客さんへの答えを用意しておらず、その商談を最後にお客さんを失いました。
本記事では、住宅営業の想定問答の意味と想定問答集の作り方、声に出して練習する一人芝居のやり方を、私の体験談をもとに解説します。
想定問答とは|住宅営業が商談前に用意する質問と回答
住宅営業の想定問答では、地盤調査の結果説明や図面提示といった折衝の場面ごとに、営業の説明に対してお客さんが返しそうな言葉を書き出し、回答まで用意します。
予想した質問と回答を書きためたものが想定問答集です。
私は想定問答の準備を、想定問答集の作成と、その内容を声に出して演じる一人芝居の2段階で行っていました。
私は出版した単行本にも、この準備を「イメージトレーニングをさせる」という見出しで書きました。見出しを言い換えると「シミュレーションをさせる」となり、幹部向けの本なので「させる」という表現にしています。
住宅会社の社長や幹部の方には部下に実行させてほしいですし、現場の住宅営業には自ら率先して実行してほしい内容です。幹部社員の役目は、部下が商談のたびにこの準備をする癖をつけることで、営業の成績はたったこれだけのことで大きく変わってきます。
新卒1年目の6月に想定問答なしで臨んだ住宅営業の失敗
私は営業時代の失敗を今でもよく覚えています。上司からの叱責、客前での大失敗、赤面ものの大ピンチといろいろありましたが、ここではシミュレーションをしていなかったために起きた大失敗を紹介します。
店長と同行したHさん宅での商談
入社してすぐの6月のことです。私が当時勤めていた住宅会社では、この時期の新人が1人で折衝することは規定で禁止されていて、上司を伴って行く決まりでした。
私は展示場で接客したHさんからうまくアポイントを取り、翌々日に敷地調査をして、その結果を持って店長と一緒にHさんの自宅へ向かいました。展示場の接客から敷地調査のアポイントを取る進め方は住宅営業のアポ取りのコツで解説しています。
「いろいろと準備をしておけよ。忘れ物厳禁だからな」
店長からこう指示された私は、三角スケール、方眼紙、仕様書、見積もりなどをカバンにこれでもかと詰め込んで出発しました。
新人の私には社用車がなかったので、店長の運転でHさん宅へ向かいました。
商談の序盤はごく一般的に進みましたが、地盤調査の話になったところで、話がおかしな方向へ転がり始めました。
「近所の人で地盤補強なんてした人いないわよ」
Hさん宅の地盤調査は事前に、おなじみのスウェーデン式貫入法で行い、データを出していました。
調査の結果は、簡単な基礎補強をしたほうがいいという数字でした。
店長がその内容を説明したところ、Hさんの奥さんとこんなやり取りになりました。
店長「地盤調査をしたのですが、この辺りは少し地盤に問題があるとの数字が出ました」
奥様「そうなの? まぁ、川が近いし、そもそも地名に〇〇川と入っているからね。で、いくら追加になるの?」
店長「その金額ですが、おおよそ〇〇万円くらいはみてほしいのですよね……」
奥様「〇〇万円! それはちょっと高すぎない?」
店長「いえ……この金額はどうしてもかかってしまうものでして」
奥様「この近所で家を建てた人いるけど、そんな地盤補強をやった人はいないわよ。地盤が少し良くないことは知っているけど」
店長「そうですね……(とここで私を見て発言を促す)」
店長はここまで話してくれましたが、答えに詰まるや、なんと新人の私に話をぶん投げたのです。
新人の私に答えられるわけがありません。それでも振られた以上は何か話そうと必死に考えましたが、私の口から出てくるのは「そうですね……地盤がやはり弱いとうまくないですから」という苦し紛れの言葉ばかりでした。
地盤調査は正確に行ったもので、出てきた数字も正しく、追加の金額も極めて妥当なものでした。
それでもHさんの奥さんには、何とも不審に感じられたようです。
やり取りはしばらく続きましたが、最後は私がしどろもどろになり、次回のアポイントも取れませんでした。
Hさんとの商談はこの日が最後で、それっきりになってしまいました。
帰りの車の中で店長が言った「お前が悪い」
帰りの車の中で、店長は私に「お前が悪い」と言いました。私は納得できなかったですよ(笑)。
店長が言いたかったのは、どんな質問にも対応できるように、シミュレーションをして準備しておけということでした。
地盤補強の説明で用意すべきだった想定問答
店長の指導は、「地盤補強に納得しなかった場合を想定せよ」というものでした。地盤調査で補強が必要だと分かっても、お客さんがその費用をすぐに了承するとは限らないので、店長はその場面を前もって想定しておくように私に求めました。
「地盤補強が必要で〇〇万円かかります」という営業の説明に対して、お客さんからは次のような返事が考えられます。
- 「そうですか、仕方がないですね」
- 「少し高いですね、値引きできませんか?」
- 「このデータは信頼できるのですか?」
- 「うちの周辺で地盤補強をやった人など知りません」
店長が求めたのは、このように反論の事例を考えておくことでした。
お客さんの反論への切り返しを二往復・三往復目まで想定する作り方は、住宅営業のトークスクリプトで解説しています。
60坪超の図面提示で作った想定問答集
店長のぶん投げには大いに狼狽しましたが、この指導のおかげで、私には事前に考える癖が完全に身に付きました。どんな折衝の前でも、私は事務所でお客さんの反応をいろいろと考えてから出かけるようになりました。
折衝の前だけでなく展示場接客で雑談を仕掛ける定型と想定問答集の作り方は、展示場接客の雑談力を上げる方法で解説しています。
私が想定問答をいちばん多く作ったのは、図面提示のときです。
お客さんの名前は覚えていませんが、私は60坪を超える図面を持ってお客さん宅に乗り込んだことがあります。
60坪を超える家なので、営業の私としては何が何でも受注したい案件で、入念に想定問答集を作り、シミュレーションを綿密に考えていきました。
「こちらがキッチンです」に返ってくる5つの言葉
私はまず、「こちらがキッチンです」と説明したときに、奥さんから出てくる言葉を予想しました。
- 「狭いわね」
- 「この壁が邪魔な気がする」
- 「暗くないかな?」
- 「作業スペースが狭いかな」
- 「風通しは?」
私はこの5つのすべてについて応酬話法を準備しました。キッチンだけでなく、玄関から始めて家の中すべての場所で同じ作業をしたので、想定問答集はかなりの分量になった記憶があります。
想定問答で押さえられるのは50%程度
お客さんから実際に出てくる質問は種類が多く、すべてが想定内に収まるわけではありません。
それでも私の経験では、50%程度の質問はこの手法で押さえられます。
半分でも対応できれば上等で、私も心理的にずいぶん楽に折衝ができました。
一人芝居で想定問答を声に出して練習する
想定問答集ができたら、私はそのシミュレーションを声に出す一人芝居まで行っていました。ここまでする住宅営業は、まずいないでしょう。
想定される質問を抜き出して応酬話法を準備するだけでも、その商談は非常に有利に進みます。ところが、頭で分かっている内容でも、実際に言葉にすると全く勝手が違うものです。
図面と見積もりができ、想定問答集も準備できたら、私はほかの営業マンがいない別室に行き、営業役とお客さん役を一人で演じながらぶつくさやっていました。
私はこの方法を強くお勧めしますので、とにかく黙って実行してください。
一人芝居は住宅営業に限らず、どんな職種の営業でも同じで、口に出して話すことが何より大事です。
人前で話すのが苦手な住宅営業がお客さんとの接点を作る方法は口下手な住宅営業のお礼状とショートメールの使い方で解説しています。
まとめ
想定問答とは、商談の前にお客さんの質問や反論を予想し、回答を用意しておく準備のことです。私は新卒1年目の6月に地盤補強の説明で答えに詰まってHさんとの商談を失い、その後は60坪を超える図面提示でも玄関から家全体までの想定問答集を作って、50%程度の質問を押さえられるようになりました。
住宅営業は想定問答集を作ったら、別室で営業役とお客さん役を一人で演じ、声に出して練習します。住宅会社の社長や幹部の方は、部下が商談のたびにこの準備をする癖をつけさせてください。
ぜひ本記事の地盤補強と図面提示の想定問答集を参考に、次の商談の前に、お客さんから出そうな言葉を書き出して一人芝居で練習してください。



