住宅営業のデータ活用術|新築受注を増やした3つのデータと使い方

私が積水ハウス時代にライバルより多くの新築受注を取れた理由の一つは、データの活用です。インターネットのない時代に、私は社内の契約履歴から雇用促進住宅の150世帯に見込客がいることをつかみ、住宅雑誌のアンケートを接客で見せていました。
本記事では、私が使った3つのデータと、住宅営業がデータを集めて商談や競合対策に使う方法を解説します。
データ活用が住宅営業の新築受注につながる理由
現在は、ネットで検索すれば世界中の情報がすぐに集まります。
住宅営業にとって、これほど恵まれた環境はありません。
時代が変わっても、データを分析して攻めていく手法は変わりません。
戦争でも、軍は敵の傾向を分析し、レーダーで現在地を調べ、ときにはおとりを使って相手を誘導します。
私がデータにこだわったのは、営業社員の言葉には限界があるからです。
私がどれだけ一生懸命アピールしても、お客さんから見れば私は営業マンの枠から外れません。
私が嘘やでたらめを言っていなくても、お客さんが「あんたは営業だからいいように言うよな」と受け止めるのは当然のことです。
ところが、利害関係のない第三者のデータは違います。
私がデータを見せながら説明したとき、お客さんの顔がデータに引きつけられ、「うんうん」と頷いた姿を見た衝撃は今も忘れません。
アンケートやデータがこれほど強力な営業ツールになると気づいたときは、私にとって青天の霹靂(へきれき)でした。
数字には圧倒的な力があります。
私が使ったデータと、同じ考え方で競合対策をしていたハウスメーカーの事例は、使い道で次の4つに分かれます。
| データ | 入手先 | 使い道 |
|---|---|---|
| 雇用促進住宅の契約状況 | 積水ハウスの社内データ | 見込客が多い場所を絞る |
| 収納に関する満足度調査 | 住宅雑誌に載った日本生命の調査 | 接客でお客さんと悩みの共通認識をつくる |
| 住宅営業マンへの不満度調査 | 住宅雑誌に載ったアンケート | 自分の商談の進め方を直す |
| 大手ハウスメーカー10社の比較データ | リクルートの調査 | 競合対策(ハウスメーカーA社の事例) |
雇用促進住宅150世帯に絞った住宅営業の社内データ活用(積水ハウス時代)
雇用促進住宅の事例は公のデータではなく社内データの活用ですが、データを使って攻める趣旨は同じです。
ただし、私が在籍した積水ハウスが大手企業だった点は差し引いて読んでください。
年間5棟の新築を受注する住宅会社が自社で建てたお客さんを10年さかのぼっても、検証できるのは全体で50棟分です。
年間100棟を受注する住宅会社であれば、10年で1,000棟のデータを検証できます。
150世帯の中に毎年2〜3人の契約者がいた
私の営業エリアには雇用促進住宅があり、6棟に全部で150世帯が住んでいました。
私が社内データで住人の過去10年間の契約状況を調べると、毎年ほぼ一定数の住人が積水ハウスと契約し、新居に移っていたことが分かりました。はっきりした数字は覚えていませんが、積水ハウスだけで年間2〜3人が必ず契約していたのです。
他社で建築を決めた人も含めれば、150世帯の中に相当数の見込客がいると私は推測しました。
見込客がいると分かれば飛び込み訪問でも気持ちが続く
150件程度であれば、私一人でもチラシの手配りをあっという間に終えられます。
私はイベントがあれば名刺や顔写真を入れた紙をポストに投函し、時間が空けば飛び込み訪問もしました。
私がこうした活動を地道に続けると、反響が返ってきました。
やみくもな飛び込み訪問では営業社員が疲れる一方ですが、見込客がいると分かっている150世帯が相手なら、訪問すれば当たりが出ます。
そのため、私はやる気もテンションも保てました。
地域の中から見込客を探す方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。
収納の満足度調査を住宅展示場の接客で見せた体験談
本屋で住宅雑誌のアンケートを買い込んだ
住宅に関する満足度調査は、今でもよく見かけます。
当時も同じような調査はありましたが、今ほど簡単には手に入りませんでした。
それでも本屋に行けば雑誌は豊富にあったので、私は家を建てた人に取ったアンケートを載せた本を大量に買い込みました。
雑誌のアンケートにあった若奥さんの後悔を二世帯住宅の提案に生かした体験談は、二世帯住宅の若奥さんへの配慮で解説しています。
その中で、日本生命が収納の満足度を調べたデータを見つけたことを、私は今でもはっきり覚えています。私の記憶では、上位3つは次のような順位でした。
- 1位:キッチン周りがこまごまとしたもので溢れかえる
- 2位:リビングが雑多なもので溢れかえり、収拾がつかない
- 3位:冬服の収納場所
私はさっそくこのページをカラーコピーし、自分の営業ツールファイルに入れました。私はそのとき、次のように考えたのです。
「今の住まいで困っていることのナンバーワンは、キッチン周りに塩や砂糖などの調味料を含めた雑多なものが収拾つかずに置いてあることのようだ。私が展示場で接客するお客さんもこれに困っている人が多いと推測できる。このデータをお客さんに見せながら、このような後悔がないように私は様々な提案をできるとアピールしよう。
また、積水ハウスもこの種のことが得意な会社であるとも忘れずに言い添えよう」
キッチン周りの悩みで奥さんと共通認識をつくった
実際の接客で私がこの資料を見せると、ほぼ全員の奥さんが大きく頷いて、こう言いました。
「確かにそうなのよね。今も流しの上に塩やなんやかんやの雑多なものがいっぱい置いてある状態で収拾がつかないもん」
私はお客さんとこの共通認識を持ったうえで、「積水ハウスはこの手のノウハウを豊富に持っています」と話を進めました。
私はほかのテーマでも同じ論法で家に関するデータを探し、アンケートの上位に入った項目を接客の話題にしました。
奥さんへの接客の考え方は、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。
営業マンへの不満アンケートでメモを2倍に増やした話
「要望をメモしてほしかった」という不満
調査会社がどこだったかはとうの昔に忘れましたが、私は住宅営業マンへの不満を調べたアンケートが載った住宅雑誌を本屋で見つけました。お客さんが不満に思う項目がいろいろ並ぶ中で、私の印象に残った項目があります。
【営業マンとの打ち合わせ時にもっと私たちの要望をしっかりメモをしてほしかった】
住宅営業の方も商談では当然メモを取ると思いますが、差がつくのはメモの分量です。
理想を言えば、営業社員がお客さんの話を一言一句漏らさずメモするのが最良ですが、事実上できません。
仮にできたとしても、営業社員がお客さんの顔を見ずに下を向いたまま話を続ける、奇妙な光景になります。
かといって、1時間も話しているのに営業社員が簡単なポイントしかメモしないのでは、お客さんに不審な点が残ります。
どこで線を引くかは難しいのですが、私はこのアンケート結果を見た直後の商談から、できる限りメモを取るようにしました。
私はそれまでもメモを取っていましたが、感覚的にはその2倍程度の記録を残すようにしたのです。
お客さんに聞いたわけではないので確かではありませんが、私は他社の営業より明らかに多くのメモを取っていたので、それがお客さんの信頼感につながったと今でも信じています。
日本ハウスホールディングス(旧 東日本ハウス)の「筆談」
今から20年前、私は旧東日本ハウス時代の日本ハウスホールディングスに1年ほど、営業研修などで定期的に通っていました。
私は主に当時の盛岡本社に足を運び、そこで初めて知ったのが、社内で「筆談」と呼ばれる、商談時に徹底的にメモを取る習慣です。
私は当時の社長と直接やり取りをしていて、社長はこう話していました。
「うちの会社では筆談と呼んでいるのだけども、お客さんとのやり取りを徹底的にメモさせるのだよね。下にカーボン紙が敷いてあるのだけど、商談が終わったとき営業がハンコを押して一枚をお客様に渡すというルールにしている」
社長によると、筆談はお客さんの評価が極めて高いので、会社として自信を持って続けているとのことでした。私は現役を退いてからこの話を聞きましたが、心の中で「私がやっていたことは間違っていなかったんだ」とニンマリしたことを覚えています。
東日本ハウスのカーボン複写メモの事例と、要望を◎△で書き分けるメモの取り方は、住宅営業の商談メモの取り方で解説しています。
住宅営業で使えるデータの集め方
私が住宅営業の方にやってほしいのは、データを見る癖をつけることです。
ネットを見れば、住宅に関するアンケートや調査結果が山のように見つかります。
営業社員はその中から営業で使えそうなものを選び、どんどんダウンロードして自分のファイルに収めてください。
集めたデータは、本記事の事例と同じように使えば十分です。
集めたアンケートやUA値、収納率などの数字を小規模工務店の商談で使う方法は、住宅営業のデータ活用の事例で解説しています。

利害関係のない第三者のデータで競合対策をする
営業社員が商談で見せるデータは、利害関係のない第三者が取ったものに限ります。
私は、大手ハウスメーカー10社を比較したリクルートのデータを見たことがあり、このデータをうまく使っているハウスメーカーA社を知っています。
A社とは別に大人気のハウスメーカーB社があり、ある項目ではB社の数字がほかの9社よりかなり劣るという結果が出ていました。
B社は手ごわい相手ですが、A社の営業社員がこのデータをさりげなく見せると、ほとんどのお客さんが「B社は評判が今ひとつだね」と口にするそうです。
A社の営業社員は、自分では口に出せないことを、利害関係のない第三者のデータに代弁させているわけです。データは、このように競合対策にも使えます。
まとめ
私は積水ハウス時代、雇用促進住宅の社内データで見込客の多い150世帯を絞り、日本生命の収納の満足度調査を接客で見せ、営業マンへの不満アンケートを読んでメモの量を2倍に増やしました。ハウスメーカーA社は、リクルートの比較データを競合対策に使っていました。
私が営業マンとしてどれだけアピールしても、お客さんは営業の言葉として受け止めます。利害関係のない第三者のデータであれば、お客さんは頷いて話を聞いてくれます。
ぜひ本記事の3つのデータの使い方を参考に、自分の営業ツールファイルに入れるデータを今日から集め始めてください。


