工務店が取引先業者を活用する方法|積水ハウス時代の体験談

工務店の事務所には、建材流通商社や銀行、保険、電気、ガスなど、取引先業者の営業マンが定期・不定期に顔を出します。銀行の営業マンは「新しいお得な住宅ローンが発売されましたので、お客様にぜひ勧めてください」と言い、建材流通の営業マンは「ウッドショックの厳しい状況の中ですが、弊社は早い納期で対応できます」とアピールして帰っていきます。
取引先業者が持ち込む法改正の情報や無料セミナー、ショールームは、工務店の受注を助ける材料になります。私も積水ハウス時代に、INAXの営業マンから業界の最新情報をもらい、お互いに得をする関係を築いていました。
本記事では、アスベスト規制、建材流通の選び方、ガス会社のショールーム、INAXの営業マンとの体験談をもとに、工務店と住宅営業が取引先業者を活用する方法を解説します。
工務店が取引先業者を活用すべき理由
取引先業者の会社は、それぞれに方針はあるものの、顧客である工務店に役立つ提案をして、工務店に頼られる存在になるよう営業マンに指示を出しているのが一般的です。取引先業者の営業マンはさまざまな情報を発信していますが、受け手の工務店がそれを活用しきれていないことに、私は大きな不満を感じています。
新築住宅が激減するという予想は、以前から出ています。
新築の減少と反比例してリフォームが激増するのであればまだ帳尻は合いますが、リフォームは微増にとどまるという予想です。
2040年度には新設住宅着工戸数が49万戸まで減少するという予測は、新設住宅着工戸数の将来予測で解説しています。
工務店の経営が厳しくなると分かっている以上、工務店は会社の利益になる情報を積極的に入手すべきですし、営業の手助けになる動きをしてくれる取引先業者は進んで活用すべきです。新築が減る中でOB施主からリフォームを受注する方法は、工務店がOB施主からリフォームを受注する方法で解説しています。
アスベスト規制の情報を取引先業者から受け取れていない工務店
日本国内には建材会社が無数にあり、住宅業界では「流通」と呼ばれています。建材流通の会社は、取引先である工務店にさまざまな情報サービスを提供していることが多いです。
アスベストの取り扱いについて法律が強化されたことは住宅業界で知られていますが、細かい点まで熟知している工務店は少ないのが現状です。
2022年4月から義務になったアスベスト調査報告の対象工事
解体前のアスベスト調査の義務は2020年から始まっていますが、2022年4月からは調査結果の報告も義務付けられました。
| 工事の種類 | 報告の対象になる条件 |
|---|---|
| 解体工事 | 解体部分の床面積が80㎡以上 |
| 改修工事 | 請負金額が税込100万円以上 |
| 一定の工作物の解体・改修工事 | 請負金額が税込100万円以上 |
表の3つの条件のどれかに当てはまる工事が、報告の対象になります。工務店がこうした細かい条件を自力で完全に把握するのは、なかなか困難です。
建材流通の営業がWeb説明会に誘っても「まだいいよ」
建材流通の営業マンは、顧客の工務店に義務化されるアスベストの話をしていますが、現場では次のような会話が頻発して困っているそうです。
建材営業「アスベストに関する法律が強化されて、色々とややこしくなるの社長はご存知ですか?」
工務店「初耳だよ」
建材営業「多くの工務店さんがまだ知らないのが実情なんですよね。それを受けて弊社ではアスベストに関するWeb説明会を実施しますので是非参加されてください」
工務店「まだいいよ。時間があったら出るわ」
建材流通の営業マンによると、このような反応がとても多いそうです。無反応だったり無関心だったり、さらには鬱陶しがるような反応を示したりする工務店も、そこそこあると私は聞いています。
建材流通にとって工務店は大事なお客さんなので、営業マンはあまり強く押せません。
それでも建材流通は、工務店の衰退が自社の衰退を招くと分かっているので、アスベストの話は工務店に理解してもらわないと困ると考えています。
建材流通の営業マンの本音は「こんな大事なことを話しているのに、どうして無関心なの!」ですが、営業マンは口が裂けても言えないので、私が代弁しました。
危機感の薄さや補助金情報への受け身を含めた課題については、小規模工務店が抱える課題と対策で解説しています。
価格だけで取引先業者を選ばない(建材流通のA社とB社)
とある県に、建材流通のA社とB社があります。
私はA社と懇意にしていますが、B社とは全く面識がありません。
つい最近、私はA社の営業マンと次のような会話をしました。
私「競合となるB社はどんな営業してるの?」
営業「B社はお役立ち情報とかその手のものは一切ないですね。合板を売るだけ。その分うちよりも若干安いかもしれません。分かってくれる所は我が社と取引してくれるのですが、とにかく値段しか見ていない工務店さんが多いのも事実です」
私「値段が倍も違えばどうしようもならないけども、大きな差がないのであればA社と取引をした方が結果的には得だと思うんだけどね」
営業「私もそういう営業するのですが、なかなかうまくいかないんですよ(笑)」
工務店の気持ちは私にも分かります。工務店が少しでも安い合板を仕入れたいのは当然で、1円でも安ければ、そのぶん利益を確保できます。
それでも工務店には、A社のように付加価値をサービスの一環として提供する会社と取引してほしいと私は考えています。A社のような建材流通は、アスベストの件のように、工務店が困らないための情報を提供し、無料セミナーまで開いてくれます。
ガス会社や電力会社など取引先業者のショールームを商談に使う

電力会社もガス会社も、それぞれの地域にショールームを持っています。たとえば九州の西部ガスは、HINATA(ひなた)という名前のガスショールームを、福岡、長崎、熊本の各県に複数持っています。
工務店は、お客さんとの商談スペースとしてHINATAを自由に使えますし、ガスの説明をしてほしいと頼めば、西部ガスの担当者が快く引き受けてくれます。九州電力も、同じように対応してくれるはずです。
私が九州で工務店を経営していれば、西部ガスも九州電力も、できる限り活用することを考えます。
工務店はショールームを無料で使えて、ガスや電気の専門的な説明もお金をかけずにお客さんに聞いてもらえるからです。
ところが不思議なことに、ショールームを徹底的に活用する工務店がいる一方で、このメリットをほとんど使っていない工務店が多いのが実情です。
取引先業者のショールームを使わないことは、工務店にとって重大な機会損失だと私は考えています。
建材会社の住宅展示場を月1万円の会費で商談に使う例については、取引業者の展示場を商談に使う方法で解説しています。
INAXの営業マンに助けられた体験談(積水ハウス時代)
私が積水ハウスに在籍していた当時、標準仕様のトイレはTOTOの製品でした。TOTOはあくまで標準なので、お客さんの希望があれば、INAXなど他社の製品に変えることも全く問題ありませんでした。
TOTOが標準の住宅展示場に通ってきたINAXの営業マン
私がいた住宅展示場には、INAXの営業マンがたびたび顔を出していました。
INAXの営業マンは、積水ハウスがTOTOのトイレを標準採用していることを、もちろん知っていました。
たびたび顔を出せば積水ハウスの営業マンとも顔見知りになりますし、INAXの営業マンは人一倍気さくだったので、私は懇意にしていました。
INAXの営業マンは、展示場に来ると帰り際に毎回、次のように念押しして帰っていきました。
「お客さんにINAXの製品も勧めてくださいよ、お願いしますね」
業界の最先端情報のお返しにTOTOとINAXを並べて紹介した
ただ、INAXの営業マンには、ほかの営業マンには見られない大きな特徴がありました。
今でこそインターネットがありますが、当時は業界の最新情報を得るのが至難の業でした。
そこで私は事あるごとに、INAXの営業マンに「トイレ業界における最先端の情報があったら教えてね」と伝えていました。
INAXの営業マンは私の頼みをきちんと覚えていて、展示場に来るたびに、非常に興味深い最先端情報や裏話を教えてくれたのです。
こうなると、あとは浪花節の世界です。私は契約してくれたお客さんに対しても、標準のトイレはTOTOでしたが、次のように話すようになりました。
「INAXさんも良い商品を出していますのでご紹介いたしますね」
メーカーを決める権利はあくまでお客さんにあるので、私はごり押しは一切しませんでした。私はTOTOとINAXの製品を並べて紹介しただけですが、INAXの製品も一定程度採用されるようになり、結果的にINAXも私もwin-winの関係になりました。
まとめ
新築が減り、リフォームも微増にとどまる中で、取引先業者が持ってくるアスベスト規制の情報や無料セミナー、ガス会社のショールームは、工務店がお金をかけずに使える営業の材料です。価格だけで取引先を選ばず、INAXの営業マンと私のように情報と紹介をやり取りすれば、取引先業者とお互いに得をする関係も作れます。
ぜひ本記事の事例を参考に、事務所に来る取引先業者の営業マンに、いま欲しい情報を伝えるところから始めてください。



