工務店が選ばれない3つの理由|住宅相談で聞いた施主の本音

今年の2月に私が住宅相談を受けた長野県のAさんは、父親の旧友の大工から「任せてくれればいいから」と言われました。Aさんは外観のデザインやアフターサービスについての大工の答えにも不信感を持ち、地場ビルダーに建て替えを任せています。
本記事では、Aさんの住宅相談をもとに、工務店が選ばれなかった3つの理由と、要望・デザイン・アフターサービスで信頼を得る商談の工夫を解説します。
地元の工務店が選ばれなかった長野県Aさんの住宅相談
私は住宅取得者向けのウェブ記事もたくさん書いているので、毎月2、3件の住宅相談を受けています。
簡単な質問には無料でお答えし、腰を据えて相談に乗るときは安価ながら経費をいただいています。
住宅相談は仕事とは全く言えない業務ですが、コンサルタントとして使える様々なネタが入手できるので、私は経費度外視で23年間受け続けています。
今年の2月に相談を受けたAさんは、長野県にお住まいの方です。
長野県の二大都市は県庁所在地の長野市と松本市ですが、Aさんの家はそのどちらでもなく、周りに田園地帯が広がる場所に建っています。
Aさんの相談内容は若干ぼかしますが、経緯を追うと5つの段階がありました。
- 建て替えは地場工務店でやる予定だった
- 最初に声をかけたのは父親の旧友である大工
- 基本は大工に任せる予定だったが、地域のビルダーの展示場にも行った
- 両方の話を並行して聞くうちに、大工の対応に不信感と期待外れ感を持った
- 結果的にはビルダーに決めたが、今でも大工に未練がある
私はリモートでAさんの相談に応じ、3回のやり取りで合計4時間近く話をしました。話を聞くうちに、大工の対応があまりにも時代錯誤で、お話にならない点がいろいろと分かってきました。
施主の話から小規模工務店の失注理由を探った別の事例は、小規模工務店が高額案件を逃した理由で解説しています。
「任せてくれればいいから」で工務店が選ばれなくなった初回面談
父親の旧友の大工が口にした第一声
大工はAさんのお父さんの旧友ですが、Aさん自身はその大工と全く面識がありませんでした。約束の日にAさん夫婦が大工の事務所を訪ねると、大工は第一声でこう言ったそうです。
「任せてくれればいいから」
Aさんはもともとハウスメーカーなどで建てる気はなく、地元の大工か小規模な工務店に頼むと決めていました。
Aさんは、家づくりでは丁寧にヒアリングをしてもらい、図面や見積もり、デザインについても要望を聞いてもらうのが常識だと思っていたのです。
ところが大工の対応は、Aさん夫婦の想像のはるか斜め上をいっていました。
「ご要望は丁寧にお聞きします」と伝えるだけでは足りない
「うちはそんなことはしない」と考える工務店でも、契約を勝ち取るには「ご要望は丁寧にお聞きします」と伝えるだけでは不十分です。
住宅会社がお客さんの要望をヒアリングするのは当たり前の話で、お客さんから見ても、そうした挨拶は社交辞令にすぎずリアリティがありません。
お客さんとの最初の面談での話の進め方は、分譲地での住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
要望を実現した図面を見せる工務店の商談トーク
私がある中堅ビルダーに2、3年間コンサルで通ったとき、要望の聞き方を具体的に示す営業ツールを作り、営業社員に定着させました。そのツールを使った会話と通常の会話を並べると、違いがはっきり分かります。
通常の会話と信頼を得られる会話の違い
パターン1は、通常の会話です。
工務店「ご要望はしっかりどんなことでもおっしゃってくださいね。可能な限り実現させます」
客「打ち合わせは何回でもできるのですか」
工務店「大丈夫です。気の済むまでやっていただいて結構ですよ」
パターン2は、パターン1と同じやり取りの後半で、営業ツールを使って過去の事例を見せる会話です。
工務店「ご要望はしっかりとどんなことでもおっしゃってくださいね。可能な限り実現させます」
客「打ち合わせは何回もできるのですか」
工務店「大丈夫です。気の済むまでやっていただいて結構ですよ。これをご覧いただけますか……一年前にうちでやっていただいた方なんですが、主寝室に関するご要望をこのように7ついただいたんですよ。これを全部間取りに反映させたんですが、その図面がこちらです」
過去の要望と図面をセットで新規客に見せる
正直、前半の会話は何でもよく、お客さんの信頼を得られるかどうかは後半部分で決まります。
工務店は、過去のお客さんの要望がどう形になったかを図面で新規のお客さんに見せることで、信頼を得られます。
お客さんは、要望と図面の事例を何例も見せられると、自分の要望もこのような形で図面にしてくれるだろうと期待するからです。
長野のAさんが最初に話をした大工は、この対応とは対極にいました。
読者の工務店が大工のようなひどい対応をしているとは私も思いませんが、私がここで示した見せ方は、おそらくまだ実践していないでしょう。
早急に資料を作成して、次回の新規商談で使ってみてください。
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同じ外観の家ばかり建てる大工がデザインで選ばれない理由
Aさんが大工に大きな疑念を抱いたもう一つの要因は、デザイン性への期待でした。
建物を見ただけで「〇〇大工の家」と分かる田舎の街並み
田舎に行くと、大工さんが建てたと思われるほぼ同じ外観の家が、街中に立ち並んでいることがあります。
私はこのような地区で住宅営業をしたことがあるのでよく分かりますが、田舎では建物を見ただけで「あれは〇〇大工がやったやつだ」とすぐに見分けがつきます。
Aさんが住む地区は田舎ですが、Aさん自身は30代で、「あんなダサいのはまっぴらごめんです」という感性を持っています。
私は一人親方の大工さんを何人も知っていますが、その中には新築物件の外観がほとんど同じという人もいます。私は懇意にしているある大工に、直接聞いたことがあります。
私「〇〇さんの家は外観ですぐわかりますよね」
大工「家にとって一番いい素材や適材適所の木材使用を考えるとああいう風になっちゃうんだよ」
私「でも新築受注が減っている今の時代を乗り切るのであれば、デザインは色々考えた方がいいですよ」
大工「そう言われても今までずっとこれでやってきたからさ」
大工と私の話は堂々巡りです(笑)。新築受注が減る中で工務店がOB施主から仕事を得る方法は、OB施主からの工務店のリフォーム受注で解説しています。
デザインも要望と実現のストーリーで見せる
読者の工務店と、私が懇意にしている大工では次元が違いますが、デザインについても、契約前にお客さんの信頼を得るには事例を見せるのが一番です。ただし、工務店が作品集を見せるだけでは、他社と何も変わりません。
「これがうちの作品集です。外観はおしゃれですしインテリアもこんな感じですよ」
作品集の写真がお客さんの心をつかむほどおしゃれなら、その見せ方も悪くはありません。それでもお客さんの気持ちをさらにつかみたいなら、工務店は要望のヒアリングと同じく、お客さんが出した具体的な要望を並べたうえで、それを実現したストーリーを示してください。
「何かあったら飛んでいく」小規模工務店のアフターサービスが信頼されない理由
長野のAさんは、大工にアフターサービスのことも徹底して聞きました。
Aさん「アフターサービスとかどうなっていますか」
大工「うちはほかの会社みたいに定期点検はしてないけども、何かあったら電話をちょうだい。すぐに飛んでいくから。これがうちみたいな小規模会社のいいところで、大手にはこんな小回りがきかないよ」
大工の答えは、大工や小規模工務店の方がよく口にするトークです。
「大手と違って小回りが利く」
「システマチックな対応ではなく困った時にすぐ対応する」
一見すると耳障りの良い話ですが、お客さんはそう受け取りません。
お客さんは、1ヶ月点検、3か月点検というように、決まったスケジュールをアフターサービスとして設定している住宅会社に信頼感を持ちます。
Aさんも、大工が点検の仕組みを持っていないことは会う前から想定していましたが、大工があまりにも軽く二つ返事で答えたことに不信感を持ちました。
人手が足りない工務店でも定期点検の日程を約束して施主との接点を残す方法は、小規模工務店のアフターサービスで解説しています。
まとめ
長野県のAさんは、本心では地元の大工さんに頼みたいという気持ちが強かったものの、要望をきちんと聞いてくれるのか、希望するデザインを実現してくれるのか、アフターサービスは大丈夫かという3点に疑問を抱きました。その結果、Aさんは大工を候補から完全に外し、地元の比較的大きなビルダーに新築を任せています。
3点のどれも、工務店が口で約束するだけではお客さんの信頼は得られません。工務店は、要望と図面の事例、デザインの要望と実現のストーリー、点検のスケジュールを契約前に目に見える形で示すと、お客さんに選ばれやすくなります。
ぜひ本記事の長野県Aさんの事例を参考に、要望・デザイン・アフターサービスの3つを見せる資料を作り、次の新規商談で使ってください。



