工務店のZEH対応は2030年まで待てない?一人親方の体験談

ハウスメーカーや地域の有力ビルダーは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に問題なく対応しているはずです。一方で、小規模工務店の中にはZEHを甘くとらえている会社がまだかなりあり、動き出している住宅会社との差が開いていると私は感じています。
三代目の一人親方Aさんは、図面を2回出して順調に進んでいたお客さんがZEHの話をしだしたときに「まだ対応する必要はない」と伝え、そのお客さんとはそれっきりになりました。
本記事では、Aさんの体験談と有名パワービルダーの営業方針の転換をもとに、工務店がZEHに今すぐ取り組むべき理由を解説します。
ZEHを甘く見て商談を失った工務店の一人親方Aさん
国の方針を疑ってきた三代目のベテラン大工
Aさんは家族経営の工務店の社長で、先代から続く三代目のベテラン大工です。年齢は60代後半で、現場歴は50余年になります。
一人親方は、腕はあるが頑固で人の話を聞かないというイメージを持たれがちです。しかし、Aさんは建築を極めて理論的にとらえており、耐震性については1時間ぐらいは楽に、さまざまな論点から語れる人です。
耐震の深い知識や手書き図面でお客さんの信頼を得ている一人親方の例は、一人親方の受注が途絶えない営業術で解説しています。
ただ、Aさんは昔から国が推進する方向性にかなり疑問を持っており、次のような言葉で切って捨てる傾向がありました。
「〇〇はハウスメーカーと結託して推進している内容だからダメだよ」「〇〇はある圧力団体からかなり国交省に対して強いプッシュがあったみたいだね」
ZEHについても、Aさんは大まかな方向性には反対しないものの、住宅を高気密高断熱に持っていく姿勢には完全に異を唱えています。現実的にものを考えるAさんは「2030年までにはなんとか対応せざるを得ないのが現状だろうね」と理解していますが、今すぐ対応することにはかたくなに抵抗し、お客さんにもそう主張してしまうのです。
図面を2回出したお客さんがZEHの話で離れた
私は現場を見たわけではありませんが、つい先日Aさんからこんな話を聞きました。
「一か月ぐらい前かな~ 図面を2回ほど出して順調に進んでいた人がいたんだけども、急にZEHの話をしだしたんだよ。僕はまだ対応する必要はないと言ったんだけども、お客さんは絶対に引き下がらないんだよね。結局それっきりだよ」
どうやらそのお客さんは親戚からZEHのことを聞いており、ZEHに後ろ向きなAさんに決定的な不信感を抱いてしまったようです。
Aさんは頭脳明晰で、建築に対する理論や思想を確固たるものとして持っています。
それゆえに、Aさんは自分が信じていることを、お客さんに対してもガンガン主張しすぎることが多くあります。
Aさんの性格にはまるお客さんは心酔しますが、今回のように決定的な決裂を生むことも少なくありません。
それでも構わないという考え方もありますが、ZEHに関しては得策ではありません。世の中がZEH推進へ進んでいる以上、これにあらがうのは究極の悪手だと私は考えます。
パワービルダーのZEH推進で工務店に来るお客さんの見方が変わる
昨年から接客の早い段階でZEHを切り出す有名パワービルダー
名前を聞けばかなりの人が知っていると思われる、有名パワービルダーがあります。そのパワービルダーもつい二年ほど前までは、ZEHを推進してはいたものの、営業社員が率先してお客さんに提案する営業方針は取っていませんでした。
ところが、そのパワービルダーは昨年から方針を大きく転換し、営業社員がお客さんを接客する際に、早い段階でZEHの話を切り出すようになりました。
お客さんのZEH認知率は、今現在で半分程度だそうです。
今後は他の大手メーカーもZEHを前面に押し出してくるので、この認知率は急激に上がると私は思っています。
大手やパワービルダーがあおれば、お客さんが「これからの家づくりはZEH仕様が当たり前なんだ」と考えるようになるのは自然な成り行きです。

ZEHの話をしない工務店はお客さんの信頼を失う
ZEH仕様が当たり前だと考えるようになったお客さんが、あなたの工務店に足を運んだとします。お客さんはZEHの話が出てくると思っているので、担当者からZEHの話がまったく出てこなければ、お客さんは担当者に対してこう思います。
「〇〇ハウスの営業さんは、これからの時代ZEH仕様が当たり前ですと言っていたのに、この人は話すらしないな」
そう思われた時点で、工務店はお客さんの信頼を失います。周りの住宅会社がZEHを前面に出している中で、まだZEHに後ろ向きでいたり、見て見ぬふりをしたりしている工務店は、すぐに方針を転換してください。
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工務店にZEHへの対応を促すセミナーと啓蒙ビデオ
私は6月に入ってから、ZEHをメインにしたセミナーを5回予定しています。セミナーの依頼主が私にこの内容を指定してくるわけですから、三年前と比べて世の中が激変している証拠です。
「ガツンと言ってほしい」と頼まれた2日間のリアルセミナー
6月の末には、ある県で2日間にわたってリアルセミナーを行います。主催する会社の社長とは、リモートの打ち合わせでこんな会話をしました。
社長「お久しぶりですね。リアルセミナーをお願いしたのはコロナ前ですからもう三年経ってしまいましたが、久々にこちらに足を運んでもらって2日間のセミナーをやってもらいたいんですよ」
私「ZEHについてですよね。どんな内容ですか?」
社長「うちの取引先でもZEHに対する認識がまだまだ低い工務店さん多くて困っているんですよ。そういった社長さんたちにガツンと言ってあげてほしいんですけど」
私「いいですよ。ガツンと言いましょう(笑)」
その社長の会社は工務店をお客さんにしているので、工務店の衰退はそのまま自社の衰退につながります。社長にとっては、何がなんでも小規模工務店に生き残ってもらわなければ困るため、ZEHに過敏になっているのです。
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本来なら社長は工務店に「いい加減にしてくれ! 早く目を覚ませ!」と言いたいところですが、相手はお客様なので、そんなことは言えません(笑)。
そこで私の出番になります。
私は部外者なので好き勝手に言えますし、コンサルタントという肩書きがあるので、なおさら堂々と言い切ることができます。
全国の工務店に向けたZEH啓蒙ビデオと自前の住宅展示場
社長はこのセミナーにかなりの気合いを入れており、事前にZEH啓蒙のビデオまで作りました。ビデオはセミナー以外にも使いますが、今回のセミナーがお披露目の場になります。
ビデオの構成と企画、編集はすべて私が担当し、撮影だけを外部のプロにお願いしました。
私は、このビデオをこの2〜3年の間に全国の3,000社程度の工務店が見ることになると思っています。
目にとまったら「あのコラムで言っていたやつだ」と思ってください。
ただし、すでにZEHを推進している工務店にとっては、何の意味もないビデオです。
また、社長の会社は住宅会社ではないのに、自前で住宅展示場を持っています。取引先の工務店に自由に使ってもらうための住宅展示場で、もちろんZEH仕様であり、全館空調も備えています。
まとめ
ZEHについてこのコラムで書くのは、これで2回目です。
私はしばらくしたらまた書きますし、さらにしばらくしたら再度書こうと思っています。
私がしつこく食い下がるのは、ZEHは国策であり、ついて行かなければ工務店の存続が危うくなると考えているからです。
Aさんも2030年までの対応は見込んでいましたが、今すぐの対応を拒んだことで、図面を2回出したお客さんを失いました。
すでにZEHに取り組んでいる工務店は、そのまま前進してください。後ろ向きの工務店は、今日から方針転換を図ってください。
ぜひ本記事のAさんの体験談とパワービルダーの事例を参考に、自社の商談でZEHをいつ、どう伝えるかを見直してください。



