受注が途絶えない一人親方の営業術|手書き図面と筆まめの体験談

受注が途絶えない一人親方の営業術|手書き図面と筆まめの体験談

パソコンで描いた図面やスマホでのやり取りが当たり前になる一方で、小規模な大工さんの廃業が続いています。

1月4日に、私は一人親方の社長と2年ぶりに会いました。

社長はパソコンもスマホも使いませんが、受注を落とさずに取り続けていました。

社長が契約を取れる理由は、10枚に及ぶ手書きのプレゼン図面、一人ずつ長文を書く筆まめさ、耐震の深い知識の3つです。

本記事では、受注が途絶えない一人親方の営業方法と日本ハウスホールディングスの筆談の事例をもとに、どの住宅会社でも真似できるアナログな手法を解説します。

受注が途絶えない一人親方の工務店(新年会で聞いた話)

年末年始は、例年になく忘年会や新年会がたくさんありました。私は酒をほとんど飲めませんが、このような席は好きなので、呼ばれれば万難を排して参加します。

1月4日の新年会は、私とある一人親方の社長の2人だけで開きました。年が明けたら久々に飲みに行こうという話を社長としていたので、私はたまたま時間が空いたこの日に社長の会社がある町まで出かけ、居酒屋で一杯やりました。

社長の工務店は、受注が落ち込むことなく順調に取れているとのことでした。小規模な大工さんが廃業していく中で受注を横ばいで維持していることは、高く評価されていいと私は考えます。

社長は、特に変わった営業方法を取っているわけではありません。

それでも受注をそれなりに取っている以上、社長がやっていることは1つの正解だと私は断言できます。

社長の一家は親子3代にわたる大工一家です。

親子2代の大工はたまに聞きますが、3代続く大工はいそうでなかなかいません。

一人親方が手書きのプレゼン図面で注文住宅を受注する理由

パソコンを触らずガラケー一筋の社長

社長のパソコン嫌いはかなり重症です。

私もITリテラシーが高い方ではありませんが、社長の比ではありません。

社長は経理も含めた事務を娘さんに一切任せているので、パソコンを触りませんし、持っている携帯電話もガラケー一筋です。

「みんなスマホの画面見ながら何やってんだろうね」

社長は、こんなことを言いながら不思議そうな顔をします。このようなアナログ派なので、社長がお客さんに出すプレゼンテーション図面や資料は、すべて昔ながらの手作りです。

社長の手作りの図面は、レベルが半端なく高いです。

社長は関東地方にある工業大学の建築学科を卒業しており、在学中にはゼミの先生からも手書きの図面やプレゼンテーションの絵を高く評価されたと話していました。

私が実際に図面を見たときには「ここまで凝る必要があるのか?」と思ったほどで、社長は絵画と見間違うような素晴らしい間取りを描きます。

施主が「もう芸術」と言った10枚の手書き図面(15年前の取材)

15年前に、私は社長と契約したあるお客さんを取材しました。そのお客さんは、社長から実際に提案された手書きの図面を私に見せながら、感心しきりでした。

「これ見てください、すごいでしょう、もう芸術ですよね」

お客さんのお宅で図面を見た私の感想も、とにかくすごいの一言でした。

さらに、社長の図面は枚数が半端ありません。

提案図面は通常なら平面図・立面図・配置図の3枚程度ですが、そのお客さんは私が記憶しているだけでも10枚の図面を見せてくれました。

社長が契約を取り続ける理由の1つは、芸術の域に達した図面の質と、その枚数の多さだと私は思います。誰もが真似できるわけではありませんが、社長の図面がお客さんを感心させ、ときには感動させていることは間違いありません。

受注につながる筆まめさ(長文の年賀状と水彩の暑中見舞い)

師範級の達筆で書く長文の年賀状

私は中国の北京を旅行したとき、アスファルトの道端で、大きな筆の先に水をつけて字を書いている人を見かけました。

字は水で書かれているのでしばらくすると蒸発して消えますが、これがうまいの何の、とにかく感動ものでした。

古い街並みの店先に台を置いて、色鮮やかな絵文字を書く老人もあちこちにいました。

社長の字も師範級の腕前です。

私は今でも社長から年賀状をいただきますが、裏には筆を使った文字がびっしりと並んでいます。

どう表現したらいいか分からないのですが、パソコンで毛筆モードを選んで書いたような文字で、要はやたらうまいのです。

字がうまいだけでは受注につながりませんが、社長のすごいところは恐ろしいほどの筆まめぶりです。

私宛ての年賀状を見ても、一言二言ではなく、かなりの長文が書いてあります。

私は一人ひとりにこれだけの手間をかける労力を考えてしまいますが、社長はこの手のことを何とも思わないそうです。

社長にとっては、達筆な字でいろいろな思いを伝えること自体が趣味の領域です。

上高地を描いた暑中見舞いの水彩画

私が社長の事務所に伺うと、毎回こんな会話になります。

社長「ちょっとちょっと、これ見てよ。僕が去年送った暑中見舞いの裏に書いた絵なんだけども、上高地に行った時その景色があまりにも素敵だったので水彩で書いたんだよね。いいでしょ」

私「確かにうまいですね」

社長「これはその前の年なんだけども年賀状でさ・・・」

社長の話は、このような形で延々と続きます。

ただ、お世辞抜きに、社長の絵はプロと見間違うほどの素晴らしいタッチのものばかりです。

社長の絵はまさに趣味と実益が両立した例で、お客さんにもすこぶる受けがいいそうです。

社長の事例から言えるのは、アナログで成功したという事実です。

パソコンなどによるIT化が進みすぎた反動で、アナログな要素がお客さんに受けることは以前から指摘されています。

社長は狙ったわけではありませんが、パソコンが苦手だったことがたまたま功を奏して成功した1つの事例だと私は考えます。

アナログな住宅営業を徹底する日本ハウスホールディングスの筆談

マメに手紙を書くアナログな営業を、昔も今も徹底して行っている住宅会社が日本ハウスホールディングス(旧東日本ハウス)です。社名が変わってから随分たちますが、私が研修やコンサルティングで日本ハウスホールディングスにお邪魔したのは10年以上前で、そのとき日本ハウスホールディングスの社長から色々な話を聞きました。

社長「うちの会社は時代遅れってよく言われるんだけども、これってやっぱり大事なんだよね。マメに手紙を書いたりすることが、他社との大きな差別化になってお客さんにも評価されてるんですよ」

私「そういえばコマーシャルでも筆談ってやってますもんね」

社長「コマーシャルいい出来栄えでしょ?実際あれは徹底的にやらせているし、お客さんの信頼を勝ち取ることにも大きく寄与してるんですよ」

日本ハウスホールディングスの社長が言う筆談とは、住宅営業がお客さんとの打ち合わせで話した内容を、ほぼすべて正確にメモすることです。

今はやり方が若干変わったかもしれませんが、当時の住宅営業は複写式のメモ用紙を使い、商談が終わるたびに打ち合わせの内容を控えとしてお客さんに渡していました。

筆談はまさにコテコテの極みですが、誰でも真似できる手法だと私は思います。

打ち合わせの内容をメモに取り、控えとしてお客さんに渡すやり方は、住宅営業の商談メモの取り方と見せ方で解説しています。

耐震や構造の知識で施主の信頼を得る一人親方

一人親方の社長が受注を取り続けるもう1つの理由は、知識の豊富さだと私は思います。私は社長の商談の現場を見たわけではないので断定はできませんが、社長がする耐震性の話は、地震学者ではないかと勘違いするほどの情報量です。

名前は出せませんが、誰もが知っている全国展開のハウスメーカーについて、私は社長とこんな会話をしました。

社長「〇〇工務店って最近よく聞くけど、あんな構造でよく地震に耐えられるよね。どういう構造計算してるのかな」

私「詳細は知りませんけども、実際あれで問題なく全国で販売してるわけですから、耐震構造に問題ないんじゃないですか」

社長「それはわかるんだけども、やっぱりあの構造はおかしいよ。だって2階と1階の柱がずれまくってるし、横から見た時の床のレベルも違う。どう考えても納得できないよな・・・」

こうした話の後に、社長は阪神淡路大震災で崩壊した家を調べたデータを取り出します。

そして社長は、この家はなぜ壊れたのか、古いのにこの家はなぜ崩壊を免れたのか、と色々な知識を披露してくれます。

私は通り一遍の耐震性の知識しかないので、社長と話すたびにその深い見識に驚かされます。

震災の調査データのように、第三者の資料を商談で見せる方法は、住宅営業のデータ活用術で解説しています。

社長の知識はデザイン性や木の特性にも及び、お客さんもそれを強く感じているはずです。

時代に取り残され、おしゃれな間取りや住宅設備を求めるお客さんの気持ちに応えきれない大工さんが多い中で、社長は徹底的に研究し、今の若い人が好むデザインを調べることも怠りません。

社長のこうした姿勢が信頼を生み、受注に結びついていると私は考えます。

一人親方に学ぶアナログな受注の取り入れ方

社長の達筆や絵、手書き図面のような個人の特技や人柄は、真似しようがありません。

あえて社長から何かを盗むとすれば、そのマメさだと私は考えます。

住宅営業がいきなり達筆になったり上手な絵を描いたりするのは無理ですが、それなりの手紙を誠意を持ってお客さんに書くことは誰でもできます。

礼状の書き方は口下手な住宅営業のお礼状とショートメールの使い方で解説しています。

手紙などでお客さんへの連絡を続けるときに、どこで追客をやめるかは、追客をやめる基準で解説しています。

まとめ

一人親方は実にピンキリですが、受注が途絶えない社長には、10枚に及ぶ手書きのプレゼン図面、長文を書き続ける筆まめさ、耐震からデザインまでの深い知識がありました。成功している人はやはり何かが違うと私は感じます。

社長の特技は真似できなくても、日本ハウスホールディングスの筆談のように打ち合わせの内容を書いて渡すことや、誠意を持ってお客さんに手紙を書くことは、誰でも真似できます。

ぜひ本記事の一人親方と日本ハウスホールディングスの事例を参考に、自社の商談とお客さんへの手紙にアナログな手間を一つ加えてください。

あなたへのおすすめ