この原稿を書き始めるつい30分前まで、ある若手営業社員とリモートで話をしていました。
非常に気にかかることがあったので、記憶が薄れないうちに記事にしようと思います。
この若手社員は入社二年目のH君。
画面越しでもその明るいキャラクターからお客さんへの人当たりに問題があると思えません。
ただ、昨年振るわなかった成績の原因について話をしていくと、ある一つの気になる点に到達したのです。
他にも多々原因はあるはずですが、その中の一つで間違いないと思われるプレゼンテーションの話を題材にしていきましょう。
AさんもBさんも同じプレゼンっておかしくない?
「AさんとBさんと同じプレゼン内容でした」
今回の個人面談に当たり、実は今から1週間前に30人程度を対象としたリモート研修を行っていました。
その時の参加者全員に個人面談を行っているのですが、H君はその中の一人です。
私 「プレゼンテーションの工夫はしている?」
H君「正直工夫はしてないですね。ただ見た目は綺麗に作っていますので、お客さんウケはそんなに悪くないと思います」
私 「そうは言うけど事前に提出してもらったAさんとBさんへのプレゼンテーションを見ると内容全く同じだよね」
H君「言われてみれば瓜二つです」
皆さんも気をつけていただきたいのですが、新築受注が伸びない原因の一つとして、プレゼンテーションのマンネリが挙げられます。
大手も地場工務店も同じ現象が発生している
大手であろうが地場工務店であろうが関係ありません。
とにかくプレゼンテーションの硬直化というか、マンネリが気になってしかたがありません。
本来は人によってプレゼンテーション内容が違うのが当然のことです。
基本的な部分は一緒ですよ。
例えば建物の構造を説明したプレゼンテーション資料は、AさんであろうがBさんだろうが同じになるはずです。
しかしAさんとBさんが関心を示すポイントは違うはずなので、それに応じたプレゼンテーションの変化が必要なのは当たり前の話です。
犬好きなお客さんがいたらプレゼンテーションはこうなる
犬を飼っている方も多いでしょう。
私も以前はゴールデンレトリバーを室内犬として飼っていました。
室内でこのような大型犬を飼うわけですから、夫婦共々もちろん犬好きです。
もし、私がお客さんとして皆さんの工務店に足を運んだとしましょう。
建物に対するいろんな要望だし、それに対するプレゼンテーション図面と見積もりを私に提示するはずですが、その時私と皆さんとの間でこのような会話があったとしたらどうでしょうか。
工務店「この前の打ち合わせ基づいて今日はプランとお見積もりをお待ちしましたよ」
私 「楽しみにしていましたよ」
工務店「こちらが間取りになります」
このようにして工務店の営業さんは私に間取りを説明し始めます。
この説明の途中で、こんな話の展開になったらどうでしょう。
工務店「ところで森さんは無類の犬好きで、今も二匹の大型犬は室内で飼われていますよね。当たり前ですが新居に移られても同じような状況でワンちゃんと過ごすことになりますが、こんなこと私は考えてきました」
私 「犬がなにか関係しているのですか」
工務店「 おっしゃる通りです。大型になると餌の量も半端じゃありませんので、餌置き場の確保も大事ですし、散歩から帰ってきたら足を洗って、それを拭いて室内にあげるという動作が必要になります。そのあたりの動線も含めたものを一枚の図面に落としてきました」
こう話しながら犬に的を絞ったプレゼンテーション図面を一枚、営業が私に見せたらどうでしょう。
犬好きの私と妻は大きな関心と興味をもってその図面を見るでしょうね。
もちろん、ワクワクしながら隅々まで見ることになります。
単純な話ですが、この図面を提案されている私としては楽しい気持ちになりますし、私が犬好きだということを察知してくれている営業マンを高く評価することにもなります。
プレゼンテーションのコツは簡単
①お客さんが興味あることをプレゼンテーションする
犬の事例を話しましたが、犬好きな方には犬のプレゼンテーションをすればいいですし、猫好きであれば猫に入れ替えればいいだけの話です。
ペット以外でももちろん問題はありません。
日本各地を回ってお皿を買い集めるのが趣味なお客さんであれば、買い集めたそのお皿を普段の生活で使いやすい場所に収納するのはもちろんですが、可能であれば飾って外から見ることができるようなディスプレイをできればいいなと考えます。
つまり、ここに着目したプレゼンテーションをすれば、お客さんはあなたが出したプレゼンテーション図面を食い入るように見てくれるのです。
②お客さんが困っていることをプレゼンテーションする
困っていることは無数にあると思います。
キッチンを事例にあげましょう。
営業「今のキッチンで奥様がお困りのことは何ですか」
奥様「不満だらけだけど、電化製品が増えたおかげでタコ足配線なのよね。あれはストレス以外の何物でもないわ」
このようなヒアリングを事前にしていれば、私ならばキッチンのコンセントだけに的を絞ったプレゼンテーション図面を一枚つくっていくでしょう。
お客さんが所有している電化製品を調べ、さらには新築することにより購入することが予想される電化製品も含めてコンセントの数を割り出します。
さらには、その電化製品の置き場所を考えた上でコンセントを各所に配置した図面を奥様にお見せするのです。
これを見て関心を示さない方はおそらくいないでしょう。
他社と差別化を図るプレゼンテーションをしたいのであれば、わたくしが今お話をした二つのポイントをしっかり押さえて提案をしてみましょう。
誰にでもできます。
私が積水ハウス時代に契約をたくさん取れた理由
その当時も色々と分析をしましたが、確実に言えることはプレゼンテーションを工夫していたことでしょう。
どの会社でも同じですが、その会社独自の基本形が存在します。
積水ハウスにもある形があり、最初はそれに倣って全く同じプレゼンテーション資料を量産していました。
しかし、あるとき私の頭の中に大きな疑問が生じたのです。
「お客さんはみんな違うのに、プレゼンテーションだけ全く同じというのは妙だよな?」
これがプレゼンテーションに工夫をし始めたきっかけでした。
そして、到達したのが前述したお客さんが関心があることと、困っていることに焦点を当てたプレゼンテーションテクニックだったのです。
もちろん、これだけで契約が取れたわけではありませんが、 私が提出したプレゼンテーション図面を見るお客さんの顔色から判断するに、他社とは何かが違っていたのは明々白々だったのです。
実際に何回もお客さんに聞いたことがあります。
「私が出した資料と比べて〇〇ハウスさんの資料はどんな感じでしたか?」
こう尋ねると、全てのお客さんは私が提出した資料が、量も質も他社を凌駕していると間髪入れずに認めてくれるようになったのです。
私の現役時代からは時間が大きく流れましたが、プレゼンテーションのマンネリは、今も昔も全く変わっていないことに私は気づいたのです。
ですから、コンサルティング先では、このプレゼンテーション手法について営業マンに口をうるさくして教えるのです。
まとめ
プレゼンテーションというと、どこかのソフトを買ったりシステムを導入して、見栄えをよくすることにだけ目を奪われている工務店がものすごくたくさんあります。
出てきた図面を見ると確かに綺麗に出来ているし、お客さんの目を引くのは事実でしょう。
しかし、お客さんが関心を引く部分に焦点を当てられるかどうかは、人間である営業マンの感性にかかっているのです。
さまざまなプレゼンテーションソフトを供給する業者さんがいますが、見てくれを綺麗に整えるだけでなく、私が今指摘したような内容を加味したものを作りあげれば、同業他社に対して圧倒的な優位を保てると思うのですが・・・みなさんはどうお感じでしょうか。