太陽光と電気自動車(以下EV)は切っても切れない縁にあります。
再エネ賦課金などの影響による電気代の高騰は、否が応でも太陽光に目を向けざるを得ませんし、EVも今後の普及が見込まれ一般家庭に浸透する可能性が高いと思います。
つまり、住宅会社は太陽光とともにEVの知識もしっかり身につけたうえで、お客さんとの折衝に臨む必要性があるといえるでしょう。
もちろん様々な意見があります。
発電効率やEVに搭載される蓄電池の性能、充電スタンドの普及問題もあるでしょう。
さらには、中国製のパネルに関する政治的な問題も絡み、太陽光パネル自体に拒否感を持つ人がいるのも事実だと思います。
ただ、今回のコラムは、そうしたイデオロギー的なことには一切触れずに純粋に今起こっていること、これからこのようになるだろう、ということを考察し話を進めます。
名古屋にある日本で唯一の施設
「おそらく弊社だけだと思いますよ」
名古屋市中川区にエナジーベースと銘打った施設があります。
https://www.kabu-sanko.jp/company_access9/
太陽光やEVの実車を配置したショールームなのですが、とりたてて大規模なものではありません。
しかし、この施設にはありそうでないという、なかなか秀逸な展示物であふれています。
全景は一枚の写真に入りきらなかったのですが、この施設には日本中の住宅会社が注目する、あるデータが保存されています。
保存されているというか、日々刻々変わっていく数字なのですが、日本と外国の太陽光パネルメーカー6社を建物の屋根に載せて10年以上にわたり発電記録をとっています。
私はつぶさにこの数字を拝見させていただきましたが、日本と外国、またメーカーによってその数字に15%以上の差が出ていることに関心を抱きました。
10月5日にリニューアル
実はこの施設についてはコラムで以前取り上げたのですが、10月5日に大々的なリニューアルを行ったこともあり、再度ご紹介します。
リニューアルフェア以降に私は現地に足を運びましたので、当日の賑わいは見ていないのですが、会社の方にお聞きしましたら400人以上の方が2日間でお見えになったそうです。
「EVは手放せない」と社長
このショールームを保有する会社は、中部圏で売上200億円以上誇る建材会社である株式会社サンコーです。
社長の加藤さんとは20年来のお付き合いですが、EVについて非常に興味深いお話を先日お伺いしました。
私 「社長はEVを強く推奨されていますけれども、現状ではそんなに走ってないですよね」
社長「おっしゃるとおりです。ただ、5年から10年の間には世の中激変すると思いますよ。実は我が家のセカンドカーもEVなんですが、これがめちゃくちゃ便利なんです」
私 「便利と言いますが、充電スタンドはまだまだ充実してないので逆に不便ではないですか」
社長「いやいや、ポイントはそこではないんです。確かにスタンドはまだまだ数が少ないので、長距離走行をしようと考えると不安になるのは当然です」
皆さんが私と同じ立場でインタビューをしたら、おそらく全く同じ質問をするでしょう。
EV最大のネックと呼ばれるものの一つが、充電施設の充実度合いだからです。
ところが、話の続きを聞いていくと、私も思わず「そういうことか」と納得してしまいました。
セカンドカーならEVの一択
これは戸建ての屋根に太陽光が載っていることが前提になりますが、太陽光で発電した電気を自宅に停めてある車に給電するのです。
セカンドカーならばというのには、こんな理由があります。
家で充電をして家族でロングドライブをしようとすれば、当然のことながら電気スタンドの場所を確認しながら走らざるを得ないでしょう。
しかし、セカンドカーつまり付近でちょっと買い物したり、近所のレストランに食事に行ったり、子供の送り迎えをする程度であれば、せいぜい一日走る距離は20~30キロです。
この距離であれば、太陽光から一回の給電で全く問題がないと社長は話します。
皆さんもなるほどな、と思いませんか。
私はEVをもっていないので、この感覚が体感として分からないのですが、理屈としては極めて納得できる筋が通った話です。
「森先生も騙されたと思ってEVを買ってみてください。 ガソリンスタンドに行かなくて済むという経験をしてしまうと、ガソリン車には戻れないですよ」
つまり、一家に2台の車を想定した場合、メインの車は ハイブリッド車でセカンドカーはEVにすればいいという結論になります。
消費者は情報をしっかり収集している
実際にあったある商談のやり取り
EVが話題に上ったある商談を実際に見たので、それをご紹介しましょう。
キャリア10年目、30代の男性営業社員と同年齢ぐらいの お客さんとの初回面談になります。
私はこの商談を録画したものをチェックしていたのですが、 極めて興味深い会話があったので、それをなるべく忠実に再現します。
営業「駐車場のお話をしたいのですが、お車は何台お持ちですか」
主人「いまは一台ですけども、家を建てたらセカンドカーとして何か買おうかなと考えています」
営業「普通自動車が軽自動車によりますけども、駐車場の配置やそのスペースを考えた上で建物を配置する必要がありますから・・・」
主人「車種はだいたいもう決めています。日産のサクラという軽自動車があるじゃないですか。あれにしようかと思ってるのですけども、おたくはこれに対応できるような設備はできますか」
営業「対応できる設備・・・ えっと・・・ それは・・・」
妻 「サクラは電気自動車です。ネットで見ただけなんですけども、なんかものすごい人気らしいんですよね」
ほぼほぼ商談を再現しました。
営業の対応を見ればわかりますが、問題点が二つありました。
① 日産サクラの存在を知らなかった
② それがEVであることも当然知らなかった
③ 対応できる設備の意が理解できなかった
後で営業に聞いたのですが、車種そのものがわからなかったそうです。
車種がわからないのですから、それがEVであることが分かる由もありません。
さらには、電気自動車だと理解できたとしても「対応できる設備」とご主人が聞いたその意味も理解できなかったとのこと。
これはいわゆるV2Hというもので、敷地内に造る充電スタンドだと思えばいいでしょう。
太陽光で発電した電気をEVに送らなくてはいけないのですが、当然のことながらそれを実行するハードが必要になります。
それがV2Hです。
言葉の解説をしましょう。
【 V2H Panasonicサイトより引用】
V2Hとは「Vehicle to Home」の略称です。直訳すると「クルマから家へ」という意味です。
具体的には、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーに貯めている電力を、自宅で使えるようにする機器をV2Hといいます。
つまり、V2Hを導入すると電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を住宅用蓄電池として活用することができます。
通常、EV充電設備とは家庭用の電力を電気自動車(EV)へと給電する機器のことで、電気自動車(EV)の電力を自宅に送り込むことはできません。
V2Hは電気自動車(EV)の電力を自宅に給電できるようにすることで、例えば「災害時の備え」を可能にしました。
近年の電気自動車(EV)は航続距離が500~600kmまで伸びるほどに、バッテリーの大容量化が進んでいます。
この高機能も走行していない時間は宝の持ち腐れです。そこで、V2Hがあれば電気自動車(EV)の電力エネルギーを効率よく使えるようになります。
まとめ
電気代の高騰がどこまで続くか分かりませんが、再エネ賦課金がなくならない限りは、高止まりすると予想するのが妥当でしょう。
この状況が続く限りは、太陽光とEVをセットにした家づくりは理にかなった話であるし、たとえ電気代が下がったとしても、セカンドカーとしての役割をEVに担わせれば、その利便性からもこれまた理にかなった話となります。
問題は文中で触れたように、お客さんの方がこうした情報をいち早く察知するのに対し、住宅会社側の知識が追いつかないケースを避けなければならないということです。