「営業の〇〇さんは私たちのことを突っ込んで聞いてくれました。真剣に考えてくれているのだな・・・と思いました」
あるお客さんが私の取材に対して答えた一節です。
新築営業で何とか生き残りをかける工務店の皆さんにアドバイスしたいのですが、数千万円の借り入れ起こして購入するものが家です。
100円のボールペンとは言いませんが、1万円の服をお客さんに売り込むのであれば「お似合いですね!これは今年の流行の色です!」などとその場の雰囲気を盛り上げられれば売れるかもしれません。
しかし住宅は違うのです。
高価だからこそ、本当のことを直言してくれる工務店の担当者にお客さんは信頼を寄せます。
初回面談で必ず突っ込むべき項目
資金計画
これは当然の話でしょう。
年収400万円の人もいれば、1,000万円を大きく超えるお客さんもいます。
また、すでにリタイアした方で、年収が低くても資産をたくさんお持ちの方もいるでしょう。
いずれにしても、資金計画をしっかり聞いてお客さんの懐具合を確認するのは我々にとって重要な事項となります。
「年収をなかなか聞けないんだよね」
営業担当者からこの意見をわたくしはよく聞くのですが、 非常に大きな疑問を感じます。
私から言えばこれは非常に不思議というか、不可思議に感じざるをえません。
「お客さんの年収をどうやって聞けばいいですかね?」
このような質問をよく受けるのですがこれに対する私の答えは明快です。
「年収を教えてもらえませんか」
ストレートにこう聞けばいいんです。
お客さんも家の相談にやってきているわけですから、担当営業が年収や自己資金を聞いてくるのは予想の内でしょう。
これ以上の説明はいらないと思います。
土地を探している場合
希望のエリアや坪単価などを聞くのは誰しもが当たり前と思うかもしれませんが、お客さんに必ず聞いてほしいある項目がこの数年来上位にあがってきました。
地域の治安です。
治安というと大げさかもしれませんが、体感的にこの話がお客さんから出ることが多くなったと断言させてもらいます。
先日の商談で実際にお客さんと営業との間で交わされた会話をご紹介しましょう。
奥様「〇〇は基本的に治安が良くないから避けたいんですよね。あそこはお祭りがあるたびにあちこちで喧嘩がよく起こるじゃないですか」
営業「私もあの地域をよく知っていますが、確かに気が荒いところもありますし、夜になるとちょっと怖いと感じることもありますからね」
奥様「お祭りになると女の子が殴り合いとかしてますからね。 あの場所はさすがに勘弁です(笑)」
脚色はしていません。
本当にこのような会話がありました。
お客さんが治安を気にしている傾向が強まっているのですから、土地の話になった時に営業から治安の話を切り出すべきだとわたくしは思います。
土地に関してもう一つ必要なのは災害対策でしょう。
これはハザードマップなどを調べてお客さんにしっかりと提案すれば済む話です。
簡単にできるのですが、災害のこともしっかり心配した提案をすると、お客さんに強く支持されることもわたくしが保証したいと思います。
土地に関するこんな質問も加えてみよう
もう一つだけアドバイスをしたいと思います。
土地を探しているお客さんに対してはその要望をヒアリングするのが王道になりますが「これだけは絶対に避けたいという条件はありますか?」とも聞いてください。
逆説的な聞き方ですけども、このようにアプローチすると、お客さんの本音がよくわかり営業の大きな助けとなります。
私は現役時代に必ずこのアプローチをしていました。
あるお客さんとこんな会話をしたのをはっきり覚えています。
私 「今回探されている土地の条件が色々あると思いますが、絶対にNGだという何かはありますか?」
奥様「一つだけあるんですよ!マフラーを改造したような車が近くに停めてあるところだけは嫌なんです」
建てた後にそういう人が引っ越しをしてきたら防ぎようのない条件ですが、ひとまず土地の決定段階で調査することは可能でしょう。
このお客さんの土地探しては、わたくしも一緒になって行い結果的に契約してもらいましたが、この会話で大事なポイントは、奥様が即座に「マフラーを改造したような車がいるのは嫌」と返答したことです。
一般的にこのようなヒアリングをすると即答されることはあまりありません。
いろいろと考えた後に、ぽつりと何かを口にするケースはありますが、この時は確信に満ちた目をして意見を奥さんは述べたのです。
これはお客さんの強い要望と考えられます。
強い要望ですから、マフラーの騒音問題は土地を探すときの絶対優先事項となるのです。
こんなことも聞いてみよう
初回面談で聞くべき事は無数にありますが、もう少しだけピックアップして皆さんにお話をしたいと思います。
50代60代の方だとほぼ関係ありませんが、お客さんが20代後半から30代前半の場合、必ず聞いてほしいのが親の影響度合いです。
例えば27歳のご夫婦がいたとしましょう。
子育てがある奥さんは専業主婦で、ご主人は公務員だとします。
年齢を考えればわかりますが、給与が高いとは考えられず、 土地から取得するとなるとかなり厳しいことが想像されるでしょう。
このようなときは、親の影響度が極めて重要となります。
想定されるのは、親から資金援助がある場合や、土地の提供があるケースでしょう。
こうした場合、目の前にいる27歳の若い夫婦の意見はもちろん大事ですが、援助する親の意見や考え方も住宅会社選定に影響を与えることは充分に考えられます。
ペットについても言及したいところです。
これから家を建てる場合、ペットの代表格である犬もしくは猫を飼う予定があるかの確認です。
猫は当たり前ですが、犬についても室外犬でなく室内で飼うケースが圧倒的に多いでしょう。
この場合、犬にせよ猫にせよ家族同然の扱いをする人が多いですから、ペットの習性などもよく勘案した上で、それらについての提案も考えなくてはなりません。
余談ですが、現状の日本では猫を飼っている人のほうが犬より多いことをご存知でしたでしょうか。
私の記憶が確かならば、2016年頃にこの比率が逆転したはずです。
理由は日本の高齢化でしょう。
大型犬になると体重も30キロを超えるので、飼い主が年齢を重ねると制御するのが難しいですし、毎日の散歩も大きな負担となってきます。
猫を飼う家庭が増えたのも理解できます。
見落としがちな健康問題
前置きが長くなりましたが、今回の本題はこれです。
ある手段を用いて営業とお客さんの会話を観察したのですが、90分近く折衝した最後の部分で営業マンがこのように切り出したのです。
営業「ところで一つだけストレートな質問したいのですが、 今ご主人は健康ですか?」
主人「実は〇〇で病院に通っています」
ここからかなり具体的な突っ込んだ話になったのですが、 詳細は伏せさせていただきます。
営業がなぜこのようなことを聞いたのか理由はお分かりだと思います。
お金を借りるときに健康問題が大きく影響するからにほかなりません。
折衝が終わった後にこの営業と話をしたのですが、彼は初回面談の時に必ず健康の話をストレートに聞くとのこと。
ほとんどは問題ない会話で終わるのですが、中には今回のように病気を抱えているケースがあると言うのです。
まとめ
聞きにくいこともしっかり聞く。
高額商品である住宅を扱っている営業だからこそ、これを肝に銘じてください。
今回話題にあげた病気があると仰ったお客さんもそうなのですが、営業がこのことを口にした後、しきりに「病気で家が建てられないなんてことは結構あるんですか?」などと質問していました。
非常に気にかけている様子だったのですが、営業がこのことをストレートに聞いたことは、お客さんのためになったということです。
皆さんも聞くべき事は口ごもらずに直球勝負で質問を投げかけてください。