住宅営業がクロージングで失注した3つの行動|施主取材の実例

住宅営業がクロージングで失注した3つの行動|施主取材の実例

図面と見積もりを何度も出し直して競合を2社まで絞り込んでも、最後の商談でお客さんが他社に決めてしまうことがあります。

ひと月ほど前に私が東海地方で取材した施主のSさんは、最終候補に残した地場パワービルダーG社を、取材の場でボロクソに非難しました。Sさんが怒った原因は、G社の営業担当者がクロージングで土下座をし、競合ハウスメーカーS社の悪口を並べ、S社のプランにけちをつけたことでした。

本記事では、施主取材の内容をもとに、住宅営業がクロージングで信頼を壊した3つの行動を解説します。

7社競合を勝ち残った住宅営業がクロージングで失注した事例

私は久々のお客さん取材として、リアル面談による施主インタビューを行いました。

取材は2時間に及ぶロングインタビューで、Sさんご夫婦は大手ハウスメーカーS社と契約した方です。

契約したお客さんへの取材から分かる接客の考え方は、ハウスメーカーの営業トーク事例でも解説しています。

最後まで残った2社なら甲乙つけがたかったはずだと私は考えていましたが、Sさんの話しぶりは予想に反していました。Sさんが落としたG社をけちょんけちょんにけなす勢いに、私は圧倒されました。

「なんでここまで悪口を言うんだろう」

私は取材を始めたときにこの素朴な疑問を感じましたが、話を聞き込むにつれて納得する部分がどんどん出てきました。

当初は7社に図面と見積もりを出させていた

Sさんの住宅会社選びは、7社の競合から始まりました。

住宅会社の区分会社結果
大手ハウスメーカーS契約
東海三県パワービルダーG最後まで検討したが失注
東海三県大手分譲メーカーT途中で候補から外れた
建築設計事務所M途中で候補から外れた
地元零細工務店C途中で候補から外れた
輸入住宅S途中で候補から外れた
全国ローコストメーカーA途中で候補から外れた

さすがにやりすぎです。

Sさんはなんとなく見て回ったのではなく、7社同時に図面と見積もりを提案させて比較検討しており、業者の私から見てもむちゃくちゃです。

Sさん自身も、取材では反省しきりでした。

私「7社同時にご検討されたということですが、さすがにこれは無理があると思うのですけども……」

Sさん「おっしゃるとおりです。すぐに気付いたんですけども、冷静に比較検討などできるわけないですよね」

私「打ち合わせ回数はとんでもないんじゃないですか」

Sさん「回数を全部調べたのですが、延べで37回打ち合わせをしました。もうヘロヘロで思考能力ゼロですよ(笑)」

いろんな住宅会社と話をしたいお客さんの気持ちはよく分かりますが、私は理想を2社、最大でも3社だと考えています。

3社ですら同時並行で比べると、お客さんは何が何だか分からない状況に近くなるでしょう。

4社を超えると、お客さんの頭の中の処理は完全に追いつかなくなるはずです。

2回ずつ会って最終候補を2社に絞った

途中経過は省きますが、Sさんは7社と最低2回ずつ会ったそうです。

Sさんは2回会った時点でまず3社を落とし、残った4社とさらに突っ込んだ話をしました。

そこから4社を3社に、3社を2社に絞り込み、最後はS社とG社をがっつり比較検討する段階に至りました。

Sさんはかなり慎重な性格で、残った2社にプランを3回、4回と修正させ、そのたびに見積もりもきっちり求めたそうです。両社の担当営業は疲労困憊だったと思いますが、建物本体が4,000万を超える大きな案件だったので、なんとしても取るという気合いが入っていたと私は思います。

高額な案件で施主が住宅会社を落とす理由は、小規模工務店が高額案件を逃した理由で解説しています。

Sさんは、ほかの5社を何らかの理由で及第点に届かないと判断して落としています。そのため、Sさんは最後まで残したS社とG社のどちらにも、かなりの好感触を持っていたと言えます。

クロージングで住宅営業の担当者が豹変した3つの行動

G社の営業担当者は、最終段階で契約を強引に取りにいき、それが裏目に出てSさんの怒りを買いました。営業出身の私には担当者の気持ちも分からなくはありませんが、取材を進めるうちに、G社の担当者のアプローチが明らかに行き過ぎていたことが分かりました。

「人間性が豹変しましたからね」

Sさんはこう言って、G社の担当者がどんな食い下がり方をしたのかを、とくとくと私に話してくれました。

土下座で泣き落としをした

泣き落としは、私が一番やりたくない手です。私の先輩にもそういう営業がいたのは事実ですが、住宅を買ってもらうために土下座をして泣くのはどうでしょうか。

「いきなり正座して頭を床にこすりつけるんですよ(笑)」

Sさんはこう話してくれましたが、クロージングで土下座をする営業の話を私が聞いたのは久々でした。

競合ハウスメーカーS社の悪口をまくし立てた

G社の営業担当者は、それ以前の折衝でもある程度S社をくさしていたようですが、最後の最後になってボロクソに叩き始めたそうです。

  • 掲示板でむちゃくちゃ書かれている
  • アフターサービスの評判が悪い
  • 建物の品質に対して価格がべらぼうに高い
  • 自由設計と言いながらかなりの制約が生じる
  • 社内の人間関係がギスギスしている

大きな住宅会社になれば、掲示板でたたかれるコメントが出てくるのは当然です。

アフターサービスについても、私が知る限り、S社が悪いという噂は聞いたことがありません。

社内の人間関係がギスギスしていると言われたときにはSさんも呆れたそうですが、G社の営業担当者がそもそもそんな話を誰に聞いたのか、私も疑問です。

競合の悪口は、お客さんの前では逆効果です。悪口と感じられないやり方で相手の問題を鋭く指摘するのが営業の腕の見せ所で、露骨な悪口を言っては話になりません。

他社をけなさずにお客さんから好かれる営業の行動は、ハウスメーカー営業がモテる理由で解説しています。

Sさんが気に入っていたS社の間取りにけちをつけた

G社の営業担当者のなじり方は、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いを地で行くようなものだったそうです。

S社のプランは2階の廊下部分の面積がG社より若干広めで、担当者はそこを目ざとく見つけて「こんな無駄な設計をするなんていうのは普通ではありえませんよ」と滔々(とうとう)とまくし立てました。

担当者はほかにも、ちょっとした袖壁や動線を捉えては文句をつけたそうです。

Sさんはその間取りを非常に気に入っていたので、文句をつけられるうちにだんだん腹が立ってきたそうです。G社の営業担当者は、最後の最後で、それまで積み上げてきた人間関係と信頼を自らぶち壊したことになります。

私が不思議に思うのは、営業をしばらくやっていれば簡単に分かりそうなことなのに、G社の担当者がなぜそんな手段に訴えたのかです。月末が迫っていて何が何でも取りたかったというのが実際のところだと私は推測しますが、いずれにしても残念な話です。

クロージングの失敗が1か月たっても施主の記憶に残る理由

「今でも気分が悪いんだよね」

取材の場で、Sさんご夫婦はご主人も奥さんもそろってこう話していました。

プライベートに置き換えてみてください。

好きな歌手がいる人の前で、そのことを知らない友人がその歌手をボロクソにけなし始めたら、聞いている人は気分が悪いのではないでしょうか。

友人の場合は知らずに言っていますが、G社の営業担当者は、Sさんが最終候補にS社を残していることを知っていました。

担当者はSさんがS社を評価していると分かったうえでけなしたので、質が悪いと私は思います。

着工中に現場のトラブルが重なって気分が悪いというなら分かります。しかし、契約前に切った住宅会社の営業担当者のことが、最後に会ってから1か月以上たっても頭に残っているのは相当なことです。

私は23年間にわたって顧客インタビューをしていますが、お客さんが検討した住宅会社をここまでけなすのは久々でした。

最初から気に入らない営業担当者なら、お客さんは初回面談の段階で外せるので、嫌悪感も薄れます。

G社は初回面談から最終候補まで残った会社だったため、Sさんの怒りが増幅しました。

ご夫婦は、最終商談のひとつ前まではG社の担当者を「感じのいい好青年だと思っていた」と漏らしていました。そのため、最後の折衝で態度を急変させた担当者に、ご夫婦は呆れると同時に腹が立ったのだと私は思います。

最終商談で強引にならずに契約を求める方法は、住宅営業のクロージングのコツで解説しています。

まとめ

東海地方の施主取材では、7社競合を勝ち抜いて最終候補に残ったG社の営業担当者が、土下座、S社の悪口、S社プランへのけちという3つの行動で失注していました。Sさんご夫婦の怒りは、最終候補まで信頼していた相手だったからこそ大きくなりました。

ぜひ本記事の施主取材の事例を参考に、最終商談で競合の話をどう切り出しているかを見直してください。

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