仕様打ち合わせの回数を減らす進め方|録画で見た誘導の事例

仕様打ち合わせの回数を減らす進め方|録画で見た誘導の事例

契約後の仕様打ち合わせで、テレビのコンセントの位置ひとつが決まらず、お客さんが「次回までの宿題にさせてもらっていいですか」と持ち帰ります。住宅会社の設計やインテリアコーディネーターが同じやり取りを繰り返すうちに、打ち合わせの回数はなかなか減らなくなります。

大手ハウスメーカーは仕様打ち合わせを2回で終えることを目標にしていますが、実際には4回、5回、それ以上に延びる案件が頻発しています。私が録画で分析したベテランのインテリアコーディネーターKさんは、決めにくい項目を現場写真で比べてお客さんを一定の方向へ誘導し、話をスピーディーにまとめていました。

本記事では、住宅の打ち合わせ回数が増える理由と、録画分析から分かった打ち合わせを短くまとめる誘導の進め方を解説します。

ハウスメーカーの仕様打ち合わせ回数は2回が目標

大手ハウスメーカーが掲げる仕様打ち合わせ2回という目標に、実際の案件はなかなか収まりきりません。お客さんによっては4回、5回と打ち合わせが続き、さらにそれ以上になることも頻発しているのが実情です。

住宅営業にいくら営業力があり、たくさんの受注を取れても、契約後の後方部隊の処理に時間がかかると、住宅会社としてはうまく回りません。ある一定規模以上の住宅会社であれば、必ずこの打ち合わせの長時間化という問題を抱えているといってよいでしょう。

住宅会社で打ち合わせ回数が増える理由

ネットやインスタグラムで調べた知識を持ち込むお施主さん

私が住宅営業をしていた平成の初期と比べると、今のお客さんの知識量は比べ物になりません。ネット時代になってからは、お客さんがネットをフル活用して知識を頭に詰め込み、打ち合わせにやって来るためです。

「あれ、これってもっと違った商品ありますよね」

「ネットに違う話が載っていたんですが」

「これはもう少し単価が下がるんじゃないですか」

明らかにネットで勉強した内容を前面に押し出してくるお施主さんもいれば、インスタグラムやPinterestの写真を設計やインテリアコーディネーターに見せるお施主さんも相当数います。

「これこれ、こんな感じの手すりがいいんです」

「この写真に載っている蛇口のメーカーを調べてくれませんか」

平成の初期は、現場で困ったことがあっても、プロの設計士が「これはこういうものですよ、多くの方がこうします」と言えば、お客さんも「じゃぁ、それでいいです」とあっさり決めたものです。営業職だった私も折衝の途中で窮地に陥ったことが何度もありましたが、涼しい顔でうまく流した経験は数え切れません。

今のお客さんにはこの種のやり方がまったく通用しなくなったので、住宅営業も大変になりました。契約後の打ち合わせはそれに輪をかけて大変になり、時間がかかる現象につながっています。

その場で決められない項目が「次回までの宿題」になる

住宅会社の側が何かを提案しても、お客さんがその場で即決できないことが、打ち合わせが延びる原因の一つです。打ち合わせがリモートになると、設計やインテリアコーディネーターには相手の表情もよく分からず、最終的にお客さんはこう切り出します。

「テレビのコンセントですけども、今は決められないので次回までの宿題にさせてもらっていいですか」

一カ所ずつは大したことのない項目でも、すべてが後回しになっていくと、打ち合わせが長時間化していきます。

設計の優柔不断さやネットの口コミの持ち込みなど、打ち合わせが長引くほかの原因は、設計打ち合わせが長引く原因で解説しています。

インテリアコーディネーターKさんが仕様打ち合わせを短くした事例

私は営業コンサルタントとして、住宅営業とお客さんの折衝を生で見たり、録画で検証したりしてきました。

営業段階の検証から分かった接客の傾向は、ハウスメーカーの営業トーク事例で解説しています。

その検証の延長で、私は設計やインテリアコーディネーターがお客さんと折衝する場面も分析するようになりました。

Kさんは40代後半のベテラン女性インテリアコーディネーターです。

Kさんがお客さんとリモートで行った仕様打ち合わせの動画を、私は研修素材としてもらいました。

お客さんも録画については承知のうえです。

私はその動画をもとに設計士を集め、この折衝のどこに問題があり、どこが良かったのかを分析しました。

テレビのコンセント位置を2枚の現場写真で決めた

Kさんはさばき方が実に素晴らしく、話をスピーディーにまとめていきました。

Kさんの速さを支えていたのはリモートの手際の良さで、Kさんは画面を左右に分け、左に図面、右に資料を映し出して話を進めていました。

コンセントの位置を決める場面では、Kさんとお客さんがこんなやり取りをしています。

Kさん「テレビは壁掛けにしますか?それとも普通に台に置きますか?それによってコンセントの位置をどうするかに影響が出るんですよね」

お客さん「うーん、悩みますね……壁付けもいいんですけど、そこまでまだ考えていません」

お客さんはこの時点では即決できていませんでしたが、Kさんは右の画面に、壁掛け式のテレビの場合と台に置いた場合のコンセントの位置を実際に配置した現場の写真を2枚並べました。そのうえでKさんは両方の利点と欠点を淡々と説明し、最後にこう添えたのです。

「私のこれまでのお客さんですが、やはり壁の直付けが結構多いですよ。皆さんの評判を聞くと掃除がしやすいっていうんですよね」

お客さんはこれを聞いて「そうですか……では、壁掛けにします」と決めました。Kさんがお客さんをうまく誘導した結果です。

一方で、だらだらと延びる打ち合わせでは、設計やインテリアコーディネーターがお客さんを誘導する場面があまり見られず、お客さんと一緒になって悩んでしまいます。私が録画で見た別の案件では、設計が煮え切らないうえに、お客さんのご両親まで打ち合わせに参加しており、まったく話が前に進みませんでした。

コンセントの数・口数・高さも一定の方向へ導いた

Kさんがお客さんを誘導していたのは、テレビのコンセントだけではありません。全部で2時間の打ち合わせの中で、Kさんが誘導する場面は数えきれないほど出てきました。

見積もりに入っている標準のコンセントの数はどの住宅会社でも決まっていますが、追加工事費を払って増設するかどうかは、多くのお客さんが悩むところです。

2口を3口にするか、高さをどう設定するかも、お客さんが同じように悩む項目です。

一軒の家の中にはコンセントが無数にあるので、一つずつのんびり決めていては日が暮れてしまいます。

コンセントの増設のように金額が変わる決定事項を残しておく書式は、打ち合わせ記録テンプレートで解説しています。

常識的に考えてここしかないという場所のコンセントは問題ありませんが、家具が入らないと場所を決められないなど、決めにくいコンセントもあります。Kさんはそうしたコンセントについても的確なアドバイスをしながら、お客さんを一定の方向へ導いていきました。

誘導して打ち合わせを早く終えてもお客さんの満足度は下がらない

たまに勘違いされる方がいますが、住宅会社のプロがお客さんを誘導することは悪いことではありません。

「お客さんの判断で好きなだけ悩み抜いてもらうのがサービスです」

こうした意見にも一理あると私は思います。しかし、お客さんはプロの意見を聞きたがっており、その意見が理論に裏付けされていればお客さんはそれを選びますし、満足度も高くなります。

契約前にインテリアコーディネーターが外壁の配色の根拠を説明した例は、デザイン重視の客が契約を決めた事例で解説しています。

別の設計打ち合わせの録画では、打ち合わせが終わったときにお客さんがこう話していました。

「〇〇さん(設計士)がどんどん提案してくれたので、話が早く進んでよかったですよ。私の友人は打ち合わせに何日もかかって、心底へとへとになったと言ってきましたからね」

お客さんを誘導して早く打ち合わせから解放することは、お客さんと住宅会社の双方にとってメリットになるケースが圧倒的に多いのです。そのため住宅会社は、打ち合わせを一刻も早く終わらせる工夫と段取りをどう組み立てるかを、真剣に考えなくてはいけません。

よくある質問

小規模な工務店でも打ち合わせ回数を減らす必要がありますか?

小規模な住宅会社では、打ち合わせが長時間に及んでも、それがかえってお客さんの満足度につながり、大変ではあっても良い結果をもたらすことがあります。一方で、住宅会社の規模が大きくなると、話は簡単ではありません。

まとめ

住宅の打ち合わせ回数が増えるのは、ネットで知識を集めたお客さんがその場で決められず、設計やインテリアコーディネーターも一緒に悩んで宿題を積み重ねてしまうためです。Kさんは決めにくい項目を現場写真と利点・欠点で比べ、ほかのお客さんの選び方を添えて誘導することで、お客さんの満足度を下げずに打ち合わせを短くまとめていました。

私は設計の打ち合わせだけでなく、インテリアコーディネーターや、電気の回線だけを担当する人とお客さんの会話もつぶさに見ています。手元には動画が多数蓄積されていますが公開はできないので、映像の中で繰り広げられたお客さんとの攻防戦は、今後も文章でお伝えしていきます。

ぜひ本記事のKさんの事例を参考に、自社の仕様打ち合わせで宿題になりやすい項目を洗い出し、比較写真と説明を準備してください。

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