工務店が銀行と連携する方法|地銀支店長に聞いた住宅ローン事情

新築住宅の着工数が激減すると予想されるなか、銀行は住宅ローンを1件でも多く取ろうと競争を強めています。一方で工務店の側は、建築請負契約を結んだお客さんがどの銀行に住宅ローンを申し込むかを、お客さん任せにしています。
私は先日、関東地方のある地銀の統括支店長と会いましたが、その支店長は「住宅ローンが取れるならば可能な限り協力します」と何回も私に話していました。銀行は、住宅ローンの申込者が増える提案を住宅会社から待っています。
本記事では、地銀支店長との面談で分かった銀行の住宅ローン事情と、工務店が銀行と連携して受注につなげる方法を解説します。
工務店が知らない銀行の住宅ローン事情(関東の地銀統括支店長との面談)
統括支店長との面談で出た話は、次のような程度のものでした。
「なんか一緒にできたらいいね」
私と統括支店長の地銀は、何かやるかもしれないし、何もやらないかもしれないという段階です。それでも私にとっては、銀行の事情や戦略がいろいろ分かり、大変興味深い面談になりました。
私は住宅営業一本槍で来ているので、住宅ローンのことは人よりは分かりますが、金融に関する深い知識はありません。
友人には銀行員や元銀行員も多く、私も話自体はいろいろ聞いていますが、現役の銀行幹部の話にはリアリティがありました。
今回は住宅ローンに絞って話を聞き、銀行は銀行で大変苦労していることがよく分かりました。
金利差だけでは住宅ローンが取れない
住宅会社にとって銀行は、会社経営の資金繰りで付き合う相手であり、新築のお客さんが住宅ローンを申し込む先でもあります。今回の話は後者で、住宅会社が審査や実行に関わらないところで、銀行は個人住宅ローンの獲得に必死で奔走しています。
銀行同士は金利差だけでは勝負がつきにくいため、各行は付帯サービスを付けて自行への申し込みを誘導していますが、これがなかなか大変な作業です。支店長からも、次のような話を聞きました。
「うちも営業の行員が工夫をしながらやっているのですが、簡単に個人住宅ローンは取れないんですよ。うちをメインバンクとしてるお客様は比較的スムーズに申し込んでくれますが、それ以外の方を取り込むのは正直大変ですね」
上層部から支店長にかかる住宅ローンのプレッシャー
支店長が協力を何度も口にした背景には、上層部からのプレッシャーがあります。
銀行によって違いはあると思いますが、この支店長は、上層部からのプレッシャーはものすごいものがあると、こっそり私に教えてくれました。
住宅会社の営業社員が「今月は何棟取れるのか」と迫られるのと同じように、銀行では住宅ローンや貸し出しの金額が迫られます。
工務店からの連携提案を銀行は待っている
ビジネスの基本はwin-winです。住宅会社と銀行がこの関係になれる提案があれば、銀行は前のめりになって話を聞いてくれます。
小規模な工務店が一社で提案しても銀行は簡単に動かないと思いますが、地域でそれなりの規模を誇る住宅会社であれば、金融機関が提案に乗ってくれる可能性は十分にあると私は考えています。ただし、銀行によっては、一部の工務店だけと組んでPR活動をするのはバランスを欠くとして、慎重になるケースがあるのも事実です。
それでも、住宅ローンの申込者が増えると確信できれば、銀行は前向きになってくれます。住宅会社は、提案の場だけでなく、普段から銀行の担当者とコミュニケーションを取っておくことが前提になります。
銀行の融資担当者と普段から関係を築く方法は、ローンアウトを防ぐ工務店の戦略で解説しています。
銀行と組んで差別化したF社の事例
一定規模以上の住宅会社では、ファイナンシャルプランナーがお客さんとの商談に同席するサービスを行うことが結構あります。お客さんからの評判は良く、この制度を評価して住宅会社を決めたという事例も数多くあります。
F社は県内で10本の指に入る有力工務店で、かねてからファイナンシャル事業に力を入れてきました。
外部のファイナンシャルプランナーを商談初期に立ち会わせた
F社も以前はファイナンシャルプランナーを重視せず、営業マンの説明だけで済ませていました。ところが、知識と経験のない営業社員は大した内容を話せず、お客さんから信頼を失うケースが相次いだそうです。
F社はこの機会損失を防ぐため、外部のファイナンシャルプランナー複数名と契約し、お客さんが拒否しない限り商談の初期段階で立ち会わせる仕組みにしました。
社長の話では、当時この手法はお客さんの心をつかみ、受注に間違いなくつながったそうです。
ただ、今ではこのようなやり方が一般的になったため、さほどの差別化にはなっていません。
行員を招いたファイナンシャルセミナーと個別相談
F社は今もファイナンシャルプランナーの活用を続けていますが、他社との色の違いを出すため、銀行と組んでいろいろな活動をしています。活動の内容はかなりベタベタで、行員を会社に呼んでのファイナンシャルセミナーや個別相談です。
何の工夫もないように感じるかもしれませんが、F社のやり方は一定の集客ができるうえ、商談中のお客さんにも好評なイベントになっています。工務店がお客さんとの接点を増やす方法は、住宅営業の探客方法で解説しています。
銀行の行員が匿名の質問に答えるYouTubeライブ配信
F社とは別の話ですが、私はある有力地場工務店と、銀行に協力してもらうイベントを検討しています。銀行の行員がYouTubeで生ライブ配信を行い、商談中のお客さんなど多数に参加してもらって、ライブ中に何でも質問できるようにするイベントです。
参加するお客さんが自分で設定する必要はありますが、基本的には匿名で質問できる点がこのライブのよいところです。お客さんは、たとえば次のような質問を、名前を出さずに行員へ投げかけられます。
「自己資金600万円、年収720万円、土地建物合わせて総額6,200万円……これは問題ないと言えるのか?」
会場に足を運ぶセミナーはお客さんにとって参加のハードルが若干高いのですが、ライブ配信なら人は簡単に集まると私は思います。面白いと思いませんか。
注文住宅のお客さんはお金の細かい話を求めている
お客さんが住宅会社を選ぶ大きな要因は、間取りやデザイン、価格です。
ただし、ここでいう価格は本体価格のことで、ほとんどのお客さんもこの金額しか見ていません。
細かい話をすれば、つなぎローンの組み方によって負担額は増えたり減ったりしますし、長い目で見たメンテナンスの金額もお客さんの財布に大きな影響を及ぼします。
以前は、住宅会社がこうした話をしなくても受注が取れましたし、お客さんもさほど気を配っていませんでした。
ところが、今のお客さんは、20年、30年のスパンでかかる家の経費も頭に入れています。
ネットには目に見えないお金がいかに重要かという記事があふれていて、お客さんはそうした記事を読み、「家の維持にはお金がかかるんだ」「教育費も考えなくてはいけない」と認識します。
そのため住宅会社の間では、専門職であるファイナンシャルプランナーを同席させ、子どもの教育費や保険料など細かなお金を計算してお客さんに提示するサービスが定着してきました。私は、住宅営業がお客さんにお金の話をしっかりすれば、お客さんの信頼を得て契約に結びつくと断言します。
住宅営業が身につけたいお金と補助金の知識は、資金計画を銀行に丸投げする工務店の課題で解説しています。
まとめ
関東地方の地銀統括支店長との面談で、銀行は金利差だけでは住宅ローンが取れず、上層部からの強いプレッシャーの中で住宅会社からの提案を待っていることが分かりました。F社は行員を招いたセミナーや個別相談で、一定の集客と商談中のお客さんからの好評を得ています。
今のお客さんは本体価格だけでなく、住宅ローンやメンテナンス、教育費まで含めたお金のことを頭に入れています。お金のプロである銀行との連携を強めることは、そうしたお客さんの信頼を得る近道です。
ぜひ本記事の地銀支店長の話とF社の事例を参考に、取引のある銀行にセミナーやイベントを提案してください。



