ZEH未対応の工務店が招く減税トラブル|2025年3月の確定申告

ZEH仕様になっていない住宅は、住宅ローン減税の対象にならない可能性があります。私は、2025年3月の確定申告で減税を受けられないと分かったお客さんと工務店のトラブルが激増すると見ています。
本記事では、ZEHと住宅ローン減税の関係、初回面談でのZEHトーク、ZEHに取り組んだ住宅会社の事例を解説します。
ZEH対応が遅れた工務店に起こる住宅ローン減税のトラブル
私は、工務店のZEH対応の遅れが、2025年3月の確定申告の時期に大きな社会問題になると断言します。ZEH仕様になっていないために住宅ローン減税の対象にならないお客さんは、2023年の冬からすでに出始めると予想されています。
確定申告の前に交わされている会話
お客様「住宅ローン控除は、たしか確定申告をすればいいんですよね?」
工務店「そうですよ。今から家を建てて来年引渡しとなりますと2025年の3月になりますかね。そこで手続きをしてもらえれば大丈夫です」
このやり取りはごく一般的なものですが、住宅をZEH仕様にしていないと、この会話が成立しない可能性があります。
全国でこの問題が起き、2025年3月になると、住宅ローン減税を受けられないと分かったお客さんが工務店とトラブルになるケースが激増するでしょう。
私が工務店に一刻も早くZEH仕様へ対応してほしいと考える理由の一つがこれです。
住宅金融支援機構が小規模工務店向けの講演を依頼した理由
私が20年来懇意にしている建築士さんは、最近、住宅金融支援機構から講演を依頼されました。講演のテーマはざっくり言うと「ZEHに対応しないと大きく後悔することになる」というもので、小規模な工務店に向けて話してほしいという依頼だそうです。
住宅金融支援機構のメインのお客さんは、小規模な工務店です。
小規模工務店がZEHに前向きでなければ、その余波を受けるのは住宅金融支援機構ということになります。
住宅金融支援機構のこうした動きを見ても、ZEHに対応しない工務店はとんでもないことになると私は考えています。
初回面談でZEHの認知を確かめる住宅営業トーク
2023年10月19日の午後、私は小規模工務店の方々に向けて、ZEHに関するセミナーをリモートで行いました。
セミナーの冒頭で私が参加者にお願いしたのは、お客さんとの初回面談で「ZEHという言葉をお聞きになったことはありますか?」と聞くことです。
お客さんがZEHを知っているかどうかで、その後の商談の進め方やトークが変わります。
お客さんがZEHを知っている場合
ZEHの認知度は日に日に高まっています。お客さんが「知っている」と答えたら、営業はZEHの知識をどこで手に入れたのかを確認します。
工務店「ZEHという言葉をお聞きになったことありますか?」
お客様「聞いたことありますよ」
工務店「ネットか何かで調べたのですか?それとも、どちらかの住宅会社で耳にされたのですか?」
営業はここでいったん区切ります。
お客さんが「〇〇工務店で聞きました」と答えれば、その競合工務店はZEHを強く推進している可能性があり、2030年度以降は事実上の義務化になるといった話をしている可能性が高いでしょう。
競合工務店がそこまで話しているなら、営業も対抗しなくてはいけません。
私は、営業にここで次のひと言を返してほしいと考えています。
競合のホームページの確認や営業トークの準備については、ZEHの話を避ける工務店の商談事例で解説しています。
「〇〇工務店さんの言うとおりで、2030年度以降は事実上の義務化になりますので、今後の住宅はZEHで建てないと後悔しますよ」
お客さんがZEHを知らない場合
ZEHをまったく知らないお客さんも多く、その場合は営業が次のように対応します。
工務店「ZEHという言葉を聞いたことがありますか?」
お客様「なんですかそれ?初耳です」
工務店「2030年には事実上義務化になるのですが、ゼロエネルギーハウスといいまして、省エネを究極に追求した住宅だと思ってください。ポイントとなるのは、国策ですのですべてがこちらに向かって今後は向かっていくことです」
営業は国策であることを強く打ち出し、「ZEHは避けることができない国策なんだ」とお客さんが実感するように話してください。
私が懇意にしている住宅会社の男性トップ営業マンも、私とまったく同じ対応でお客さんと接しています。
初回面談全体の進め方は住宅営業の初回接客のコツで解説しています。
単価が上がるとZEHを避けていたA工務店(従業員十人以下)
A工務店は少人数で経営し、設立十年目を迎えた工務店です。A工務店の経営者は、ZEHに後ろ向きとまでは言わないものの、できれば視界に入れたくないという感じで本能的に避けていました。
2023年度の初めに私が行ったZEHのセミナーに、A工務店の社長が参加しました。私はいつものようにZEHについて熱く語りましたが、社長は強く心を動かされたようで、セミナーの終了後に声をかけてくれました。
社長「今日のお話で考えを改めましたよ。ZEHに取り込まなくちゃいけないことはもちろんわかっていたんですが、一日一日先延ばししてたんですよね。明日の営業から、今日聞いた事をそのまま実践したいと思います」
私「それはよかったです。これまでZEHについては触れなかったんですか?」
社長「お客さんから言われればある程度の話をしましたが、こちらからZEHの話を振ることは皆無でした。受注を何としてもとろうと思っているところに、単価が上がるZEHの話などしたら元も子もないですからね(笑)」
社長の気持ちはよく分かります。しかし、ZEHで単価が上がっても、電気代などで十分に回収できることに加え、住宅ローン減税でも圧倒的な差が出ることを、営業がお客さんに話せばいいのです。
単価が上がっている背景と工務店の対応は、坪単価の上昇と工務店の打ち手で解説しています。
従業員千人超えの住宅メーカーがZEH提案を徹底した結果
従業員が千人を超える大規模住宅メーカーは、一年半ほど前から、初回面談からZEHの話をガンガンする営業方針に転換しました。
この規模の住宅メーカーは国策に敏感なので、ZEHを重要視していたのは言うまでもありません。
方針転換の前から、大規模住宅メーカーの営業はお客さんにZEHの話をしていましたし、ホームページでもスペースを割いてZEHの重要性を説明していました。
営業社員の間にあったZEHの温度差
会社全体としてはZEHに前向きだったものの、営業個人のレベルでは温度差が激しく、若手社員の中にはZEHを詳しく説明できない営業社員もちらほらいたほどです。
実態を把握した上層部は「これはまずい!」となり、営業社員にZEHの知識を徹底させるとともに、お客さんにZEHの重要性をガンガン話すよう指示しました。
契約の半数以上がZEH仕様になっても残り半分は選ばなかった
上層部の指示の効果はてきめんで、大規模住宅メーカーで話を聞いたお客さんはZEHのことが腹に落ち、実際に契約したお客さんの半数以上がZEH仕様を選びました。
しかし、ここまでやっても、残り半分のお客さんはZEH仕様にしませんでした。
営業が口先で簡単に言うだけでは、お客さんはZEHを選ばないということです。
私は営業コンサルタントの立場ですが、もし工務店を経営していれば、営業体制をZEHを意識したものに組み替えて対応します。
こうした住宅メーカーと比べられたときの工務店の商談については、工務店のZEH商談で客を失った実話で解説しています。
まとめ
住宅ローン減税を巡るお客さんとのトラブルを防ぐためにも、住宅営業は初回面談でZEHの認知を確かめ、知っているお客さんには情報の入手ルートを聞き、知らないお客さんには国策であることを伝えるところから始めます。
A工務店の社長のように単価を理由にZEHの話を先延ばしにする工務店がある一方で、従業員千人超えの住宅メーカーのように徹底して話しても、半数のお客さんはZEHを選びませんでした。
ぜひ本記事の初回面談のトークと住宅会社の事例を参考に、自社の営業体制をZEHに合わせて組み替えてください。



