今日もZEHに関するコラムを書きますが、ここ最近はいろいろな話が私の耳に入ってきます。
今までスルーしていたZEH問題をしっかりと前面に捉えて営業しだした小規模工務店の話や、従業員が千人を超えるある大規模住宅会社のZEHに対する取り組みなども紹介しましょう。
ところで、この原稿を書いているのは10月19日ですが、午後はリモートにてZEHに関するセミナーを行ないました。
今日は小規模工務店の皆様に参加してもらいましたが、そこで私が話した内容なども、このコラムで紹介します。
私は営業コンサルタントの立場ですが、もし工務店を経営していれば、営業体制はZEHを意識したものに組み替えて対応していくでしょう。
皆さんも乗り遅れないよう、早急に動くことを強くわたくしからおすすめしたいと思います。
今日のセミナーで話したこと
「ZEHという言葉をお聞きになったことはありますか?」
私が皆さんにセミナー冒頭でお話したことがこれ。
お客さんとの初回面談時に、ZEHの認識について聞いてほしいのです。
認識というか認知度といいますかどちらでもいいのですが、これを知っているかどうかで、この後の商談の進め方やトークが変わってくることを
意識してください。
①ZEHについて知っている場合
ZEHの認識率は日に日に高まっているわけですが、あなたがお客さんに対してZEHの認知度を確認したところ「知っている」と答えたとしましょうか。
この場合は、次のような形で トークを継続してください。
工務店「ZEHという言葉をお聞きになったことありますか?」
お客様「聞いたことありますよ」
工務店「ネットか何かで調べたのですか?それとも、どちらかの住宅会社で耳にされたのですか?」
まずはここで区切ります。
ZEHについてお客様が知っていた場合は、その知識の入手ルートを確認してください。
こう聞いた時に「〇〇工務店で聞きました」と答えればその競合工務店はZEHを強く推進している可能性が出てきます。
おそらく、国策で2030年度以降は事実上の義務化になるなどの話をしている可能性が高いでしょう。
そうであれば、あなたも対抗しなくてはいけません。
「〇〇工務店さんの言うとおりで、2030年度以降は事実上の義務化になりますので、今後の住宅はZEHで建てないと後悔しますよ」
このように言ってほしいのです。
②ZEHについて知らない場合
これに対してお客さんが、ZEHについて全く知らないことも多いでしょう。
そのときはこのような対応してください。
工務店「ZEHという言葉を聞いたことがありますか?」
お客様「なんですかそれ?初耳です」
工務店「2030年には事実上義務化になるのですが、ゼロエネルギーハウスといいまして、省エネを究極に追求した住宅だと思ってください。ポイントとなるのは、国策ですのですべてがこちらに向かって今後は向かっていくことです」
大事なのは国策であることをアピールすることです。
必ずこのように言って「ZEHは避けることができない国策なんだ」とお客さんが実感するように伝えてください。
簡単に二つの事例だけお話しましたが、初回面談では、これを踏まえてお客さんと対応してください。
私が懇意にしている会社ですが、ここの男性トップ営業マンも私と全く同じ対応でお客さんと接しています。
従業員十人以下のA工務店
少数経営で設立十年目を迎えたA工務店ですが、こちらの経営者もZEHに関しては後ろ向きとまでは言わないものの、できれば視界に入れたくないという感じで本能的に避けていました。
今年度初頭に行った私のZEHに関するセミナーに、A工務店の社長は参加しました。
私はZEHについていつものように熱く語ったのですが、幸いにもこの社長には非常に強く響いたようで、セミナー終了後に声をかけられこんな会話したのです。
社長「今日のお話で考えを改めましたよ。ZEHに取り込まなくちゃいけないことはもちろんわかっていたんですが、一日一日先延ばししてたんですよね。明日の営業から、今日聞いた事をそのまま実践したいと思います」
私「それはよかったです。これまでZEHについては触れなかったんですか?」
社長「お客さんから言われればある程度の話をしましたが、こちらからZEHの話を振ることは皆無でした。受注を何としてもとろうと思っているところに、単価が上がるZEHの話などしたら元も子もないですからね(笑)」
この気持ちはよくわかります。
しかし、単価が上がっても、電気代などで充分に回収できることに加え、ローン減税についても圧倒的な差が出ることを、お客さんに話せばいいのです。
従業員千人越えの大規模メーカー
こちらの会社では、一年半ほど前からZEHについて初回面談からガンガンいくように営業方針を転換しました。
さすがにこの規模になると国策には敏感に反応しますので、ZEHを重要視していたのは言うまでもありません。
それ以前でもお客さんに対しては、ZEHのことはしっかり話をしていましたし、ホームページでもスペースをしっかり割いて、ZEHの重要性を説明していました。
営業社員の腹に落ちていなかった
ただ、問題はこれでした。
会社全体としてはZEHに対して前向きだったものの、営業個人レベルになると、その温度差が非常に激しく、若手社員の中にはZEHのことを詳しく説明できない営業社員もちらほらいたほどです。
それを把握した上層部が「これはまずい!」となって営業社員に対し、ZEHの知識の徹底することはもちろんなのですが、お客さんに対してZEHの重要性をガンガン話すことを指示したのです。
その効果はてき面で、この住宅メーカーで話をしたお客さんはZEHのことがしっかり腹に落ち、実際に契約する半数以上がZEH仕様になりました。
しかし、これだけやっても残りの半分のお客さんはZEH仕様にしないわけです。
つまり、口先だけで簡単に言うだけでは、ZEHにはならないということです。
最大の落とし穴は住宅ローン減税
これはものすごく重大な問題で、2025年の3月の確定申告時期になると、私は大きな社会問題になると断言します。
皆さんご存知のように、ZEH仕様になってないと住宅ローン減税の対象にならない現実が、今年の冬からすでに発生することが予想されています。
起こりうるこんなトラブル
現実的にはこんなことが起こるでしょう。
お客様「住宅ローン控除は、たしか確定申告をすればいいんですよね?」
工務店「そうですよ。今から家を建てて来年引渡しとなりますと2025年の3月になりますかね。そこで手続きをしてもらえれば大丈夫です」
こんな会話はあちこちで交わされるごく一般なやり取りです。
ところが、ZEH仕様にしていないと、この会話が成立しない可能性がある事を皆さんはご存知でしょうか。
文字数の関係がありますので詳細はご説明しませんが、とにかく全国でこの問題が発生し、25年の3月になると、ローン減税を受けられないと分かったお客さんが工務店とトラブルになることが激増するでしょう。
一刻も早くZEH仕様に対応していただきたい理由の一つがこれになります。
まとめ
私が20年来懇意にしている建築士さんがいるのですが、この方が最近、住宅金融支援機構から講演を依頼されたとのこと。
「ZEHに対応しないと大きく後悔することになる」
ざっくり言うとこのようなテーマを、小規模な工務店に向けて話してほしいという依頼だそうです。
住宅金融支援機構のメインとなるお客さんは小規模な工務店です。
ですから、そうした会社がZEHに前向きでないと、その余波を受けるのが彼らということになります。
この動きを見ても、ZEHに対応しないととんでもないことになるということがお分かりになるでしょう。