ローンアウトを防ぐ工務店の戦略|銀行出身部長を採用した事例

ローンアウトを防ぐ工務店の戦略|銀行出身部長を採用した事例

新築着工件数が激減するという予想が出る中、零細工務店から大手ハウスメーカーまでが、住宅性能やデザイン、工期短縮で生き残りを図っています。ところが、お客さんが契約の意思を示してくれても、住宅ローンの審査に通らなければ住宅会社の利益は0円です。

ローンアウト率を下げる基本戦略は、金融に詳しい社員の採用、社員の勉強、銀行の融資担当者との関係づくりの3つです。東海地方のある工務店は10年前に銀行出身のB部長を迎え、B部長は今では会社になくてはならない存在になっています。

本記事では、B部長の働き方と社内の金融教育、違法すれすれのローン付けをする業者の実態をもとに、工務店がローンアウトを防ぐ方法を解説します。

ローンアウト率を下げることが工務店の受注戦略になる理由

住宅そのものに大きな特徴や魅力がない工務店でも、住宅ローンを通すことに長けていれば、それだけでお客さんがつくという事実があります。私は、ローン付けの力は住宅営業にとって強力な武器になる営業ツールだと考えています。

住宅ローンを銀行に丸投げする工務店の弱み

工務店、とくに小規模な業者は、お金のことはお客さんに任せて一切タッチしてこなかったと私は思います。

餅は餅屋で、住宅ローンは銀行という考え方です。

しかし、銀行に融資関連を丸投げしているだけでは、住宅会社は他社と何ら差別化ができません。

ローンアウトする人が100人に1人であれば、住宅会社もさほど気にする必要はありませんが、100人に5人まで上がったらどうでしょうか。

営業社員がたまたま折衝していたお客さんがこの5%に入れば、それまでの努力は水の泡と消えます。

実際に、ローンアウトするお客さんが多いことに加えて建物価格が高騰したため、余裕のあるお客さんは問題がなくても、資金がギリギリのお客さんには新築住宅に手が届きにくくなっています。

資金がギリギリのお客さんから借入状況を聞き出す方法は、ローンアウトを防ぐ資金計画ヒアリングで解説しています。

ローンアウトを減らす3つの基本戦略

住宅会社がローン付けの力を強化する基本戦略は、次の3つしかないと私は考えています。

  • 金融に詳しい社員を採用する
  • 社員が金融を勉強する
  • 銀行の融資担当者と仲良くなる

最後の項目はおまけのようなものですが、住宅会社にざっくばらんに話ができる行員がいるのといないのとでは、全く違うのも事実です。

ローンアウト対策に銀行出身のB部長を迎えた東海地方の工務店

1つ目の戦略を実行している工務店が、東海地方にあります。B部長(50代)は10年前、この工務店の社長に声をかけられて転職した方です。

社長曰く「彼はお金の知識が半端なくて、金融の裏の裏まで知っているの。だからお願いしてうちに来てもらったんだよね」

社長が営業兼資金相談部長として呼んだ理由

私が感心したのは、社長の先を読む力です。

住宅ローンに詳しい人が折衝の初期段階で商談に同席すれば、「この人に何とかお願いしたい」と考えて他社の検討をやめるお客さんも出てきます。

社長はそれを10年前の時点で見越して、B部長を営業兼資金相談部長の待遇で会社に呼んだのです。

折衝の初期段階で「住宅ローンは私にお任せください」と伝える

B部長自身が営業の最前線に出ることもありますが、基本的には他の営業社員が折衝するときに同席します。

B部長が重視しているのは初期段階で、話が進む前に同席して「住宅ローンは私にお任せください」と徹底的にアピールします。

初回の接客そのものの進め方は、住宅営業の初回接客のコツで解説しています。

ホームページで「住宅ローン付けのプロがいます」と打ち出す

つい先日、私が登壇したセミナーにこの工務店の社長も出席してくださいました。

10年ぶりにお会いして話をしたところ、B部長はますます存在感を発揮し、今では会社になくてはならない存在になったと社長は強くおっしゃっていました。

資金がギリギリのお客さんが増えたという変化を受けて、この工務店はホームページでも「住宅ローン付けのプロが弊社にはいます」という内容をかなり強く打ち出しているそうです。

「あんまり詳しく書かないでね(笑)」

社長は私にこう言っていましたが、裏を返せば誰でも真似ができる発想だということです。それでも多くの住宅会社は、重要な問題だと分かっていながら、金融の細かい知識を今から勉強するのは大変なので、住宅ローンをお客さんに任せるか、知っている銀行員に丸投げしているのが現状です。

B部長が住宅ローン審査の基準を聞き出せる銀行人脈

B部長の優秀さは、人脈にもあります。

B部長はもともと銀行出身なので当時のつてがあり、銀行協会の会合などにも頻繁に出席していたため、他行にも知り合いが多い存在です。

加えて人と交わるのが得意な社交的な性格で、メガバンクから地域の信用組合まで、ふらっと顔を出すと「よう元気?」と声をかけてくる行員がたくさんいるそうです。

B部長はこうした行員と話をして、審査の基準などをそれとなく聞いています。ローンを通したいお客さんの具体的な状況を話して、次のような相談もさらっとできるそうです。

「引っかかるとしたらあと何がある?」

このような人物を採用するのは至難の業ですが、そもそもこうした人物を積極的に探したことがある住宅会社は、どれだけあるでしょうか。私は、こうした人材が会社にいることは、腕のいい営業社員を抱えるのに匹敵するほど会社に利益をもたらすと考えています。

人材を採用する以外に会社として銀行との関係を築く方法は、工務店が銀行と連携する方法で解説しています。

営業社員全員が住宅ローンに詳しくなる社内の金融教育

住宅ローンの知識を社内で学ぶ営業社員

B部長が講師を務める定期的な勉強会

この工務店では、B部長が講師となって、社内の営業社員に定期的な金融教育を実施しています。

B部長は、どこの銀行から新商品が出たかといった細かい情報をはじめ、ローンを通すためのコツなど最新の情報を教えています。

その結果、他の営業社員も金融や住宅ローンについてやたら詳しくなっています。

先輩に聞いて覚えた積水ハウス時代の非効率

私が積水ハウスに入社したときには、お金の話の教育は一切ありませんでした。新人の営業社員は業務の中で先輩に聞きながら覚えていく仕組みでしたが、私は非常に非効率だと思っていました。

「教えるべきことはしっかりとカリキュラムを組んで教えた方が絶対に早い」

私は新卒のときからこう思っていました。

住宅会社は、業務について一通りの教育システムを作り、営業社員に教え込んでください。

それだけで会社のレベルはかなり上がり、受注成績にも差が出ます。

住宅営業が身につけたいお金と補助金の知識は、資金計画を銀行に丸投げする工務店の課題で解説しています。

違法すれすれのローン付けをする西日本の不動産会社

B部長はあくまで合法の範囲内でやりくりしていますが、住宅会社や不動産会社の中には、違法であると言わざるを得ないような手法を取るところもあります。

西日本にある某不動産会社がまさにその例で、私は同社が販売していた分譲住宅の現場見学会でそれを目撃しました。

私は接客の場面を真横で見させてもらいましたが、当時かなり驚いたことをはっきり覚えています。

来場3分で「抱えているローンを全部教えてください」

男性営業は、建売現場にフリーでやってきたお客さんを接客し始めて、ものの3分で「抱えているローンを全部教えてください」と切り出しました。私はさすがにあっけに取られましたが、男性営業は次のように話を続けました。

「住宅ローンはかなり低利で借りられますので、この際全部それも含めて変えることも可能ですよ。さらにもう1ついいご提案があるんですよ・・・」

既存のローンを会社が肩代わりする提案

続いて男性営業が出したのは、お客さんが抱えているローンを一旦この会社が肩代わりして支払うという提案でした。

お客さんが既存のローンを清算してから審査に出せば、銀行に対する印象が良くなり、審査も通りやすくなるという理屈です。

お客さんはオーバーローンを組むので建物以上の金額が入金され、それを後でこの業者に返済すれば綺麗に収まるという話でした。

信じがたい話ですが、これは私の目の前で実際に交わされた会話です。

まとめ

ローンアウトを防ぐ基本戦略は、金融に詳しい社員の採用、社員の勉強、銀行の融資担当者との関係づくりの3つです。東海地方の工務店は銀行出身のB部長を迎え、折衝の初期段階での同席、銀行人脈を使った審査基準の確認、社内の金融教育によって、住宅ローンを営業の武器にしています。

ローン付けのテクニックを説明するセミナーは活況で、そのノウハウを伝えるコンサルタントにも引き合いがあると私は聞いています。

工務店の経営者や住宅営業は、こうしたセミナーがあれば積極的に参加してみてください。

得るものがあると私は確信しています。

ぜひ本記事の東海地方の工務店の事例を参考に、自社のローン付けの体制を見直してください。

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