実名報道の営業自殺とパワハラ対策|積水ハウス流の指導3つ

実名報道の営業自殺とパワハラ対策|積水ハウス流の指導3つ

名前の通った住宅会社の若い営業社員が自ら命を絶ったことが、WEB記事で報じられました。その営業社員は、電話でお客さんから「そんなんじゃ銭なんか払えねえぞ」と怒鳴られていました。

亡くなったのは埼玉県越谷市のポラスで働いていた20代の営業社員で、自殺はカスタマーハラスメント(カスハラ)が原因とされ、労災認定されました。私は、上司が報告を詰問しないこと、事あるごとに確認と押印をもらうこと、お客さんと頻繁に連絡を取らせることの3つで、クレームは小さく抑えられると考えています。

本記事では、実名報道された事件の経緯と、私の積水ハウス時代の経験をもとに、住宅会社の上司がパワハラにせずクレームを小さくする指導方法を解説します。

住宅営業のパワハラ・カスハラ問題|ポラス社員の自殺が実名報道された経緯

どの業界でもお客さんからのクレーム対応には苦労しますが、住宅業界はクレーム産業と言われるほど、クレームが身近な業界です。住宅営業がお客さんに追い詰められる問題は、大昔からこの業界に横たわるテーマになっています。

埼玉県越谷市のポラスで起きた20代営業社員の自殺

住宅会社名はすでに記事として報道されているので、私も実名で紹介します。実名で報道された住宅会社はポラスで、販売を担当していた20代の男性社員Aさんが自殺しました。

報道によると、Aさんは2019年4月に入社し、2020年8月に社員寮から飛び降りています。Aさんの自殺は、客からの迷惑行為であるカスハラが原因だったとされ、結果的に労災認定されました。

追加工事の代金請求から連鎖したクレーム

トラブルの相手になったお客さんとは、契約から着工の前後までは問題なく進んでいたようです。

関係がこじれたのは、追加工事が発生し、Aさんが追加代金を請求したことがきっかけでした。

追加代金にお客さんが納得できないのは住宅業界によくある話で、それ自体はどちらが悪いという話ではありません。

しかし、このお客さんは、そこからモンスタークレーマーになっていったようです。

報道には、Aさんとお客さんの携帯電話の音声データの内容が載っていました。読売新聞の報道では、工事関係者の車両の駐車場をめぐって、Aさんが「駐車場の手配は(現場)監督がすることに」と説明したところ、お客さんは次のように返しています。

客「じゃあ何でやらねえんだよ。そんなんじゃ銭なんか払えねえぞ」

客「もう一度じゃねえよ、(現場監督と)一緒に今から来いよ」

Aさんが「すいません」と謝っても、お客さんは「すいませんで済むか」と怒りを強めていました。私は実際の音声を聞いたわけではありませんが、言葉の調子から、お客さんはかなり威圧的に出ていたと考えています。

追加工事が着火点になり、次から次へとクレームが発生したのが、この事件の流れです。「クレームは連鎖する」という格言のとおりのことが、ここでも起きていたのでしょう。

どの住宅会社でも起こりうると私が考える理由

お客さんの年齢は分かりませんが、Aさんより年上なのはほぼ確実です。

Aさんは相手がお客さんであることもあって、ひたすら下手に出て丁重に対応していたのでしょう。

その結果、Aさんはにっちもさっちも行かなくなり、自らを追い込んでいったと私は推測しています。

私も住宅営業時代にさまざまなクレームにあってきたので、Aさんの気持ちはよく分かります。

ただ、報道の論調はカスハラに論点を置いているので、Aさんが一方的な被害者で、お客さんが加害者であることを強調している可能性はあります。

ポラスの対応がぐだぐだで、それがお客さんの怒りを大きくした可能性も、私は否定できません。

それでも、お客さんがここまで激高して振る舞うのは問題です。

このお客さんの人となりなどの情報は、報道に一切出ていません。それでも私は、このお客さんが極めて特異な性格をしているとは思えず、こうしたカスハラはどの住宅会社でも十分に起こりうると感じました。

上司のパワハラにしない住宅会社のクレーム報告ルール

住宅会社でこうした問題を起こさない、起きても小さく抑えるには、営業本人だけでなく、社長や幹部社員も目を配る必要があります。小さいクレームは営業担当者が対応すべきですが、大きくなると社長直轄の案件になりかねません。

私が住宅営業時代に経験した一番大きなクレームは、本社の社長宛てに内容証明郵便を送られたことです。

結果的には事なきを得て、お客さんとの関係も円滑になりましたが、それは結果論で、そこに至るまでの過程はむちゃくちゃでした。

クレームは住宅会社にもお客さんにもメリットが何一つなく、後味が悪いだけです。

そのため、管理職には、クレームをそこまで大きくさせない事前の準備と対応策が要ります。

「やばいと思ったらすぐ報告」を営業社員に指導する

管理職の方は、営業社員に「少しでもやばいと思った感覚があったら、とりあえず上に報告しなさい」と指導してください。

例えば現場でちょっとした齟齬(そご)があり、普段は温和なお客さんが少し怒り気味に営業社員へ対応したとします。

現場でのそのやり取りを、社長や幹部社員は把握しようがありません。

上司が日ごろから細かく指導していれば、営業社員はそのやり取りを上に報告してきます。報告が上がれば、社長や幹部はそのときの様子をヒアリングし、今後の対応策を営業社員に指導できます。

報告してきた営業社員を詰問しない

上司は、報告してきた営業社員を詰問してはいけません。ちょっとしたクレーム情報が上がるたびに、上司が次のように叱ってしまうと、営業社員はお客さんからのカスハラに加えて、上司からのパワハラを受けることになりかねません。

「お前は何でちゃんとやらないんだ!」「また同じことを言われたんか!」

部下が上司に報告しづらい環境を作ることは、上司として一番いけない行為です。

積水ハウス時代に徹底された確認と押印

私は積水ハウス出身ですが、積水ハウスを辞めて他社の状況を知るまで気づかなかったことがあります。

積水ハウスでは、お客さんとの打ち合わせはもちろん、工事途中で追加などが発生したときも、ここまでやる必要があるのかというほど、お客さんの確認と印鑑をもらっていました。

特に図面の確定では、軽微な変更箇所でもお客さんに印鑑をもらい、全体図面の確定時には実印で判をついてもらいました。

当時の私はそれが通常の業務だと思っていたので、何も気づきませんでした。

コンサルティングの仕事を始めてさまざまな住宅会社に行くと、「積水ハウスはそんなに徹底していたんですね」と言われて驚いたことがあります。

もちろん、他の大手ハウスメーカーも同じような形でやっていましたし、地域のパワービルダーなども基本的な方向は同じでしょう。

積水ハウスがすごかったのは、確認作業がいかに大事かという教育指導の徹底ぶりです。

当時の上司はやたらうるさく、確認の漏れがあったときには、かなり厳しく叱責された記憶があります。そうした指導の中で、「都度都度お客さんから確認を取らないと、とんでもないことになる」ということが、私の体にすり込まれていきました。

追加工事を書面で取り交わすルールや、現場監督がお客さんとの連絡を続ける方法は、住宅のクレームを防ぐ現場監督の連絡ルールで解説しています。

顧客との連絡を上司が促す(兵庫県知事のパワハラ問題に学ぶ)

住宅会社の上司の重要な仕事の一つが、営業社員にお客さんとのコミュニケーションを十分に取らせることです。クレームを起こさない、もしくは小さなうちに芽を摘むには、営業社員とお客さんの連絡の頻度が欠かせません。

私は神戸在住ですが、今、世間をにぎわせているのが兵庫県知事のパワハラ問題です。

斎藤知事は、コミュニケーションが非常に苦手な知事と報道されています。

営業でも政治でも同じで、人とのコミュニケーションが取れなくなると、ほぼ例外なく情報の遮断が起き、トラブルが発生します。

そのため、幹部社員は部下の顧客管理状況を把握し、「最近加藤さんに接触してないな……」と感じたら、部下に声をかけてください。

「B君さ、最近加藤さんと連絡取った?ちょっと気になる点があるから、今日メールでも何でもいいから送ってくんないかな。返信が来たらまた報告してよ」

加藤さんからの返信メールにクレームめいた内容があれば、上司が早い段階で見つけられます。

こうした声かけは一見面倒ですが、ことが大きくなってしまうと、尻拭いをするのは上司であるあなたです。

問題になる前に上司が動いておくことは、良い意味での責任回避になります。

Aさんがぶつかった住宅営業の「2年目の壁」

報道によると、Aさんは1年目の成績が良かったらしく、2年目に一気に袋小路に入ったようです。

私にはだいたい想像がつきますが、Aさんは1年目にたくさん受注を取り、2年目にそのお客さんたちのフォローが一気に来たのでしょう。

住宅営業の経験者なら分かる「2年目の壁」です。

記事によると、Aさんも2年目になったとき、ご両親に「2年目の壁にぶつかっている」とこぼしていたそうです。

新人営業の育て方は住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。

まとめ

ポラスの20代営業社員の自殺は、追加工事の代金請求をきっかけにしたカスハラが原因とされ、労災認定されました。住宅業界全体にとっても、住宅営業出身の私にとっても、非常に気になったニュースで、私はこうしたカスハラがどの住宅会社でも起こりうると感じています。

住宅会社の上司ができる手は、営業社員のクレーム報告を詰問せずに受けること、積水ハウスのように事あるごとに確認と押印をもらわせること、営業社員にお客さんとの連絡を頻繁に取らせることの3つです。ぜひ本記事の3つの指導を参考に、営業社員が一人でクレームを抱え込まない仕組みを社内で作ってください。

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