住宅営業の新人に覚えさせる知識|法令・資金計画・家の3分野

住宅営業の新人に覚えさせる知識|法令・資金計画・家の3分野

建築の知識がまったくない新卒者や異業種からの転職者を採用し、そのまま住宅展示場に立たせると、新人の住宅営業はお客さんが口にしたセットバックという言葉の意味が分からず、言葉に詰まってしまいます。

住宅営業の新人には、法令用語、資金計画、家の知識の3分野を、住宅会社がテキストと勉強の仕方を指示したうえで座学で覚えさせるのが近道です。私はコンサル先で、居室ごとの困りごとやベッドの幅といった細かい知識まで新人に暗記させています。

本記事では、新人の住宅営業に覚えさせる知識の中身と、座学を営業任せにしない教え方を解説します。

住宅営業の新人を「あとは頑張れ」で現場に出す住宅会社の現状

住宅営業の経験者や、設計、インテリアコーディネーター、現場監督など建築関連の業界にいた人であれば、それなりの知識を持っています。

しかし、まったく違う分野からの転職者や純粋な新卒者には、住宅や建築の知識がありません。

新人に住宅営業としての接客や建築の基本を体系的に学ばせている住宅会社は、ほぼ皆無です。

「大手ハウスメーカーならやっているでしょう?」

それなりにやっているハウスメーカーはありますが、現実にはほぼやっていないというのが私の見解です。私がよく知る全国展開のハウスメーカーも、基本的には新人を現場に配属して「あとは頑張れ」方式がまかり通っています。

積水ハウス時代に受けた新卒研修

私は積水ハウス出身ですが、当時の新卒研修は実に雑なものでした。

入社してすぐにひと月ほどの缶詰研修がありましたが、はっきり言って内容は残念なものでした。

研修が終わると新人は営業所に配属され、そこで勝手にやれというスタンスです。

放置された新人が辞めるのは数百万円を捨てるのと同じ

コンサル先でよく目にするのは、せっかく採用したのに事実上の放置状態で成績をほぼ残さず、半年から1年で退社していく営業社員の姿です。

辞めていく本人にとっても悲劇ですが、採用した住宅会社のコストも実にばからしいものになります。

2万、3万の出費にはうるさい社長が、数百万円の札束を捨てているのと同じことには無頓着でいることが、私には理解できません。

新人を放置せず入社直後から教えたいビジネスマナーや建築法規などは、住宅営業の基礎知識5項目で解説しています。

新人の住宅営業に覚えさせる法令用語と資金計画

新人に座学で覚えさせる知識は、法令、資金計画、家のことの3分野に分かれます。

市街化調整区域やセットバックなどの法令用語

住宅会社が新人に、いきなり宅建を取れと求める必要はありません。

市街化調整区域、セットバック、接道義務、北側斜線など、日常の業務で頻繁に出てくる用語を覚えさせてください。

暗渠(あんきょ)排水の話や、市街化調整区域に家を建てるにはどうすればいいかといった込み入った話は、新人にはまだ必要ありません。

しかし、住宅展示場でお客さんを接客するとちょくちょく出てくる内容は、新人も最低限覚えておかなくてはいけません。

「建て替えを検討しているんですけれども、セットバックが必要ですよね?」

お客さんにこう言われて新人営業がきょとんとしていては、話になりません。

返済計画の理屈と地鎮祭などの雑多なお金

昔と比べると、資金計画の説明は楽になりました。

手元の端末に数字を入れれば、返済計画が簡単に画面に出るからです。

ただ、簡単に出るとはいえ、新人営業は端末の操作に慣れる必要がありますし、根本的な理屈を分かっていないとお客さんの前で恥をかきます。

資金計画では、100万円を30年間借りると毎月いくら返済するのかという数字がすべての基本になります。そのうえで、金利が0.1%変わると返済額がどの程度変わるのかといったシミュレーションを、新人にどんどんやらせてください。

新人に資金計画を教える仕組みが抜けがちな背景と新人の育て方は、新人営業マンの育成と資金計画の課題で解説しています。

住宅営業が扱うお金の話は、借入だけではありません。地鎮祭で神主さんにいくら包むのか、引っ越しの繁忙期である3月に10tトラックで引っ越すとどの程度かかるのかなど、雑多なお金のことも新人に覚えさせます。

家の知識は居室の困りごと・寸法・部位の名前で覚えさせる

家のことをすべて教えようとすると、新人が覚える量は膨大になります。私がコンサル先で新人に覚えさせているのは、居室ごとの困りごと、寸法、建物や和室の部位の名前です。

居室ごとの困りごとを調べて暗記させる

困りごととは、その部屋で暮らす人が一般的に困っていることを指します。

主寝室を例にすると、ネットで調べればすぐに出てきますが、ベッドで寝ると照明が直接目に当たってまぶしい、朝日がカーテンの隙間から漏れてくる、コンセントが足りない、照明スイッチの場所が悪い、ウォークインクローゼットが狭くて使いづらい、などの問題点があります。

新人にはこれらを調べさせたうえで、徹底的に暗記させてください。

困りごとの知識は、住宅展示場や現場見学会でお客さんとの会話が弾む強力な営業トークになります。よくいるのは部屋の説明をするだけの営業マンですが、淡々と説明されてもお客さんは面白くありませんし、営業にとっても話の進展が見込めません。

営業「寝室でよくあるお困りごとの一つが、カーテンの隙間から漏れてくる朝陽です。あれで目が覚めちゃう人が結構いらっしゃるようです」

奥様「うちの主人がそうです。夜勤もあるので昼はぐっすり眠らなくてはならないのですが、目が覚めちゃうことがあります」

営業が困りごとを一つ話題にするだけで、こうした会話が成り立ちます。会話の積み重ねがお客さんとの距離を縮め、具体的な話へと進んでいくのです。

キッチンの高さやベッドの幅などの寸法を暗記させる

キッチンの標準的な高さは85cmです。

私たち住宅業界の人間には常識でも、新卒の若者には知るよしもない数字です。

キングサイズのベッドの幅はほぼ2mと覚えておけば問題ありませんが、ベッドにはクイーン、シングル、ダブルなどさまざまなサイズがあります。

新人営業がこうした数字を覚えておけば、主寝室で数字を示しながら接客できます。

現場見学会の主寝室で、営業がベッドの寸法を使って接客すると、会話は先へ進みます。

営業「こちらが主寝室になるのですが、キングサイズのベッドを仮に真ん中に置いたとすると、両脇のスペースはそれぞれ1mほどとれます」

奥様「広く見えるけどもキングサイズ置くとそのぐらいになっちゃうのですね。うちはシングルを二台置こうと思っているのですけどもこの部屋だったら入りますか」

営業「そうですね・・・シングルサイズのベッド幅が1mほどですので・・・」

ベッドのほかにも、キッチンの高さはもちろん、床下収納の深さや浴室のドアの入り口の幅なども新人に覚えさせてください。

屋根の形や和室の部位の名前を覚えさせる

屋根の形には寄棟(よせむね)、切妻(きりづま)、入母屋(いりもや)などさまざまな呼び名があり、ほかにも巾木(はばき)のような部位の言葉があります。

こうした一般的な建物の部位の名前を新人に覚えさせます。

部位の名前は、新人がネットで勉強すれば簡単に身に付けられます。

和室そのものが必要かという問題はありますが、年配のお施主さんや、若いお施主さんでもご両親と一緒に暮らす場合には、本格的な和室を作ることがあります。床柱、鴨居(かもい)、落とし掛け、地袋(じぶくろ)、天袋は基本中の基本で、新人がさまざまな障子の種類の名前まで覚えておけば完璧です。

新人の座学を営業任せにしない教え方

座学で住宅の知識を勉強する新人の住宅営業

座学の時間を研修スケジュールに組み込む

座学だけで住宅営業はマスターできませんが、座学で覚えなくてはいけないことは山ほどあります。接客センスはいかんともしがたい部分がありますが、座学には誰もが平等に臨めますし、接客センスに少し欠ける営業でも座学で身に付けられる部分は多くあります。

座学では身に付けにくいお客さんの心を見抜く力は、新人教育で教える見栄とプライドの読み方で解説しています。

私は、新人の勉強を営業任せにするスタンスがどうしても腑に落ちません。

住宅会社が教えられる部分を体系的に教えれば、新人に早く力がつき、会社の戦力にもなります。

座学の勉強は、住宅会社がスケジュールを組んでください。

新卒研修全体の組み立て方は住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。

テキストと動画は社長が選んで渡す

座学のテキストは、住宅会社が事前に作って新人に渡すのが理想です。そこまで手が回らない場合は、座学で覚えるべき項目を書き出し、項目ごとにどの本を読めばいいのか、どのYouTube動画を見ればいいのかを具体的に指示してください。

子供部屋について勉強させたいなら、「子供部屋」「失敗」の二つの単語で検索します。

すると施主ブログがたくさん出てくるのと同時に、YouTube動画も検索結果に上がってきます。

それらを社長がチェックし、適当だと思うものを営業社員に示して勉強するよう通達します。

ブログは読み込むのに時間がかかりますが、子供部屋の失敗事例を扱う10分程度の動画なら、新人も簡単に見られます。住宅系YouTuberの動画は非常によくまとまっているので、新人の勉強には最適のツールです。

まとめ

住宅営業の新人には、法令用語、資金計画、家の知識の3分野を座学で覚えさせます。家の知識は、居室ごとの困りごと、寸法、部位の名前まで暗記させると、住宅展示場や現場見学会での会話の材料になります。

「とりあえず何回か接客してみろ」というやり方もアリですが、座学による理論武装も住宅会社がさせてあげてください。

今の若い人たちは、指示をすれば着実にこなすとよく言われ、私も強く実感しています。

私の世代は新人類と呼ばれましたが、その時々の世相によって若い人の色が大きく変わるのは事実です。

社長や上司は教えることを面倒くさがらず、テキストや動画の指示までやり切ってください。

ぜひ本記事の3分野の座学項目を参考に、自社の新人教育のテキストと勉強スケジュールを作ってください。

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