住宅のクレームを防ぐ現場監督の連絡ルール|積水ハウス時代の体験談

住宅のクレームを防ぐ現場監督の連絡ルール|積水ハウス時代の体験談

働き方改革で仕事を削る必要に迫られたある住宅会社の現場監督たちは、「お客さんへの連絡業務を削ればいいのでは」と工事部長に申し出ました。しかし、お客さんとの接点が減るほど住宅のクレームは起きやすくなるため、私はその案をおかしいと伝えました。

クレームを防ぐ基本は2つあります。

1つは、LINEの対応時間を決めたうえで施主との連絡を続けることです。

もう1つは、追加工事が一円でも発生したら追加工事契約書にサインと印鑑をもらうことで、これは私が積水ハウス時代に店長から叱られて覚えたルールです。

本記事では、現場監督の意欲低下の実話と積水ハウス時代の体験談をもとに、住宅のクレームを防ぐ連絡と記録のルールを解説します。

「お客さんへの連絡を削りたい」と現場監督が言い出した住宅会社のクレーム問題

私は生粋の営業上がりのコンサルタントで、コンサル先や営業研修では営業面のことしか扱いません。現場に関する私の知識も通り一遍のものですが、この仕事をしていると現場の情報も入ってきて、問題解決の意見を求められることもしばしばあります。

営業研修の打ち合わせに工事部長が加わった

ある住宅会社で営業研修の下打ち合わせをしていたときのことです。

私は営業部長とリモートで、現状の問題点や毎月の数字について話していました。

2回目の打ち合わせで、営業部長から「今日は現場の工事部長も参加させてもらうのでよろしくお願いします」と突然告げられました。

私は営業と現場の連携の話をするのだろうと思っていましたが、実際に工事部長がぶつけてきたのは、純粋に現場の困りごとでした。工事部長の話を聞きながら、私は「この住宅会社も結局は他社と同じ問題を抱えているんだな」と感じました。

工事部長Aさんが語った現場監督の意欲低下

工事部長のAさんと私の会話は、次のようなものでした。

Aさん「森先生は営業指導のコンサルタントと知った上でお話をしますけども、現場監督の意欲低下はどうすれば改善するのでしょうね?」

私「モチベーションが下がっているんですか?」

Aさん「お客様と家づくりを一緒にするのではなく、ただただ流れ作業的に業務をこなす雰囲気が蔓延してるのですよ」

私「クレームなどで嫌になっているのですかね?」

Aさん「もちろんクレームの問題もありますが、働き方改革によって、仕事を何かしら削らなくては前に進まなくなってしまっているんです。なので淡々と目の前の業務をこなすだけになっているんでしょうね」

私「現場監督からどんな意見が出るんですか?」

Aさん「現場監督にお客さんへの連絡業務を削れば良いのでは?と言うんです」

私「それはおかしいと思いますよ。お客さんとの接点がなければ余計にクレーム発生の原因になるでしょう」

私たちは、営業部長も交えてこんな会話を1時間ほど続けました。私が驚いたのは、働き方改革の一環としてお客さんへの連絡をやめることを求めてきた現場監督たちです。

現場監督の意欲が落ちていることは、住宅会社にとって最悪の状態だと私は考えています。

この現象は比較的規模の大きな住宅会社に現れるものだと私は見ています。

お客さんからいかに怒られないかだけをひたすら念じながら現場監督が仕事をしているようでは、本人も不幸ですし、住宅会社にとってもいい状態ではありません。

施主とのやり取りを避けて連絡の間隔を空ける現場監督の本音は、現場監督の施主対応と連絡しない本音で解説しています。

この打ち合わせを受けて、私は秋にこの住宅会社の現場監督を対象にした研修を行うことになり、どんなネタを持っていくか思案しています。

若手の現場監督の中には人と接すること自体に苦手意識を持つ人もいるようで、お客さんとのやり取りが大きな心理的負担になっています。

口下手な人でも続けやすい連絡の工夫は、住宅営業のお礼状の書き方で解説しています。

住宅業界がクレーム産業と言われる中で連絡を減らしてはいけない理由

クレーム産業と言われる住宅業界で、クレームを減らすことは現場監督に限らず喫緊の課題です。

現場でクレームがたびたび出ると、紹介受注を目指している住宅営業にとっても大きな痛手になります。

紹介をもらうための声のかけ方は紹介営業のコツで解説しています。

お客さんとの連絡を欠かさないことが、クレームを減らすうえで最も重要だと私は考えています。

契約後に住宅会社の対応が変わったとお客さんが感じて起きるクレームは、契約後に注意したい住宅営業のクレームで解説しています。

現場監督と施主のLINEは対応時間を決めて続ける

LINEの着信音に身構える現場監督

SNSの時代になり、現場監督とお客さんがLINEでやり取りするのは当たり前になりました。

昔ならわざわざ連絡してこなかったような些細なことでも、お客さんは気軽にスマホから送ってきます。

現場監督の中には、LINEの着信音を聞くたびに心臓がドキドキする人もかなりいると私は思います。

現場監督の心理的な負担は私も十二分に理解していますが、それでも現場監督はLINEの対応時間だけを決めたうえで、施主とのやり取りをしっかり続けるべきです。

ポケベルが鳴ると心臓が止まりそうだった同期営業

連絡手段は、時代をさかのぼるとLINE、携帯電話、ポケベル、固定電話の順になります。

私が営業をしていたのはポケベルの時代です。

ただ、私が勤務していた支店では営業がポケベルを持たされていなかったので、私は社内からもお客さんからも追い回されることがありませんでした。

事務所に帰って連絡用の大学ノートを見て、初めてどこかから電話があったことが分かる時代でした。

ポケベルを持たされていた支店の同期営業は、私にこう言っていました。

「お前のとこはいいな、ポケベルがなくて。これが鳴ると心臓が止まりそうになるんだよ(笑)」

時代はまったく違いますが、連絡が来るたびに心臓が止まりそうになる気持ちは、今も昔も同じです。

現場監督とお客さんの連絡を疎遠にする仕組みは作らない

ニュースやワイドショーが毎日のようにビッグモーターの事件を取り上げていて、その中で社内のLINEの問題も連日報じられています。

あれは話にならない事件ですが、私たち建設業界の住宅会社は、現場監督とお客さんの連絡が疎遠になるような仕組みを作るべきではありません。

経営者の方は、現場監督にお客さんとの連絡を密に取らせるよう、徹底的に指導してください。

追加工事のクレームを防いだ追加工事契約書(積水ハウス時代の体験談)

私は積水ハウス出身ですが、当時何気なく行っていた業務が、実はトラブル防止に極めて有効な策だったと退職してから気づきました。

追加工事は住宅のトラブルの定番です。

住宅会社は最終図面を決めてお客さんに印鑑をもらってから工事に入りますが、工事の途中でお客さんから追加工事を依頼されるのは日常茶飯事で、ここで言った言わないの問題が起きます。

積水ハウスがこれを防ぐためにとっていた手法は、シンプルで基本的なことの徹底でした。

着工した日にかかってきた神棚の追加の電話

私は新卒で積水ハウスに入社したので、積水ハウスで教わったことが世間の常識だと思っていました。私が初めて契約をいただいたお客さんから、着工した日に私へ電話が入りました。

お客様「森さん、ちょっとお願いがあるんだけど」

私「何ですか?」

お客様「よく考えたんだけど神棚をやっぱりつけてほしいんだよね」

私「はい、問題ないと思いますので値段だけ聞いときますね」

お客様「金額ができたら教えてくれる?大した金額じゃないよね」

金額はまったく記憶にありませんが、私は設計から聞いた数字をお客さんに伝え、それを店長に報告しました。大きな金額ではなく、お客さんも了承してくれていたので、私は引き渡しのときに請求書を渡して振り込んでもらえばいいと考えていました。

店長の「一円であっても追加工事契約書を切れ」

ところが、店長から「追加工事の契約書はどうなった?」と聞かれ、私はキョトンとしてしまいました。

そして店長にこう叱責されたのです。

「一円であっても追加工事が発生したら追加工事契約書を切ってサインと印鑑を貰え」

私は内心「そんなこと教えてもらってないよ」と思いましたが、その後はこのルールに従って業務を進めました。後から私が気づいたのは、このルールが言った言わないのトラブルを防ぎ、お客さんも私も気持ちよく家づくりを進めるための最低限のルールだったということです。

積水ハウスでは色々なことを教わりましたが、中でも私が勉強になったのは、すべてのことを文章で残すことでした。

私はこれを怠ると厳しく叱責された記憶があります。

トラブルを避けるためには、どんな小さな金額でも書面で処理する必要があります。

確認と押印を部下に徹底させるときの指導の仕方は、パワハラにしない積水ハウス流の指導で解説しています。

まとめ

住宅のクレームは、現場監督がお客さんへの連絡を減らすほど起きやすくなります。働き方改革で業務を削る必要があっても、削るのはお客さんとの連絡ではなく、LINEの対応時間を決めて現場監督の負担を区切るやり方で対応できます。

追加工事は一円であっても追加工事契約書にサインと印鑑をもらい、すべてを文章で残すことが、私が積水ハウスで教わった言った言わないを防ぐ基本です。お客さんから怒られないことだけを念じて働く現場監督を生まないためにも、あなたの住宅会社の現場監督が大丈夫か、一度確かめてみてください。

ぜひ本記事の追加工事契約書と連絡ルールの考え方を参考に、自社の現場監督とお客さんの連絡の仕組みを見直してください。

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