異業種からの中途社員の育て方|住宅営業で最初にやる2つの指導

異業種から未経験の中途社員を採用した工務店では、入社後しばらくは住宅展示場で先輩の接客を後ろから見せるだけ、という教育をよく見かけます。私が社長なら、社会人マナーの教育と常識力の確認の2つを早急にやります。
工場のラインで5年ほど働いてから年間30棟ほどの地元工務店に転職したHさんも、入社3か月の時点では接客補助が教育の中心でした。社長が名刺の出し方を無料動画とロープレで教えれば1日で終わり、ニュースへの関心や質問の有無を見れば住宅営業としての資質も判断できます。
本記事では、Hさんの事例と、職人から転職して大化けした営業マンの話をもとに、異業種からの中途社員の育て方を解説します。
中小工務店にとって異業種からの中途社員の採用が重い理由
中小工務店では人の採用がなかなか進まず、経営者は頭を悩ませています。
大手ハウスメーカーには新卒が一定数入ってくるため、教育もそれなりにやりやすいのですが、中小工務店は教育の前にまず人を確保しなければなりません。
新卒の育て方は住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
人材といっても、工務店は誰でも採用すればいいわけではありません。
中小工務店には、大手で言われる「2対8対2の法則」も通用しません。
営業社員が2人のところへさらに1人を採用すると、新しく入った1人が営業部門の33%を占めるからです。
中小工務店がここで中途半端な人を採用してしまうと、工務店に大きなダメージが出ます。そのため、採用した異業種からの中途社員をどう育てるかは、経営者にとってなかなか厄介な課題になります。
異業種からの中途社員Hさんの事例(工場勤務から工務店の住宅営業へ)
ごく最近、知り合いの工務店の社長から直接聞いた話です。私はこの工務店にコンサルティングで入っているわけではなく、たまたま社長と話をしていて耳にしました。
派遣社員からハローワーク経由で応募した25歳
Hさん(25歳男性)は、派遣社員として工場のラインで5年ほど働いていました。
新型コロナウイルスの影響で工場の仕事量が急減し、Hさんの収入も激減しました。
そこでHさんは一念発起してハローワークに通いつめ、年間30棟ほどを手がける地元工務店の面接を受けたのです。
営業職や事務職の経験がない人を住宅営業として雇うのは、採用する側にとって一種の賭けになります。それでも社長は、Hさんが若く、面接での受け答えにそつがなく、前向きな意欲も感じられたことから雇ってみることにしました。
「本人の意欲を評価して採用したんだよ」
私が話を聞いた時点で、Hさんは入社3か月で、受注実績は0棟でした。受注には運やタイミングも関係するため、まだ何とも言えないというのが社長と私の共通の意見です。
入社3か月の教育は住宅展示場の接客補助が中心
コンサルで関わっていないとはいえ、私がいちばん気になったのは教育の中身です。
営業に出す前や営業と並行して現場経験を積ませる教育の方法は、現場経験から始める住宅営業の育て方で解説しています。
私「彼の経歴はわかりましたけども、どんな教育をしているんですか?」
社長「教育といってもまだ3ヶ月なんだけど、今は展示場の接客補助を中心に、私や先輩営業が接客してるのを後ろから見ているっていう感じかな」
おそらく、ほとんどの工務店が同じような対応をしていると思います。入社3か月なので何とも言えませんが、私が社長なら、Hさんの経歴を考えて、次の2つの指導をします。
名刺の出し方から教える中途社員の社会人マナー教育
社長の話では、Hさんは25歳と若く、前向きで明るい性格だそうです。
ただ、Hさんの仕事歴は派遣社員としての工場勤務がほぼすべてを占めています。
Hさんの経歴から考えると、Hさんは社会人マナーの教育を受けたことがないと見るのが妥当です。
そのため、社長はHさんに、名刺の出し方をはじめとするコテコテの営業マナーを教えるべきです。これはHさんの能力の話ではなく、経験したかどうかの話で、Hさんの経歴を見ればおそらく経験していないと推測できます。
社長が経費をかけずに教えるなら、インターネット上の無料動画を使います。
社会人マナーの常識を15分程度で解説した無料動画はいくらでも見つかるので、社長が妥当な動画を探してHさんに見せれば十分です。
そのあとで社長がHさんと名刺交換をロープレ形式でやってみて、学習度合いを確認します。
名刺交換などのマナーをロープレで身につけさせる進め方は、職人出身者を鍛えた営業研修のロープレで解説しています。
この教育は1日で終わる作業ですが、社長がやるかやらないかで大違いになります。
住宅営業の資質を見る常識力の確認
社会人マナーの教育と並んで、社長が早く確かめたいのが中途社員の常識力の有無です。私が言う常識力とは、ニュースに目を通しているかと、業務中の何気ない行動の2点です。
ニュースを知っているか(池袋の事故を知らなかったFさん)
上級国民というパワーワードを生んだ池袋の交通事故がありました。
その事故の1週間後、私はある住宅会社で、当時入社2年目だった大卒社員のFさんと個人面談をしていました。
私はこうした面談の機会に、直近のさまざまなニュースを知っているかどうかを必ず確認しています。
私「そういえば一週間前に池袋ですごい事故があったけどもあれはさすがにひどいよね」
Fさん「池袋・・・えっとー何の事故でしょうか?」
私「今話題になってるじゃない、あの事故だよ」
Fさん「えっとですね・・・知りません」
さすがの私も驚愕しましたが、こんな馬鹿なことが実際に起きているのです。
池袋の事故を知らないということは、Fさんは普段からニュースにまったく目を通していないと考えられます。
住宅営業が家の話はそこそこできても、世の中で起きていることを何も知らないようでは、営業の資質として大きく欠けると私は思います。
若手営業の時事知識の鍛え方は住宅営業ロープレの進め方で解説しています。
業務中の反応と本人から質問が出るか
朝、事務所に出社すれば、社員は「おはようございます」と職場の人に声をかけて仕事を始めます。Hさんは全くの異業種から入り、スーツを着て営業の仕事をした経験もないので、戸惑うのは当然です。
それでも、Hさんが社長の指示にすぐ反応するか、与えられた課題を積極的かつ合理的に解決しようとしているかは、社長が横で見ていればなんとなく分かります。中でも私がいちばん重く見るのは、本人から質問をしてくるかどうかです。
「質問はしたいけれど、何をどう質問したらいいか分からない」という中途社員の事情は、社長が汲んであげてよいと思います。
しかし、まったく質問が出てこないようでは、私はおかしいと考えます。
Hさんは派遣社員として工場で働いた経験しかないので、社長がいきなり高いハードルを課すのは酷かもしれません。
そこで、気になったら社長が数回は注意をしてあげてください。
数回注意をしても質問がまったく出てこなければ、社長はそれをHさんの性格と見ることもできますし、もっと突っ込んで言えば、住宅営業としての能力がないと判断することもできます。
異業種からの中途社員を採用する価値(大化けした元職人の事例)
異業種から転職を考えている人は、工務店にとって採用する価値があります。
正確に言えば、真剣に採用面接をする価値がある、ということです。
特にHさんのような若い人材はどう化けるか見当がつかず、失敗したときのリスクはあっても、大化けへの期待も大きいと私は考えています。
中途採用の面接の進め方はハウスメーカー営業の面接で聞く質問で解説しています。
歩合給のことばかり聞く元職人に社長が悩んだ
今から15年ほど前、ある大手フランチャイズの加盟店に、異業種から転職した男性が入社しました。
男性は職人歴10年の30歳で、前職は現場の職人です。
男性の転職は、完全な異業種とはいえないものの、まったく畑違いのホワイトカラーへの転職でした。
男性は、懇意にしていた営業といろいろ話すうちに、やればやっただけ稼げる制度に興味を持ち、面接を受けることにしたそうです。
面接をした社長は最終的に男性を採用しましたが、実は相当悩み抜いての決定でした。
当時、私が社長に悩んだ理由を聞くと、社長はこう話していました。
「住宅を売ったらどのくらい稼げるんですか、とこればっかりしつこく聞くんだよな。歩合給はそれなりに出しているから、それをモチベーションにしてやってもらうのはまったく構わないんだけども、あまりにも給料のことだけにしか興味を示さないもんだから心配になっちゃうでしょ」
社長が不安になるのは当然のことです。
教育プログラムを修了するまで試用社員にした
それでも社長は教育プログラムを作り、男性がプログラムを完全にマスターするまでは試用社員とし、社長が認定したら正社員にするという約束を取り付けました。社長は、この条件で男性を採用したのです。
結果として、この元職人は転職大成功の事例になりました。
本人の意欲と才覚が大きな要因だと思いますが、社長が設定したプログラムが功を奏したのも事実です。
社長はさまざまなプログラムを作り、私から見ても結構高いバーを設定していると感じるものが多くありました。
私が感心したのは、そのプログラムに一切文句を言わずに取り組んだ男性本人のほうです。
男性がどう育ったかの詳細は、次号で紹介します。
まとめ
中小工務店にとって、異業種からの中途社員は1人採用するだけで営業部門の大きな割合を占める存在です。社長が無料動画とロープレで社会人マナーを教え、ニュースへの関心と質問の有無で常識力を確認すれば、住宅営業として伸びるかどうかを早く判断できます。
職人から転職した男性のように、社長が高いバーの教育プログラムを用意して大化けした例もあります。若い異業種出身者は、真剣に面接して採用を考える価値があります。
ぜひ本記事のHさんの事例と2つの指導を参考に、採用した中途社員に最初に行う教育の中身を見直してください。



