ハウスメーカー営業の面接で聞く質問3つ|経験者採用の失敗例

住宅営業の経験者を中途採用する面接で、応募者が前職で何棟売ったかを話しても、その数字が本当かどうかは面接官には分かりません。
私がそうした面接で聞く質問は「なぜ前の会社を辞めたのか」「前の会社で経験した一番大きなトラブルは何か」「自分の最もルーズな点は何か」の3つです。
加えて、応募者に図面を10分見てもらい、そのプランをアピールしてもらいます。
関東のある住宅会社の社長は、年間18棟前後を売っていたという応募者を面接の印象だけで即決採用しました。その営業マンが入社1年で上げた10棟の契約のうち、5棟は架空の契約でした。
本記事では、ハウスメーカーや工務店が住宅営業の経験者を面接するときに聞く質問と、応募者の見極め方を解説します。
ハウスメーカー営業の面接で経験者に聞く質問と課題
住宅会社が住宅営業を採用する方法には、新卒採用、他業種からの中途採用、住宅営業経験者の中途採用の3つがあります。新卒で採用した住宅営業の育て方は、住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。
私は営業コンサルタントで、人事や採用のコンサルタントではありません。
それでも私が営業指導で全国の住宅会社に顔を出していると、社長から「採用面接に立ち会ってくれないか」「こんな人間が面接に来たが森先生はどう思うか」と打診されます。
そのため、私も採用面接に立ち会ったり関わったりすることがたびたびありました。
住宅営業の面接で即決採用したAさんのテンプラ契約(関東の住宅会社)
私が聞いた中で最悪の中途採用は、関東地方の住宅会社での出来事です。
その住宅会社の面接に、ある中途採用の住宅営業マンがやってきました。
ここではAさんとしておきます。
年間18棟前後を売っていたという触れ込みで即決採用
Aさんは他県の住宅会社で住宅営業をしていたという触れ込みで、その会社では年間18棟前後を売っていたと話しました。Aさんは、さらにその前の会社でも同じような実績を上げていたと、面接で自ら話したそうです。
面接をしたのは社長で、社長はAさんのあまりの威風堂々ぶりに圧倒されてしまいました。
「これはすごい人材。我が社でもすぐに売りそうな雰囲気がするぞ」
社長はこう喜び勇んで、Aさんをその場で採用しました。
10棟の契約のうち5棟がテンプラだった
Aさんは入社してから1年間で10棟の契約を上げました。
18棟、20棟という触れ込みからすると物足りない数字ですが、入社1年でこれだけの成績を上げれば、社長としてはほくほく顔です。
ところがAさんは、入社から1年がたったところで、ある日突然退社を申し出て辞めていきました。
Aさんが辞めた理由は単純明快でした。
Aさんが上げた10棟のうち、5棟がテンプラだったのです。
テンプラは営業の隠語で、架空の契約を指します。
残りの5棟も、まともに契約してトラブルがなかったのはたった2件で、ほかの3件は大クレーム案件でした。
Aさんは、でたらめな契約や、存在すらしないテンプラ契約を上げて、契約時に営業マンへ支払われるインセンティブを狙っていました。Aさんが前の会社でどうだったかは分からずじまいでしたが、おそらく同じようなでたらめな契約をして、その会社に後ろ足で砂をかけて逃げてきたのだと思われます。
契約時に支払うインセンティブが架空契約まで対象にしてしまう危険については、住宅営業の歩合給を契約時に払う危険で解説しています。
結果的に、この住宅会社は大損害を受け、その後のトラブル処理にも多くの人員と時間を費やすことになりました。
「なぜ前の会社を辞めたのか」は面接で掘り下げて聞く
「なぜ前の会社を辞めたのか」という質問は住宅営業に限りませんが、住宅営業経験者の面接では必ずしてください。
応募者は、よほどのことがなければ、この質問に当たり障りのない返事を用意してきています。
ただし応募者から「前の会社ではやりがいを感じなかった」「前の会社で扱っていた商品が自分の満足するものではなかった」と返ってきたら、面接官はとことん聞き込んでください。
私が立ち会った面接で、実際にこんなやり取りがあったことを今でもはっきり覚えています。
私「あなたはどうして前の会社を辞めたのですか」
営業「扱ってる住宅が自分の趣味に合うものではなかったんですよ。ですから営業をやって仮に沢山売ったとしても、あまり面白くなかったのです」
私「どんなところがあなたに合わなかったのですか」
営業「そうですね……プランがあまり面白くないと言うか……」
私「プランがあまり面白くないわけですね。どんなところが面白くなかったのですか。具体的にその面白くなかったプランという話を聞いてみたいです」
営業「何と言いますか……そうですね……プランがあっさりしてると言うか、とにかく楽しくないんですね。ワクワクしないプランなんですよ」
私「ワクワクしないとは?」
営業「ワクワクしないと言うと、まあ何て言ったらいいんでしょうかね……」
私は社長に「この人は採用しない方がいいですよ」と進言し、社長はこの応募者の採用を見送りました。
応募者は人生をかけて転職してくるわけですし、前の会社でそれなりに売っていたのなら、その収入も捨てて転職することになります。そう考えると、このくらいのツッコミでおたおたしてしまうのはさすがにおかしい、というのが私の判断です。
図面を渡して10分でプランを説明させる実技面接
これも私がよく使う手法です。
住宅営業を5年、あるいは10年やってきた人なら、いきなり目の前にプランを出されても、それなりの説明ができるはずです。
社長が応募者にある程度ヒアリングをした後、図面を渡してこう伝えます。
「今からこの図面を見てもらいます。10分間だけ考えてもらい、その後我々に対してこのプランをアピールしてもらえませんか」
新卒の住宅営業や他業界からの転職者にこれを求めるのは、さすがに無理です。
しかし住宅営業の経験者であれば、このくらいのことに対応できなくては困ります。
応募者が「私は前の会社でそれなりに売ってきた」とアピールするのであれば、なおさらです。
私は、このときの答えの中身、対応の仕方、仕草などで、応募者の実力をある程度判断します。
人間性を見る面接質問「一番大きなトラブル」と「最もルーズな点」
図面の説明のように技術を推し量る試験は、面接の場でもある程度できます。
しかし、それだけでは応募者の人間性までは分かりません。
たとえ売る技術があっても、人間性に大きな問題がある人を住宅会社は採用してはいけません。
そこで私は、採用面接でこう聞きます。
「前の会社で経験した一番大きなトラブルは何ですか」
「自己分析して自分の最もルーズでいけない点は何だと思いますか」
この手の質問はかなり有効だと、私は感じています。売るセンスがあっても常識が欠けていた住宅営業がどうなったかは、住宅営業を辞めたいと思ったときの体験談で解説しています。
「時間にルーズな点がある」と答えた営業マン
私が「あなたのルーズな点は何ですか」と質問したとき、ある男性の応募者はこう答えました。
「強いて言えばですね、私の悪いところは若干時間にルーズな点があるといえばありますね」
この答えに驚いたのは社長でした。社長は面接の後、私にこう話しています。
「あれには私もびっくりしたよ。さすがに自己分析で時間にルーズだという営業マンを採用しようという気にはならないね」
不採用の後に前の会社へ電話して分かったこと
社長はこの応募者に不採用を通知した後、応募者が前にいた会社に電話をして、営業マンとしての素行や成績を聞いてみました。
すると出るわ出るわのめちゃくちゃぶりで、面接で話した成績自体も嘘でした。
社長は、この応募者がすべての面ででたらめな人間だと知ることになりました。
大きな会社は前職の調査をきっちりやりますが、小さな住宅会社はそこまでやらないのが普通です。それでもこの一件があってから、この社長は中途の住宅営業を面接するたびに、前の職場へ連絡して調査することを徹底するようになりました。
まとめ
住宅営業の経験者を面接するときは、「なぜ前の会社を辞めたのか」「前の会社で経験した一番大きなトラブルは何か」「自分の最もルーズな点は何か」の3つを聞き、図面を渡してプランを説明してもらいます。面接の印象だけで即決採用すると、Aさんのようにテンプラ契約やクレームで住宅会社が大損害を受けることがあります。
面接で話した実績は、前の職場への問い合わせで裏付けを取ってから採用を決めてください。
ぜひ本記事の3つの質問とプラン説明の課題を参考に、次の中途採用の面接で聞く内容を、社長と採用担当者で事前に決めておいてください。



