前回は優秀営業マンF君の折衝風景の解説をしました。
私が見ても「やっぱりうまいな~」と思うシーンが多々あった営業の話でしたが、2回目はその真逆である失敗シーンをご紹介しましょう。
おそらく、本人は失敗であることに気づいていないはずですが、客観的に観察すると、お客さんが内心不満を持っていることは明らかです。
今回登場するのはC君ですが、彼は完全な新卒で今回私が商談を見たのは、営業を始めて実質3ヶ月目の初回面談シーンです。
お客さんの突っ込みが激しかったこともありましたが、やはり随所でミスを重ねた結果、お客さんの不審を途中でかったことが垣間見えました。
こうしてみるとよくわかるのですが、本当に些細なことで初回面での成否が決まり、受注に大きな差が出るのです。
最近あった興味深い初回面談シーンのポイント
おっかなびっくりのC君
彼については全く面識がなく、この動画を通じて初めて見たのですが、性格を一言で言うとビビリということになるでしょうか。
自分がわからないことお客さんから質問された時の声のトーンで大体わかりますよね。
客 「あれ・・・この数字って他社と比べると結構低くありませんか?」
C君「えっ・・・と、そうですね・・・いやこれは・・・」
声を聞いているだけで顔の表情はほぼわかります。
営業というのはある意味役者ですので、何かまずいことがあっても泰然自若で接するべきだと思いますし、その逆にわざとびっくりしたような顔を見せて変化をつけるということも必要でしょう。
しかし、今回のC君のように、お客さんから突っ込まれて慌てているのが丸わかりではいただけません。
この一回のシーンを見て分かりましたが、C君は全ての折衝においてこのようなものがにじみ出てしまうのでしょう。
お客さんからすればとても信頼できない、となります。
自分の意見がない
微妙な言い回しなのですが、お客さんとのやり取りを再現します。
客 「世の中にはキッチンを対面にする人が多いと思うんですが、 私は壁に向かった明るいキッチンが結構好きなんですよね。これってどっちがいいとか悪いとかってあるんでしょうか?」
C君「特に良い悪いは無いと思いますので、お客さんの好き好きでいいと思いますよ」
客 「確かにそうですよねえ。ただ強いて挙げるとすれば、壁に向かったキッチンのデメリットってなんかあるんですか?」
C君「デメリットですか・・・まぁ、さっき言ったように結局はまあ、好き好きですので・・うん・・・まぁ、そのあたりはなんとも言えないですね」
これってまずいと思いませんか。
お客さんはプロの意見を聞きたいのです。
ですから、デメリットを教えてくれと聞かれたならば、2つや3つのポイントくらいあげなくてはダメでしょう。
その上で、最終的には「お客さんのご判断です」ともっていけばいいのです。
今回のケースでは、お客さんもそれ以上は追求しなくて次の話題に行きました。
ここが大きなポイントのひとつです。
ここで奥様だったのですが、心の中では「この人あんまりパッとしないわね、はっきりしないし」と感じたと推測するのが妥当でしょう。
資料の整理が著しく悪い
C君もお客さんとの折衝時には、それなりの資料を準備していたことがうかがわれました。
この会社はタブレットを営業全員に持たしておりますので、その中にもいろいろな写真や動画が入っているでしょう。
さらには、昔ながらのアナログ式に紙をファイルに入れた大きな冊子もしっかりと横に置いてあったようです。
お客さんの質問に対してこの二つを組み合わせながら説明するわけですが、資料を出すスピードに問題がありました。
どこに何があるか把握していない
みなさんもこんな経験ないでしょうか。
お客さんが地震のことを心配して質問してきたと仮定します。
営業社員であれば、タブレットでも紙でも構わないのですが、即座にそれに該当する資料を探し出して提示しなくてはなりません。
ところがこのC君は、どこに何があるのかを把握しているとは思えない慌てっぷりなのです。
「えっと、シロアリはですね・・・・ ええ、ちょっとお待ちください・・・」
こういいながら、タブレットとファイルを一生懸命往復しながら探していました。
しかも、この間に場つなぎの会話をすればまだ良いのですが、新卒でそこまで余裕のないC君はひたすら無言で探し続けるのです。
その間、お客さんは何も言葉を発しません。
この微妙な間は、営業としては絶対避けたい場面ではないですか。
そして、この沈黙がビビリのC君をさらにビビらせるわけです。
次のアポイントを取ろうとする意識の欠如
今回の折衝は、どっからどう見ても次アポが取れると思えなかったのですが、営業であれば一般論として初回面談の次の約束を取るように話を誘導するのが当たり前の流れです。
C君は余裕がなかったのでしょう。
最終的には40分程話をしたのですが、その途中で次アポに持っていくような会話の展開は皆無だったのはもちろんのこと、商談の締めでも次回のアポイントの話をせずに、こんなトークで締めくくってしまったのです。
C君「 ・・・ということですね、何かご質問あるでしょうか?」
客 「う~ん・・・特にはないですね」
C君「分かりました。 では、この続きはどうしましょうか?」
客 「とりあえず今日のお話で全体像分かりましたので、何かありましたらまたご連絡します」
C君「分かりました・・・ ではそういうことで」
明らかにおかしいC君
おかしいでしょう?
そもそも商談の最後にお客さんに対して「次はどうしましょう」と聞いたら話になりません。
お客さんとしては「次はどうするってそんなこと俺が聞きたいよ」 と思うのが関の山です。
こういう投げかけおかしいと思ってないんでしょうね。
私はコンサルの立場ですので、こうしたC君にもなんとか立ち直ってもらうよう努力をしなくてはいけないわけです(笑)
他にもおかしいことが多々あった
文章にするのは難しいのですが、商談全体に流れるそこはかとない違和感を多数抱きました。
最初の自己紹介も妙でしたね。
この会社では、自分の自己紹介文をA4一枚のシートにまとめて折衝のはじめにお客さんに見せ、自己紹介をするという決まりになっています。
ところがC君は、お客さんの目の前に広げた自己紹介シートを、大学の講義よろしく棒読みし始めたのです。
これはさすがに見ていて痛かったですね。
確かにその紙には彼の自己紹介が書いてあるのですが、それを一から十まで読むのではなく、基本的にはそれを参考にしながら自分の言葉で自己紹介するのが普通だと思います。
初めて会う営業マンの自己紹介を、何の面白味もなく聞かされたお客さんは実に気の毒だったと思います。
こんなシーンもありました。
「〇〇ホームさんも行ったのですけども、あそこはすごくおしゃれでよかったんですよ」
こう奥さんが切り出したのに対し、C君はなぜか黙りこくってしまうんです。
正確に言うと「そうですか・・・うん・・・」こんな感じだったんですけども、要は言葉に詰まったのです。
後から聞いたのですがC君はこの住宅会社の名前も存在も知らなかったとのこと。
だからどう答えていいか分からなかったらしく、その結果が下を向いて唸るということになってしまったのです。
これはさすがに格好がつきませんよね。
「まずいとは思ったんですけども言葉が出てきませんでした」
これはC君とリモートで面談した時の彼の弁明です。
こう考えると、若い社員を鍛える方法というのはいくらでもあるなということにお気づきでしょう。
まとめ
前回と違って、今回は商談に失敗したC君の話を取り上げました。
ちょっとしたことなのですが、お客さんとのやり取りの中で言葉に詰まったり、当意即妙な応対ができないと、一瞬にしてその場は冷めてしまいます。
これを克服するにはロープレが最適であるというのが、私の23年間にわたるコンサルティング経験の結論です。
何気ない会話の訓練を、営業で集まってやるようにしてください。
こうしたことを馬鹿にすると、大きなしっぺ返しを食らいます。