新卒住宅営業の接客研修|展示場で100の質問を考えさせる教え方

入社したばかりの新卒住宅営業は22歳か23歳で、ほとんどが独身です。
家族を持った実感も、家を買おうと考えた経験もありません。
その新卒が、マイホームを夢見て住宅展示場に来たお客さんに対応するので、お客さんとの間には大きなギャップが出ます。
新卒の接客力を上げるには、住宅展示場を30代の子育て世帯の目線で見学させ、部屋ごとに質問を出させたうえで、その答えも自分で考えさせる訓練が有効です。私も積水ハウスに入社した直後、店長から「今から3時間展示場に篭ってダメ出しをしてこい」と指示され、100近い疑問を書き出しました。
本記事では、新卒住宅営業の教育に悩む経営者に向けて、住宅展示場を使った接客研修の進め方を、私の新卒時代の体験談とあわせて解説します。
新卒住宅営業の接客研修は住宅展示場の客目線見学から始める
新卒住宅営業に最初に指導してほしいのは、住宅展示場の見学です。新卒は自社の住宅展示場で接客するので、お客さんの目に住宅展示場がどう映るかを考えさせることから始めます。
見学はロールプレイングの一種だと考えてください。
22歳や23歳の新卒にとって住宅購入は現実味のない話なので、30代で結婚していて子どもが一人いる当事者になりきって、住宅展示場を見させます。
たとえば玄関ホールであれば、新卒に「自分が家を買おうと考えて来場したら、どこに目がいくか、どんな質問をするか、どこに疑問を持つか」を考えながら見させてください。
住宅展示場がない住宅会社は現場見学会や建売でよい
訓練の場には住宅展示場がいちばん向いていますが、住宅展示場を持っていない住宅会社であれば、新築の現場見学会の会場や建売の現場でも構いません。工事中の物件で引き渡し間近のものがあれば、そこを使っても問題ありません。
現場見学会の会場で接客するときに、室内に入る前に外観の感想を聞く進め方は、現場見学会で外観の感想を聞く接客で解説しています。
新卒住宅営業に部屋ごとの質問と答えを100個ずつ出させる
私が指導するなら、新卒住宅営業に住宅展示場の玄関を開けて入ってくるところから始めさせ、建物をお客さんの感覚で見学させます。お客さんの目線で考えれば、新卒にも次のような素朴な疑問が湧いてくるはずです。
- この建物はいくらするのか
- こんなに大きな家はいらない
- コンセントはたくさん付いているのか
- 何か月くらいで建つのだろう
- エアコンは何台付いているのだろうか
部屋ごとに質問の数を決めて考えさせる
上司は新卒に、こうした素朴な疑問を徹底的に考えさせます。指示は部屋ごとに数を決めて出してください。
「玄関ホールで10点の質問を考えなさい」
「主寝室では15点の質問を考えなさい」
新卒はおそらく相当苦戦します。玄関ホールで10点の質問を考えろと言われても、新卒の頭にはそう簡単に浮かばないからです。
100個の質問に自分で答えを出させる
住宅展示場全体で100個の質問が出たら、上司は次に、その100個の質問に対する答えを新卒に考えさせます。
「このキッチンはどこの製品ですか?」のように、TOTO、サンウェーブ、LIXILなどと調べればすぐ分かる質問もたくさんあります。
そうした初歩的なことでも、自分で質問を出して自分で答えるという手順を踏むと、新卒の頭にしっかりたたき込まれます。
調べればすぐ分かる質問とは別に、C値やUA値、保証や財務状況まで下調べして来るお客さんへの答え方は、住宅展示場の手強いお客さんの質問で解説しています。
一方で、難問もたくさん出てきます。
「こんな豪華な家を誰が買うのか?」
実際の接客ではこの種の質問は結構よく出ますが、新入社員がこの答えを出すのは容易ではありません。
それでも上司は新卒に考えさせ、当意即妙(とういそくみょう)に返答できるように訓練する必要があります。
お客さんとの雑談に答える力の鍛え方は、住宅営業ロープレの進め方で解説しています。
宿泊体験棟がある住宅会社は新卒を2日間住まわせる
宿泊体験棟を持つ住宅会社がたまにありますが、宿泊体験棟こそ社員教育に使うべき最高の営業ツールです。
宿泊体験棟がある住宅会社は、迷わず新卒を泊まらせてください。
私の時代であれば定休日を使って泊まらせたと思いますが、今はそういう時代ではないので、営業日を使って宿泊体験させましょう。
新卒は入社直後、それほどやることがありません。
そうであれば、上司がわざわざ新卒を事務所に張り付かせなくても、2日間ぐらいは放置して「展示場に住んでみろ」でよいと私は考えます。
入社直後の新卒にやらせたい別の訓練は、住宅営業の新卒研修での放棄リスト訪問で解説しています。
宿泊中は外出禁止で自炊、恋人の同伴も認める
宿泊の条件はひとつだけで、新卒は必要なとき以外、家の外に出るのは禁止です。この条件さえ守らせれば十分で、食事も新卒に自炊させます。
新卒に彼女や彼氏がいるなら、同伴させましょう。
私が社長であれば、恋人に1万円のアルバイト代を払います。
その代わり、1日住んでみて恋人が気づいたことを、宿泊の終了後に聞き取らせてもらいます。
先入観のない新卒の感想を研修の材料にする
恋人の話をしましたが、宿泊体験の主役は新卒です。
新卒は男性でも女性でも、住宅営業の経験どころか社会人の経験もありません。
そのため、新卒が一軒家に泊まって得た感想や疑問点は、3年、4年と住宅営業を経験した社員とはまったく違うものになる可能性があります。
何の先入観もない新入社員の意見は、ある意味で貴重です。ただ、新卒はすぐに仕事に慣れてしまうので、経営者は入社後すぐにこの体験をさせてください。
店長に「3時間ダメ出ししてこい」と言われた新卒時代の体験談(積水ハウス)
「今から3時間展示場に篭ってダメ出しをしてこい」
私が新卒で積水ハウスに入社したとき、店長からこう指示されました。
30年前の話ですが、今思い返しても、店長のこの指示は実に的を射たものだったと私は確信しています。
私がそのとき報告した内容の一部を紹介します。
玄関ホールのタイルと上がり框の高さ
当時の住宅展示場は、玄関ホールに10cm角のタイルを使っていました。
何の予備知識もない私は、そのタイルをじっと見ているうちにトイレを思い出したのです。
感じたままに「便所みたいに感じた」と報告すると、店長はこう質問してきました。
「お前がそう思ったということは、同じように感じるお客さんがいる可能性はあるわけだな。この場合お前だったらどう答える?」
私がそのときどう答えたかはまったく覚えていませんが、店長に言われた内容だけははっきり覚えています。
身長172cmの私は、上がり框(あがりかまち)に座って靴を履いてみました。私にはちょうどよい高さでしたが、身長140cmや150cmの小柄なおばあちゃんが同じ姿勢をとったら、この高さは合わないのではないかと、ふと思ったのです。
2階トイレのクロスで分かった夫婦の見え方の違い
私は、2階のトイレ内のクロスが派手すぎると感じました。
同じ住宅展示場のアシスタントの女性に話すと「なんで?あれ可愛いじゃない」と突っ込まれましたが、私は派手だと感じたのです。
この感じ方の差は、男女の違いである可能性が十分に考えられます。
つまり、同じものを見てもご主人と奥さんでは見え方が異なる可能性があるということです。
接客の途中でご主人と奥さんの意見が割れる場面はよくあるので、上司は新卒に、行司役の住宅営業としてどう取りなせばよいかを考えさせてください。
100近い疑問に自分の答えを書き出した
入社直後の私は、こうして100近い質問や疑問を書き出しました。店長に報告すると、次の指示が来ました。
「同じような質問をお客さんからされたらどう答えたらいいのか、それを今のお前の意見で構わないから全部書き出せ」
今考えても、店長の指導はなるほどと思えるものでした。私にとってこの訓練は実際の接客で大いに役立ち、その後の営業力の助けにもなったと考えています。
展示場の場面ごとに具体的・理論的に教える研修の組み立て方は、住宅営業の新卒研修の進め方で解説しています。
まとめ
新卒住宅営業の接客研修では、住宅展示場を30代の子育て世帯の目線で見学させ、部屋ごとに質問を出させたうえで、100個の質問の答えも自分で考えさせます。
宿泊体験棟がある住宅会社は新卒を2日間住まわせ、先入観のない感想を集めてください。
私自身も新卒時代、店長の「3時間ダメ出ししてこい」という指示で書き出した疑問と答えが、その後の接客を支えてくれました。
新卒が住宅展示場の見方を身につけたら、次は自分で動く訓練に移ります。新卒にイベントを任せる方法は、イベント企画で進める新人営業の育成で解説しています。
ぜひ本記事の研修の進め方を参考に、新卒が仕事に慣れてしまう前に、住宅展示場での客目線の訓練を始めてください。


