自社大工のメリットは?工務店の営業トーク4つとデメリット

自社大工のメリットは?工務店の営業トーク4つとデメリット

商談で工務店の社長が「うちは全部自社大工なんですよ」と自信を持って話しても、お客さんの返事は「あ……そうなんですか」の一言です。社長とお客さんの会話は、そこで終わってしまいます。

自社大工は工務店の世界では大きなアピールポイントですが、一般の方にはその意味が伝わっていません。

会社をよく知る大工が施工することや、社長が大工に責任を持てることなど、4つの中身として説明して初めて、自社大工のメリットはお客さんに伝わります。

一方で経営の視点では、受注が減ったときの給料の支払いリスクと、大工そのものを採用できないという問題があります。

本記事では、自社大工のメリットを営業トークで伝える方法と、経営から見た自社大工のデメリットを解説します。

「自社大工です」が工務店の営業トークで伝わらない理由

工務店の経営には、専属大工を抱えているか、抱えていないかの2種類があります。

この違いは、お客さんから見た場合と経営者から見た場合とで、意味合いが変わってきます。

世の中の工務店には、大工をすべて丸抱えにして、自社大工を看板に活動しているところが少なからずあります。

社長の自社大工アピールで会話が終わる場面

工務店が「弊社は社内大工です」と言えば、お客さんに「ふーん、きっといいことなのだろう」と感じてもらえることが多く、営業的なメリットがあります。しかし、自社大工の工務店がそのことをアピールしても、説明が足りなければ効果は半減します。

社長「うちの工務店はみんな自社大工なんですよ。なかなかこうはいかないんですけどね。これは弊社が自信を持ってお勧めするポイントの一つです」

客「あ……そうなんですか」

社長とお客さんの会話は、これで終了です。

私たち住宅業界の人間にとって、大工をすべて社内大工で賄うことは大きなアピールポイントで、工務店の社長には内心「ほかの工務店ではこうはいかないだろう」という自負があります。

しかし、一般の方には、このことがどれほど重要なのか、どんな意味があるのかが分かりません。

ツイッターで見かける「自社大工の何がすごいのか」という声

家をこれから建てようと考えている一般の方の中には、ツイッターで家づくり専用のアカウントを持ち、日本中の人と意見交換をしたり、家づくりで疑問に感じたことをつぶやいたりしている人がいます。

私もツイッターを多用しているので、この辺りの事情はよく知っています。

ある建築希望者は、折衝中の工務店について次のようにつぶやいていました。

今折衝している工務店の話。

社長が「うちは全部自社大工なんですよ!」と自信満々に話していたんだけど、これの何がすごいのか全然私にはわからない(笑)どういうこと?

私がこの方のツイートを詳しく読むと、どうやら秋田県で家を建てる方だと分かりました。

つまり、秋田県内のある地場工務店の社長が、お抱え大工について自信満々にお客さんに話したものの、まったく効果がなかったことになります。

ツイートはそこで終わっていたので、その後どうなったのかは私には分かりません。

しかし、似たようなニュアンスのつぶやきを、私はちょくちょく目にします。私と直接やり取りをしたある方も、「自社大工さんって何がそんなにすごいのか教えてください」と私にストレートに聞いてきました。

施主が工務店の説明に抱く不信感については、工務店が選ばれない理由で解説しています。

お客さんに伝わる自社大工のメリット4つ(工務店の説明例)

自社大工を抱える工務店の社長や営業社員が、まずお客さんに伝えるべきなのは、自社大工制度は経営上なかなか大変で、そうした工務店はあまりないという事実です。そのうえで、お客さんにとって何が良いのかを、4つのメリットとして説明します。

会社の特徴やデザインを知る大工が施工する

自社大工を抱えていない工務店は、工事があるたびに知り合いの大工に声をかけて人数を集めることになります。

私はこのやり方が悪いとは言いませんが、会社員としてその工務店に雇用されている大工であれば、社長のことをよく知っていますし、会社の特徴や得意な部分、デザインについても熟知していることでしょう。

この点は、お施主さんにとって安心できる大きな材料になります。

社長が大工に責任を持ち、育てようとする

自社大工でなければ社長に責任感がない、ということはありません。

そう断ったうえで、私が工務店を経営していて、すべての大工が自社の社員だとしましょう。

その場合、社長である私は普段から大工に目が届き、指導も十分にできますし、何か問題があったときに「あの大工はよく知らないんだよね」という言い訳もできません。

また、自社大工を抱えている社長は、「彼らを育ててやろう」「少しでも腕の良い大工にしてやりたい」と考えるのが自然です。社長の愛情や熱量が自社大工に対して違ってくるのは、当たり前の話です。

大工が会社にプライドを持って仕事をする

会社に専属している大工は、その会社に対してプライドを持っているでしょうし、社長の顔に泥を塗りたくないという気持ちも強いと考えられます。そのため、自社大工が「ちゃんと仕事をしなければ」という気持ちをより一層強く持つのも当然だと私は思います。

施主との接し方を大切にする大工の姿勢については、施主から紹介が集まる大工の習慣で解説しています。

誤解がないように申し添えておくと、自社大工でない工務店に、これら4つのメリットが欠けているわけではありません。私が言いたいのは、自社大工を抱えている工務店であれば、営業トークとしてこのようにお客さんに説明できるということです。

自社大工のデメリットは経費と給料の支払いリスク

新築受注が減ると大工の手が空く

好景気で新築受注がどんどん取れる時期であれば、工務店が自社大工を抱えていても問題はありません。

工務店に仕事がどんどん来るので、社内大工の手が空くことはなく、給料も問題なく支払えます。

しかし、新築受注が減ってくると、場合によっては大工の手が空く可能性もあります。

手が空いているからといって、工務店の社長が大工に経理作業をしてもらうわけにもいきません。

大工を社員として雇わず、ひとり親方の大工に外注する場合の取引の変わり方は、インボイス制度と工務店・ひとり親方の取引で解説しています。

草むしりと「便利屋」で解雇を回避した工務店の実話

ある工務店では、新規受注がある時急激に落ち込んだため、社長が社内大工の解雇も考えましたが、何とか踏ん張って解雇を回避しました。それでも大工の手は空いているので、社長は大工たちに会社の掃除や庭の草むしりをしてもらい、急場しのぎで考えついた「便利屋の現場対応員」としても動いてもらったそうです。

便利屋の仕事は収益にはなりませんでしたが、お客さんには大好評だったようです。なんといっても本職が大工なので、大工たちは現場に行けば、ちょっとした営繕作業もいとも簡単にこなせるわけです。

大工を採用できない工務店と大工不足の現実

自社大工を抱えたくても大工を採用できないという問題は、日本全国の工務店が抱えています。

大分市の年齢別分布に見る大工の高齢化

出典:大工の学校

このグラフは、大分市内の大工の年齢別分布数を表したデータです。

大分市という限られた地域のデータですが、日本全国どこへ行ってもこの分布はさほど変わらないと私は思います。

グラフを見ると、大工の平均年齢が55歳以上であることが一目瞭然です。

特に20歳以下の大工はほぼ壊滅状態で、25歳以下に絞っても状況は変わりません。

このデータから分かるように、資金的余裕がある工務店であっても、大工そのものを集めることが困難です。工務店がいくら自社で大工を養成しようと思っても、これではどうしようもありません。

新卒で大工候補生を採用する中部地方の建材会社

中部地方に本社を置く建材会社は、売上高200億円を超える大きな優良企業で、新卒社員として大工候補生を採用しています。

この業務は、世の中の大工不足を少しでも解消しようと、社長の肝いりで始まりました。

その建材会社は、大工の技術やキャリアによって等級をつけ、客観的に大工の力が分かるシステムも導入しました。

新卒社員を育てる仕組みについては、営業社員の場合を住宅営業の新卒研修の事例で解説しています。

まとめ

自社大工は、工務店の世界では大きなアピールポイントでも、「うちは全部自社大工です」と言うだけではお客さんに伝わりません。自社大工制度がなかなかないことを伝えたうえで、会社をよく知る大工が施工すること、社長が責任を持って目を配ること、社長が大工を育てようとすること、大工がプライドを持って仕事をすることの4つを説明して、初めて営業上のメリットになります。

一方で、自社大工を抱える工務店は、新築受注が減ったときに給料の支払いリスクを負い、そもそも大工を採用すること自体が全国的に難しくなっています。

ぜひ本記事の4つのメリットを参考に、自社の大工の価値をお客さんに伝わる言葉で説明してください。

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